2014 FIFAワールドカップ Brazil (1)

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Index of Group Leagues (1)

  1. ブラジル3-1クロアチア
  2. スペイン1-5オランダ
  3. イングランド1-2イタリア
  4. コートジボワール2-1日本
  5. フランス3-0ホンジュラス
  6. ドイツ4-0ポルトガル

ブラジル3-1クロアチア

グループA/2014年6月12日(木)/サンパウロ/フジテレビ

 さぁ、始まってしまいました、2014年FIFAワールドカップ・ブラジル大会。
 今年はプライベートでいろいろ悩みがあって、まったくW杯モードが高まっていないんだけれど、だからといって、四年に一度の祭典を横目で見てやりすごすわけにはいかない。
 そろそろ五十代も間近にせまり、寄る年波に負けまりで体力的に自信がないので、どれだけつきあえるかわからないけれど、とりあえず今回もできる範囲で書きます、ブラジルW杯のテレビ観戦記。
 さて、ということで開幕戦。開催国ブラジルの対戦相手をつとめるのはクロアチア。
 ブラジルというと、去年おととしと日本代表がぼろ負けした印象が強烈で、今回は母国開催だし、めちゃくちゃ強いんじゃないかと思っていたんだけれど、この開幕戦の出来はそれほどでもなかった。西村さんの疑惑のPK判定がなかったら、ドローで終わっていたんじゃないかと思ってしまうような試合内容だった。
 とにかく、ボール保持率が高い割には、攻撃的なポジションの選手が軒並みボールタッチが少ない。オスカルは運動量が多くて、攻守にいいプレーを見せていたけれど、あとの、ネイマール、フッキ、フレッジらはどこにいたのかよくわからない。全体的にボールは回しているんだけれど、得点の匂いがしないというか。あまり怖さがないというか。この日のブラジル相手ならば、日本代表もそれなりにいい勝負ができそうな気がした。
 まぁ、まだ助走段階だから、エンジンが温まっていないってことなのかもしれない。なんだかんだいって、日韓大会で優勝したときにも、それほどいいチームって印象はなかったし。こういうときのほうがブラジルはいい成績を残しそうな気もする。
 対するクロアチアは、正統的なヨーロッパのチームって感じ。ガタイのいい選手たちがしっかり守ってボールを奪うと、少ない手数で素早く前線までボールを運んで、ちゃんとフィニッシュまで持っていくという。
 そんなクロアチアの攻めが功を奏した形で、左サイドからのクロスがブラジルの左SBマルセロ(見た目はカーリーヘアの長友というか久保田利信似で、すごく性格よさそう)のオウン・ゴールを誘って、ブラジルがまさかの先制を許す。大会初ゴールがオウン・ゴールってのは、さすがに史上初らしい。満員のスタジアムにはリアクションに困ったような空気が漂う。
 まぁただ、そこは王者ブラジル。不運な1点のビハインドくらいでは動じることがない。そして今大会、そのブラジルの期待を一身に背負うと言われている男、ネイマールが違いを見せつける。グラウンダーのミドル・シュート、それも左足での同点弾。
 決していいシュートではなかったけれど、シュート・チャンスを見逃さずに、右のゴール・ポストにあたるコース、さすがにそこはGKも手が届かないってところへボールを流し込んでみせるあたりがすごい。ボールタッチは少なくても、ここぞで試合を左右するプレーをしてみせるんだから、ネイマール、やはりただ者じゃない。
 前半はこのゴールで1-1で折り返し。後半も半分がすぎるまでは得点が動かなかったし、先に書いたように、ブラジルも出来がいまいちだったので、これはもしや開催国がドロー発進なんてこともあるかと思っていたら、そこで試合を動かしたのが、なにそれってPKの判定だった。
 この試合の審判団は、なんと西村雄一氏が主審をつとめる日本人三人。
 おぉ、W杯の開幕戦の主審が日本人!ってんで、ちょっぴり誇らしく思っていたのだけれど、そこであの判定ですよ。相手DFに肩に腕をかけられたフレッジが大げさに転んだと思ったら、いきなり笛が鳴ってPKの判定。えぇ~?! なにそれ。
 フレッジの倒れ方があまりにわざとらしかったので、テレビで観ているかぎり、PKなんてとてもあり得ない感じだったのだけれど、西村さんからの角度だとそうではなかったんだろうか。よくわからない。
 その後もクロアチアの絶好機がキーパーチャージらしき判定で認められなかったり、ブラジルのダメ押しとなるロスタイムの3点目(オスカルの見事なトゥーキック!)につながるバック・チャージがノー・ファールで流されたりと、クロアチアには不利な笛が目立った。
 決して西村さんの判定が誤審だらけだったといいたいわけではないのだけれど、なまじクロアチアが不運な同点ゴールに気落ちすることなく、同点に追いつこうと王者相手に懸命に攻め立てていただけに、なんとなく気の毒に思わずにはいられなかった。
 西村さんはPKの前まではあまり笛を吹かず、つつましやかな判定をしていて好印象だっただけに、途中から妙に目立ってしまうことになったのがどうにも残念だった。
 決勝点となったPKを蹴ったのは、これもやはりネイマール。クロアチアのGKがシュートコースを読み切ったにもかかわらず、ボールはその手を弾いてゴールネットを揺らした。PKってコースだけではなく、キック力も大切なんだなって、ネイマールに教わりました。あれが止められないあたり、やっぱこの子はただ者じゃないとあらためて思った。
 まぁしかし、このグループはブラジルの1位抜けはまず堅いにしろ、クロアチアの出来がこれだけよいと、メキシコ、カメルーンとの2位争いはそうとう熾烈そうだ。クロアチアのこのあとの試合も観たくなってきてしまった。
 でもさすがにそんな時間の余裕はなさそうな。今大会は時差12時間で日夜が逆転しているから、このさき平日は睡眠不足で大変そうです。
(Jun 13, 2014)

