小石川近況
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2024-10-29 | 音 | 『虚仮の一念海馬に託す』 New! |
2024-10-27 | 本 | 『マン島の黄金』 |
2024-10-24 | 音 | ずっと真夜中でいいのに。@大宮ソニックシティ 大ホール |
2024-10-22 | 蹴 | J1 第34節・鹿島-福岡 |
2024-10-19 | 本 | 『村上春樹と私』 |
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虚仮の一念海馬に託す
ずっと真夜中でいいのに / 2024年
ファースト・アルバム『潜潜話』のリリース以降、一年ごとにミニアルバムとフルアルバムを交互にリリースするのがずとまよのルーティンとなっている。
そのインターバルに従うと、今年はミニアルバムの年となるわけだけれど、さてどうなる――と首を長くして待っていたところ、やはり今年もなんとか年内に、ACAねはミニアルバムを届けてくれた。
ずとまよ通算五枚目のミニアルバム。タイトルは『虚仮の一念海馬に託す』。
暗黙の了解的につづいているタイトルの縛り――フルアルバムは三文字、ミニアルバムは十文字――は今回も健在だ。いったいこのルールはいつまでつづくのやら。
内容も期待にたがわず、ずとまよ印全開だ。
小沢健二を思わせる明朗な一曲目『虚仮にしてくれ』(タイトルと曲調のギャップがすごい)や、ずとまよ初の英文節タイトル(でも歌詞は日本語オンリー)のラストナンバー『Blues in the Closet』など、ちょっぴり新機軸と思わせるところもあるけれど、基本的なところはあい変わらず、ずとまよらしさに溢れている。
今回はクラシカルな楽器の音が多めなのが特徴のひとつ。一曲目のハープ、『嘘じゃない』のイントロのピチカート奏法(たぶんそうだよね?)、『Blues in the Closet』のフルートなど、クラシック畑の楽器の柔らかな音を取り入れつつも、決して保守的になることなく、彩り豊かな最新鋭のビートミュージックとならしめているところがもう本当に最高だと思う。
今年は前作『沈香学』から一年近く新曲のリリースがないという、ずとまよ史上最長のインターバルを挟んでいたので、僕のなかでずとまよの存在感がいくぶん薄れていた感があったのだけれど、これ一枚であっという間に元通り。リリースされて、せいぜいまだ一週間なのに、それ以来ずっと僕の音楽生活はこのアルバムを中心に回っている。
まぁ、アルバムの後半三曲(とくに最後の二曲)は配信リリースからけっこう時間がたっていることもあり、さんざん聴いて鮮度が落ちてしまっているので、今作は前半の三曲がとにかくインパクト大。清涼感あふれる『虚仮にしてくれよ』に、アニメのタイアップと思えないくらいアグレッシブな『TAIDADA』、そしてなにより『クズリ念』!――この曲のよさはほかに例えようがない。
その次の『海馬成長痛』は後半の「段々スタンスが雑/ダンスダンス ステップ複雑」という絶妙なライムから、「皆が寝静まれば僕の出番来る」というハロウィン的な決めフレーズに至る流れが絶品だと思う。ほんと大好き。
とにかく、アルバムのどこを切り取っても歌詞は斬新で饒舌で唯一無二だし、音作りも多彩で豊饒、でもってビートは衰え知らずに性急でダンサブル。ACAねのボーカリストとしての表現力も留まるところを知らない。
どう考えたって、これがいまの日本のポップミュージックの最高到達点では?
――という思いに揺るぎがないので、なぜにメディアの全体的な評価がそうなっていないのか、不思議でしょうがない。これを聴かずしてなにを聴けと?
