2005年10月の映画
Index
- 24 -TWENTY FOUR-
- オーシャンズ12
- 引き裂かれたカーテン
- トパーズ
- あなただけ今晩は
- フレンジー
- ピーウィーの大冒険
- カサブランカ
- フィール・ライク・ゴーイング・ホーム
- ファミリー・プロット
- ガス燈
24 -TWENTY FOUR-
スティーヴン・ホプキンズ監督ほか/キーファー・サザーランド/2001~2002年/アメリカ/DVD
物語の始まりは深夜0時。初の黒人大統領候補、パーマー上院議員(デニス・ヘイスバート)の暗殺計画が発覚、CTU──テロ対策ユニット Counter Terrorist Unit の略だそうだけれど、実際にはそんな機関は存在しないとのこと──の主任ジャック・バウアー(キーファー・サザーランド)にオフィスからの招集がかかる。彼は黙って家を抜け出した一人娘キンバリー(エリシャ・カスバート)の行方を案じながら職場へと向かう……。
とにかく視聴者の裏をかくこと、それだけに専念しているかのようなシナリオにまいった。そこまでやるかと思う。続きが気になるのは確かだけれど、24時間──コマーシャルの分がはしょられるので、実際は18時間──もつきあわされるんだから、もっと見終わったあとに気分が良くなるような展開にして欲しかった。確かにとてもおもしろい。けれど、一方でとても疲れる、ひどいドラマだとも思う。最後の最後までああいう展開だとなぁ。最後くらいは、ああ疲れた、長い一日だったけれど、ようやく終わったと、ほっとした気分にさせて欲しかった。そうすれば間髪いれずにセカンド・シーズン以降にも飛びついたものを。あれではどうにも疲労感の方が強く残ってしまって、すぐに次のシーズンをという気にはなれない。
とかいいつつ、ニーナ・マイヤーズ(サラ・クラーク)が好きだった僕としては──彼女の冷静で涼しげな立ち振る舞いはとても魅力的だった──、ニーナがこの先どうなるのか気になるところでもあるので、今後のシリーズもそのうちに見たいとは思っている。とりあえずもうしばらく先に。
(Oct 08, 2005)
オーシャンズ12
スティーヴン・ソダーバーグ監督/ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット/2004年/アメリカ/DVD
前作の敵役ベネディクトから盗んだ金を返すよう脅されて──そんな展開ってあり?──ヨーロッパへと稼ぎに出かけたオーシャンとその仲間たちに、フランス人の怪盗が勝負を挑んでくる、というお話。
ラスティといわくありの女刑事イザベル役で、キャサリン・ゼタ=ジョーンズが──いままでに僕が見たことのある彼女の映画の中では──初めて普通に魅力的な女性を演じている。平凡な僕はこの映画の彼女が一番好きだ。もともと綺麗な人だと思っていただけに、いい役を演じてくれているので魅力倍増というところだった。
ジュリア・ロバーツも自分で自分を演じるという裏技で笑わせてくれているし──その関係で某大物俳優が友情出演しているのも嬉しい驚きだ──、この映画は女性陣の活躍が印象的だった。
まあ、豪華な出演者の割に、これといった盛りあがりには欠ける作品なので、あまり期待すると肩透かしを食うだろうけれど、個人的には軽いユーモアたっぷりで気楽に楽しめるから、それなりに気にいっている。
(Oct 08, 2005)
引き裂かれたカーテン
アルフレッド・ヒッチコック監督/ポール・ニューマン、ジュリー・アンドリュース/1966年/アメリカ/DVD
東側の最新兵器の秘密を探るべく、亡命をよそおって東ベルリンに潜入した大学教授アームストロング(ポール・ニューマン)。ところが彼の素行を不審に思った婚約者のセーラ(ジュリー・アンドリュース)が一緒についてきてしまったから、さあ大変。二人が秘密を探り出して脱出するまでの顛末をスリリングに描いたサスペンス・スパイ・スリラー。
最初のうちはやたらと冗長でだらだらした感じがして、こういうのは後期ヒッチコックの典型だなあとか思って、あまり楽しめなかったのだけれど、半分を過ぎたあたりからは、さすが巨匠と思わせる盛りあげぶりで、がぜん楽しめるようになった。特に
