2004年のコンサート
Index
- エレファントカシマシ @ 新宿コマ劇場 (Jan 13, 2004)
- リッキー・リー・ジョーンズ @ オーチャードホール (Mar 26, 2004)
- レディオヘッド @ 幕張メッセ9・10・11ホール (Apr 18, 2004)
- エレファントカシマシ @ SHIBUYA-AX (Jun 18, 2004)
- エレファントカシマシ @ 日比谷野外大音楽堂 (Jul 3, 2004)
- エレファントカシマシ @ SHIBUYA-AX (Nov 22, 2004)
- エルヴィス・コステロ&ジ・インポスターズ @ 東京厚生年金会館 (Dec 9, 2004)
エレファントカシマシ
2004年1月13日(火)/新宿コマ劇場
「某ツアーファイナル」のような肩書きはいっさいない、3年ぶりのエレカシ正月公演。動員成績的に武道館での開催が不可能になったせいだろう、代わりにデビュー当時に何度か利用したことがあるとかいう、なにやら思い入れのありそうな新宿コマ劇場での公演となった。
僕が彼らのコンサートに足を運ぶようになってからこのホールでやったことは一度もないから、多分13、4年ぶりということになるんだろう。想像するからに感慨深そうだ。これは去年の野音に引き続き、懐かしいレパートリーのオンパレードか。それとも大晦日のカウントダウン・ジャパンでは未発表曲を連発していたと言うし、新しい年の門出を飾る意味でも、再出発を強く意識した内容となるんだろうか。なまじ無題のコンサートだけに予想がつきにくかった。あえてどちらかと問われれば、おそらく懐古的な内容になるんじゃないかという気がした。ということで一発目の予想は『おはようこんにちは』だったのだけれど……。
あけてみれば、この日のライブのオープニングナンバーは 『うつらうつら』 だった。あたらずとも遠からず。しっかしこれかあ。
僕はこの曲が大好きだ。今でも道を歩きながら、なにげなく口ずさむエレカシナンバーの筆頭はこれじゃないかと思う。でも2004年の一発目として聴かされるこのナンバーは、なんちゅうか、実にオープニングには不向きな気がした。音がスカスカのアレンジが、これからコンサートが始まるぞという興奮とマッチしない。ボーカルがいくら迫力十分でも、全体としてのあの音の薄さでは、会場の熱気を受け止めきれていない感じを受けてしまった。
二曲目以降もやはりこの時期のナンバーが並ぶ。『優しい川』『太陽ギラギラ』『サラリ サラ サラリ』『おれのともだち』『無事なる男』『通りを越え行く』『曙光』『金でもないかと』『ゲンカクGet Up Baby』『浮雲男』『花男』『やさしさ』……。本編の楽曲はおそらくこれで全部だろう(順番はやや曖昧)。セカンドと五枚目を中心とした、見事なまでに懐古的な内容だった。宮本はギターを弾く時にはずっとパイプ椅子に坐っているし、歌い回しはわざと節をずらす昔のスタイルに戻っているし。選曲のみならず、表現のスタイルまでが昔に戻ってしまっていた。
ただ、去年の野音の時と違って、そうした昔の曲ばかりに偏った選曲がそれほど気にならなかったのは、主に5枚目の楽曲が最近の楽曲と比べて遜色のない音で鳴っていたせいだと思う。特にややアレンジを変えて、宮本がギターを弾きながらスピード感2割増という感じで演奏された『無事なる男』なんかはとてもカッコよかった。『おれのともだち』は思いのほかライブ映えする楽曲でびっくりしたし、ひさしぶりに見る『曙光』のハードなパフォーマンスも出色の出来だったと思う。これらを含めた、宮本の座りギターで演奏された一連の楽曲の出来がよかったため、ノスタルジックな選曲が決してうしろ向きなものに感じられなかったと言うのが大きかった。おかげで思いのほか楽しめてしまった。観客の反応もかなりよかったと思う。
この好印象はアンコールでも持続する。
この日のライブは構成的にはまったく去年の野音と同じだった。本編はソニー時代の曲オンリー、一度目のアンコールではブレイク後の曲を聴かせ、二度目のアンコールで新曲を披露すると言う構成。
