2021年1月の音楽
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- ROMANCE / 宮本浩次
ROMANCE
宮本浩次 / CD / 2020
祝・オリコン週間アルバム・チャート第一位!
まさか五十を過ぎてから宮本の名前が音楽チャートのトップを飾るのを見るなんて思ってもみなかった。長生きすると思わぬことがあるもんだなぁって。なんとも感慨深い思いをさせてくれたエレカシ宮本のソロ・アルバム第二弾。
まぁ、とはいえ僕個人は歌謡曲ってそれほど熱心に聴いてこなかったので、この作品に対してはいまひとつ愛着が湧かない。宮本とは同い年だから、音楽の原体験は似たようなものだと思うし、収録されているのは超有名な曲ばかりだから、曲自体はすべて知っていたけれど、自分も好きでレコードを買った曲はひとつもない。
あえていうならば(錚々たるヒット曲の中にあってもっともマイナーだと思われる)中島みゆきの『化粧』は収録アルバムを持っていたけれど、それだってその曲が聴きたくて買ったわけではないし(中島みゆきが好きだったのです)。もしも中島みゆきの歌を一曲だけ選ぶとしたら、僕が選ぶのは絶対にべつの曲だ(『断崖-親愛なる者へ-』か『蕎麦屋』あたり)。
あと当時の少年のご多分に漏れず、松田聖子は好きでレコードを何枚か買ったけれど、僕がいちばん好きなのは『赤いスイートピー』でも『白いパラソル』でもなく、『秘密の花園』だった。
そもそも、僕がこういう歌謡曲ばかりが好きな人だったら、エピック時代のエレカシを好きになることなんて、まずなかったはずだ。だいたいにして、ロックを聴くようになった人って、その時点で自然と歌謡曲的なものから離れてしまうものだと思っているので、宮本がこういう女性アーティストの大ヒット曲ばかりを集めた作品を作ろうと思ったのに驚いたし、それが過去最大数のリスナーに受け入れられたという事実には、なおさらびっくりした。
でもまぁ、考えてみれば、僕がエレカシを聴くようになった理由のひとつは――椎名林檎が「日本一の名器」と呼ぶ――宮本浩次という人の破格のボーカリゼーションにあったのは間違いのないところなので、多くの人の耳になじんだ日本歌謡史に残る名曲群があの歌声で響き渡るのを聴いて感動する人がたくさんいたのは当然かもなぁって思った。
それにしても、僕らがかつて『生活』を浴びるように聴いていたように、いまや日本じゅうの人が宮本浩次のあの歌声で滔々と歌われる松田聖子のヒット曲に聴き惚れていると思うと、なんとなく不思議な気分になる。
(Jan. 27, 2021)