2024年9月の音楽
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- Iris / BUMP OF CHICKEN
Iris
BUMP OF CHICKEN / 2024
BUMP OF CHICKEN、5年ぶりの新譜にして、インディーズから数えれば通算十枚目となる記念すべき一枚。
――とはいえ、今回もまっさらな新曲はわずか二曲だけ。あとはこの五年間にこつこつとリリースしてきた配信シングルをコンパイルしたものだから、新鮮味はいまいちだ。
同時期のリリースでいえば、同じくらい配信シングルを出していながら、それに負けないくらい新曲を入れてみせた米津玄師や、いまだにシングルの収録は三曲のみで、あとは全部新曲という昔ながらの良心的なアルバムづくりを貫いているaikoと比べてしまうと、さすがにちょっと残念な気分が否めない。
どうせならばリリースのインターバルを半分にして、収録曲は少なくてもいいから、そのぶん新曲たっぷりのアルバムを二枚作ってくれないものかと思うけれど、まぁ、BUMPももうデビュー二十周年を超えているわけだしねぇ……。
そもそも十年近く先輩のレディオヘッドよりもすでにアルバム数は多いわけだし。この五年間、休みなくコンスタントに新曲をリリースしてきたからこそ、こういうアルバムが出来上がったわけだ。まずはその事実に感謝しよう。いつも楽しませてくれてありがとう!
いやしかし。この時期の曲をアルバム一枚分まとめて聴いて驚くこと――。
タイトルがわかる曲が少ない……。
よく知っているのに「あれ、これってなんて曲名だっけ?」という曲だらけ。
まえからけっこうそういう傾向は強かったけれど、今作はその極めつけ。
理由は単純だ。タイトルが歌詞に使われている曲が極端に少ないから。
歌詞を聴いて「あ、これはあれだ」と思うのって、『なないろ』くらいじゃないだろうか。『窓の中から』もタイトルが歌詞に出てくるけれど、Aメロでさりげない使われ方をし過ぎているので、僕のようなへぼリスナーは気がつかない。『SOUVENIR』には「お土産」って単語が出てくるけれど、翻訳しないとタイトルとつながらない。
たぶん全十三曲中、タイトルが歌詞に出てくる曲って、それくらいじゃないだろうか。
ここまで歌詞の内容がタイトルとリンクしない曲ばかり書いている人って珍しいのではないかと思う。僕はほかにはaikoくらいしか知らない。
でも、そういうのって、逆にすごいと思うわけです。要するに「タイトル{ひとこと}」では言い表せないような歌を書いているということだから。
メロディーに思いついたフレーズを乗せて、それをそのままタイトルにしてしまうのって、ある意味、曲作りの王道なわけで。
藤原基央やaikoはあえてそういう王道から外れた脇道をこつこつと歩んでいる。それはそれですごいことだと、でもってカッコいいことだと僕は思う。
(Sep. 28, 2024)