スペイン1-5オランダ

グループB/2014年6月13日(金)/サルバドール/NHK

 大会2日目にして、グループリーグでいきなり前大会の決勝カードが再現。でもこれが思わぬ大波乱となった。
 いくらオランダ相手はいえ、まさかスペインが5失点もするなんて、誰が予想できるっていうんでしょうか? それもシャビ、イニエスタ、カシージャス、フェルナンド・トーレス(途中出場)ら、前回優勝チームの主力がそのまま残っているというのにだよ?
 対するオランダは5バックでうしろを固めて、あとはファン・ペルシー、ロッベン、スナイデルの強力な3トップの個人技におまかせという形。
 でもこれがどんぴしゃとはまった。スナイデルこそ出来がいまいちだったものの、ファン・ペルシーとロッベンの決定力が半端ない。
 前半はスペインに微妙なPKで先制を許した上に、いいようにボールを回されていたにもかかわらず、ただのワンプレーで、左サイドからのロングボールにファン・ペルシーのダイビング・ヘッドが鮮やかに決まって同点に追いつくと、後半はもう一方的な展開に。
 ロッベンの個人技で逆転、セットプレーからのDFデ・フライの追加点(手前の選手がキーパーチャージっぽかったけど)、カシージャスのミスを見逃さずにボールを奪いとったファン・ペルシーの2ゴール目、そしてロッベンも追加弾と、もうやりたい放題。
 悪いけれど、ぼーぜんと試合を見守るデルボスケ監督のなんともいえない表情には、失笑せずにはいられなかった。
 そういや、監督といえば、オランダの監督は次期マンU監督のファン・ハールなんですね。この大会でファン・ペルシーとの{きずな}がさらに深まって、来季の香川には大いにマイナスになりそうな……。
 なんにしろ、後半はあまりに一方的だったから、ボール保持率は五分くらいになったかと思ったら、それでもスペインの58%だというからびっくりだ。俺は6割ちかく試合を支配していた優勝候補が、退場者もなしに5点も取られるなんて試合、初めて見たよ。
 そういや、両チームともセカンド・ユニフォーム(スペインは白、オランダは紺)というのも、なにげに珍しかった。
 このグループBでは、次にスペインとあたるチリが、この日はオーストラリアに3-1で勝っている。つまりチリは残り2試合をどちらもがっちりと守り切ってドローで終われば、勝ち点でスペインを上回って2位抜けできるって計算になる。
 さぁどうするスペイン。いきなり正念場。
 対するチリはオーストラリア戦をながら観した印象だと、小柄な選手がショートパスをつないでゆく日本やメキシコに似たタイプのチーム。そんなチリがこの状況下でパスサッカーの王者スペイン相手にどんな風な戦い方をしてみせるかも一興だ。
 この両チームの次の試合が、がぜん楽しみになってきた。
(Jun 14, 2014)