こういう音楽が正当な評価が受けられないなら、ACAねが「皆がいいと思う曲や歌が響かない」とか歌っちゃうんじゃないだろうか。
まぁ、あまり人気が高まってしまうとチケットを取るのも大変になっちゃうんだろうし、結局いまくらいの適度な人気を得ているほうがファンとしては都合がいいのかな……と思わなくもないのだけれど。
少なくても僕は日本人として生まれて、ずっと真夜中でいいのに。の音楽が聴けることを――還暦近くになってなお、ACAねの作る音楽に夢中になれる自分を――心の底から幸福だと思っている。
なんだか毎回ずとまよの音楽について語るたびに、幸せだ幸せだとのたまってばかりいる気がする。
(Oct. 27, 2024)
マン島の黄金
アガサ・クリスティー/中村妙子・他訳/クリスティー文庫/早川書房/Kindle
クリスティーの没後二十三年たって1997年に刊行された短編集。
埋もれていた未発表作品をコンパイルしたのかと思っていたけれど、どうもそうではないらしい。どれも雑誌などに掲載された作品っぽいので、単行本未収録のままになっていた短編を集めた一冊ということなんだろう。
おまけにすべてが未収録という話ではないらしく、『クリスマスの冒険』は『クリスマス・プディングの冒険』のバージョン違いだし、『バグダッド大櫃の謎』はなぜか『黄色いアイリス』からの再録。あと『崖っぷち』は以前に読んだ『厭な小説』というアンソロジーに収録されていたので、タイトルには覚えがあった(内容は覚えてなかったけど)。
表題作の『マン島の黄金』は観光地の集客のために書かれた懸賞小説とのことで、そうと知らずに読むと、なにこれと思ってしまうような作品。クリスティーがこんなものも書いていたという意味では一興の作品だった。とはいえ、トミーとタペンスに通じる陽気なカップルの探偵話なので、一部のクリスティーファンには愛されそうな作品。
『クィン氏のティー・セット』はハーリ・クインが登場する最後の作品とのことなので、おそらくこの本でもっとも貴重な作品。『謎のクィン氏』が好きな人はこの本は必読。
まぁ、ミステリの女王が短編集を編纂する際にこぼれおちた作品郡だけあって、そのほかの収録作品の過半数はミステリとは呼べないタイプの作品だった。メアリ・ウェストマコット名義で発表した長編群につらなるべき短編集という印象。
でも、個人的にはそこのところがなかなかいいなと思った。
ミステリの女王のアナザー・サイドというか。クリスティーのシニカルな人生観がにじむ、ひねりの効いた暗めの恋愛小説が多くて、純然たるミステリの短編集とはまた違った味わいがあって新鮮だった。
まぁ、クリスティーのファンが最後に読むべき短編集はおそらくこれじゃないほうがいいんだろうなとは思うけれど。
そういえば、Kindle版のクリスティー文庫は解説がはしょられているのに、これはその出自ゆえ(日本独自編集で追加された最後の三編を覗いた)一編ごとにあとがきがついているのが嬉しかった。
(Oct. 27, 2024)
ずっと真夜中でいいのに。
やきやきヤンキーツアー2 ~スナネコ建設の磨き仕上げ~/2024年10月9日/大宮ソニックシティ 大ホール
ずとまよのライブに定期的に足を運ぶようになって、唯一観逃したのが『やきやきヤンキーツアー』だった。
コロナ禍での開催だったので、スルーしてしまったのだけれど、あとで映像作品でその豪華なステージセットをみて、チケットを取らなかったことを後悔した。いまから振り返れば、あのツアーこそが、ずとまよのテーマパーク的なステージの出発点だった。