ただ同じ構成でも今回と野音とでは、選曲の傾向がかなり異なっていた。野音の時は本編の曲は古い曲の中でも比較的お馴染みの楽曲ばかりだったし、アンコールはブレイク時に一番人気のあった曲ばかりだった。それに対して今回は『5』の楽曲をフィーチャーした本編に続くアンコールの選曲が、『恋人よ』『精神暗黒街』『待つ男』と言う内容だ。メインストリームを外して、わざとあまりライブで馴染みのない曲を取り上げてくれた姿勢がとてもいい。でもって、きわめつけはそのパートのトリを飾る『待つ男』だ。初期エレカシ・ソングのなかでもきわめつけの一曲。徹底的に過去を懐かしむんならば、やはりこれをやらなきゃ嘘だろう。この日のハイライトは間違いなくこの曲だった。
コンサートはさらにもう一回のアンコールを受けて幕となった。最後のステージで披露されたのは未発表の新曲三曲。「それが結論、結論~」という妙な歌詞のバラードと、力強いコード・ストロークは印象的だけれどメロディにいまひとつパンチが足りないアップ・ビートなナンバー(のちに『パワー・イン・ザ・ワールド』であることが判明)。そして「酒もってこい」という、らしくない歌詞を連発する、タイトルのわりには楽曲が淡白な『化ケモノ青年』の三曲。どの曲もメロディ的にいまひとつキャッチーさに欠けるし、音のハードさも足りない。前作『俺の道』もメロディの面では歴代地味度ベスト3に入るような作品だったし、メロディメイカーとしての宮本の才能にやや翳りが見え始めた気がする。3月にリリース予定だという新作がちょっとばかり心配になるような新曲群だった。
あいかわらずメンバーを侮辱するような振る舞いを続ける宮本にはうんざりだし、新しめのレパートリーでの声の出なさ加減は他人事ではなく残念だ。新曲の出来にも満足はしていない。それでも全体としては、バンドとしてのやる気を感じさせる、いいコンサートだったと思う。演歌で有名なホールだけあって、普段とかなり違った雰囲気のロビーや、ライブ中、気まぐれにパラパラと紙吹雪が舞い落ちてきたりするのにも、なかなか味があってよかった。
(Jan 13, 2004)
リッキー・リー・ジョーンズ
2004年3月26日(金)/オーチャードホール
実に十年ぶりとなるリッキー・リー・ジョーンズの来日公演。前回の公演はアコースティック・ギターの弾き語りだったので、バンドでの来日はおそらく十二年ぶりとなる。新作の出来が素晴らしかったため、とても楽しみにしていたのだけれど、やはり期待にたがわぬ充実した音を聴かせてくれた。
とかいいつつ、一曲目は不覚にもタイトル不明。 "Ghostyhead" の曲か、それ以前のアルバムの終盤の曲か……。それさえもわからないあたりが情けない。 "Little Yellow Town" も馴染みがなかったけれど、この曲は演奏を始める前にタイトルを紹介してくれたから助かった。一応わからなかったのはその二曲だけ。その他は新譜からが8曲、あとは "Weasel And The White Boys Cool", "Young Blood", "Chuck E's in Love" (弾き語り), "Satellites" というセットリストだった(順不同)。
とにかく昨今の生音指向の強い僕にとっては、心の真ん中を直撃するような内容のコンサートだった。音量は控えめながら、それゆえにバンドの個々の音がひとつひとつまで聞き分けられるようなバランスで、アンサンブルが絶妙。個々のメンバーも固定観念にとらわれない演奏を聞かせてくれる。ベースが弓を使ったり、ドラマーが太鼓を手で直接叩いて見せたりするのは、「この楽器はこういう風に弾かなくちゃいけない」という縛りを受けずに、「こうした方がこの曲に合う音が出せる」という姿勢で演奏にのぞんでいる証拠だろう。リッキー・リー・ジョーンズ御本人も、歌はもちろんのこと、リズミカルなギター・プレイがあいかわらず素晴らしい。本当に一晩中、ぶっ続けで聞いていたいと思うようなライブだった。
しかしそれだけに一時間半ちょっとでアンコールもなく終わってしまったのがとても残念。オーラスが "Ugly Man" だったこともあり、これでおしまいなんてことはないだろうと油断していただけにショックが大きかった。やはりスタンディング・オペイションのできない国民性がいけなかったか……。
