2013年4月の映画
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ドラゴン・タトゥーの女
デヴィッド・フィンチャー監督/ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ/2011年/アメリカ/WOWOW録画
この映画、デヴィッド・フィンチャーの監督だということもあって、原作を読むまでは、けっこう楽しみにしていたのだけれど、先に原作を読んでしまったもので──しかもそれがめったにないくらいの素晴らしい出来映えだったもので──どうがんばってもこの原作を超えるのは無理だとしか思えなくて、あまり期待するのをやめた。
そしたらやはり……。原作にとても忠実な、良心的な映画だとは思うのだけれど、そこ止まり。なまじストーリーが原作どおりな分、話の展開が駆け足になってしまっている感じで、いまいち楽しみきれなかった。
たとえば、原作では非常にインパクトがあった聖書のモチーフや、押し花の謎、殺人犯の正体があきらかになる場面などが、この映画だと、どれもあまりにあっさりと描かれ過ぎている。ミステリ映画は謎が解ける瞬間のインパクトをいかに見せるかがポイントだと思うので、その点でこの映画は僕にとってはもの足りなかった。
でもまぁ、そう思うのもこれをミステリ映画だと思えばこそで、べつにミステリだなんて思わないで、ふつうのサスペンス・スリラーだと思って観るならば、決して悪い出来の映画じゃないと思う。映像は文句なしにきれいだし、部分的にアレンジはしてあるものの、物語は基本、真面目すぎるくらいに原作どおりだし。
それなのにどうにも肯定的になれないのは、これはもう原作がよすぎるがゆえ。そして僕が本好きであるがゆえの不満でしかない気もする。そんなやや不憫な作品。もしかしたら、原作の内容を忘れたころに見直すといいかもしれない。
そうそう、この映画でもっとも感心したのは、『ドラゴン・タトゥーの女』というタイトルにふさわしく、リスベットがとても存在感があったこと。原作ではミカエル中心に話が進んで、リスベットは準主役って印象だったけれど(そう思ったのは俺だけ?)、この映画では、ちゃんと両者が肩を並べている。その点はいいと思った。
(Apr 08, 2013)