今回のツアーはその続編。四年たってヤンキーだったメンバーがみな職を得たという設定で、前回は荒れ果てたコンビニの風景だったステージは、就職先であるスナネコ建設という会社の工事現場へと姿を変えていた。メンバーのヘアスタイルは前回同様ヤンキー風(なのか?)だけれど、セットは工事現場だから、どちらかというと、たまありで観た『ZUTOMAYO FACTORY』に近い印象だった。
ステージ中央には高さ六メートルくらいありそうな巨大な三枚羽のサーキュレーター(扇風機?)が配置されている。回転軸の部分が丸いスクリーンになっていて、ここにさまざまな映像が映し出される一方、サーキュレーター全体にも電飾が配されていて、ずとまよのイニシャルの「Z」の文字が浮かび上がったりする。
これが今回の演出の中心だった。左手の上方にも曲名や歌詞が映し出される縦長の小さなスクリーンがあったけれど、メインは中央の扇風機。
そういう意味では映像的な演出は控えめだったけれど、なんたっていつも通りステージ全体の構造が凝っているので、地味な印象はまったくなかった。
ずとまよのライヴではACAねがどうやって登場するかも毎回見どころのひとつで、これまでも巨大蒸篭から出てきたり、自動販売機を蹴倒したり、ショーウィンドウがぐるりと回転して登場したりして、観客を沸かせていた。
今回のステージには、そういういかにもな登場ポイントが見当たらなかったので、はてどうやって出てくるのだろうと思っていたら、バンドメンバーふたりがステージ中央で暴走族っぽい大きなフラッグを広げてみせ、それをはらりと落とすとそこにACAねがいるという手品っぽい趣向だった。奈落とか使ってせり出してきたのかもしれないけれど、登場のしかたも比較程おとなしめ。
ACAねの衣装は暗くてシルエットしかわからなかった。ウエストが締まって、腰から下がふわったと広がったロングスカートで、一見お姫様っぽい、らしからぬ印象だった。なんかAdoっぽい?――とか思った。
でも後日SNSにあがった写真を見たら、へそ出しの派手派手なセーラー服で、あぁ……と納得。そうだよね。不良少女といえばロングスカートのセーラー服だわ。
バンドはドラムよっち&神谷、ベース二家本、ギター菰口、キーボード岸田、オープンリール吉田兄弟に、ホーン二名という編成――だったはず。個人名を特定できるメンバー紹介がなかったので、もしかしたら間違っているかもしれない。みなさん金髪をつんつん立てた似非ヤンキースタイルだった。
【SET LIST】
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オープニングは『JK BOMBER』で、そこからの四曲はワンコーラスのみのメドレー。なかではひさびさの『ヒューマノイド』がいちばんの歓声を浴びていた。
この日の個人的なお気に入りポイントはその次に演奏された『馴れ合いサーブ』。ツーコーラス目にチャック・ベリー伝来のギターリフをフィーチャーした8ビートのロックンロール・アレンジが施されていて、おーっと思った。まさかずとまよのライヴで伝統のあのフレーズを聴くとは思わなかった。胸熱でした。
序盤はそのあとに『残機』『秒針を噛む』とつづくのだから、ほんと惜しみないにもほどがある。『秒針』での掛け合いは、五月のアリーナと同じく、序盤がしゃもじのクラップで、後半から合唱というスタイルだった。
今回のツアーはミニアルバム『虚仮の一念海馬に託す』のリリース前にスタートしているので、収録曲六曲のうち、未発表の二曲はどうするのか気になっていたのだけれど、結論からいえばその二曲を含めて、アルバム収録曲はすべて聴かせてもらえた。
