2005年10月の音楽
Index
- Duchess of Coolsville: An Anthology / Rickie Lee Jones
- Luke Haines Is Dead / Luke Haines
- 野音 秋 / エレファントカシマシ
- 日本 夏 / エレファントカシマシ
- Arular / M.I.A.
- The Cookbook / Missy Elliot
Duchess of Coolsville: An Anthology
Rickie Lee Jones / 2005
リッキー・リー・ジョーンズ、キャリア26年目にしての初の3枚組ベスト・アルバム。最初の2枚が全キャリアを総括したベスト盤で、3枚目のボーナス・ディスクにほかのアーティストとのコラボレーション曲やデモ・テイク、ライブ音源といったレアものが収録されている。
おもしろいのはベスト盤にむちゃくちゃ統一感があること。 『Pop Pop』 や 『It's Like This』 などのカバー盤も含めたすべてのアルバムから満遍なくセレクションされた曲が、年代順ではない独自の視点(※)で、まったく違和感なく並べられている。まるでベスト盤とは思えない楽曲どうしの馴染み具合がすごい。リリース時にはけっこう違和感があった 『Ghostyhead』 の収録曲でさえ、ここでは見事にその他の曲と同じ顔で共存している。ベスト・アルバムを作ってもここまで完成度の高さを感じさせるなんて、さすが音の達人、リッキー・リー・ジョーンズだと感じ入った。
(Oct 10, 2005)
(※追記)独自の視点だと思ったら、なんのことはない、ABC順だった。
Luke Haines Is Dead
Luke Haines / 2005
こちらも3枚組となるルーク・ハインツのベスト・アルバム。オトゥールズからソロの現在──この頃はなにをしているんだろう?──までのキャリアを総決算した内容になっている。個人的には未聴のデビュー・シングル 『Showgirl』 の収録曲がまるまる収められているのがとても嬉しかった。そのほかもシングルのカップリング曲やアウト・テイク、スタジオ・ライブなど貴重な音源が満載の、ファンにとってはまさにマスト・アイテムというべき内容の作品。
それにしてもあらためてこうして3時間を超えるボリュームでこの人の曲を聴かされてみると、いかに自分がこのルーク・ハインツという人に魅せられているかがあらためてわかる。もう最初から最後まで、気持ちよくて仕方ない。これほど知名度が低いアーティストで、ここまで僕を魅了している人はほかにいない。僕が好きになるアーティストは大抵非常にメジャーなので、なんでこの人はこんなに売れていないのか、不思議で仕方ない。歌詞や立ち振る舞いに問題があるんでしょうか?
(Oct 10, 2005)
野音 秋
エレファントカシマシ / 2005
インターネット通販とライブ会場のみで販売されているエレカシのライブ・アルバム。二枚同時リリースで、「日比谷野外音楽堂ライブヒストリー下巻」と銘打ったこちらは、野音での96年の公演を中心とした選曲となっている。上巻のリリースは未定だそうだ──なんなんだかね。
例年、夏から秋にかけて行われる野音公演も今年ですでに16年目となる。どうせならば毎年まんべんなく1曲ずつを選んでくれた方が、バンドの変遷がわかって良さそうなものなのだけれど、そうはなっていない。このアルバムは半分以上がブレイク直後の96年のステージでのもの。セットリスト自体は新旧取り混ぜた内容になっているけれど、その選択がいまひとつ地味というか……。少なくても、これを聴けばエレカシの野音がどんなだかばっちりわかるという内容とは言えない。いまひとつ中途半端で、消化不良な気分にさせられる。
まあファンとしては、今までDVDでしか聴けなかった当時のライブの定番 『夢を見ようぜ』 と、名曲 『珍奇男』 のライブ・バージョンが正式に聴けるようになったことを喜ぶべきかもしれない。オールド・ファンとしては、どちらかというと 『上巻』 の方が楽しみだ──本当に出るのなら。
(Oct 11, 2005)
日本 夏
エレファントカシマシ / 2005
二枚同時にリリースされたエレカシの限定販売ライブ・アルバム、こちらは「ロック・イン・ジャパン・ライブヒストリー」だそうだ。音響的に野音のそれよりもエコーが強くかかっていて、マイクも遠そうだし、だだっ広い会場でやっているという雰囲気の伝わる音作りになっている。
ライブ盤としてはこちらの方が選曲に気がきいている。 『ガストロンジャー』 と 『男は行く』 という、中期以降の代表曲を最初と最後に配し、前半はポニーキャニオン時代のヒット曲、後半はそれ以降の代表ナンバーという構成。 『野音 秋』 よりもエレカシの全体像を、よりくっきりと伝える内容になっていると思う。まだ歌詞がつく前の 『歴史』 が、 『歴史前夜』 と銘打たれて収録されているのもおもしろい。
個人的には一度も見たことのないロック・イン・ジャパン・フェスティバルよりも、毎年見ている野音の方が愛着があるのだけれど、アルバムとしての内容的にはこちらの方が断然おもしろい。ということで、どちらかを選べと言われたらば、僕はこっちを選ぶ。
(Oct 11, 2005)
Arular
M.I.A. / 2005
サマーソニック05での活気あふれるステージに強い印象を受けたため、聴いてみたくなった女性アーティスト。本名は Maya Arulpragasam (マヤ・アルプラガザムと読むらしい)。両親がスリランカ出身で、幼少の頃に当地の内乱を経験、父親も運動家という過激な出自の人らしい。ステージがとてもやんちゃな印象だったので、さぞや若いんだろうと思っていたところ、かつてはエラスティカのセカンド・アルバムのヴィジュアルを担当したこともあるという記事を発見。どうやらそんなに若くはないらしい。なんでもネットで調べたところだと28歳だそうだ。
肝心の音の方はラフな音作りのエレクトロ・ヒップホップという感じで、ライブに比べると思いのほか、おとなしめな印象だった。適切なたとえではないかもしれないけれど、グウェン・ステファニーのソロ・ナンバー 『Hollaback Girl』 をゲリラ的なサウンドで鳴らせてみせた、みたいな印象の曲がずらりと並んでいる。残念ながらライブで見たときほどのインパクトは受けなかったけれど、もしかしたら繰り返して聴いていると癖になるかもしれない。そんな風に思わせる作品ではある。
(Oct 11, 2005)
The Cookbook
Missy Elliot / 2005
ミッシー・エリオットといえば、デビュー盤をリアルタイムで聴いたにもかかわらず、どこがいいのかさっぱりわからずに、それっきりになってしまったアーティストだ。僕がヒップホップがわからないことの決定的証拠とも言えそうな、その後の彼女の快進撃については語るまでもない。今や女性ヒップホップ・アーティストの第一人者として、ブラック・ミュージック界の頂点に君臨している一人だろう。
これはそんな彼女の(おそらく)5枚目のアルバム。僕が手前勝手に抱いていた
でもこれはこれで、なかなかいいかもしれない。少なくても8曲目の "We Run This" や11曲目の "Can't Stop" など、アッパーなナンバーにはそれなりに惹かれるものがあった。じっくりと聴き込むことができれば、意外と気に入りそうな気がする。一番の問題はやはり時間がないことだ。
(Oct 11, 2005)