(Mar 28, 2004)
レディオヘッド
JAPAN TOUR 2004/2004年4月18日(日)/幕張メッセ9・10・11ホール
単独好演としては二年半ぶりとなるレディオヘッドのライブ。去年もサマーソニックで来日しているのを考えると、意外と日本贔屓な人たちなのかもしれない。出不精で貧乏性の僕はその時のステージは見ていないので、今回こうしてあのだだっ広い幕張メッセの展示場ホールで見られることになったのはとても嬉しかった。
ステージの演出はまったくといっていいほど前回のツアーと同じパターン。表現力豊かな電飾と左右に配置された掛け軸状のスクリーンが、地味すぎず派手すぎず、絶妙のバランスで音楽を引き立てている。
"There, There" で始まったライブは、 "Hail To The Thief" の楽曲を中心にしつつも新旧バランスの取れた選曲だった。旧作の中では "My Iron Lung", "Bullet Proof", "Planet Telex" など、セカンドからの楽曲が比較的多め印象。最近ひととおり昔のアルバムを聴き返していて、もしかしたらわかり易さと斬新さのバランスという面では、このセカンドが彼らの最高傑作かもしれないと思ったりしていたので、それらの曲が生で聴けたのはとても嬉しかった。
一番うしろの方で見ていたせいで音圧はやや足りなかったものの(これはバンドには関係のない自己責任の問題)、音の分離が良くて聴き易かった。会場の広さと平坦さのおかげなんだろうか。幕張メッセは遠いことを除くと、いつもかなり印象がいい。
なんにしろ現在のライブ・バンドの中でも5本の指に入ること間違いなしというレディオヘッドだ。今回もたっぷりと楽しませてもらいました。
(Apr 25, 2004)
エレファントカシマシ
パワー・イン・ザ・ワールドTOUR/2004年6月18日(金)/SHIBUYA-AX
新作『扉』をフィーチャーしたツアーの最終日。新譜と前作の曲を中心とした内容で、おそらくここ数年では一番の出来だった。本当に今のエレカシはいい状態にあると思う。バンドとしての成長がしっかりとステージに表れている。この日の宮本はメンバーを叱りつけることもなかった。ようやく彼にとってある程度満足のゆく演奏ができるところまでバンドが成長を遂げたという証だろう。
そんなバンドを観客もちゃんとサポートしている印象を受ける。以前のように「いい歌を聴きにきました」みたいな人たちが減って、ロック・コンサート慣れしたオーディエンスが増えた。みんな踊りにきている。これでこそロックだと思う。おかげさまで僕らも一緒に見ていて楽しかった。
いやしかし、本当にこの日のライブには、バンドの演奏力の向上と音楽にたいする前向きな姿勢がはっきりと表れていた。オープニングの『パワー・イン・ザ・ワールド』や『化ケモノ青年』──前回とは違って、今回はどちらも石クンのギター一本のみ!──では、演奏が終わったあともなおアカペラで歌い続ける宮本にあわせて、再び演奏を再開したりして見せる。『一万回目の旅の始まり』ではトミがもの凄いパワフルなドラムでこちらの度肝を抜いてみせる。メンバー紹介のため、それぞれのソロ・プレーをフィーチャーしたオリジナルのダンス・ナンバーを聴かせてくれたのも新鮮だった。『生命賛歌』で二度目の「ヒョヒョヒョ」の部分──なんだかまぬけな表現だ──でのリズム・パターンが変わったのにもびっくりさせられた。
とにかく今まではレコーディングしたアレンジから外れるプレーがほとんどなかったエレカシが、この日のライブでは、積極的にそこから逸脱してみせようとしていた。音楽が本来持っているはずの自由さを、自分たちの演奏の中に少しでも多く取り入れようとしているみたいだ。ようやく年相応のバンドになってくれたような気がする。
驚いたことに秋にはもう一枚アルバムをリリースする予定なのだそうだ。いいぞ、エレカシ。これからもガンガン飛ばしていっちゃって欲しい。おれも彼らに負けぬようがんばりたいと思う──といいながら、ここまでは負けまくりだけれど。
(Jun 20, 2004)
エレファントカシマシ
2004年7月3日(土)/日比谷野外大音楽堂
