2011年6月の音楽
Index
- マジックディスク / ASIAN KUNG-FU GENERATION
- How I Got Over / The Roots
- We Were Exploding Anyway / 65daysofstatic
マジックディスク
ASIAN KUNG-FU GENERATION / CD / 2011
僕がアジカンを聴くようになってから初めてリリースされた、アジカンの最新作。
これ、ひとことで言ってしまえば、アジカンにとっての『ビジターズ』(By 佐野元春)だと思う。それまでストレートなロックンロールを鳴らしていたアーティストが、もっとワールドワイドな音楽スタイルを視野に入れ、ヒップホップを導入したりしてきた点で──さらには部分的にニューヨーク録音を行っているところも──、非常にあのアルバムに近いものを感じる。
とはいえ、全編に渡って統一感のあった『ビジターズ』と比べてしまうと、こちらはオープニングを飾る『世紀末のラブソング』がそういう曲だから、それに引きずられて全体イメージがそちら方向に流れているという感じで、個々の曲を見てみれば、ヒップホップ寄りの曲がそんなにあるでもない。
それでも、『迷子犬と雨のビート』ではホーン・セクションを導入したり、全体的なビートがこれまでよりもゆっくりになっていたりと、確実な変化──それも意識的な変化──を感じさせる曲が多い点で、アジカンにとっての新たな第一歩となる、記念碑的な作品なのだろうと思う。それこそ、佐野元春にとっての『ビジターズ』と同じく。
まあ、『ワールド ワールド ワールド』 の素晴らしさにやられて遅まきながらファンになった僕としては、いままで通りの路線を期待していたために、やや肩透かしをくった感はあるけれど、それでもアーティストとして新しい音楽を目指そうとする意欲は確実に伝わってくるし、これはこれでいいアルバムだと思う。
僕のいちばんのお気に入りは8曲目の『ラストダンスは悲しみを乗せて』。それも、その曲のラスト45秒。この部分がも~、好きで好きでたまらない。
(Jun 30, 2011)
How I Got Over
The Roots / CD / 2010
ザ・ルーツというバンドとは、僕はこのアルバムを聴くまでに、2度すれ違っている。
最初はセカンド・アルバム(?)──青いジャケットの 『Do You Want More?!』 というやつ──が絶賛されたとき。ふてぶてしい表情でメンバーがこちらを睨んでいる青い色味のジャケットが気に入って聴いてみたのだけれど、まったくぴんとこなかった。
さらにその後、『Things Fall Apart』 というアルバムが出たときにも、暴動から逃げ惑う女性を撮影したドキュメント写真風のジャケットが気になって買ってみたのだけれど、これもよくわからないまま、一聴したきりお蔵入りとなってしまった。
というわけで、これが僕の聴く3枚目のザ・ルーツのアルバムということになる。
なぜ、過去に2度まで自分とは関係ないと思ったバンドをわざわざ聴くことになったかというと、単に安く売っていたからだった(身も蓋もない)。アマゾンで千円もしないで予約オーダーできたので、思わず買ってしまった。
でもまあ、まったく関心のないアーティストならば、いくら安くったて聴こうとは思わないわけで。少なくてもこのザ・ルーツに関しては、生演奏主体でラップを聴かす黒人バンドというその存在自体が、過去から現在にいたるまで、ずっと気にはなっていたんだった。それも世間的に一定の高い評価を受けているにもかかわらず、僕自身があまりにどこがいいんだかわからないものだから、かえって気になってしまっていたという部分もあった。
でもそんな人生ともおさらばさ~。僕はこのアルバムで初めて、ザ・ルーツをいいと思った。
まあ、一曲目がダーティー・プロジェクターズの女性陣が参加したアカペラ(というかインスト?)ナンバーだったり、タイトル・トラックが非常にキャッチーなファンク・ナンバーだったりと、基本的にラップに疎い、英語のわからない僕にでもアピールするようなところが、これまでよりも多かったってのは確実にある。というか、逆にそういう部分を取っ払っても、このアルバムをいいと思うかと問われると、やや疑問ではある。
それでも僕はこのアルバムをいいと思った。で、僕がザ・ルーツがいいと思ったのは、15年前にはじめて彼らの音を聴いて以来、これが初めてなのだった。いや、これはもうそれだけで画期的でしょう。まだまだ聴きこみは甘いんだけれど(いや、あまあまもいいところだけれど)、それだけでもなんか書いとかなきゃいけないって気分になる。
……ということで、とりあえず書きはじめてみたけれど、結果はただ自分の恥をさらしているだけって感じになってしまった。まだまだ修行が足りません。
(Jun 30, 2011)
We Were Exploding Anyway
65daysofstatic / CD / 2010
およそ一年ちょっと前にリリースされた 65daysofstatic (シックスティー・ファイヴ・デイズ・オブ・スタティック?)というインスト・バンドの4枚目のアルバム。
ぜんぜん知らないバンドだったけれど、キュアーのロバート・スミスがゲスト参加しているというので聴いてみたら、これがよかった。ギター中心のバンド・サウンドで、インストのクラブ・ミュージックをやっているという。なんかありそうでないタイプのバンド。
ロバート・スミスが参加した曲はさすがに歌のパートがあるけれど、それにしたってコーラスの延長線上って感じだし、そのほかはすべてインスト・ナンバー。で、どれも非常にダイナミックでダンサブル。
最近は日本にも SPECIAL OTHERS という踊れるインスト・バンドがあるけれど、あちらが野外が似合いそうなオーガニックな音を鳴らすのに対して、こちらはクラブが似合う密室系の音作り。まあ、少なからず打ち込みも入っているけれど、それでも全体的な音のイメージを形作るうえで、ギターが大きな役目を果たしているので、僕にとっては一般的なクラブ・ミュージックよりも圧倒的に吸引力がある。
いわば僕のなかのプロディジーの音を好む部分(あまり中心的ではないけど)にダイレクトに訴えてくる感じ。おぉ、いいじゃないかと思って、感想を書かねばと思いつつ、書かないでいるうちに(そもそも、それほど聴きこまないうちに)、気がつけば一年以上が過ぎてしまった。最近は一年なんて、ほんとにあっという間だ。
でもまあ、前のザ・ルーツ同様、去年もっとも気に入ったアルバムのひとつだったので、遅ればせながら紹介まで。SPECIAL OTHERS にしろ、このバンドにしろ、出している音はまぎれもなくロックなのに、歌なしでこれくらい伝わるものがあるってのはすごいと思う。
(Jun 30, 2011)