2005年9月の音楽
Index
- Here Come The Tears / The Tears
- The Future Embrace / Billy Corgan
- Dynamite / Jamiroquai
- ばらいろポップ / Singer Songer
- 新しき日本語ロックの道と光 / サンボマスター
- Up the Bracket / The Libertines
- ロロサエ・モナムール / ソウル・フラワー・ユニオン
- Dynamite out / 東京事変
- Hotel / Moby
Here Come The Tears
The Tears / 2005
個人的な今年ダントツ一番の注目作、元スエードのブレット・アンダーソンとバーナード・バトラーの新ユニット、ティアーズのフル・アルバム。これを聴かずしてなにを聴くというくらい楽しみにしていた一枚だった。
楽曲はすべて二人の競作、プロデュースはバーナード・バトラー名義ということで、音作りはそのままバーナードのソロ活動の延長線上。ディストーションのノイズを自在にあやつる官能的なリズム・ギターにオーケストラをかぶせた、例のドラマティックな音作りになっている。そこにブレット・アンダーソンの声が乗っかる。それだけでもう過剰に感動してしまう僕がいる。決してこれが時代を揺るがすような重要な作品ではないとわかっても、二人がともにプレーしているという事実の前ではそんなことはどうでもいい気がする。なんだかこのアルバムに関しては妙に思い入れが強くて、冷静な判断ができない。
唯一の問題は収録曲が12曲しかないことだ。とてもじゃないけれど、もの足りない。もっともっと僕はこのバンドの音を聴いていたい。このままこのバンドが上手くいって、二人がいつまでもともに活動を続けてくれるよう、願ってやまない。
(Sep 04, 2005)
The Future Embrace
Billy Corgan / 2005
ビリー・コーガンのソロ・アルバム。打ち込みとギターのみという音作りからいまいち安直な印象を受けて、最初はあまり評価していなかったんだけれど、ライブを観る前に繰り返し聴いていたら、持ち前のメロディ・メイカーとしての才能はそれなりに感じられて、なおかつライブがなかなか素晴らしい内容だったこともあって、最終的には随分と印象を持ち直した。ロバート・スミスが参加しているのもファンとしては嬉しいところ。でもまあ、いずれにせよ僕としては生バンドで活動して欲しい。
(Sep 04, 2005)
Dynamite
Jamiroquai / 2005
ジャミロクアイはデビュー当時からフォローしているにもかかわらず、毎回買うだけ買ってほとんど聴かないバンドのひとつなのだけれど、今回はなぜか違った。いや、今回はいい。たまたま僕の精神状態がジャミロクアイを受け入れられる状態だったということなだけの気もするけれど。とにかくとても気に入って、繰り返し聴いている。ライブも観に行くことに決めたので、これを気に過去のタイトルもきちんと聴き直すつもりでいる。
(Sep 04, 2005)
ばらいろポップ
Singer Songer / 2005
Coccoがくるりのメンバーとタッグを組んで音楽シーンに復活。そのこと自体はとても喜ばしいことなのだけれど、出てきた音は若干僕が期待していたものとは違った。Coccoのソロにあった女性性を爆発させたような楽曲は皆無で、穏やかなポップ・チューンが並んでいる。それもまたCoccoの一面なのだろうけれど、そちら側ばかりだと僕には若干ものたりない。もっと激しい面も見せて欲しかった。それとも既に彼女にはああいう溢れ出す情念は残っていないんだろうか。
(Sep 04, 2005)
新しき日本語ロックの道と光
サンボマスター / 2003
『電車男』 の大ヒットでオタクが注目される中、なおさら株を上げそうなサンボマスターのファーストをようやく入手。なんだ、やはり充分にいいじゃないかこの時点で。
ブレイクのきっかけになったシングル 『そのぬくもりに用がある』 はもちろんだけれど、バラードの 『この世の果て』 なんかもとてもよい。なんとメローな路線でもこんないい曲を書いていたなんて。山口隆、あなどれません。
(Sep 04, 2005)
Up the Bracket