終盤で二人を助けるポーランドの伯爵夫人が最後にちゃんと亡命できていれば、もっと気分が良かったのだけれど。そうならなかったのがやや残念なところだった。
(Oct 08, 2005)
トパーズ
アルフレッド・ヒッチコック監督/フレデリック・スタフォード、カリン・ドール/1969年/アメリカ/DVD
キューバ危機を時代背景として、アメリカ、キューバ、フランスと舞台を移しながら、フランス人スパイの諜報活動の顛末を描く作品。タイトルとなった「トパーズ」は、ソ連に内通するフランス政府内の極秘機関の名前。
冒頭に事件の発端となるソ連高官の亡命事件が延々と描かれる。パッケージの作品紹介には「手に汗握る亡命シーン」とか書いてあるけれど、正直なところ、この部分がすごく蛇足に思える。この時期のヒッチコックの作品は、どれも2時間を超える上映時間を確保するためといわんばかりの無駄なシーンが多いような印象をうける。この人の場合、下手に長くするよりは、テンポよく短めにまとめた作品の方がおもしろい気がする。
主人公デブロー(フレデリック・スタフォード)の娘役の女優さん、どこかで見た顔だと思ったらば、トリュフォーの『夜霧の恋人たち』でジャン=ピエール・レオの恋人役を演じていたクロード・ジャドだった。あと『ニュー・シネマ・パラダイス』のフィリップ・ノワレや、『軽蔑』のミシェル・ピコリも出演している。この人たちの場合、年齢のせいもあるのだけれど、どちらも印象が違いすぎて、キャスティングを見るまで気がつかなかった。
この映画、DVDの特典映像「もうひとつのエンディング」が笑える。本当にあんな変なエンディングを撮影していたという事実がおかしい。それに「もうひとつ」といいながら、ひとつじゃないところも失笑を誘う。こんなにあれこれ撮ってたのかと。本編の出来はいまひとつながら、変なところでうけてしまった。
(Oct 09, 2005)
あなただけ今晩は
ビリー・ワイルダー監督/ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン/1963年/アメリカ/DVD
真面目で世間知らずの新任警官ネスター・パトゥー(ジャック・レモン)は、なにも知らずに娼婦街を摘発して、その場にいた上司の不興を買ってしまい、くびに──。途方に暮れて足を踏み入れたバーで、娼婦イルマ(シャーリー・マクレーン)のヒモと喧嘩になった彼は、まぐれあたりで相手をのして、イルマのヒモの座に納まる幸運を得る。けれどイルマに本気で惚れてしまった彼は、彼女がほかの男に抱かれるのが我慢できない。彼女を独占するため、苦しまぎれの奇策を搾り出した。
娼婦を主人公にこんな風なあっけらかんとした映画を作れちゃう精神というのもなんだかすごいものがある。舞台をフランスにしたのは、かの地にはこうした風俗が根づいているからなのか、それとも余所の国の話だから、自分たちには関係ないよと開き直っているのか。そんなこんなを考えていると、おもしろい映画だと思う一方で、素直に楽しめない部分がある。それは僕がまだ未熟だからなんだろうか。
それはそうと、All Movie Guide でこの映画の情報を調べていたら、同じ Sex Comedy のジャンルの作品に『卒業』があったのには驚いた。自分には関係のないジャンルの映画だという先入観があって、一度も見たいと思ったことがないのだけれど、『卒業』ってコメディだったんだ……。
(Oct 10, 2005)
フレンジー
アルフレッド・ヒッチコック監督/ジョン・フィンチ、バリー・フォスター/1972年/イギリス/DVD
サイコと同じく、悲鳴をあげている女性の顔をアップにしたDVDのパッケージがすごいので、シリアスな連続猟奇殺人事件の話だと思って、いまひとつ気乗りしないで見始めた映画だったのだけれども。ところがどっこい、これがブラック・ユーモアがたっぷりと盛り込まれた、実にヒッチコックらしい、おもいしろい映画だった。
カメラの巧みな使い方で評判のヒッチコックだけあって、この作品でもおっと思うようなカメラワークが見られる。最初の殺害シーンのあとで被害者の死体が発見される場面、そして二人目の女性が殺害されることになる前の場面。どちらも実際の殺害場面の描写を行わず、登場人物が入っていったあとの、建物の入り口をえんえんと写し続けることで、その中で行われている出来事を観客に想像させる。想像させることにより、実際に描写した場合とはまたちがったスリルを生み出している。