そのうち最初に演奏されたのが、コンサートの中盤で「クズリという動物が気になっていて……」みたいなMCでの紹介で始まった『クズリ念』。ミニアルバムのトレーラーで使われている「孤独じゃなきゃ眠れない」という歌詞が――とくに「眠れない」を二度繰り返すところが――とても印象的で、脳裏にこびりついていた曲だったので、ようやくちゃんと聴けて嬉しかった。
その次の『Blues in the Closet』は日替わり三曲の即興アレンジコーナーで披露された。つまり今回のツアーで新譜の全曲を聴けるかどうかは時の運らしい。三曲のどれを演奏するかは、前回のような観客の多数決ではなく、ライフルみたいなやつでくす玉みたいなのを撃って決める企画だったので、演奏されない日もある模様。
この日の即興アレンジは「引きこもりで反抗期の息子が父親とともに船旅に出て、アフリカにたどり着いて、当地のリズムに煽られて踊りだす」みたいなやつ。ACAねのお気に入りだというオープンリールのふたりの寸劇がフィーチャーされていて失笑を買った。
その次がフジロックで初披露された『海馬成長痛』だから、ここは新曲三連発だったわけだ(気づいてなかった)。
つづく『彷徨い酔い温度』はいつものゆったりとした音頭調ではなく、サビの部分で突然スピードアップして、観客にしゃもじをぶんぶん振らせたり、また遅くなったりを繰り返す緩急自在なイレギュラー版。RADWIMPSのライブでの『おしゃかしゃま』に通じるものがあった。『馴れ合いサーブ』と並んで、ライブならではの個性を感じさせた一曲。
ライヴ終盤は『お勉強しといてよ』から始まり、新曲『TAIDADA』、『あいつら全員同窓会』、『勘冴えて悔しいわ』、『ミラーチューン』というダンスチューン連発の怒涛の展開でエンディングへ。
『ダンダダン』のエンディング曲の『TAIDADA』では、斜め前の女の子の動きがなんとなくあのアニメのターボババア(招き猫)っぽかったのが可愛かった。
でも、なんといってもこの日の個人的なクライマックスは、このパートで演奏された『勘冴えて悔しいわ』。五年前に初めてZepp Tokyoでこの曲を聴いて以来、二度目となるフル・バージョン! ようやくいままで省略されてきた二番が聴けて、思わずガッツポーズが出た。
アンコール一曲目の『虚仮にしてくれ』は、トレーラーのイントロ部分がこの曲だったのか!――という驚きこそあれ、どういう曲だったか、いまいち記憶にない。ずとまよには珍しくさわやかな印象の曲だなと思った。
つづく『嘘じゃない』で新譜をコンプリートして、最後は『正義』!――で終わりかと思ったら、違った。そのあとに『勘ぐれい』の「スナネコ建設エンディングバージョン」(タイトルは違う可能性大)があって幕。
なんで『勘ぐれい』がスナネコ建設のテーマ曲に選ばれているのかはまったくわからないけれど、今回も間違いなく楽しい二時間強でした。
(Oct. 24, 2024)
鹿島アントラーズ0-0アビスパ福岡
J1・第34節/2024年10月19日(土)/カシマサッカースタジアム/DAZN
ポポヴィッチの解任について思うこと。
――なぜ鹿島はこうもこらえ性がないんだろう?
ザーゴを二年目の序盤で解任したところから始まり、相馬は一年たらず、レネ・ヴァイラーは半年も持たず、岩政も一年半、そして今回のポポヴィッチもシーズン終盤での解任。かつての栄光の記憶のせいで、結果を急ぎすぎている気がする。
石井、大岩、相馬、岩政と、これまでの解任劇での後任は、いまだ優勝争いの目があるシーズン途中でコーチをつとめていたOBがそのまま昇格するという形だった。でもって石井はその年にルヴァン杯、大岩は二年目にACL優勝という結果を残した。
