2011年7月の音楽

Index

  1. The King of Limbs / Radiohead
  2. Let England Shake / PJ Harvey

The King of Limbs

Radiohead / 2011 / CD

The King of Limbs

 2月に発表からわずか1週間たらずで配信リリースされて話題となったレディオヘッドの8枚目のアルバム。
 知ったかぶったことを言わせてもらえば、最近のトム・ヨークのクラブ・ミュージック志向と、ジョニー・グリーンウッドの映画音楽でのキャリアがバンド・サウンドとして結実した作品、といった感じ。一聴した印象ではビョークを思い出させる緻密なクラブ・サウンドのようでいて、耳をすませば、音のコアは打ち込みではないバンド・サウンドで構成されている。さらには、なにげない装飾音の細部まで抜かりがないという。終盤に並んだ暗いバラード群も、もの悲しくも美しい。
 要するに前作『In Rainbow』のサウンドを、より密室的に洗練させた作品なのだと思う。わずか8曲という収録曲の少なさはややもの足りないし、これぞレディオヘッドの代表曲と呼べるようなメロディの切れを感じさせる曲はないけれど、そのロック・バンドらしからぬ緻密なサウンド・デザインには、やはり耳をすます価値があると思う。
 少なくてもここでのレディオヘッドはいまだ守りには入っていない。それがなにより大事なところ。彼らが90年代以降でもっとも重要なバンド足りえているわけは、この姿勢ゆえだろう。これだけの名声を手にしてなお、こんな風に新しい音を模索しつづけるバンドはほかにない。ポスト・レディオヘッドの敷居はまだまだ高そうだ。
(Jul 31, 2011)

Let England Shake

PJ Harvey / 2011 / CD

Let England Shake

 ジョン・パリッシュとの共作も含めれば、はや10枚目となるPJハーヴィーの新作。
 これが、あらゆる音楽メディアで絶賛されているので、どんなにすごいのかと思っていたら、思いのほかすごくない。少なくても、音だけ聴いた分には、革新性や過激さはまったく感じられない。非常にオーソドックスで地味だ。
 それなのに絶賛されるというのは、要するにそこで歌われている内容に負うところが大きいのだろう。タイトル・トラック――「イングランドを揺るがせ」とでも訳すんでしょうか?──に限らず、全編にわたって、さかんに「イングランド」という言葉が出てくる。あまりに出てくるので、歌詞がわからないで聴いていても、母国の現状に対する強い問題意識が作品の背後にあるのだろうってことは想像にかたくない。そこんところが、同じような意識を持つ人たちの共感を呼んでの高評価なのだろうと思う。
 いずれにせよ、英語がわからないで、翻訳歌詞カードも手元にない僕には、きちんと理解することができない。
 それでも僕の場合、PJハーヴィーという人の作品はその声だけである程度聴き惚れてしまうことができるので、悪かろうはずがないのだった。そもそもヴァン・モリソンあたりを愛聴している僕としては、こういう手堅い音作りが嫌いなわけでもないし。前評判の高さから期待していたほどのインパクトは受けなかったけれど、それなりに愛聴している。
 いずれは歌詞の内容をじっくりと読みとって、絶賛されるそのわけをしっかり理解できたらいいと思うのだけれど、いまの僕にはそうするだけの時間も集中力もパワーもないのだった。あぁ、駄目だなぁ……と思う。
(Jul 31, 2011)