2013年のコンサート
Index
- ウィルコ @ SHIBUYA-AX (Apr 13, 2013)
- FUJI ROCK FESTIVAL '13 @ 苗場スキー場 (Jul 28, 2013)
- BUMP OF CHICKEN @ QVCマリンフィールド (Aug 09, 2013)
- SONICMANIA 2013 @ 幕張メッセ (Aug 09, 2013)
- エレファントカシマシ @ 日比谷野外大音楽堂 (Sep 15, 2013)
- BUMP OF CHICKEN @ 日本武道館 (Oct 29, 2013)
- エルヴィス・コステロ&ジ・インポスターズ @ EX THEATER ROPPONGI (Dec 13, 2013)
ウィルコ
wilco JAPAN TOUR 2013/2013年4月13日(土)/SHIBUYA-AX
ウィルコ、3年ぶりの単独来日ツアーの追加公演。2011年のフジ・ロックにも出ているので、来日公演としては2年ぶりとなる。
ウィルコにかぎらず、僕がライヴというものに足を運ぶのは、去年のエレカシ野音以来だから、じつに半年ぶり。でもあれは宮本難聴のため中止になった公演の替わりに行われたハーフショーだったから、フルセットのコンサートとなると、去年の夏のバンプ以来。来日アーティストの公演となると、さらにさかのぼって、去年の正月のセイント・ヴィンセント以来という。なにもかもが、じつにひさしぶりのライヴだった。
で、そんなひさしぶりのライヴにもかかわらず、この日の僕はろくでもなかった。前日についつい記憶がなくなるまで飲んでしまって、二日酔いで体調がたがた。立っているのがやっとというところへ、そんなだから定時ぎりぎりに会場に着いたら、場内はもうすでに満員ぎゅうぎゅう(追加公演でこの人の入りにはびっくりだ)。いちばんうしろで観ることになってしまったから、視野も狭くて、十分にライヴを楽しめたというには、ほど遠かった。まったく、なにやってんだろう。情けない。
それでもウィルコはやっぱりよかった。前回の来日公演で僕につよい印象を残した基本的にポップでありながら、ときにオルタナティヴな斬新さもあるという演奏の二面性は、変わらずそのままだった。
【SET LIST】
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メンバーは6人で、ボーカルのジェフ・トゥイーディが真ん中ではなく、ステージ向かって左寄りに位置していて、ステージ中央にはベーシストがいるあたりは、ペイヴメントを思い出させる。左隅のギタリストとキーボードの人は見た目が生真面目な銀行員のよう。そんな基本的にロック的なイメージからほど遠い地味なメンバーのなかにあって、ステージ右のギター&キーボードの人だけ、見た目が妙に若かった。この人はギターを弾くときにはピート・タウンジェンドの真似をしたりして、喝さいを浴びていた。
今回生で観て思ったのは、バンドとしてのアレンジ自体は、レコーディング作品とライヴとで、もしかしたらそんなに変わらないのかなということ(まぁ、途中で謎のドラムソロが爆発する『Via Chicago』のような例外はあるものの)。ライヴだと異常にアグレッシヴで実験的なアレンジでやっているような印象を受けていたけれど、レコーディング作品をじっくり聴いてみれば、曲の構成が大きく変わっているわけではなく、やはり同じようなことをやっている。『At Least That's What You Said』とか、新作の『Art of Almost』とか、アルバムで聴いてもインスト・パートがやたらと多いわけで。
ただ、CDで聴ける音のバランスはあくまで聴きやすいようにミックスされている。それに対して、生だと否応なくインスト・パートの存在感が前に出てダイナミックになる。僕のような胡乱なリスナーは、そのおかげで生で観てはじめてその先進性に気がつくことになる。それだけの話かなと思ったりした。
この日のオープニング・ナンバーは『One Sunday Morning』だったので──新作でもっとも長くてもっとも地味な曲(でもそのくせけっこう感動的な曲)をオープニングに持ってくる姿勢に笑った──、あまりワイルドな面が前に出ていなくて、つづく『Poor Place』もおとなしめな曲だったから、こりゃ今日のライブは地味なのかと思ったんだけれど、その曲のアウトロでは爆発的に演奏がラウドになり、そのまま『Art Of Almost』の複雑なイントロ──この曲のイントロは僕にちょっとだけコステロの『Beyond Belief』を思い出させる──に突入するにいたっては、この日のライヴも絶対いいものになるに違いないと確信した。
……とはいえ、この日の僕は前に書いたとおり、体調がいまいち。半分くらいが過ぎたあたりで、すでに体力的にきつくなってきていて、馴染みの薄い初期のナンバーが連発されたアンコールでは、もう限界、早く終わってくれって感じだった。終演後の帰り道では、足ががくがくしていた。
ということで、このライヴについては、あまり詳しく語れない。もう若くないのだから、ライヴ前夜の深酒は避けないといけないという教訓を得た一夜でした。──って、絶対に昔も同じような経験をしていると見た。あぁ、しょうもない。
(Apr 21, 2013)
FUJI ROCK FESTIVAL '13
2013年7月28日(日)/苗場スキー場
行ってまいりました、人生二度目のフジロック。そして二度目の生キュアー。今回も一日(最終日)だけの参加とあいなった。
前回との違いは、ひとりきりでの参加だったこと。そして雨に降られたこと。
フジロックといえば雨がつきものって話だけれど、前回僕がはじめて参加したときには、幸運にもまる一日快晴で、一滴の雨も降らなかった。
だから今回ももしや……と淡い期待を抱いていたんだったが、やはり山の天気はそう甘くはなかった。今回はしっかりと降られました。それも到着間もなく降り出して、その後は一日じゅう降ったり晴れたりの繰り返し。まぁ、一日じゅう絶え間なく降っていたわけではないし、観たいステージの間はほぼ止んでいたのが、せめてもの救いだった。
とにかく、この三日間ずっとそんな天候がつづいているおかげで、地面はどこもぬかるんでどろどろ。普通に腰をおろして休めるところはほとんどない。前回は家族旅行を兼ねての二泊三日だったから、いざとなればホテルに戻って休むこともできたけれど(まぁ、越後湯沢まで戻るのもまた大変なんだけれど)、今回はひとりきりでの24時間の弾丸バスツアー。帰りのバスに乗るまで15時間以上、ずっと野外にいなきゃなんない。
一応、携帯用の座布団を用意していったので、ときどきは腰をおろして休んでみたけれど、それでも身体をのばしてゆったり……という気分にはとてもなれない。結局、肝心のキュアーのステージが始まるころには、すっかり疲れ切っていて、ガス欠気味だった。やはり人間、欲ばっちゃいけない。
さて、この日、最初に観たアーティストは、グリーン・ステージの THE GOLDEN WET FINGERS。チバ、イマイの初代 The Birthday コンビに、Blankey Jet City の中村達也が加わったスリー・ピース・バンド。
ギター2本にドラムという編成だけれど、ベースがいないところは、イマイ氏がベース・ライン風のフレーズを弾いて補っていた。これが、なんでそんな太い音が出るんだ? って思ってしまうような演奏で、とても迫力があってよかった(イマイ氏、あなどってました。すいません)。ふつうのスリー・ピース・バンドと違って、ツイン・ギターがノイジーに絡みあうところも最高。