思うに、このふたりが結果を出したことで、もしも招聘した外国人監督が駄目でも、鹿島イムズのなんたるかを知ったOBのコーチにあとを任せればなんとなるという間違った認識をクラブが持ってしまったような気がする。
でも、その後シーズン途中で同じようにコーチから昇格した相馬と大岩は結果を残せずにクラブを去り、勝利の方程式は崩れた。今回なんてタイトルの可能性が99%なくなった状態での監督交替だ。いったい後任の中後になにが望めるというんだろう? さっぱりわからない。
まぁ、ザーゴ――僕は彼のサッカーが好きだったので、二年目のシーズン序盤での解任は本当に残念だった――以来のクラブの迷走は、鈴木満氏の後任としてチームを引き継いだ吉岡宗重フットボール・ディレクターの責任の感が強かったので、今回その人の辞任が決まったこともあって、彼の肝入りで入ったポポヴィッチも一蓮托生でお役御免ということになったみたいな感じだけれど。
でもまだACL出場圏内に届く順位にいるのだし、来シーズンの続投がないと決まったにせよ、どうせならば今季は最後までポポヴィッチに任せて、最終順位がどういう結果になるのかを見届けたかったよ……。
というか、僕としてはもう一年くらいポポヴィッチにチャンスをあげてもいいと思うのだけれど。いくらなんでも一年で優勝できなかったら失格って。それは厳し過ぎってものじゃなかろうか。神戸が強くなったのだって、吉田孝行にちゃんと時間をあげたからだと思うんだけれどな。
うがった見方をすれば、もしもこのままポポヴィッチに最後まで任せて、ACL出場権を得て終わると、来年彼を解任する言い訳が難しくなるから、いまだ最終結果の出ていないこのタイミングでの解任となったんじゃないのかとも思える。それが解任理由の「総合的に判断した結果」なのではないかと。
まぁ、やはりポポヴィッチは吉岡氏ありきの人選だったので、吉岡氏が抜けた来期も彼にチームを託すという選択肢は、鹿島――というか社長のメルカリ小泉さん?――にはなかったということなんだろう。
吉岡氏の後任は中田浩二だというし、中後のサポートとして、ユース代表で指導歴を積んだ羽田憲司と、クラブのレジェンド本山の入閣が決まったので、もしかしたらこれを機に脱ブラジル路線の方針は撤回して、再びクラブの伝統であるジーコイズムの純血主義へ回帰するのかもしれない。まぁ、それならばそれはありかなとも思う。
さて、そんなわけでポポヴィッチのあとを受けて誕生した
前節3バックで快勝を収めたので、ポポヴィッチ続投ならばその形を踏襲してくるかと思っていたんだけれど、さすが中後は鹿島のOBだった。前節の結果を無視して、伝統の4バックに戻してきた。
中後監督が初めての試合で選んだ11人は、GK早川、DF須貝、植田、関川、安西、MFが柴崎、知念のダブル・ボランチで、二列目に藤井、名古、優磨、そして師岡のワントップという顔ぶれだった。途中出場は樋口、三竿、徳田、船橋、ブレーネルの5人。船橋はこれが今季初出場とのこと。おぉ、そうだったか。
プロパーのSB須貝がいるのだから、彼を使って4バックとするというのは個人的にはいいことだと思う。中盤に下がってプレーしがちな優磨を最初から一列下げて、師岡をワントップに起用してきたのも意外性はあったけれど、まぁよし。
じゃっかん疑問を覚えたのは、藤井の右サイドでの起用。今シーズンの彼は左サイドで躍動している印象だったので、右での起用はどうなんだと思った。あと、前節あれだけ活躍した樋口をスタメンから外したのも。やはり結果を出した選手には継続的にチャンスを与えるべきでは?