イングランド1-2イタリア

グループD/2014年6月14日(土)/マナウス/NHK

 これまたグループリーグ屈指の好カードながら、次の日本代表の試合が気になって、なかなか集中しにくかったイングランド-イタリア戦。
 いまだ日本代表敗戦のショック冷めやらずなので、この試合のことはごく簡単に。
 イタリアは守護神ブッフォンが足を痛めたとかで欠場。チームはピルロを中心に軽快なパスワークで攻める、とてもいい感じのサッカーをしていた。さすが強豪。
 対するイングランドもジェラードがいまだ健在で、こちらは遠目からでも積極的にミドルを狙う姿勢が徹底された、華麗さよりも実質本位ってサッカーをしている印象。
 試合はイタリアがCKからマルキージオ(名前がシェイクスピアの登場人物っぽい美男子)のミドルシュートで先制。それでも、すぐさまイングランドが右サイドを攻め上がったルーニーのクロスを、ファーでスターリッジという黒人選手が決めて同点に追いつく。
 イングランドはこのスターリッジやウェルベック、スターリングといった小柄な黒人選手がめだっていたのが印象的だった。
 後半のイタリアの決勝ゴールも黒人で、ミランでの本田の同僚バロテッリ。悪童、悪童と呼ばれまくっているから、どんな危ないやつかと思っていたけれど、浮き球のループシュートを打つ場面などあり、プレーには意外な落ち着きを感じた。
 結局、このバロテッリのゴールを守り切ってイタリアが勝利。内容的にもイタリアのほうがよかったと思うので、この結果は順当な印象だった。
 イタリアにはワインとパスタで、イングランドにはロックと文学で日々お世話になっているので、どちらも応援したいと思うのだけれど、イタリアはともかく、イングランドは優勝するには、なにかが足りないような気がする。
(Jun 15, 2014)

