2006年4月の映画
Index
ティム・バートンのコープス・ブライド
ティム・バートン監督/2005年/アメリカ/DVD
ティム・バートンがひさしぶりに手がけるストップ・モーション・アニメーション。ひさしぶりといっても『ナイトメア・ビフォー・クリスマス』と『ジャイアント・ピーチ』はプロデュースのみだったから、自ら監督をつとめるのはこれが初めてのはずだ。
しかしながらせっかく自ら乗り出したにもかかわらず、コンセプトが『ナイトメア~』と近過ぎて、あの傑作とくらべずにはいられない。おかげでやや分が悪い印象。音楽が少なめなのも淋しい。決して悪い作品ではないのだけれど……。
(Apr 02, 2006)
スーパーサイズ・ミー
モーガン・スパーロック監督/2003年/アメリカ/DVD
肥満体の少女二人が、太ったのはマクドナルドのせいだといって起訴を起こしたというニュースを聞いた監督のスパーロックが、本当にマクドナルドは健康に悪いのか、実際に確かめてみようと思い立ち、30日間、朝昼晩三食をマクドナルド商品でのみ摂取していたらどうなるかを、自ら実験してみせたドキュメンタリー・ムービー。
これはもう、こういうばかばかしい実験をやってみようと思った時点で勝ち。スパーロックの流暢な語り口も良くて、とても楽しい──というのもとても変な話なのだけれど、やはり苦笑せずには見られない──ドキュメンタリーに仕上がっている。ただ個人的には胃を小さくする手術の生々しい映像が余計だと思った。なまじほかが食べ物の話だけに、とても気持ち悪い。
(Apr 02, 2006)
ビューティフル・マインド
ロン・ハワード監督/ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー/2001年/アメリカ/BS録画
これはかなり意表を突かれる内容の映画だった。いや、普通に実話だと知って見ていればそんなことはないのかもしれないけれど、なるべく事前情報なしで観ることをモットーとしている僕には、これが「数学者を主人公にしたアカデミー賞受賞作」だという程度の知識しかなかった。それこそ実話に基づく映画だということも知らなかった。そうしたらば途中で主人公が政府のスパイとなり、マイクロチップを埋め込まれたりするという、めちゃくちゃ意外な展開に……。実は『Xファイル』ばりの政府陰謀説サスペンスかと、思いがけない内容にあっけにとられることになった。
けれどもそんな風に必要以上にハラハラドキドキさせられたおかげで、僕がこの映画を予想外に楽しめてしまったのも確かなところ。終盤、ラッセル・クロウ演じる主人公のジョン・ナッシュがすっかり年をとってから──アカデミー主演男優賞もなるほどという見事な老け役ぶり──、若い学生と初めて交流を持つシーンがとても素敵だった。彼の妻を演じるジェニファー・コネリーもむちゃくちゃ綺麗だし。
監督のロン・ハワードはこの他にも『アポロ13』──去年見たのになぜか感想を書き忘れている──や『シンデレラマン』など、実話をベースにした映画をいくつも撮っている。実話好きな人らしい。
野次馬的におもしろいなと思うのは、ジェニファー・コネリーがこの映画のあと、ナッシュの“親友”チャールズ役を演じたポール・ベタニーと結婚したという話。この映画の彼の役回りを知っていると、そんな結婚ってあり?、という妙な気分になっちゃうけれど。
(Apr 02, 2006)
ブリジット・ジョーンズの日記
シャロン・マグワイア監督/レニー・ゼルウィガー、コリン・ファース、ヒュー・グラント/2001年/アメリカ、イギリス/DVD
三十過ぎのちょっぴり太めな──よく言えばグラマラスな?──独身女性に思いがけず巡ってきたハンサムな男性二人との三角関係をコミカルに描くロマンティック・コメディ。
「等身大の女性の本音を赤裸々に語って熱い共感を得た」みたいな肩書きがつくタイプの映画だと思うのだけれども、ところがこの主人公のブリジットさん、酒はがぶがぶ、タバコぷかぷか。おしゃれはしているようだけれども、そのセンスがいいとは思えないし。少なくてもこんな女性って僕のまわりには一人としていない。本当に彼女に共感した女性が多いのか、僕は疑問に思う。どっちかというと、あそこまでだらしなく生きられて、それでもあんな素敵な男性たちに愛されるような人生って最高、みたいな形でうけた映画なのかもしれない。さもないと逆に大いに反感を買いそうな気がする。
ただそんなことを言いつつ、酒とタバコが大好きな僕は、男性でありながらも、そんな彼女に変に共感してしまったのだった。オープニング・クレジットで、酔っ払った彼女がワイングラス片手に、セリーヌ・ディオンでヒットしたエリック・カルメンの大げさなバラード──誰が歌っているのか知らない──を聴きながら、ドラムロールの真似をしているシーンとか、社内パーティで酔っ払って、マライア・キャリーの歌を歌っているシーンとか、最高に好きだ。おかしいことはおかしいのだけれど、あまり他人事だと言って笑っていられないところに自虐的な味わいがある。滑稽な痛々しさが漂っている。女性を描いてそんな風に思わせてくれる映画はあまりない。それだけでも貴重だと思う。
いずれにせよこの映画はレニー・ゼルウィガーを主役に迎えて大正解だった。『シカゴ』で初めて彼女を見たときには、特別きれいでもないのに、なんでこの人が主演なんだろうと不思議に思ったものだけれども、この映画の主役は文句なし。彼女なしではこの映画の成功はありえない。やはり特別きれいだとか可愛いとか思わないのだけれど、それでいてなぜかちゃんと魅力的に見えるのだから不思議だ。もっと彼女の出ている映画を見てみたくなった。
(Apr 16, 2006)