2013年5月の映画
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J・エドガー
クリント・イーストウッド監督/レオナルド・ディカプリオ、ナオミ・ワッツ、アーミー・ハマー/2011年/アメリカ/WOWOW録画
クリント・イーストウッド監督、ディカプリオ主演による初代FBI長官、ジョン・エドガー・フーヴァーの伝記映画。
一ヶ月ぶりに映画を観るにあたって、なぜこれを選んだかというと、空き容量の少ないわが家のHDDレコーダーに入っている映画のうちで、これがもっとも再生時間が長かった(2時間17分)からという、身も蓋もない理由による。
公私にわたって徹底的な秘密主義者だったフーヴァー長官は、自伝のようなものを残していないらしいので、この映画で描かれる人物像は、伝聞と推測によるものだと思われる。それなのに、フーヴァーをはっきり同性愛者として描いていたりするのがすごい。フーヴァー自身が語ったという武勇伝は嘘ばかりだって言い切っていたりもするし、場合によっては名誉棄損で訴えられそうな内容。まぁ、主人公がすでに故人の上に、未婚で子供もいないから、遺族への配慮などがいっさいいらないってことなんでしょうか。それにしてもすごいなと思う。
物語は晩年のフーヴァーが自叙伝のため、ライターに過去の思い出を語り聞かせているという設定で、時間軸が行ったり来たりする。ディカプリオら主要3キャストが特殊メイクで老け役を演じているのだけれど、なかでもディカプリオの老けっぷりは見事。うちの奥さんなんか、冒頭のシーンでは、それがディカプリオだって気がつかなかったくらいの化けっぷりだった(まぁ、うちの奥さんがおかしいという話もある)。
一方で、フーヴァーの秘書ミス・ガンディ役を演じているナオミ・ワッツは、せっかくの紅一点だというのに、老け役のほうが多い印象で、あまり目立つこともなく、やや気の毒な感あり。
まぁ、ここでのフーヴァーは同性愛者として描かれているので、女性が目立たないのも致し方なしって感もある。アメリカ現代史におけるフーヴァーの業績を縦軸に、彼とその相棒であったクライド・トルソン(アーミー・ハマー)の老後までつづく微妙な同性愛関係を横軸に描いてみせた、ちょっぴり困った感じの異色の伝記映画だった。
(May 12, 2013)
バトルシップ
ピーター・バーグ監督/テイラー・キッチュ、ブルックリン・デッカー、浅野忠信/2012年/アメリカ/WOWOW録画
宇宙から地球侵略にやってきたエイリアンの巨大マシンにアメリカ海軍の軍艦が立ち向かうという、ふざけた設定のアクション映画。
テレビCMで見た、海からエイリアンの巨大マシンがどわーっと襲いかかってくる映像に惹かれて観たいと思った映画だけれど、これはもう突っ込みどころ満載。日本でたとえれば、「宇宙」のつかない戦艦ヤマトでエイリアンと戦っちゃいました、みたいな話なわけで。あまりに突っ込みどころだらけなので、逆にまあいいやって思ってしまうような、そういう作品。
でもまぁ、この映画、序盤で主人公アレックスのバカなナンパ話にまつわるドタバタ・コメディ的なシーケンスを見せてくれていたので、その馬鹿さ加減に免疫ができたみたいで、それほど印象は悪くなかった。
それにしても、『トランスフォーマー』なんかも同じ系統だと思うけれど、こういうご都合主義上等ってB級なアクション超大作がいまのハリウッドの主流なんでしょうか。それはそれで困ったもんだなと思う。
あ、でもその一方で、リアーナが脇役で出ているのをみたりすると、やはりハリウッドは侮れないなとも思う。彼女ほどのネーム・バリューがあるアーティスト、日本だったらば、演技ができなかろうが関係なく、主役に抜擢してこけそうなところだ。それをいち脇役に甘んじさせているところには、ハリウッドの矜持を感じた。
いや、リアーナの演技は悪くないです。それどころか、終始軍服姿にもかかわらず、とてもかわいい。思わずファンになりそうなくらい。
(May 27, 2013)
トゥルー・グリット
ジョエル&イーサン・コーエン監督/ジェフ・ブリッジス、マット・デイモン、ヘイリー・スタインフェルド/2010年/アメリカ/WOWOW録画
僕はあまり西部劇が好きではないので、コーエン兄弟の作品だとはいえ、観るまではいまいち気が進まなかったのだけれど、観てみれば、そこはさすがにアカデミー賞10部門ノミネートって作品。さすがに見ごたえがあった。
この映画はジョン・ウェイン主演の『勇気ある追跡』という作品のリメイクとのこと。そう聞くとそっちの映画と見比べてみたくなるけれど、なにせ時間がたりなくて、観てない映画が百本以上ある現状では、なかなかそうもいかない。まぁ、コーエン兄弟ファンの僕としては、どちらにせよこちらに軍配を上げるのだろうから、比べるまでもない気もする。
この映画はいまどきの作品だけあって、映像は深みがあってきれいだし、キャストも癖のある芸達者な人たち揃いだし、演出は冴えているしで、言うことなし。とくにアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたジェフ・ブリッジスの化けっぷりは見事だ。まぁ、マット・デイモンにしろそうだけれど、衣装やメイクのせいで、名前を聞かなかったらその人だって気づかないって話もあるけれど。
十四歳の女の子、ヘイリー・スタインフェルドの演技もあっぱれ。決して美女って感じではないのに、演技がいいので、観ているうちにだんだんかわいく思えてくる。コーエン兄弟のテンポのいい演出にベストマッチのキャスティングだと思った。
なんにしろ、西部劇が苦手な僕にまた観たいかもと思わせた点で、クリント・イーストウッドの『許されざる者』や『アウトロー』と並ぶ貴重な作品。
(May 27, 2013)