コートジボワール2-1日本

グループC/2014年6月14日(土)/レシフェ/NHK

 さて、本大会最初のハイライトにして、おそらく内容的には今大会ここまでで最悪の試合。日本代表、初戦でコートジボワールに完敗を喫すの巻。
 いやぁ、しかしショックだ。負けたから──というのは当然として、それ以前に日本代表がやりたいサッカーがまったくできていなかったのがショック。勝つにしろ負けるにしろ、絶対におもしろい試合を見せてくれるものと思っていたのに……。まさか本番でここまでつまらないサッカーをしてしまうなんて……。
 なんたって、数字が日本の圧倒的な劣勢を物語っている。
 ボール保持率はコートジボワールが57%で日本が43%、シュート数はコートジボワール20に対して日本はわずか7本、うち枠内となると10対4。攻撃的なパス・サッカーを標榜しながら、こんな数字が残るサッカーをしていて、勝てるわけがない。先制こそしたものの、負けるべくして負けた、完敗って試合だった。
 ザッケローニがこの大一番に選んだスタメンは、GK川島、DF内田、森重、吉田麻也、長友、ダブル・ボランチが長谷部と山口蛍、攻撃的MFが岡崎、本田、香川、そしてワントップが大迫というメンバーだった。
 大事な初戦なので、今野よりDFとしての試合勘があって身体能力の高い森重を起用し、遠藤のスーパーサブを見越してボランチには蛍、そして最前線でのポスト能力を買って大迫と。すべては攻撃より守備的な安定感を買った結果だろう。慎重派のザッケローニらしいと思うし、そのこと自体には疑問はなかった。
 でも残念ながら、この形がはまらない。大迫のポスト役は本田や香川との連係がいまいちで終始ちぐはぐなままだったし、遠藤を欠いた攻撃陣は、本田、香川の不調もあいまって、攻撃の形が作れない。おかげでチームは守備に追われまくって、相手より先に疲弊してしまい、後半に満を持して遠藤を投入しても、少しも攻撃のリズムがよくならない。それどころか、守備のバランスを欠き、あっという間に逆転を許してしまうていたらく。
 こんなことになるなら、最初から遠藤を起用したいつもの形で戦って、どこまでできたか観てみたかったよ……。
 本田も先制ゴールはスーパーだったけれど──というか、僕にとってはここまでの大会ベストゴールだ(鳥肌たった)──、でもそれ以外は、やはりいいときのプレーからすると、まだまだといった感じ。彼の魅力は高いボールキープ力にあると思うのだけれど、いまは試合勘が戻りきらないせいか、そのキープ力が足りない。トラップが安定しないし、相手の厳しいプレッシャーにあうと、すぐにボールを奪われてしまう。こんなの本田じゃねぇ──とか言いたくなる。
 香川も雨のせいか、まったくいいところがなかったし(まさか香川がここまで駄目だというのも予想外だった)、両エースに安心してボールを預けられない上に、遠藤もいないのでは、攻撃が活性化しないのも当然。使われてなんぼの岡崎も、使ってくれる人がいないので存在感ゼロ。大迫もせっかくのスタメンなのに、残念ながら必死さが足りない。なによりワントップのFWがシュートゼロでは話にならない。
 攻撃陣がこんな感じだから、結果、ピンチの連続を山口、森重の活躍でなんとかしのぐという展開になったのも当然だった。
 あのふたりの起用は当たった形だけれど、でも彼らがめだつようなサッカーやっている時点でNGでしょう? 攻めて攻めて攻めまくることにしか、いまの日本は活路を見いだせないのだから、守備的な選手がめだつ展開は、すでにそれ自体がチーム・コンセプトが崩壊している証拠だろう。
 長谷部→遠藤、大迫→大久保、香川→柿谷という選手交替もまったく事態を改善させなかったし、あまつさえ、最後はロングボールを放り込んでのパワープレーをし始める始末。そういうのやらないと決めて、豊田やハーフナーを切ったんじゃないかったのかい! それならば、いさぎよく最後までパスをつなぎましょーよー。付け焼刃のパワープレーに頼るなんて無様なサッカーはして欲しくなかった。
 対するコートジボワールは、噂のヤヤ・トゥーレとか、ジェルビーニョとか、なるほどいい選手。それでも、ここぞのところでシュートの精度を欠いていてくれたから助かっていたのに、温存していたドログバが後半途中に出てきたと思ったら、そこからわずか5分で2ゴールの逆転劇ですもん。これには敵ながらびっくりだよ。
 失点はどちらも相手右サイドからのアーリークロスをヘディングで決められたもの。2点ともほぼ同じような形だった。なんなの、この期に及んで突然のその精度の高さは? 敵ながらあっぱれだわ。──とはいえ、ニアをつかれた2点目は、願わくば川島に止めて欲しかった……。
 そういや、この日は長友の出来もなぁ……。持ち前の攻撃センスをほとんど発揮できなかった上に、彼のサイドから2失点だからいただけない。
 逆サイドのウッチーが故障のブランクを感じさせず、攻守にいいプレーをみせていたのに(あぁ、彼のGK真正面のシュートが決まっていたら……)、絶好調だと豪語していた長友がなぜにこの大事な試合であんなに存在感がなかったのか理解に苦しむ。もっとやってくれると思っていたんだけれどなぁ……。
 いやぁ、とにかく日本代表を中心に観ているかぎり、とことんつまらない試合だった。繰りかえしになるけれど、それがなによりショックだった。2-1というスコアは前のイングランド-イタリア戦と同じだけれど、内容の濃さがぜんぜん違った。
 僕は前の試合を観ながら、イタリアよりはイングランドのほうが戦いやすそうだから、ここはぜひグループリーグは1位抜けしたいとか思っていたのだけれど、いまとなると、そんなことを思っていた自分が恥ずかしくなってしまう。俺たちはまだまだ決勝トーナメントを視野に入れてものが考えられるレベルじゃないや。
 初戦のコロンビアが3-0で勝っているのを考えると、次のギリシャ戦で勝ち点3をとれなかった日には、決勝トーナメント進出はほぼ絶望でしょう。次の試合は全力で勝ち取って欲しい。土壇場感はスペインとどっこいだ。引き分け厳禁。はやくも正念場。
(Jun 15, 2014)