中後の示したスタメン表の変化は興味深かったけれども、結果的にこの試合では攻撃が活性化せず、シュート本数が一桁台で終わってしまったので、スコアレス・ドローという結果は初監督の采配としては成功とはいえない。上位3クラブが今節はすべて勝ち点を落としているので、なおさら勝ち点3が欲しいところだった。
まぁ、対する福岡はこの日も入れてクラブ史上初の4試合連続のクリーンシートだそうなので、相手の守備力が高かったって部分もあったんだろう。シーズン途中で離脱したキャプテン奈良は不在だったけれど、ドウグラス・グローリ、田代、宮という3バックはガツガツとあたりが強く、6番のキャプテン前も地味ながらいいプレーを見せていた。金森、小田の旧鹿島勢のプレーが観れたのも嬉しい。ワントップのウェリントンは関川とGKとの接触で怪我をして、途中から鼻の頭をテーピングでがちがちに固めてプレイしていた。
試合後のヒーローインタビューは福岡のGKの永石だったから、彼がこの試合のMVPなんだと思われる。でないと鹿島のホームゲームで相手GKがインタビューを受ける理由がわからない。まぁ、セットプレーからの知念のどんぴしゃのヘディングを止めたファインプレーもあったしねぇ。あれが決まっていればなぁ……。
ちなみに福岡を率いる長谷部茂利監督は今季で退任だそうだ。川崎の鬼木も今季での退団が決まったそうで、さっそく鹿島がオファーを出したというニュースが飛び込んできた。つまり中後は今季限りという方針なわけだ。ますます残り試合がモチベーション的に難しそうな……。
監督の解任といえば、後半戦に入ってからF・マリノスがキューウェルを、鳥栖が川井監督を解任し、レッズもヘグモを切ってスコルジャを呼び戻した。
おもしろいのはどのクラブも解任の発表が鹿島戦の直後だったこと。なんでうちと戦ったあとで次々と監督が替わっちゃうんだろうと不思議に思っていたら、当の鹿島まで解任グループに加わってしまったという落ちだった。とほほ。
いやでも、鳥栖の川井監督解任は愚行だと思った(後任は木谷という人)。確かに今季は下位に低迷していたけれども、戦力を考えれば十分よく戦っていたので(少なくても鹿島的には今年も手強かった)、シーズン途中での監督交替は悪手でしかないんじゃん?――と思わずにいられなかった。
そしたら、実際に鳥栖は監督交替後に一勝もできないまま、今節ついに降格一番乗りが決まってしまうというていたらく……。
あーあ。ほんとお気の毒さま。だから替えちゃ駄目だっていったのに。
(Oct. 22, 2024)
村上春樹と私
ジェイ・ルービン/東洋経済新聞社
村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』などの英語訳を手掛けているジェイ・ルービン氏(現在八十二歳)のエッセイ集。2016年に発売になったときから気になっていたのに、放っておいたら八年も過ぎていた。
ルービン氏はもともと大学で日本文学を教えていた人で、漱石などの近代文学のほうが専門らしく、さらには能などの造詣も深いようで、この本はそんな方が村上春樹の翻訳を手掛けることになったいきさつや春樹氏との思い出話を中心に、日本文学や伝統文化に対するあれこれを語ったエッセイ集だった。翻訳家としての目線で村上作品の魅力を語る評論集のような本を期待していたので、やや期待外れ。
ルービン氏の奥様は日本人らしく、ご子息にも「源」とか「ハナ」とか日本の名前をつけているようなのだけれど、音楽プロデューサーとして活躍しているという息子さんに対する言及は何度かあるのに、奥さんの紹介がほとんどなくて、読んでいるとその辺のバランスにいくぶんもやもやした。家族のことに触れるならばきちんと紹介してほしいし、そうでないならばいっさい触れないほうがすっきりする。
そんなふうに中途半端に家族の話題があったり、三分の一以上は春樹氏と関係のない日本文学の話だったりするので、タイトルの「村上春樹」だけにつられて読むと、僕のように肩透かしを食う可能性が高い一冊。最初からアメリカの日本文学者による、日本の話題が中心のエッセイ集と割り切って読めれればよかったのだけれど。いささかタイトルに惑わされた感あり。
どうでもいいところで個人的におもしろかったのが、ルービン氏が能の研究のために一年ほど京都の国際日本文化研究センターというところに滞在したという話。
そのときにそのセンターの所長をつとめていたのが、なんと小松和彦氏だという。
小松先生といえば、京極夏彦とも交流のある妖怪研究の第一人者。
村上春樹の翻訳者であるジェイ・ルービンが、京極夏彦と親交のある小松氏と知りあいだってことは、春樹氏―ルービン氏―小松氏―京極氏という、わずかこれだけのルートで村上春樹と京極夏彦がつながってしまうなんて!
あまりにもキャラが違いすぎて、このふたりの間に接点があるなんて思ってもみなかったので、こんなわずかな――それこそないも同然な――関連性でさえ貴重に思えて、なんとなく楽しい気分になった。
(Oct. 19, 2024)