2011年4月の映画
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インセプション
クリストファー・ノーラン監督/レオナルド・ディカプリオ、エレン・ペイジ/2009年/アメリカ/レンタルBD
これは噂にたがわぬ傑作だった。クリストファー・ノーラン、いまやエンターテイメントを撮らせたら敵なしという感じ。
人の夢の中に忍び込んで機密情報を盗み出すプロ(つまり夢泥棒?)のディカプリオが、ワタナベ・ケン演じる胡散くさい日本人事業家から依頼されて、とある大企業の御曹司に嘘の記憶を植えつける(=インセプション)という難しい仕事に挑むという話で、要するに主要なアクションはすべて夢のなかの話。それゆえCGを多用した超常的なアクションや破壊シーンなど目白押しの派手な展開。でもシナリオが見事で、そうした映像のすごさとがっちり話が噛みあっている。
しかもこれ、単なるアクション・スリラーにとどまらない多面性があるところもすごい。ある意味では古典的な純愛映画でもあるし、それでいて適度に笑える要素もあるという(とんでもないことが起こっているのに、じつはみんな寝ているってシチュエーションがけっこう苦笑を誘うのです)。このそこはかとないユーモアの感覚はポイントが高かった。
あと、ネタばれになってしまうけれど、とくに素晴らしいと思ったのが、あれだけのカタストロフィを用意しながら、最後まで主要キャラクターがひとりも死なないこと。おかげで散々ハラハラドキドキしたあとで、ホッとできる。やっぱ娯楽映画はこうでないと。ここんところはぜひローランド・エメリッヒに見習わせたい。彼にこういう善良さがあったら 『2012』 とか、もうちょっといい映画になっていると思う。
この映画は配役も魅力的だ。主演のディカプリオはまあいいとして(失礼)、ヒロインのエレン・ペイジ(『JUNO/ジュノ』)は「こんな可愛い子だったっけ?」って感じだし、『(500)日のサマー』のジョゼフ・ゴードン=レヴィットも、あの映画の頼りないロック・オタクぶりから一転、ディカプリオの相棒役で飄々とした演技を見せている。このふたり、僕はすごい好きだ。われらが日本の渡辺謙もなかなか存在感があっていい役どころだし(痛そうだけれど)、ディカプリオの奥さん役のマリオン・コティヤールも難しい役どころを妖艶に決めている。
ということで、これはシナリオ、映像、配役と三拍子そろった、文句なしの傑作。レンタルで観ちゃったけれど、これはBD買わないといけません。いますぐもう一度観直したいくらい。
(Apr 10, 2011)
8 1/2
フェデリコ・フェリーニ監督/マルチェロ・マストロヤンニ、アヌーク・エーメ/1963年/イタリア/BS録画
超豪華女優陣の競演で話題になった『NINE』 が、この映画をミュージカル化したものだというので、それならとりあえずこっちを先に観ておいたほうがよかろうと思ったイタリアの名画。
内容は温泉地で新作の構想を練っている映画監督が、行き詰まって見る妄想と追憶と現実とが入り混じった現実逃避のヴィジョンを映像化した、とでもいった感じ。
監督は 『道』 の巨匠フェデリコ・フェリーニで、主演のマルチェロ・マストロヤンニはいい男だし、出てくる女優さんも 『男と女』 のアヌーク・エーメや 『ピンクの豹』 のクラウディア・カルディナーレほか、美女ばかり。でもって、映画自体はエンターテイメントよりも文学寄り。こりゃ名画と呼ばれるのも当然って映画なんだろうけれど。
残念なことに、ぴんとこない。決してつまらなくはなかったけれど、かといって気に入ったともいいがたい。やはり僕はイタリアの映画って駄目みたいだ。
まあ、そんな中でもおもしろいなと思ったのは、バーバラ・スティールという若くてセクシーな女優さん。映画のプロデューサーかなにかの年の離れた婚約者という役どころで、あまりに思わせぶりな登場をしたので、よほど名前の売れた人なのかと思ったら、そうでもなかった。
結局、終わってみれば主人公との絡みもそれほどなかったし、なんであんなにフィーチャーされていたんだろうと不思議に思って調べてみたら、どうやら彼女は当時のイタリアの映画界では、ホラー映画の絶叫クイーンとして人気だったらしい。
要するにあの大げさな登場シーンは、「うわ、この娘がフェリーニの映画に!」というインパクトを狙ったものなんでしょう。つまり受け狙い? 巨匠、意外とお茶目かもしれない。
(Apr 30, 2011)