中村達也という人も、とても楽しそうに、とても小気味のいいドラミングを聴かせる人で、僕はとても好きだった。いまさらながら、ブランキーの人気は、この人に負うところも大きかったのかなと思った。
三人は007の『ゴールド・フィンガー』をBGMに登場(これには笑った)。1曲目がいきなり、歌詞が「ベイビー」くらいしかない、僕の知らない曲。馴染みのないバンドで、馴染みのない曲で入るあたりが振るっている。
その後、『BC1000』『世界中』『砂の時間』『トリオ・デ・ハラペーニョ』『しまっとけ』『CHICKS』なんかをやって(順不同)、チバくんのソロから『Teddy Boy』を聴かせ、最後は『Oh Yeah! それが答えだ』で締める、というのがこの日のメニュー。
チバくんのだみ声は野外でも非常に通りがいいし、直球のギターサウンドは気持ちいいのひとこと。こんなもの野外で聴いて、盛り上がらないはずがないだろうってステージだった。文句なしに、僕にとってのこの日のベスト・アクトのひとつ。
そういや、チバくんたちの登場にさきだって、清志郎の『田舎へ行こう!』が大音量でフルコーラス流されるという一幕があった。フジのグリーン・ステージは清志郎の歌とともに始まる、というのが、この頃のフジ・ロックではお約束になっているらしい。でも、チバくんのステージの前に清志郎がかかるのって、僕的にはいまいち違和感があった。
このステージを観たあとはしばらく休憩。朝からなにも食べていなかったので、レッド・マーキーの向かいの木陰で、ビール片手に肉など食っていた。
その先、夕方までは、絶対にこれというバンドがなかったので、グリーン、ホワイト、レッド・マーキーの3つのステージを行ったり来たりしながら、DIIV、Yo La Tengo、Portugal. The Man、Daughter、Wilko Johnson、Haim、Savages と、7つのバンドを断片的に観て歩いた。
この中でもっとも好きだったのは、やはりドーター。その演奏はCDで聴ける音より力強くて、かつ初々しく、とても好印象だった。もともと好きなタイプのバンドだとは思っていたけれど、予想以上によかった。次のウィルコ・ジョンソンが気になったのと、レッド・マーキーがとても蒸し暑かったので、3曲だけで見限ってしまったけれど、そうでなかったら、フルに観たかったところ。彼女たちのステージをフルに観られなかったのが、この日いちばんの心残りだ。
移動して途中から見たウィルコ・ジョンソンは、とても末期ガンを患っているとは思えない元気さだった。ガンってじつはもう不治の病じゃないんじゃないだろうかって思ってしまうくらい。とても余命幾ばくもないとは思えない、生命力あふれるステージだった。その存在全体が「ロックンロール・イズ・ノット・デッド」と叫んでいた。
それでも最後の1曲が、『バイバイ・ジョニー』ってのが泣かせる。ウィルコ・ジョンソンは苗場の大観衆のまえで何度も「バイバイ」のフレーズを繰り返し歌ったあと、にこやかにステージから去っていった。
そういや、ウィルコ・ジョンソンのライブが終わって、移動しようと思ったら、僕の斜めうしろに、イマイアキノブ氏がいてびっくりした(目の前を横切ってしまった)。イマイさん、思ったより小柄で、シャイそうだった。そのほか、べつの場所では、ピーター・バラカン氏やヨ・ラ・テンゴの面々ともすれ違ったし、フジロック、出演者や有名人がふつうに行き来しているのがすごい。
もうひとつ、昼に観たステージで、とてもおもしろかったのが、ハイム。ギター、ベース、キーボード+αの三姉妹に男性ドラマーという構成の4ピース・バンド。
彼女たちはNMEでピースとフォト・セッションをしていたりしたので、現在もっとも注目されているルーキーとして認識してはいたのだけれど、直前に断片的に視聴した音源はシンセ色が強く、僕の趣味とはいえなかった。
でも、実際に生で観た彼女たちのステージはとても強烈だった。そろってロングヘアーのスレンダーな美女三姉妹──実際はともかく遠目には確実に美女──が、露出度の高いファッションでフロントにずらっと並んでいるそのビジュアルだけでもかなりのインパクトなのに、やっている音楽がまた、なんだそりゃってくらいに個性的。
音のベースは80年代のロックだと思う。僕らが高校生のころに聴いていたような、懐かしくも垢抜けない大味なロック。ただ、そこに三姉妹による色鮮やかなコーラス・ワークが乗っていたり、それぞれが担当楽器とは別に、ドコドコ太鼓を叩いたりするリズム認識の鋭さがとても現代風。
あと、彼女たちはやたらと元気だ。センターのギターの子(次女?)はバリバリにソロを弾きまくるし、三姉妹そろって過剰なまでに熱い。シニシズムのかけらも感じさせない、そのポジティヴなパワーがすごかった。あの臆面のないパワフルさもまた、80年代っぽい。
例えてみれば、マドンナとシンディ・ローパーが組んで、ダーティー・プロジェクターズっぽいガールズ・バンドを始めました、みたいなイメージ。その珍妙さがあまりにおもしろかったので、ちょっと観て移動するつもりが、結局最後まで観てしまった。──ってまぁ、たまたまその時間帯はおもてが大雨だったせいもあるんだけれど(この日いちばんの大雨のときにレッド・マーキーにいたんだから、とりあえずついている)。
いやぁ、なんにしろ、おもしろかったです、ハイム。ちょっと味つけがはっきりしすぎているから、簡単に飽きてしまいそうな気もするけれど、それでもこの先、デビュー・アルバムが出たら、絶対に聴かずにはいられない。
さて、この日の後半戦は、夕方のマムフォード&サンズから。
生で観て驚いたことに、マムフォード&サンズにはドラマーがいなかった。たまにボーカルのマーカス・マムフォードや他のメンバーがドラムをたたく曲もあったけれど、そのとき以外、ステージ中央に配置されたドラムセットは、ずっと無人。曲によってはゲストにホーン3本や、弦楽3人らが加わるものの、それ以外は基本4人での演奏。それでいてあの乗りのよさを演出し得ている力量には舌を巻いた。
もとより演奏に勢いのあるバンドだし、そのオーガニックなサウンドは、緑の映えるグリーン・ステージにはぴったり。どれだけ日本にファンがいるかは知らないけれど、この日のフジロックでは、十分そのステータスに見合うだけの盛りあがりを見せていたと思う。
――といいつつ、僕はこれ以上疲れちゃいけないと、うしろのほうでずっと座ったままで観ていた──というか大型スクリーンを観ながら聴いていた──のだけれど、ラストの1曲前で、ゲストになんとハイムの三姉妹が登場~。こりゃいかんと、前へと移動して、最後の2曲は立ったままちゃんと観た。まわりは踊りまくっていて、とてもいい空気だった。
このあとホワイト・ステージに出演する相対性理論にも興味はあったのだけれど、そこから先はまったく休む時間がとれないので、無理はやめて、そのまま真っ暗になったグリーン・ステージでヴァンパイア・ウィークエンドを観た。
ヴァンパイア・ウィークエンドについては、やはり僕はあまり語る言葉がない。嫌いなわけではないんだけれど、なぜだかすんなりと入れ込めない。それでもサマソニで観たときに比べると、確実に成長を感じさせる、安定感のあるステージだったと思う。独特のポップ・センスあふれる楽曲は、苗場でも大いに人気を博していた。
そういや、ボーカルのエズラ・クーニグのワンマン・バンドかと思っていたら、キーボードの子(ポール・サイモン似の冴えない感じ)が、部分的にMCをつとめていたのが意外だった。自らの身にあまる過剰な人気に負けないようにがんばってる感じがなかなか好印象でした。
ヴァンパイア・ウィークエンドも残り2、3曲ってあたりで、ホワイト・ステージのキャット・パワーへ移動。とりあえず、30分だけ彼女のステージを観た。
