2008年8月の映画
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イン・アメリカ 三つの小さな願いごと
ジム・シェリダン監督/サマンサ・モートン、パディ・コンシダイン/2002年/アイスランド、イギリス/BS録画
ウディ・アレンの 『ギター弾きの恋』 で口がきけないヒロインを好演していたサマンサ・モートンが主演だというので、観てみようと思った作品。 『父の祈りを』 のジム・シェリダン監督による自伝的映画だとのことで、アイルランドからアメリカに(不法移民として?)渡ってきた四人家族──パディ・コンシダインとサマンサ・モートンの夫婦に、幼い姉妹ふたり──が、新天地での貧乏生活に泣いたり笑ったりしつつ、懸命に生きてゆく姿をいきいきと描いている。
お目当てのサマンサ・モートンは、もとより美形とまでは言えないところへきて、髪を坊主頭に近いくらいにばっさり切ってしまっていて、あまり可愛いとは言えなかったけれど、その分は彼女の娘役のふたりの女の子、サラ・ボルジャーとエマ・ボルジャーが補ってあまりある。いや~、このふたりが可愛いこと、可愛いこと。やっぱりこういう子供たちがいたら、親はがんばらないといられないよなあと思う。ちょうど上の子が僕の子供と同じ年頃なので、なおさら共感してしまった。
この子たち、ラストネームが同じだと思ったら、やはり実の姉妹だそうだ。自分たちの幼い娘たちが、こういう素晴らしいフィルムで競演しているというのは、実の親にとってはまたとないこと幸せなだろう。だってこんな素敵な映画を、ホーム・ムービー代わりにできちゃうのだから。ちょっとうらやましい。
僕が一番気に入ったのは、上の子のクリスティが学芸会かなにかでステージに立って、イーグルスの 『デスペラード』 を独唱しているシーン。これはその舞台を撮影したホーム・ムービーを観つつ、当時のことを思い出しているという回想シーンになっていて、彼女の幼くもしっかりとした歌声が映像と非常に見事にマッチしていて、とても感動的だった。おかげでそれ以来、 『デスペラード』 が聴きたくなってしまって困っている。近いうちにイーグルスのベスト盤を買うことになりそうな雲行き。
(Aug 15, 2008)
サイドウェイ
アレクサンダー・ペイン監督/ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ/2004年/アメリカ/DVD
アカデミー賞には脚本家に与えられる賞がふたつある。ひとつは普通の「脚本賞」で、これは映画のために書かれたオリジナルのシナリオに送られるもの。もうひとつは「脚色賞」と訳されていて、小説などの原作が別にあるシナリオは、こちらの対象になる。
この 『サイドウェイ』 は2004年に後者の最優秀「脚色賞」を取った作品で(つまり原作があるらしい)、主演は最近の僕のお気に入り、ポール・ジアマッティ。しかも彼の役柄がワインおたくだとのことで、物語のなかにたっぷりとワインが出てくる──そうと聞いては、観ないわけにはいかない。
この映画でポール・ジアマッティが演じるのは、作家をめざすワイン通の中学教師、マイルス。親友のジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)が結婚することになったので、独身最後の一週間を親友どうしでめいっぱい楽しもうと、二人でおんぼろ車を転がして、カリフォルニア漫遊の旅に出る。
表向きは「ワインとゴルフ三昧の旅」のはずだったのだけれど──というか、マイルス自身はそのつもりだったのだけれど──、女好きのジャックの最大の目的はナンパ。彼は結婚前の最後のお楽しみを求めて、いやがるマイルスをよそに、ワイン・ショップを営むステファニー(サンドラ・オー)を口説き始める。いまだに2年前に別れた奥さんのことを忘れられないでいるマイルスも、ジャックに引きずられるようにして、旧知の女性マヤ(ヴァージニア・マドセン)といいムードになるのだけれど……。
女と寝るために調子のいい嘘をつきまくるジャックの無節操さと、2年も前に別れた奥さんのことでいまだにイジイジしているマイルスのコントラストで、なんとも情けない笑いを誘うこの映画。正直なところ、それほど趣味のいいコメディだとは思えないし、ジアマッティの役どころも真面目すぎて、あまりおもしろみがない。それでも、とにかくワインを飲むシーンはたっぷりとあるので、一緒に酔っ払いながら友人の失敗談を聞いているような感覚で観るにはいい映画かもしれない。いや、というか、酒好きの人は絶対に素面で観ないほうがいい作品。
もちろん、僕はこの映画を観ながらひとりでワインを一本、
(Aug 29, 2008)