2013年6月の映画
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ダークナイト ライジング
クリストファー・ノーラン監督/クリスチャン・ベール、トム・ハーディ/2012年/アメリカ/WOWOW録画
やっぱうまいや、クリストファー・ノーランによるバットマン新三部作の完結編。
物語は前作『ダークナイト』での罪をかぶって隠遁生活を送るようになったブルース・ウエィンが、ゴッサムシティを滅ぼそうとするマスクの怪人、ベインの登場により再び表舞台に姿をあらわすという話で、冒頭からノーランらしい映像美で見せる見せ場のオンバレード。
ベインは前作のジョーカーに通じる禍々しさを持った、それでいて戦闘力はバットマンを上回るという、いわばシリーズ最強の敵。そんな強敵にリハビリもせずに立ち向かったバットマンは、当然のごとく一度はけちょんけちょんにされる。そして、たった一人しか脱出した者がいないという、地下の監獄に収容されてしまう。
さて、いかにしてバットマンはそこを脱出し、ベインに雪辱を晴らすのか――。そんないかにも少年ジャンプ的な最後の対決の場面こそが、この映画の最大の見せ場――のはずなのだと思うのだけれど。
これが、正直なところ、いまひとつ。対決の場面自体にけれんみが足りないし、さらにはベインの過去にとってつけたような秘密のどんでん返しがあることで、それまでは文句なしだった悪役としての魅力に水が差されてしまっている。まるで前作のジョーカーの悪役ナンバーワンとしての株を下げちゃいけないから、あえてこちらのキャラを
まぁ、その部分は残念極まりないけれど、それでもあとはもう文句なしの娯楽大作。アン・ハザウェイ演じるキャット・ウーマンも、下手にその成り立ちを説明せずに、単なるスーパー女泥棒としたあたりが潔くて、ミチェル・ファイファーとは違った意味で、とても魅力的だ(ただし、その分ヒロインのマリオン・コティヤールは損をしている気はする)。さらにはゲイリー・オールドマン、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマンという豪華すぎるような脇役陣に、今回新たにジョセフ・ゴードン=レヴィットまでが加わったキャスティングは、もう鉄壁。
三部作としてのまとまりのよさや三作平均での完成度の高さはぴかいちだし、トリロジーの完結編としては、新旧『スターウォーズ』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズと肩を並べる、史上最強の一本ではないかと思う。今回は録画で観てしまったけれど、これはいずれ三部作まとめてブルーレイで買わずにはいられそうにない。
(Jun 17, 2013)
恋とニュースのつくり方
ロジャー・ミッシェル監督/レイチェル・マクアダムス、ハリソン・フォード、ダイアン・キートン/2010年/アメリカ/WOWOW録画
視聴率低迷にあえぐ朝のワイドショーを盛り返そうと悪戦苦闘する女性プロデューサーとそのスタッフらの姿をコミカルに描くロマンティック・コメディ。
まぁ、ロマンティック・コメディとはいっても、主人公がワーカホリックな人という設定で、「ロマンティック」の部分はとってつけたかのよう(相手役はパトリック・ウィルソン)。どちらかというとそちらよりも、レイチェル・マクアダムス演じるワーカホリックなヒロインと、ワイドショーの出演者たちとの丁々発止のやりとりが見どころだと思う。
恋愛そっちのけで仕事に没頭するキャリア・ウーマンの話という点では、『プラダを着た悪魔』に似た感じ。たわいのない話ではあるんだけれど、この手の映画はひさしぶりなので、けっこう楽しめた。
ドジでにぎやかなヒロインが、じつはかなりの敏腕プロデューサーだって設定がいい。ダイアン・キートンらの大ベテランがバカな役どころを体当たりで演じているあたりもとても笑えるし、ハリソン・フォードとダイアン・キートンという大御所ふたりが角突き合わせるシーンは、なにげに貴重だと思う。しっかし、ハリソン・フォードも老けたなぁ……。
ヒロインのレイチェル・マクアダムスは、ウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』で主人公のフィアンセを演じていたり、ガイ・リッチーの『シャーロック・ホームズ』でアイリーン・アドラー役を演じていたりする彼女。要するに、これまでに僕が観た映画では悪女の役ばかりだったのに、ここでは憎めないヒロインをにぎやかに演じていて、なかなか可愛かった。
それにしても、『モーニング・グローリー』というオアシス・ファン必見な原題を、『恋とニュースのつくり方』なんて直球のラブコメ風タイトルに替えちゃう日本の映画配給会社のセンスはあいかわらずだなぁと思う。まぁ、オアシス・ファンがこれを観たら、そのまったくオアシスと無関係な内容にがっかりしそうなので、正しい変更という気がしなくもないけれど。
(Jun 17, 2013)