1曲目は『The Greatest』だったと思うけれど、アレンジが変わって、さらにスローになっていたので、やや自信なし。2曲目の『Cherokee』からは、新譜からの曲がつづいた。『Manhattan』『Silent Machine』など、ダンサブルな新作からの曲は、いい感じで盛りあがった。
彼女は短くかった金髪に、革ジャンというスタイル。バック・バンドは4人。ギターが女性(ドラムも?)で、ベーシストがパーカッション兼任という、ちょっと珍しい構成。
青みがかった照明の下、キャット・パワーことショーン・マーシャルは淡々と歌を歌う。PAの調子が悪いのか、ときおりバックステージに向かって、マイクのボリュームを上げろというようなしぐさを送る。
観客が少なかったので、かなり前のほうで観ていたのだけれど、スポットライトがないせいで、彼女の表情はよくわからない。かえってステージ上方に配された大型スクリーンに映し出されるアップの映像のほうが、彼女の表情をよくとらえているようだった。でも、僕のいる位置は前すぎて、スクリーンはよく見えない。しまった、もっとうしろで観た方がよかったか……とか思ったりした。でも空いてたんだから仕方ない。
キャット・パワーのステージを半分で諦め、ふたたびグリーン・ステージへ移動して、いよいよキュアー待ち。前回はモッシュ・ピットの外で観て、ちょっと後悔したので、今回はなるべく前のほうで観ようと思って、キャット・パワーに後ろ髪を引かれながらも、早めに戻ってきた。開演時間の十五分前には戻っていたはずだけれど、すでにモッシュ・ピットはぎっしりだった。
あとでツイッターを見たら、キュアーのステージはかなり観客が少なかったって噂だったけれど、少なくても僕のまわりは最後まで人であふれていた。こんなにキュアー好きな人がたくさんいるって、なんだか不思議な感じがした。
ザ・キュアーのステージは定刻を5分ばかり遅れて、もうもうと立ち込めるスモークのなかで始まった。
ロバート・スミスは前回と同じような黒ずくめの服装。ただ髪は白髪を部分的に紫に染めているっぽく見えた(ライトの加減でそう見えただけかもしれない)。
ステージ向かって左にはオールバックのサイモン・ギャラップと、終始ニコニコと機嫌がよさそうなキーボードのロジャー・オドネル。ドラムのジェイソン・クーパーは、過剰なスモークのせいか、残念ながら今回も僕の視野に入らず(なぜだ?)。
異彩を放っていたのは、最近ポール・トンプソンに替わって加入したというリーヴズ・ガブレルズというギターの人で、若々しいルックスの他のメンバーに比べて、この人だけは見た目がみごとにオヤジだった。ステージの左隅にじっとして、あまり動かないし、ギターの音も控えめでまったく目立たない。もしや誰かのお父さんが頼み込んでバンドに加えてもらったんじゃないかって思ってしまった。ただ、この人があまりにも目立たない分、ロバート・スミスのギタリストとしての存在感がより際立っていたので、まぁ、これはこれでありかとも思った。
1曲目は予想していたとおり──そして期待していたとおり、『Plainsong』!
これっすよ、これ。僕の音楽人生を変えることになった1曲。これを大音量で聴きたいがために、今回ふたたびフジロックに来たと言っても過言ではない。
つづけて序盤はポップな代表曲がずらり。あまりにメジャーすぎて、ちょっとおもしろくないかもと思ってしまうようなセットリストだったけれど、『Push』あたりで違うスイッチが入った感じで、そっから先はもう、怒涛の展開。中盤で早くもアンコールの定番、『A Forest』が演奏されたときには、おいおい、今夜はいったいどうなっちゃうんだ? と思ってしまった。
そしたらまぁ、その後もすごいこと、すごいこと。定番曲の合間に『Bananafishbones』や『Mint Car』、『Doing the Unstuck』などのレア・ナンバーを挟み込んだセットリストは、ファンにはもー、こたえられないもいいところ。
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しかも終わんねー。ぜんぜん終わんねー。
この日は最初から午前0時までやるという話だったから──ちなみにふつうのグリーン・ステージのヘッドライナーは11時には終わる──、そりゃそう簡単には終わらないだろうとは思っていたけれど、それでも11時半くらいには本編をいったん締めて、そのあとアンコールを長めにやるんだろうと思っていたんだった。
でもその本編が終わらない。このままアンコールなしで0時を過ぎちゃうんじゃないかって勢い。
もとより、僕はキュアーが始まる前から疲れ切っていたので、正直このボリュームはきつかった。不覚にも、早く終わって欲しいと思ってしまった。でもその一方で、もっとキュアーを聴いていたいと思う僕もいた。
終わって欲しいようで、終わって欲しくない。こんなアンビバレントな気分を味わったライブはめったにない。ある意味、それだけでも、とても貴重だった。
結局、本編が『Disintegration』で終わったのは、0時15分前かそこら。当然、そうあいだを置かずにアンコールが始まる。で、その一曲目が『Dressing Up』って……。
おいおい。どんだけ地味な選曲だ。ロバート・スミスがギターを持って出てきたので、前回のようなポップ系シングル連発ではないとは思ったけれど、この一曲で、アンコールもただならぬ内容になるのは確定だと思った。そしたらやっぱり……。
そのあとの『Lovecat』(うわ~!)から、中期ポップ・シングル・チューンを全曲披露しようかって勢い。もう本当に終わんね~、終わんね~。いい加減、疲れがピークに達している時間帯に、なにごとかというサービス・メニューですもん。もう大笑い。もういいや、足の痛さなんか、この際、忘れよう。このまま一晩中でもやっててくれって思った。
結局、アンコールのラスト・ナンバーの『Killing An Arab』──これまた最高だった──が終わったのは、0時半近くになってからだった。ロバート・スミスは最後にステージにひとり残り、隅から隅まで挨拶して歩いたあと、はにかみながら英語で「また会おう」と言い残して帰っていった。
今回のフジロックで僕は、なぜにキュアーがサマソニに出ないのか、よくわかった。サマソニでは絶対に3時間もやらしてくれないからだ。かといって日本で単独公演をやるとなったら、キュアーの世界的なステータスに見合うだけのオーディエンスが集まるとも思えない。結果としてキュアーを日本に呼んで、本人たちに満足がゆくまでプレーしてもらえる場所は、このフジロック以外にはあり得ないんだろう。
ということで、みたび日本でキュアーを観ることができるとしても、それはまたもやフジロックということになる可能性が大と見た。
まぁ、今回のキュアーは集客がいまいちだったという噂だから、次の機会はもうないかもしれない。それでも、もしもこの先またキュアーのフジロック出演が決まったならば、その時にはなんのためらいもなくチケットが取れるようになっていたいと、心から思った。
……いや、次もきっと悩むんだろう。今年でこれだけきつかったんだから、次はもっときつくなっているんだろうし。正直、もうロックフェスはいいやって思いもある。でもどれだけ体力的・経済的にきつかろうと、日本でキュアーを観られる機会があるならば、それを逃しちゃいけないだろうと、今回つよく思った。
やはりキュアーの音楽はなにものにも代えがたい。──そんな思いを新たにした苗場の一夜でした。
(Aug 04, 2013)
BUMP OF CHICKEN
ベストアルバム発売記念ライブ/2013年8月9日(金)/QVCマリンフィールド
ベスト・アルバムの発売記念と銘打って行われた、バンプ初のスタジアム公演。