エレカシ、十五回目の野音は、いきなり6人でステージに登場。ギターに知念、キーボードに藤本という謎の青年二人をサポート・メンバーとして加え、新機軸のステージを見せてくれた。選曲も新旧取り混ぜた今までにないバランスの良さ。『この世は最高』から始まり、前半はポニー・キャニオン時代のヒット曲、後半は新曲やシングル曲を並べた最強のラインナップ。アンコールには十年ぶりに近藤等則氏を迎えて『東京の空』と『曙光』を聞かせてくれ(ここからはサポートの二人は不参加)、二度目のアンコールではメンバー四人だけで代表曲三曲を披露。賞味二時間半におよぼうというボリュームと、バラエティに富んだ選曲、サポート・メンバーを加えたがゆえの安定した演奏。おそらくエレカシのライブ史上、もっとも完成されたコンサートだったんじゃないかと思う。
まあ、問題点はあいかわらずいくつもあった。サポートの二人が抜けてから演奏が不安定になったり、そもそもその二人がいてもコーラス・ワークの面はほとんど改善されなかったり、終盤宮本の歌がやたらとあやしかったり。けれどそんなことはとりあえずよしとしたい。エレカシがその長いキャリアの成果をきちんと感じさせてくれる内容の濃いステージを見せてくれたことがとても嬉しかった。とかいいつつ、彼らのやる気にきちんと堪えられない僕は、今回も順不同欠落ありのセットリストを残してお茶を濁すのだった。
この世は最高 / かけだす男 / 悲しみの果て / 四月の風 / 今宵の月のように / 夢のかけら / もしも願いが叶うなら / 誰かのささやき / 歴史 / 化ケモノ青年 / 月の夜 / 新曲 / 赤い薔薇 / あなたのやさしさをオレは何に例えよう / ガストロンジャー / ファイティングマン / 東京の空 / 曙光 / パワー・イン・ザ・ワールド / 珍奇男 / 星の降るような夜に
(Jul 10, 2004)
エレファントカシマシ
平成理想主義の旅/2004年11月22日(月)/SHIBUYA-AX
バンドとして新たなステージに上がったことを感じさせてくれた新作『風』のツアー初日。本当は二週間後のリキッドルーム・エビスの方へ行こうと思っていたのだけれど(初めての会場だったから)、びっくりしたことにファン・クラブでチケットの抽選に漏れてしまった。おまけにその連絡があった時点では各種の先行予約は既に終わっている(困ったファンクラブだ)。でもって一般発売でも入手しそこない、結局Yahooオークションでようやく、この日のチケットを手に入れたのだった。そんなドタバタの上でようやく観ることのできたコンサートだ。アルバムの出来もいいし、いやがうえにも期待は高まろうってもんだ。
でも、それでどうだったかというと……。まあ好意的に受け取れる内容ではあったけれど、十分な満足感を与えてもらうには到らなかったという感じ。いろいろあって完全にコンサートに集中し切れない僕自身の精神状態にも問題があったから仕方ない。あいかわらずバンドの演奏は安定感を欠いているものの、比較的アッパーな曲を中心にしたバランスの取れた選曲で楽しませてくれたし、なかなかいい内容だったと思う。
【セットリスト】
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この日、印象的だったのは坊主頭(スキンヘッドとまではいかない)に変身した石クン。終始ギターを弾きながら歌詞に合わせて歌を歌っていた。すごく乗りがよくて、やたらとやる気が伝わってきた(でもどうせ歌うんならば、マイクに向かってコーラスつけてくれたらいいのにと思う。そこらあたりにエレカシが次に乗り越えるべき壁があるのかもしれない)。
不満があるとすれば、演奏時間が短く、正味一時間半に満たなかったこと。この頃はそういう傾向が強い。キャリアが長いんだから、それに見合う分量を期待したい。最後が『奴隷天国』ってのもちょっとばかり後味が悪かった。もう一回アンコールがあれば、もっともっと印象がよくなったのに。
あと宮本の声が年齢的な限界を感じさせるようになってきたのも気がかりだ。中でも『達者であれよ』はとても苦しかった。彼ほどのボーカリストでもやっぱり寄る年波にはかなわないんだなと思うと、同い年だけにちょっとばかりつらいものがあった。