あと素晴らしいのが、犯人が訳あって死体を隠したイモ袋とともにトラックの荷台に乗り込むシーン。当然のごとくトラックは犯人を乗せたまま出発してしまい、犯人は大変な目に合うことになる。これが滑稽かつスリリングかつグロテスクで本当に上出来だ。『ハリーの災難』の解説に、ヒッチコックは「殺人は喜劇である」と豪語していたという話があったと思うけれど、このシーンではそれをまさに実践してみせてくれている。
そのほかのコミカルな要素では、事件を担当する警部(アレック・マッコーウェン)が、お笑い担当という役回りを演じている。彼の出てくるシーンはすべて滑稽味を帯びていて、基本的には陰惨な殺人事件の話に、別の味わいを加えている。珍妙な料理に凝っている奥さんとの会話がとても楽しい。彼が作品の幕を引く役割を務めることもあって、地味で登場シーンも決して多くないわりには、この夫婦が一番存在感があった気がした。
そうそう、忘れちゃいけない。この映画は予告編が必見だ。あの巨匠がテムズ河にぷかぷかと浮かんでいる。ヒッチコック、やってることがすご過ぎる。
(Oct 16, 2005)
ピーウィーの大冒険
ティム・バートン監督/ピーウィー・ハーマン/1985年/アメリカ/DVD
ピーウィー・ハーマンは子供向けコメディ番組の人気キャラクターだそうで。この変人を演じるポール・ルーベンスは、その後、破廉恥行為で警察に捕まって、番組を降ろされてうんぬん、という話もあるようだけれど、まあそんな話はさておいて。
この映画はなんとも形容にこまるティム・バートンの長編デビュー作。実際、見始めてから最初の15分くらいで、こまった気分にならない人は少ないと思う。ピーウィーがツール・ド・フランスに乱入して優勝をかっさらってしまうという夢を見ていましたという、『男をつらいよ』のようなオープニング。目を覚ましたピーウィーはいきなり部屋中にちらばった子供のおもちゃで嬉々として遊び始め、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ばりのからくり仕掛けでつくった朝食を食べたあと、お気に入りの特製自転車で遊びに出かける。なんだかとても見ちゃいけないものを見ている気分にさせられる映画だ。
でもまあ、その後ピーウィーが命よりも大事な自転車を盗まれて、インチキ占い師の言葉を頼りにそれを探しにでかけるあたりになると、もうすっかりこの映画の変なリズムに慣らされてしまって、それなりに笑いながら見られるようになっている自分がいる。終わってみれば、最初のこまった感も忘れていて、まあこれも悪くないじゃないかと思っていたりする。少なくても人気コメディアン主演の長編映画という点では、上出来の部類に入るんじゃないかとさえ思えたり……。とにかくティム・バートンが好きならば、一度は見ておいていい作品。
(Oct 16, 2005)
カサブランカ
マイケル・カーティス監督/ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン/1942年/アメリカ/DVD
今さら僕が語るまでもない名画中の名画。
カサブランカでアメリカ人オーナー、リック(ハンフリー・ボガート)が経営するクラブに、ある日レジスタンスとして名を馳せるビクター・ラズロ(ポール・ヘンリード)が訪れる。ところが彼の妻イルザ(イングリッド・バーグマン)がなんと、リックがいまだに忘れられずにいるパリ時代の恋人その人だった……。
名曲『時の過ぎゆくまま』を弾く黒人ピアニストのサムが、アップライト・ピアノを引きずって店内を行ったりきたりしているのが妙に可愛い。特にリックにその曲を弾いているのをとがめられ、そそくさと逃げ出す仕種が笑えた。笑うシーンじゃないんだろうけれど。歴史に残る名画をなんだと心得ているんだと怒られそうだ。
ラストシーンでリックが反乱軍に身を投じるというのも、スター・ウォーズを見たあとだとまた感慨深いものが……ない?