近年、サマーソニックの直前に千葉マリン・スタジアム(ではなく現在はQVCマリンフィールド)で大物のライブが行われるパターンが多いのを不思議に思っていたのだけれど、この日のバンプのライブを観て、その手のブッキングの謎が解けた。サマソニのために用意したステージを転用して使うことで、スタジアム公演のセット設営にかかる費用をまるまる抑えられるからだ(気がつくのが遅い)。
ということで、この日のバンプのライブは、初のスタジアム公演といいながら、スタジアムの中も外もサマソニ仕様だった。チケットが2,500円と破格値だったのも、そういう理由も大きいんだと思う。本来ならばかかるはずの費用がかからない分、お客さんの負担を減らしましょうという良心的配慮。まぁ、そのかわり、ライブ自体の長さも当初から予告されていた通り、一時間半たらずと短めだった。
──とはいえ、じゃぁ金がかかっていなかったかといえば、とんでもない。この日は入場者全員に「XYLOBAND(ザイロバンド)」と呼ばれるLED発光のリストバンドが無料配布された(僕ら夫婦はそろって黄色)。
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コンピュータによる遠隔操作で自在に発光するというこのバンド。ググってみたら、その名前の由来となったコールドプレイの『Mylo XyloTo』ツアーで初めて導入されて話題になったものらしいけれど、日が暮れて暗くなったスタジアムで、数知れぬライトが七色の蛍のように明滅するさまは、そりゃもうきれい。こんなもの2500円のライブで配布していたら、赤字は確実なんじゃないでしょうか? ――といらぬ心配をしたくなるほど、この夜のライヴは色鮮やかだった。
もとよりベスト盤の発売記念ライヴということで、初めてライヴで披露される新曲の『firefly』と『虹を待つ人』も含めて、選曲は代表曲ばかり。そこに金銀のテープがドカンと打ち上げられたり、巨大なビーチ・ボール(?)がスタンディング・ブロックのオーディエンスの頭上に転がってきたりする演出があり、なおさらザイロバンドによるカラフルなイルミネーションが加わるんだから、これが盛り上がらないはずがない。バンプの面々もいつものラフなTシャツ姿ではなく、ベスト盤のフォト・セッションで着ていた軍服風(これもコールドプレイ風?)のジャケット着用でおめかしして出てきてくれたし、時間こそ短かったけれど、極上のライブ体験だった。
先に名前をあげた新曲2曲──うちの奥さんが「姉妹編」みたいと言っていた──は、どちらも「オーオー」というコーラスをフィーチャーしたアッパーな曲なので、ライヴだと、とても映える。またバンプのレパートリーに新たなアンセムが加わったといっても過言ではなさそう。
そのほかでは、『Stage Of The Ground』や『ロンリーオンリーグローリー』など、聴けそうでなかなか聴けないナンバーや、前回のツアーで聴きたいと思いながら聴けなかった『ダイヤモンド』などが聴けたのが嬉しかった。
でもなにより、最近バンプを生で観るたびにすげーと思うのは、『メーデー』と『カルマ』。今回もそれは例外じゃなかった。この2曲はもう現在の日本のロック史上最強のナンバーじゃないだろうか。楽曲的にも演奏的にも、あまりに完成度が高くて、いつ観ても圧倒される。
ただ、逆にその2曲が強すぎるために、そのあとに披露された締めの初期ナンバーは、アレンジがシンプルすぎて、若干ものたりなく感じされてしまったのが珠にきず。それが『K』『天体観測』『ガラスのブルース』という感涙もののセットリストであるにもかかわらず、だ。少なくても僕にとってはそうだった(なんて贅沢な話だ)。そんな風に感じてしまうのも、バンプというバンドがたゆまず成長をつづけているからだろう。
いまのレディオヘッドが『Creep』をやらなくても誰も不満に思わないように、バンプもそろそろ『天体観測』や『ガラスのブルース』は温存してもいいんじゃないだろうか──。そんなふうに思った、色鮮やかな幕張の夜だった。
そうそう、この日はライブが終わったあとになんと、サマソニのスタジアム名物である花火もあがった。ずっとうちの奥さんに見せたいと思っていたサマソニの花火を、まさかバンプで見ることができるとは思いませんでした。どう考えてもこの日のチケットは安すぎた。
以下、ソニックマニア編へとつづく──。
(Aug 27, 2013)
SONICMANIA 2013
2013年8月9日(金)/幕張メッセ
さて、バンプ・オブ・チキンのQVCマリンフィールドのあと、ぶっつづけでの参加となったサマソニの前夜祭、ソニックマニアなのですが……。
いやぁ、これは疲れた。始まる前からすでに疲れ切っていた。
というのも、バンプのライブは1時間半ほどと短かったものの、なにせスタジアムなので人が多い。会場を出るまでにもけっこう時間がかかり、さらには物販コーナーをチェックしてゆこうと欲を張って、メッセとは反対のほうへ向かってしまったら、またその物販コーナーがすごい人混みで。すでにTシャツは完売という話なのに、待ち行列は長蛇の列。次が控えているのに、そんなもんに並んでいられないので、グッズは諦めたものの、その周辺の人混みがまたすごくて、道路はぎゅうぎゅう。ちっとも前へ進まない。結局、ライブが終わったあと、メッセに入場するまでに1時間は楽勝でかかったと思う。
これだけでもう、僕は始まる前からくたくただった。さらには会場に入って、まずは渇いた喉を潤そうとビールを飲んでしまったら、なおさらぐだぐだに……。情けないことに、いっそこのままストーン・ローゼズを見ないで帰っても後悔しないのではないかと思うくらいに疲れ切っていた。感覚的には、フジロックのときよりもきつかった。
そんなだから、興味のないアーティストなんて、とても観る気になれない。ということで、序盤の初音ミク、Perfume はちょいと立ち寄ってみた程度。ペット・ショップ・ボーイズとクラクソンズも2、3曲観ただけ(ほんとクラクソンズとも縁がない)。残った体力で、電気グルーヴとストーン・ローゼズだけを堪能した。
はじめて観る電気グルーヴはなかなか強烈だった。
まずはステージに『Missing Beatz』での卓球・瀧の顔の像をモチーフにした、高さ4メートルに及ぼうかという白いハリボテの顔の像があるのに大笑い。ここに映像が映し出されると、あたかも本物の巨大な人面のように見えるという趣向(すげー)。ただ顔が出るだけでなく、一種の変形スクリーンのような役目を果たして、さまざまな映像が立体的に映し出される。演出的には思いのほかスマートで凝っていた。
電気グルーヴのふたりは、点滴をつけて車いすに座った卓球を瀧が押してくるというふざけた演出で登場。終始そんな風におちゃらけながらも、音楽的には非常にアグレッシヴなビートで、ガンガンと
音楽的には徹頭徹尾、攻撃的なダンス・ビートをかまされるわけだから、ファンでなくても退屈しようがない。こりゃ好きならば盛りあがること間違いなし。体力さえあれば、ものすごく楽しい最高のライヴ体験だろうなと思った。
──そう、体力があれば。
すでに始まる前からガス欠エンプティ状態の僕には、正直とてもハードでした。電グルはソウル・フラワー同様、ハンパな覚悟じゃライヴに行っちゃいけないなと思った。
さて、その1時間ちょいあとがこの日のトリ、ストーン・ローゼズ。
これくらい疲れていると、さすがに18年ぶり──というか、レニのいるオリジナル・ラインナップでは24年ぶり──に観るストーン・ローゼズとはいえ、どれだけ楽しめるのか、疑問だったのだけれど、そんな心配はまるでいらなかった。それまでの疲れが一瞬でぶっ飛ぶくらいに、ストーン・ローゼズはスペシャルだった。