The Libertines / 2003
バーナード・バトラーがプロデュースをしたというし、やたらと注目を集めているようなのでいずれは聴かないといけないと思っていたUKの新人バンド、リバティーンズのデビュー・アルバム。
アルバムのクレジットにあるプロデューサーはミック・ジョーンズだ──ブックレットでひさしぶりに顔を拝んだ。バーナードはおそらくシングルのプロデュースに絡んだのではないかと思うのだけれど、いまいち確かなことはわからない。わざわざネットで調べる余裕もないのでこの話題は保留。まあミック・ジョーンズも好きなアーティストだったわけだし、アルバムもなるほど、話題になるだけあってかなりいい感じだ。いずれセカンドも手に入れて、あわせてじっくりと聴こう──って、そんなのばっかり。
(Sep 04, 2005)
ロロサエ・モナムール
ソウル・フラワー・ユニオン / 2005
フルのスタジオ・アルバムとしては 『スクリューボール・コメディ』 以来4年ぶりとなるソウル・フラワー・ユニオンの最新作。アイリッシュ・トラッドや民謡の血肉化はさらに進んだようで、前作で感じさせたシンセサイザーの音の不自然さがなくなり、とてもバランスの取れた勢いのある音を聴かせてくれている。バンドの代表作と呼ぶにふさわしい充実ぶりだと思う。 『完璧な朝 <ア・ルータ・コンティヌーア!>』 は今年の僕のフェイバリット・ソング・ナンバー1候補の筆頭だ。
(Sep 04, 2005)
Dynamite out
東京事変 / DVD / 2005
椎名林檎の場合、ライブ・ビデオになにかと言うとオフステージのドキュメンタリー映像を挟みたがる。観ているとそこで流れが殺がれてしまうので、僕はいまひとつそうした演出が好きになれなかった。今回はそういう僕のようなファンからの言葉がどこからか届いたのか、ドキュメンタリー映像は 『Dynamite in』 という形で先行してリリースされ、こちらのライブ本編はステージのみを楽しめるという構成になっている。よし、それでこそと我が意を得たりの気分だったのだけれど……。
あけてみれば、そのステージでメンバーの一人一人にどうでもいいようなMCをさせていて、それをきっちりと収録しているので、結局ライブの流れはぶつ切りになっている。なんでああいうことをしちゃうのかな。
バンドでやっているんだから、メンバーそれぞれがアピールすべき、なんていうのは勘違いだと僕は思う。バンドだからこそ、やるべきことをやるべき人がやればいいのであって、どう見てもおしゃべりが得意ではなさそうなメンバーにまでトークをさせるのは、中心人物である彼女の無理強いじゃないんだろうか。そういう点では、やはりバンドとしての構造がいびつだと思わずにはいられない。
というわけでもとよりあまり思い入れのできない東京事変のライブは、やはりそうした面への違和感もあって、予想どおりいまひとつ盛り上がれなかった。そう言えばカバー曲が多いのもネック。どう考えたって林檎さんのオリジナルの方が優れてるんだから、人の曲をやるよりも、もっと自分の曲に誇りを持つべきだ。本人にしてみれば、リスナーには自分以外の音楽にも興味を持って欲しいという思いがあるんだろうけれど、僕くらいの年になると、いまさらそんな風に啓蒙してもらう必要もないし。正直いって、いまさら美空ひばりのナンバーを聴かせてもらっても嬉しくない。
(Sep 04, 2005)
Hotel
Moby / 2005
モービーのアルバムなんて買ったって聴かないのは 『Play』 で証明済みなのに……。そう思いながらも、エアコンがよく効いた感じの涼しげなジャケットと、2枚組豪華スペシャル・エディションが1580円という破格の安さに釣られて思わず買ってしまった新作。
いや、でもこれはそんなに悪くないと思う。モービー自身の淡白なボーカルにも、力みがない分、それゆえの気持ち良さがあるし。世間的にはあまり評価されていないみたいだけれど、僕はこのアルバムがそれなりに気にいっている。ま、それなりにだけれど……。
ただアンビエントと銘打ったボーナス・ディスクについてはまた別の話。こういうのはやはりどうにもよくわからない。宿題とかしながらBGMにかけておくには、まったく引っかからない分、気が散らなくていいのかもしれない。
(Sep 24, 2005)