(Nov 23, 2004)
エルヴィス・コステロ&ジ・インポスターズ
2004年12月9日(木)/東京厚生年金会館
来日するごとに日替わりのセットリストで楽しませてくれるエルヴィス・コステロ。いつもならば東京公演はすべて見に行くのだけれど、今年はふところが寒いのと、父親が入院中という状況もあって、一日で我慢することにした。それで一日しか見ないのならば、なるべくいい席で見ようと思って、先行予約──手数料や送料で千円近く割高になる──で入手したチケットが一階の十列目。確かにステージには近かった。でもステージに向かって一番右側から二番目という席で、なんとなく音のエアポケットに入ってしまったような感じで、音響がいまいちだった。特にギターの音がアンサンブルの中に埋もれてしまって聞き分けられない。音圧の面でもいまひとつもの足りなかった。真正面がドラム・セットで、ピート・トーマスのプレーを斜め横から思う存分楽しめる位置だったので、ドラムを叩いている友人が一緒だったら喜んだかもしれないな、などと思いながら観ていた。
エミルー・ハリスらしきBGMを聴きながら待っていると、定刻より5分ちょっと遅れて、ラジオ番組の録音みたいない謎のMCとともにメンバーが姿をあらわす。コステロの衣装はこのところよく見る印象の黒いスーツに赤いネクタイ。ベースのデイヴィー・ファラガーもグレイのスーツに中折帽というビジネスマンみたいな格好で目を引いた。あとの二人はどんな格好をしていたか記憶に残らないくらいカジュアルだった。
【セットリスト】
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ときおりステージ後方のスクリーンにはなにかが映っていたみたいだけれど、僕の位置からは全然見えない。なのでとにかくメンバーの演奏に集中するよう心がけた。特に今回は前述したとおりピート・トーマスが真正面にいたこともあって、彼のプレイに注目してみていた。普段あまり注目することのない楽器のせいか、ドラムに注意して見ていると、よりライブの醍醐味が味わえる気がする。中でも "Watching The Detectives" がやたらと難しそうで、まあよくもこんなものを叩けるもんだと感心させられた。
セットリストはいつもどおり、新曲を要所要所に配しつつ、新旧取り混ぜたバランスのよいもの。インターネットで前日のセットリストを確認してみたら、そのうちの半数以上がこの日とは異なっていた。連日足を運ぶファンには嬉しいこうしたサービス精神にはいつもながら感銘を受ける。ルーティン・ワークに堕すことのないその姿勢はアーティストの鑑だと思う。この日もオープニングから "Blue Chair" 、 "No Dancing" という意外性のある選曲で楽しませてくれたコステロ先生だった。
おもしろいことにこの日に演奏された曲のうちで個人的に一番印象に残ったのは、前回このバンドで来日した時の目玉だった "When I Was Cruel" と "Episode Of Blonde" だった。両方とも比較的馴染みのない曲な上に、アルバムとは若干アレンジが違っていたので、恥ずかしながら始まった時にはなんの曲だかわからなかったりしたのだけれど、それでもこの二曲の歌の持つ、英語が不得手な僕には十分に汲み取れない言葉の饒舌さには強く惹かれるものがあった。
あと意外だったのが "You Turned To Me"。アルバム "North" に収録された曲はナイーヴとのアコースティック・セットでしかやらないと思い込んでいたので、この曲がきちんとバンド・アレンジで演奏されたのには、ちょっとびっくりした。こちらのまちがった固定観念を平然と打ち砕くコステロ先生はやはり素晴らしい。
どうでもいい話だけれど、僕の右隣にいた背が低い小太りの長髪男がちょくちょく携帯電話を取り出しては画面を見ていた。なにをしていたんだか知らないけれど、暗闇の中でそのあかりが目障りで仕方ない。あまり拍手とかもしないし、ライブに集中しないその姿勢が勘に障っていい迷惑だった。ちくしょうめ。
(Dec 11, 2004)