とにかく、1曲目の『I Wanna Adored』がはじまった途端に、あーこれだと僕は思ったんだった。なぜ自分がこれほどまでにストーン・ローゼズというバンドを特別視していたのか、その理由が一瞬で体感できた。
これだよ、これ。このグルーヴ。これがあったからこそ、僕にとってストーン・ローゼズは、マッドチェスターの音楽は特別だったんだ。そこには今でも変わらず、僕が理想とするロックンロール・ミュージックのひとつの完成形があった。
この日に観た前のふたつのバンド、バンプ・オブ・チキンと電気グルーヴのステージは、どちらもとても素晴らしかった。決してストーン・ローゼズより劣っていたとは思わない。というか、もしかしてローゼズが最低って評価する人がいたっておかしくないとさえ思う。
それでも、これら三つのバンドの中で、僕にとって、もっともしっくりきたのは、やはりこのストーン・ローゼズだった。その音とグルーヴは、一音目から僕の身体を問答無用にゆさぶった。全身の細胞が共振するかのようなこの横のビート。この4人でしか奏でられない魔法のグルーヴ。これこそ、二十代に僕の人生を変えるきっかけとなったものだった。その頃の思いが一瞬にして
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4人のメンバーはファーストのジャケットのレモンと抽象画をあしらったレインウェアみたいなのを着て登場(フジロックのような野外フェス対策であつらえた?)。いきなり四人で肩を組んで、愛想よく挨拶をすますと、マニ・レニはさっさとその服を脱いで、普段着になっていた。ジョン・スクワイアは上だけ脱いで、下はそのまま(ちょっと変)。イアン・ブラウンはその格好のまま(フードまで被って)1曲目が始まる。
イアンは動きと歌は昔のままながら、短く刈った頭はずいぶんと白髪がまじっているようだった。ジョンは髪を長く伸ばしていて、太る前のジミー・ペイジのよう(言い換えればギター・レジェンドとしての風格あり)。レニはブラジル代表のユニフォームを着たアラブ人のよう(で、なぜかベードラ2本)。マニだけがほとんど変わっていないように見えた。まぁ、しわはやたらと増えているようだったけれど。
しっかしまぁ、あらためて生で聴くと、やはりファーストの曲がどれもこれも素晴らしい。どの曲も音がキラキラしている。セカンドの曲が悪いわけじゃないのだけれど──というか、いまの僕の趣味からすると、セカンドの曲のほうがフォーマット的には共感しやすい気がするのだけれど──、なぜだか音の響きが違って感じられる。エバーグリーンとはまさにこのことかと思ってしまうような鮮やかさがある。あの野暮ったいメンバーたちから、こんなにフレッシュな音楽が生まれ出るその不思議。そこには確実にこのメンツでしか奏でられない音楽の魔法があった。
そういや、かつてのローゼズは演出らしい演出もないバンドだったと思うのだけれど、今回はさすがに数々のフェスでヘッドライナーを飾ってきたあとだけに、映像的な演出も凝っていた。それもジョン・スクワイア監修とクレジットが入っていそうな芸術性の高いやつで、目で見ても十分に楽しめるライヴになっていたと思う。その辺には24年の歳月を感じさせた。
賞味1時間半たらずという演奏時間は、普段だったらもの足りなかったのかもしれないけれど、疲れ切っていたこの日はそれで十分。いやぁ、堪能しました、ストーン・ローゼズ。でも、また観たいと思った。ぜひまた観たいと、強く思った。できれば疲れていない状態で、あのグルーヴを一身に受け止めたい。
願わくば新作を引っ提げての再度の来日、それもソロ公演を期待してやみません。
というわけで、この日のソニックマニアはこれにて幕。そのあとサカナクションも出たのだけれど、翌日──というか、すでにその日──は娘のブラスバンド部の発表会で、彼女が朝早く弁当持参で
タクシー代は、高速代を含めて1万7千円弱。仕事でもなく、自腹でこんなにタクシー代、払ったのって生まれて初めてだ。でもまぁ、ふたりでホテルに泊まれば同じくらいかかるのだろうし、愛する娘のためだから致し方なし。なにより、フェスで疲れたあとのタクシーでの帰宅は、すんげー楽だった。いけねぇ、癖になりそうだ。
(Aug 27, 2013)
エレファントカシマシ
エレカシ復活の野音/2013年9月15日(日)/日比谷野外大音楽堂
「エレカシ復活の野音」と公式に銘打って行われた、通算24年目のエレカシ日比谷野音公演。宮本難聴による無期限ライブ活動休止の衝撃を乗り越え、今年も無事に観ることができました。めでたし、めでたし。
とにかく、エレカシが1年間まったくライブをやらなかったというのが、僕らがファンになって以来、初めてのことだ。
まぁ、去年の野音が10月だったから、正確には1年たっていないんだけれど、それにしたって、あれは宮本のアコギ弾き語りのハーフ・ショーだったし、エレカシとしてのフルライブとなると、僕個人はその前のお台場をバカな理由でスルーしてしまったため(いまから考えると、浮世の風におもねって、チケットを人に譲ってしまった自分を本当にバカだと思う。フジイケンジがギタリストとして参加した唯一のツアーだったこともあり、なおさらそう思う)、去年の正月公演以来だから、じつに1年半ぶり。そんなに長いこと生でエレカシを観ていないなんて、彼らのファンになって以来、24年で初めてのことだった。
……って、いやしかし、ちょっと待て。冷静に考えると、1年半のインターバルって、ちっとも珍しいことではないんだよな。ストーンズとか、平気で5年に1度くらいしか、ツアーやっていないし。サザンだってつい最近、5年も休んでいたし。それほどの大物でないにしろ、1年以上活動しないアーティストなんてごまんといる。そんな中で「1年も観てないんだよ~」って騒げてしまう俺らって、もしかして幸せなのかもしれないと思う。
……というか、この数年は、野音のチケットがプラチナ化していることもあって、野音でエレカシを観るたびに、俺ってものすごい幸せなんじゃないかって思っている気がする。このライブを毎年欠かさず観つづけることができているわけだから。僕のこと羨むあまり、憎しみを抱いて襲いかかってくる人とかいてもおかしくないんじゃないでしょうか。いやはや、すいません。
とはいえ、今年に関しては、とてもそんな幸せに浸っていられるようなシチュエーションじゃなかった。なんたって宮本の回復の具合もよくわからないし。おまけに台風はきてるし。
僕らのチケットは野音2デイズの2日目で、当日の朝はまれにみる大雨だったので、すでに前日の1日目が無事に済んでいたこともあって、もしや台風来襲で2日目だけ中止になったらどうしようと、いざライブが始まるまでは気が気じゃなかった。
2日目のチケットを取ったのは、その方がまだ競争率が低そうだからという計算からだったのだけれど、そのせいで観そこなったとしたら、そりゃそれで悔やみきれない。一度は上がった雨が、そろそろ野音へ向かわなきゃって時刻にまたどしゃ降りになったりしていたのにも、なおさら不安をあおられた。
――でも、結論から言ってしまえば、この日のライブは一滴の雨にも降られずに終わることになる。衛星写真を見たところ、関東に向かっていた台風が、その前方にあった高気圧の雨雲を蹴散らして、その時間帯だけ雨を止ませてくれちゃった、みたいな印象だった。いざ野音に着いてみれば、雨が降るどころか、ところどころに青空が見えてしまうような空模様。ほんと、お天道さんもエレカシの復活を祝福しているようだった。おかげでとても蒸し暑かったけど。