フランス3-0ホンジュラス

グループE/2014年6月15日(日)/ポルト・アレグレ/日本テレビ

 今回のW杯ではグループリーグの序盤戦は1日3試合で、キックオフ時刻は基本、1時、4時、7時となっている。ブラジルとの時差は12時間だから、日本ではすべて深夜から朝の同時刻。
 7時の試合は通勤時間と重なっていて観られない。1時の試合は終わるのが3時で、平日に毎日観るのは睡眠時間的にきつい。ということで、今大会は早寝、早起きを心がけて、4時からの試合を中心に観ようと思っている。
 でも、この日の4時キックオフの試合は、フランス対ホンジュラス。フランスがこのところぱっとしないので、正直なところ、いまいち惹かれない。
 おまけに翌日には1時からドイツ対ポーランドの試合がある。対する同日4時のカードはイラン対ナイジェリア。どっちが観たいかって、そりゃ言うまでもないでしょう?
 ということで、翌日はがんばって1時の試合を観るつもりなので、この日の試合は無理して早起きしてまで観なくてもいいんじゃないかって思いもしたのだけれど。
 まぁ、乗りかかった船だし。観られる試合は観ておいた方が、先々盛り上がれるかもしれないと思って、がんばって早起きして観ました、フランス-ホンジュラス戦。
 でも結果はフランスの順当勝ち。フランスはリベリが怪我で大会不参加ながら、頼れるエース、ベンゼマの活躍で快勝した。
 ホンジュラスも序盤はがんばっていたんだけれど、途中ラフプレーへの喧嘩両成敗でイエローカードをもらっていた8番の選手が、ペナルティエリア内での相手のクロスへの対応で、ボールを受けた選手にうしろから体当たりをかましてPKを献上。おまけに2枚目のイエローカードで退場を食らってしまう。そりゃ駄目だって。
 弱者がみすみす1点を献上した上に数的不利になってしまったらのだから、これで勝負あり。PKを決めたベンゼマが後半も2点をあげて、フランスが難なく勝ち点3を獲得した。
 3得点すべてがベンゼマの得点だったから、ベンゼマのハットトリックだと思っていたら、アナウンサーは2得点といっている。なぜ?と思ったら、2点目がGKのオウン・ゴールの判定だった。
 その場面は、ベンゼマのシュートが右ポストに跳ねかえって、GKにあたってゴールラインを超えたもの。GKはあわててキープにいったけれど、まぁ、肉眼で見ていても、あ、入ったかなと思うようなシーンだった。
 今大会の新技術、ゴール・ライン・テクノロジーとやらでCG解析した映像を見ると、確かにボールはゴール・ラインを超えていた。この新機能がちょっとでも役に立ったのって、今大会これが初めなんじゃなかろうか。
 ということで、ゴール・ライン・テクノロジーのおかげで、オウン・ゴールという判定になったのだと思うけれど、でもあれって、そんなものに頼らなければ、ベンゼマのゴールって判定だったんじゃないかと思う。ベンゼマのゴールって言っても誰も怒らないだろうし、ハットトリックのほうが結果的に盛り上がったのに。テクノロジーの進化のせいで物語が味気なくなる好例だと思った。
 あ、でもベンゼマのシュートがポストに当たった直後をとらえて、「No Goal」とか出たのは、ちょっと笑えました。そのあとでリプレイが進んで、GKにあたったあとに「Goal」判定が出て、なるほどと思ったわけだけれど、普通ならば最初の「No Goal」の部分はスルーでしょう。さすがコンピュータ、空気を読まない。
 新技術といえば、FKの壁の位置をスプレーで線を引いて示すヴァニッシング・スプレーというのも、僕はこの大会で初めて見たので、最初はおぉっ、なんだこりゃと思った。あれはこの先、サッカー界の標準になるんでしょうかね。正直、ゴール・ライン・テクノロジーと同じで、あってもなくても、どっちでもいいような気がするけれど。
(Jun 16, 2014)