(Oct 23, 2005)
フィール・ライク・ゴーイング・ホーム
マーティン・スコセッシ監督/コーリー・ハリス/2003年/アメリカ/DVD
入手するまではとても盛り上がっていたくせに、いったん手に入れた途端に見向きもしなくなってしまったスコセッシ監修『ザ・ブルース』の第四弾。
これはそのなかで唯一スコセッシ自身がメガホンをとったものなのだけれど、ブルースのルーツを探ろうという内容で、僕などは知らないミュージシャンばかりが登場する──名前を知っているのはブルースマンではないサリフケイタくらいという──、言っちゃなんだけれど、とても地味な内容の作品だった。
とりあえずエンディングで流れるサン・ハウスの "John The Revelator" という曲──『ブルース・ブラザーズ2000』の教会のシーンで演奏されていたやつだ──がとても良かった。この人はきちんと聴かないといけない。
(Oct 23, 2005)
ファミリー・プロット
アルフレッド・ヒッチコック監督/バーバラ・ハリス、ブルース・ダーン/1976年/アメリカ/DVD
霊媒師のブランチ(バーバラ・ハリス)が大金持ちの老婦人から行方不明の相続人探しを依頼されて、タクシー・ドライバーとして糊口をしのいでいる売れない役者の恋人ジョージ(ブルース・ダーン)とともに調査を始めてみると、お目当ての人物がなんと現在話題沸騰中の連続宝石泥棒だったからさあ大変、という話。
主演のブルース・ダーンという人、どこかで見た顔だと思ったらば、なんと『華麗なるギャツビー』のトム・ブキャナン役の人だった。しかも宝石泥棒の共犯役のカレン・ブラックという女優さんも、同じ映画でトムの愛人マートル・ウィルソンを演じていた人。なんだか昔の知り合いにばったりと出くわしたようで、ちょっぴり嬉しい。洋画を見る楽しみは、こういう風に、思わぬところで思わぬ俳優さんたちと再会できることにもあると思う。
なにはともあれ、この作品はヒッチコックの遺作となった作品だ。いかにもくだけた、ユーモラスなサスペンスで、出来が特別にいいとは思わないけれど、ヒッチコックの味は十分に堪能できる。なので個人的には気にいっている。
(Oct 29, 2005)
ガス燈
ジョージ・キューカー監督/シャルル・ボワイエ、イングリッド・バーグマン/1944年/アメリカ/DVD
この映画は若い頃にテレビで見て、とてもおもしろかったという記憶があったので、DVD化されて、それが両面ディスクで、裏側には40年に製作されたオリジナル版も収録されていると聞いたら、買わないわけにはいかないだろうという気になった(とかいいつつ、廉価版がリリースされるのを待ったうえに、オリジナル版はいまだに未見だったりするのだけれど)。
この映画でシャルル・ボワイエ演じる旦那のグレゴリーはかなり嫌なやつだ。でもその旦那の悪行をあばく刑事役がジョセフ・コットンで、この人も、悪役を演じた『疑惑の影』の印象が強くて、いまひとつ、いい人だと思えない。なのでなんだか悪いやつらが集まって、なにをやっているんだ、みたいな変な感じを受けてしまった。なんとなく間が抜けている。
それにしてもフランス語読みなんだろうけれど、Charles Boyer と綴って「シャルル・ボワイエ」と読めというのは、英語さえ満足にできない僕には不可能です。
(Oct 29, 2005)