まぁ、この日に関していえば、ほぼ同時刻に、日産スタジアムではアジカンが、宮城ではRADWIMPSが野外ライブをやっていた。要するに野音の3千人だけではなく、合計5万人オーバーのロック・ファンにとって、その日の台風はとても切実な問題だったわけだ。そのくらいの大人数が揃いも揃って念を送ると、雨雲が吹っ飛んだりすることもあるのかなって。そんな奇跡をちょっぴり信じたくなるような、この日の天候だった。
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さて、すっかり前置きが長くなってしまったけれど、それではこの日のエレカシ野音がどうだったかというと――。
ずばり、最強。エレカシは――というか、宮本浩次は――やっぱりすごかった。いや、すごいというか、あぶないというか。
宮本については、難聴になったと聞いたときから、「この人、自分の声の大きさで耳悪くなっちゃったんじゃないだろうか?」と思うようなところがあったけれど、その日、いちばんに思ったのはそれ。
でけぇんだ、声。はんぱじゃない。耳の病気で少しはセーブがかかるかと思ったら、ちっともそんなことなし。
……というか、耳の障害に配慮して、今回からイヤー・モニターをつけるようになったとのことだけれど(長髪のためモノは確認できず)、そのせいで耳への音圧が軽減されているためか、以前に増して声がでかくなったような気さえした。おいおい、大丈夫かって。そんな声出してたら、また耳悪くなっちゃうんじゃないの? って。そんな余計な心配がしたくなるくらい。この日はあちらこちらでそう思っては苦笑していた。
いや、世の中、声量のあるボーカリストはたくさんいるんだろうけれど、だからといって自分の声のせいで耳が悪くなった人の話なんて聞いたことがない。
なのに宮本の場合、そんなこともあるんじゃないかという気がしてしまうところがすごい。まるでナチュラルにディストーションがかかっているかのような。その声だけでロックという音楽が成立してしまうような、圧倒的な存在感が彼の声にはある。極めてオーソドックスなアプローチのエレカシの音楽が唯一無二であり得ているのは、あの声あればこそだ。とくに生で聴くそれは、ときとして人間業を超えているんではとさえ思う。
とはいえ、宮本も人間。そんな尋常ならざる声が2時間半もつづくわけがない。エピックのころは1時間ちょいのステージ、ずっとそれだけって印象のころもあったけれど、最近はさすがにそんなこともない。基本余力を残したままで長丁場を乗り切り、たまに最後の『待つ男』で、きた~と思わせるくらいだった。
でもこの日は違った。1年ぶりのステージの高揚感が宮本本人を駆り立てたんだろう。アンコールを待たずして、ピークをぶち切るような瞬間が、何度もあった。それも後半にいくに従って、力強くなってゆくから恐れ入る。いやぁ、本編ラストひとつ前の『ズレてる方がいい』のすごいこと。そしてもちろん、クライマックスはオーラスの『待つ男』。普通、あんな風にどなりつづけていれば、時間とともに声はかすれて出なくなるもんだろうよ。ラストがいちばんすごいってのは、いったいなんなんだ。やはり宮本は人間離れしている。
なにはともあれ、オープニングの『平成理想主義』――『平成教育主義』と言い間違えて妻の失笑を買ったのは私です――から、スピード2割増しのパンキッシュな『地元のダンナ』という流れで始まり、2度目のアンコールの『待つ男』で大団円を迎えるまで、2時間半強。新曲4曲を含めたセットリストは、比較的メジャー感の強い代表曲で手堅くまとめられていた。個人的にはエピック期の文芸色の強い曲が、あとひとつふたつ欲しかったところだけれど、再始動の意気込みの伝わってくるポジティヴな内容だったから、この日にはそれでふさわしかった気もする。
なによりラストが『待つ男』だったことで、僕は初日――『やさしい川』で始まり、『花男』で終わったとのこと――ではなく、この二日目を観ることにしてよかったと、ココロから思えた。この曲こそ、僕にとってのエレカシを象徴する一曲だから。あの曲での宮本の鬼気迫るパフォーマンスは、いつ見ても僕にとっての日本のロックの頂点だ。
この日のバンドは蔦谷・ヒラマくんの加わったおなじみの6人編成。ただ、新曲――どれもメロディ的には地味ながら、静と動のコントラストが印象的な曲ばかりだった――はまだアレンジが固まりきっていないせいか、次のシングル『あなたへ』以外の曲(とそのあとの何曲か)では、蔦谷くんたち抜きでの演奏となっていた(はず。すでに記憶があやしい)。なかでは「はてさて」どうたらという歌い出しのやつ、パイプ椅子背もたれ坐りアコギ弾きで始まり、最後のほうだけ宮本がギターをエレキに持ち替えてラウドに盛りあがる曲──つまり『珍奇男』スタイルの曲(でも曲調はもっと可愛め)──がいちばんおもしろかった。
そうそう、復活宮本の横で、前髪をおかっぱに切りそろえ、肩まで伸びた長髪を金色に染めた石くんがなにげに注目を浴びていました。宮本、すごすぎ。石くん、おかしすぎ。
この日の僕らの席はステージ向かっていちばん右隅のほう、Bブロックの前から3列目で、ステージを真横から見る位置だった。Aブロックは隅の方では3列くらいしかなかったから、つまり前から通路をはさんで6~7列目くらいの距離。真横だから最高とはいえないけど、それでもこんなに近くでエレカシの復活を目撃できたんだから、やはり僕らはついているんだろう。
ひさしぶりにそんな前のほう、それもスピーカーの真ん前で見てたもんで、この日は帰宅後もずっと耳が遠かった。そういや、エレカシのライブでは昔はいつもこんなんだったよなぁ……と懐かしく思い返しながら、耳が遠いよぉと夫婦で笑いあったという。そんな記念すべき野音の夜でした。おしまい。
(Sep 24, 2013)
BUMP OF CHICKEN
BUMP OF CHICKEN 2013 TOUR「WILLPOLIS」/2013年10月29日(火)/日本武道館
ステージ向かって左の一階席、最前列──そんなとてつもなくいい席で観させていただきました、BUMP OF CHICKENのツアー最終日@日本武道館。
いやぁ、ほんとこの日は席がよかった。一階席だからアリーナよりも距離的には遠いものの、最前列なので、客席とステージをさえぎるものがなにひとつない。目の前にばーんと広がった空間を、BUMPの音が、藤原くんの声が、ダイレクトに伝わってくる。特等席とはまさにこのことかと思いました。いやはや、すいません、熱烈なファンのみなさん。
──って、最近はなんだかライブのたびに、誰へともなく謝ってばかりいる。年をとって集中力が落ちている分、あきらかに若いころに比べて感じ方が鈍くなってきているので、人よりいい席で素晴らしいライブを見せてもらうと、なんだか申し訳ない気分になってしまう。僕がこれまで音楽に費やしてきた時間と金を思えば、決して卑下する必要もないとも思うのだけれど……。まぁ、そのあたりは謙虚で平凡な日本人ならではかと。
今回のツアーはベスト盤発売記念と銘打ったマリンフィールドの流れをくむもので、基本あの日のセットリストを1.5倍に拡張したような内容だった。
ただ、当然ツアーならではの演出もある。まずは、大音量でボレロが流れる導入部のあとに、前回のツアーからの続編というべきCGアニメがフィーチャーされていた。スチームパンクな飛行艇で異形の仲間たちとともに星のかけらを探し求めてたどり着いたその場所が、WILLPOLISだった……といった内容のもの(おそらく)。
アニメが終わり、いよいよメンバーが登場。ステージ前に貼られたスクリーンを通して、影絵となってメンバーの姿が浮かびあがるという演出も前回のツアーと一緒。ただ、今回は一曲目の歌い出しとともにスクリーンが落ちて、金色の紙テープがばーんと打ち上がる。長尺のイントロのあとで始まった一曲目は『Stage of the ground』!