ドイツ4-0ポルトガル

グループG/2014年6月16日(月)/サルヴァドール/NHK

 FIFAランキング2位のドイツと4位のポルトガルとの対戦。今大会は一回戦から贅沢なカードが目白押しだ。
 さて、怪我で出場が危ぶまれていたクリスティアーノ・ロナウドも無事出場したこの試合。深夜1時のキックオフからリアルタイムで観たのでしたが……。
 これがまた、初戦のスペインほどではないにしろ、思いがけない展開に。
 とにかくこの試合のポルトガルはさんざんだった。こんなについてない国はほかにないだろうってくらいの不運に見舞われる。
 先制点を許したPKだって、取らない人ならば取らないだろうってファールだったし――今大会は妙にPKとオウン・ゴールが多い気がする――、なによりも最悪だったのは、そのあとのCBペペの退場。
 やはり頭突きで退場はいかんでしょう、頭突きは。まぁ、かつてのジダンのようにあからさまではなかったから、頭突きと呼ぶのは大げさじゃないかって気もするけれど、それでも彼がミュラーに頭をぶつけていったのは事実。それをレフェリーの見ている目の前でやっちゃったら、当然カードは避けられない。
 その時点ですでに2失点していたポルトガルにとっては、この退場劇が致命的だった。さらについてないことに、ポルトガルはその前後にふたりの選手が怪我で途中交替を余儀なくされている。当然、退場したペペのかわりのDFも入れているし、要するにこの試合でポルトガルは3枚の交替カードをすべて不本意な形で使わざるを得なかったわけだ。まさに踏んだり蹴ったり。
 ヨーロッパ最高の得点力をもつドイツ相手にこれほどまでに不利な状況で戦って、よくもそのあと2失点のみで済んだもんだって、そのほうに感心してしまうような内容だった。さしものクリスチアーノ・ロナウドもこの展開では輝きようがない。この調子だとこの人のプレーが観られるのもグループリーグだけで終わりそうな……。
 対するドイツは、前大会得点王のミュラーがいきなりハットトリックを達成。今大会はクローゼ(また現役だったとは)にW杯通算得点記録更新の期待がかかっているけれど(この試合は記録更新にはもってこいの展開だったのに出番なしだったから、この先出てくるのかあやしい)、それよりもこのミュラー君のゴール量産がすさまじい。この人、次の大会にはその記録を更新しちゃうんじゃないだろうか。
 いやはや、それにしてもドイツの強いこと強いこと。ポドルスキやシュバインシュタイガーが控えってのは、いったいどういう選手層の厚さなんだか。どう見ても優勝候補の最右翼にちがいない。恐れ入りました。
(Jun 17, 2014)