そのあと『firefly』、『虹を待つ男』とつづく展開はマリンフィールドのまま。この時点でこの日のライブがあの日の延長線上にあるってのがはっきりした。とはいえ、なんたってこの2曲が強力なので、序盤から盛り上がること、この上なし。
さらにはその次にきたのがなんと『アルエ』! 野球に例えれば、この時点でもう序盤コールドゲーム、みたいな内容。
前回のスタジアムでは、(少なくても僕にとっては)『メーデー』と『カルマ』が突出して迫力があってよかったのだけれど、今回は武道館という音響的に恵まれていない環境のせいか、どの曲の演奏が突出して印象的だということもなかった(そしてなんと、『カルマ』は演奏されなかった)。で、そのかわり、藤原くんの歌声の魅力が前面に出ていた気がした。
いやね、前にも書いた気がするけれど、彼の声って、生で聴くとほんと気持ちいいんだ。けっして美声ってわけではないのだけれど、その声の響き具合がやたらめったら気持ちいい。喉の震え、その振動がダイレクトに僕らの胸の中に共鳴してくる感じとでも言おうか。この日は目の前にさえぎるもののない状態でまっすぐ彼の声を浴びているような環境だったので、なおさら気持ちよかった。ファン冥利に尽きた。
今回はベスト盤リリース後のツアーだから、演奏されるのは、ほぼ全曲シングル曲で、王道感はたっぷりながら、意外性は少なかった。そんな中、意表をついていて嬉しかったのは、武道館の構造上、サブ・ステージが作れないからと、レアなアコースティック・セットのかわりにと用意してくれた懐かしのレア・ナンバー、『とっておきの歌』と、未発表の新曲『ray』!
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『とっておきの歌』はうちの奥さんのバンプで大好きな曲ベスト3に入るという曲だから――「ゆっくりでいいから」という歌いだしの「で」の部分がとくに好きだそうです(なんだそりゃ)――、藤原くんが前ふりで曲名を口にしたときには、思わずふたり目を見合わせてしまいました(ふだんでも丸い顔、もとい丸い目をまんまるにして喜んでいた)。
新曲の『ray』――藤くんいわく「某二次元キャラクターとは関係ないです」とのこと――はピコピコした打ち込みのシンセサウンドがフィーチャーされた、なんとなくサナカクションっぽい感じのナンバーだった。BUMPとしては、あきらかに新機軸。
この曲の収録されるニュー・アルバム『RAY』――曲は小文字、アルバムは大文字表記とのこと――が来年1月末に発売されることも、このときに発表された。当然のごとく、このビッグ・ニュースに僕ら観客は爆発的な大歓声で答える。ベスト盤のリリースからわずか半年強での新作という意外性もあって、ライブのMCに対するリアクションとしては、メンバーもびっくりってレベルの大歓声だった。
そのあと、早めの『メーデー』から『K』など数曲を経て、本編は『天体観測』ではなく、『supernova』で終了。ラストがバラードってのも、僕が観た彼らのライブでは初めてだった。
アンコールでは、いったん『宇宙飛行士への手紙』で締めて、『ガラスのブルース』やらずに引っ込むふりをしたりもしていたし──あくまでフリだけだったっぽいけれど、僕としては『宇宙飛行士』での締めというのも、意外性があってありかなと思った──、今回は選曲が定番中の定番だった分、そんな風に曲順などで微妙な変化をあたえていたところが新鮮だった。『ゼロ』や『真っ赤な空を見ただろうか』(歌い出しがスローなアカペラの情感たっぷりバージョン)など、前回は聴かせてもらえなかった個人的に大好きな曲も聴けたのも嬉しかった。
あとひとつ、おもしろかったのが、ツアー最終日ということで感傷的になったらしい藤原くんが、いつになくしゃべりまくっていたこと。序盤のMCでは「きょうはしゃべると泣いちゃいそうなので――(客席の笑い声に)年とると涙腺弱くなるんだよ!――やばいから、あまりしゃべるのやめようと思ってた」なんて言っていたのに、最後の最後になって、まぁ、しゃべること、しゃべること。アンコールで演奏されたのは3曲だけだけれど、時間にすると45分くらいはあったと思う。それくらいしゃべっていた。最後はアリーナに降りて、最前列の観客と延々と握手してまわるサービスぶりだった。
そのときのMCの内容は、「こどものころから仲良しで、一緒に石けりして遊んでいた仲間たちと、その延長線上で始めた音楽で、こんなにも多くの人に集まってもらって、一緒に時間を共有できて本当に幸せです、ありがとう」というようなもの。ほんと、この日のBUMPの面々は、幾度となく「ありがとう」を繰り返していた。
日本でも有数のロックバンドに成長してなお、この謙虚な目線。それだからこそ、バンプは特別なんだと僕は思う。
ということで、ライブ自体はとても素晴らしい内容だったのけれど、最後に残念な話をひとつ。この日のライブでも配られたザイロバンド、僕ら夫婦のそれは揃って不良品で、最後まで一瞬たりとも光りませんでした(しかもふたりとも前回と同じ黄色……)。
あれ、たまたまじゃないと思う。ツアー最終日でザイロバンドの在庫が足りなくなったんで、あえて不良品を配っていたのだと思う。なぜって、僕らの分はふたつとも、最初から電池の消耗を防ぐための紙のストッパーが外れていたし、受付の係の女の子は僕に渡す瞬間に一瞬躊躇して、両手に持っていたザイロバンドのうち、あとから手にした方を渡してきたから。あれは不良品がまじっているから、文句を言わなさそうな中高年をみつくろって渡せという指示が出ていたに違いない。ちくしょうめ。
……ということで、ザイロバンドが光らなかったために、若干疎外感を味わったのだけは残念至極だったけれど、その点を除けばとても幸せなライブでした。
来年の新譜もとても楽しみだ。
(Nov 06, 2013)
エルヴィス・コステロ&ジ・インポスターズ
"The Spinning Wheel Songbook"/2013年12月13日(金)/EX THEATER ROPPONGI
2011年に始まったエルヴィス・コステロのスピニング・ホイール・ソングブック・ツアー。曲名が並んだ巨大なルーレットを観客に回させて、出た曲をランダムに演奏するという企画で、ステージには肝心のルーレット──高さ4メートルくらい?──のほかにも、ゴージャスな黒人女性のゴーゴーダンサーが踊るケージや、ルーレットを回したお客さんがそのままステージに残って曲を聴きながらくつろぐためのバーカウンターなんかも配されている。観客を選んでステージに連れてくるセクシーな案内係のお姉さん(通称ミステリアス・ジョセフィーン)もいる。
要するに、普段のコステロのツアーにくらべると、格段に舞台装置が凝っているのだった。まぁ、場末のいかがわしいクラブのようなチープ感は漂っているけれど(当然演出です)、間違いなくモノはかさばるし、運ぶのには金がかかる。ツアーが始まったのはずいぶん前の話だし、さすがにあのでかいルーレットを極東の地まで運んでくるのは大変だから、日本ではたぶん観れないだろうとほとんど諦めていたこのツアーが、2013年末になってついに日本上陸を果たしてくれました。しかもこの日のライブはWOWOWで生放送されるというおまけつき。コステロ・ファンとしては願ったり叶ったりの一夜だった。
まぁただ、ルーレットで決まった曲をランダムに演奏するとはいっても、そこはコステロ先生。ふだんのライブからして、セットリストは日替わりなので、こういう企画でやったからといって、そんなに意外性のあるセットリストにはならない──というか、最初から演奏される曲目が公開されてしまっている分、かえって意外性が少ない気さえした。
加えて、選ばれてステージに上がってくるのは女性客やカップルばかりで、コステロの熱烈なファンだと思われるタイプの人はほとんどいない。「聴きたい曲は?」と問われても、返ってくる答えは超有名曲ばかり(最後にステージにあがって、ハンマーのゲームをクリアして、なんでも好きな曲をやってもらえる特典をもらったカップルなんて、好きな曲を選べもしなかった)。ほとんどの人は、ステージ上でのりのりで踊ったりもしないし、企画としてはとてもおもしろいんだけれど、やはり日本でやると、いまいち盛り上がりに欠ける感があった。
セットリストは『I Hope You're Happy Now』から始まる冒頭5曲が毎日固定のようで、そのあとで観客をステージにあげてのスピンが始まり、1回のスピンで出た曲につづけて、2、3曲を演奏して、またスピン、みないな流れ。
ルーレットには等間隔で「GIRL」「TIME」「RAINBOW」など、曲名がはっきりしない紫色のジャックポットがあって、それらが出たときには、そのキーワードにちなんだ曲が演奏されるという趣向だった。この日は2番目のスピンで「GIRL」のジャックポットがあたって、『This Year's Girl』、『Party Girl』、『Girls Talk』がつづけて演奏された(前日に同じスポットが出たときには、ビートルズの『Girl』も演奏されたらしい。ずるい)。べつの日に「RAINBOW」のジャックスポットが出たときには、『Green Shirts』、『Blue Chair』、『Red Shoes』が演奏されたらしい。うわー、それは聴きたかった~。
さて、そんな風変わりなこの日のライブでは、3回目のスピンのあとに驚くべき事件が起こった。
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『She』が聴きたいという女性のリクエストを受けて、その曲をスティーヴ・ナイーヴのピアノのみをバックに歌い始めたコステロ先生──ルーレットはいんちきをしてその曲で止めた(場内苦笑)──、ワンコーラスも歌い終わらないうちに、ステージを降りて、オール・スタンディングの観客のいるフロアへと降りてきて、歌いながら満員のフロアを一周してくれてしまったのだった。
つづけてもう一曲、『God Gave Me Strength』を歌う間じゅう、コステロはステージを離れたまま、客席にいた(『She』をリクエストした女性二人組は、せっかくコステロが大好きな歌を歌っているのに、その姿がほとんど観れないまま、ステージに置き去りにされているという、ちょっと気の毒な状況)。そしてその歌の最後のワンコーラスを歌うあいだに、なんと僕のすぐとなりへと来てくれてしまったのだった。
僕はなにもフロアの隅のほうにいたわけではないから、残念ながら壁際を移動していた御大を間近で拝むチャンスはないなと思っていたんだけれど、なにを思ったのかコステロ先生、最後に壁際を離れ、わざわざフロアの中央へ向かって、ずずずいーっと移動してきてくれた。
まわりの観客もコステロが向いた方向のスペースを開けるから(気のきく日本人たち)、僕の目の前で人混みがすーっと開いて、コステロから僕に向かって、一本の通り道できた感じ。その様はまるで映画『十戒』のモーゼの前で海が割れたかのよう(観たことないけど)。で、コステロ先生はその通路を俺の目の前まで移動してきて、わざわざそこで立ち止まって、『God Gave Me Strength』のサビを歌い終えるという大サービスぶりだったのです(恥ずかしながら生放送されたテレビでも僕の馬鹿面が一瞬だけアップで映った)。いやぁ、二度とないだろう貴重な体験をさせていただきました。先生、ありがとう!
そのあと、本編終了後のアンコール最初のバラード・コーナー(コステロの公式ブログでは「インタールード」となっていた)でも、コステロのバラードでは僕がもっとも好きな一曲、『I Still Have That Other Girl』が演奏されたり、ルーレットで選んでほしかったのに選ばれなかった『Everyday I Write the Book』を、アンコールでコステロが率先して演奏してくれたり、本当にこの日のライブには、これは俺のためのライブなんじゃないかと勘違いしたくなるようなスペシャル感があった。いやぁ、おなか一杯。
そのほかだと、今回のライブでの意外な聴きどころだったのが、ほとんど演奏されないのではないかと思っていたザ・ルーツとの新作『Wise Up Ghost』からの曲が、要所要所で、ここぞという盛りあがりの部分に配されていたこと。最初のアンコールの締めが『Tripwire』から『My My New Haunt』という流れだったり、オーラス前の一曲が『Sugar Won't Work』だったり。新譜の曲はどれも単調だから、盛り上がらない気がしていたんだけれど、そこはブラック・ミュージックをベースにしているので、ライブだと思いのほか映えた。
あと、やってくれるなぁと思ったのが、ラストの『Peace, Love and Understanding』。この曲はちょっと前に『Tripwire』につづけて、メドレーの形でバラード・スタイルのバージョンを披露していたので、当然この日はもうやらないと思っていたから、ラストにふたたびこの曲(もちろん今度はオリジナル・アレンジ)を聴かせてもらえたのには、なんとも痺れました。
ほかにももっとあれこれ、書くべきことはある気がするんだけれど、最近はパワー不足なのでこれくらいが精一杯。当然、WOWOWで録画しておいたこの日のライブ映像は永久保存版です。
(Jan 05, 2014)