2005年9月の映画
Index
- あの頃ペニー・レインと
- ディナーラッシュ
- 殴られる男
- ストーリー・オブ・ラブ
- アラバマ物語
- オール・ザット・ジャズ
- プライベート・ベンジャミン
- ファースト・ワイフ・クラブ
- オータム・イン・ニューヨーク
あの頃ペニー・レインと
キャメロン・クロウ監督/パトリック・フュジット、ケイト・ハドソン/2000年/BS録画
音楽ライター志望の十五歳の少年ウィリアム(パトリック・フュジット)が、ローリング・ストーン紙の記事を書くため、売り出し中のロック・バンドのツアーに同行するという話。
どうも 『セイ・エニシング』 を観て以来、キャメロン・クロウという人に対しては懐疑的な目を向けないではいられないでいる。どんなに評判が良くても、そのうちのひとつがあの手の80年代的感性まるだしの作品ではなあ、という……。あの時期の雰囲気が──恥ずかしいことだらけの自分の青春時代をいやおうなく思い出させるために──苦手な僕としては、それをシニカルにならずに描ける人というのは、どうにも信用できない気がしてしまう。そんな先入観を持って見始めたのがいけなかったのか、これもいまひとつぴんとこなかった。
とりあえずゴールディー・ホーンの娘さん、ケイト・ハドソンはとても綺麗だ。彼女だけでも観る価値はあると思う人もいるだろう。加えて、70年代のロックバンドのツアーの雰囲気やジャーナリズムの風潮を再現している点で、ロック・ファンにとっては興味深い映画であるのは間違いない。
そのほか、目を引くところでは、フランシス・マクドーマンドが主人公の母親役をつとめている。 あと、『X-MEN』 のアンナ・パキンがバンドを取り巻くグルーピー役の一人として出演していて、なんと主人公の童貞を奪おうとしちゃっていたりする。
(Sep 04, 2005)
ディナーラッシュ
ボブ・ジラルディ監督/ダニー・アイエロ 、エドアルド・バレリーニ /2000年/BS録画
ニューヨークのイタリアン・レストランの一夜を描く、スタイリッシュなギャング映画。
ヤクザ稼業から足を洗ってイタリアン・レストランを経営するルイス・クローパ(ダニー・アイエロ)のもとに、縄張り拡張を目論むマフィアの若造が店を譲り渡せと言ってきた。店はルイスの息子ウード(エドアル・バレリーニ)のニューベル・キュイジーヌな料理で大評判。その夜も満席の大盛況で、厨房はてんてこ舞い。おかげでいろんなことが起こることになる。
この映画は国内盤のDVDのパッケージがいい。珍しく本国のものよりも全然いい。そのデザインに惹かれて観てみたいと思っていた作品だったのだけれど、これはあたり(買ってないっすが)。全体的なせわしないリズムが、とても好みだった。
珍しいところでは 『キング・オブ・コメディ』 のダイアン・アボットが店を訪れる料理評論家役で出演している。あとは 『ドゥ・ザ・ライト・シング』 のアイエロを除くと知らない人ばかり。
(Sep 04, 2005)
殴られる男
マーク・ロブソン監督/ハンフリー・ボガート/1956年/BS録画
ボガートが演じるのは金につられて八百長ボクシングの広報担当を引き受けた元新聞記者エディ。売り出すべきアルゼンチン人のトロ(マイク・レイン)はずぶの素人で、身体が大きいだけの
エディは八百長に荷担していることへの罪悪感と、貧乏な家族のために金を稼ごうというトロへの同情の板ばさみになって、身動きがとれなくなる。最終的に彼がトロのために自分を犠牲にして、悪徳プロモーターたちと戦う決意をするエンディングがこころよい。
この作品がボガートの遺作だそうだ。享年58歳。なんだよ、むちゃくちゃ若いじゃないか。いまさらながら本当に惜しい人を亡くしたと思う。当時の映画ファンのショックは想像に難くない。
(Sep 04, 2005)
ストーリー・オブ・ラブ
ロブ・ライナー監督/ブルース・ウィリス、ミシェル・ファイファー/1999年/BS録画
ブルース・ウィリスとミシェル・ファイファーが離婚を考えている夫婦の役を演じている。二人は子供たちへの影響を心配しながらも、結婚生活に終止符を打つ以外にないと考え、子供たちがサマー・キャンプで家を離れている期間を利用して、別居生活を始める。離れ離れの暮らしのなかで、お互いの不在を強く意識する二人。やがてキャンプが終わり、子供たちに離婚することを伝えないといけない日がやってくる……。
『スタンド・バイ・ミー』、 『恋人たちの予感』 のロブ・ライナーが描く、ありふれた夫婦の物語。よくある話だけに見せ方や演技が重要になってくる。それゆえだろう、ウィリスたちがカメラに向かって語りかけるシーンや、夫婦とその両親二組(の幽霊?)がベッドに並んで意見を戦わせるシーンなどに、ささやかな実験的手法が凝らされていて、意外と僕の好みにあう作品だった。
最後にミシェル・ファイファーが感情を爆発させるシーンには、思わずほろりとしてしまった。いやはや、お恥ずかしい。こりゃ好きだと白状せざるを得ない。
(Sep 04, 2005)
アラバマ物語
ロバート・マリガン監督/グレゴリー・ペック/1962年/BS録画
人種差別に関する言及があると必ず名前が挙がるので、スパイク・リーや法廷劇好きの人間としては、一度は見ておかないといけないだろうと思っていた作品。
アラバマの片田舎の弁護士のアティカス・フィンチ(グレゴリー・ペック)は、貧乏白人の娘をレイプした罪で告訴された黒人トム・ロビンソン(ブロック・ピータース)の弁護を依頼される。彼は左手が不自由なトムには犯行が不可能で、事実は被告側の捏造であることを証明しようと熱弁を振るうのだけれど、白人ばかりの陪審員は彼の言葉に耳を貸そうとしない……。
この作品が興味深いのは、単に黒人に対する差別問題を扱っているだけではなく、被告側がプア・ホワイトであることだ。裕福なアティカスが黒人にも貧乏な白人にもフェアな態度をとっているのに対して──というかこの人の場合、子供に自分をダディではなくアティカスと呼ばせるくらいリベラルだったりする──、貧乏な白人は、その貧乏さゆえに、アティカスには卑屈な態度をとり、その反動でより深く黒人を憎悪する。そんな不幸な構図をこの映画はささやかながら伝えている。
あと出色なのは、こうした法廷劇を描きながら、それを子供の視点を交えて描いて見せたこと。これは原作がそういう構造だからなのだろうけれど、それによって単なる法廷劇とは違ったノスタルジックな味わいを持つ作品に仕上がっている。
ほんのわずかしか出番のないブーの役を演じているのが、その後 『ゴッドファーザー』 や 『デイズ・オブ・サンダー』 で活躍することになるロバート・デュヴァルだというのも、映画ファンにとってはささやかな見所。
(Sep 04, 2005)
オール・ザット・ジャズ
ボブ・フォッシー監督/ロイ・シャイダー/1979年/BS録画
酒とタバコと女遊びは欠かさず、それでも精力的に仕事を続けて高い評価を得る演出家のジョー・ギデオン(ロイ・シャイダー)。一世一代の傑作ミュージカルを演出中の彼は、それまでの不摂生がたたり、ついに病床に臥してしまう。病院のベッドで最期の時を迎える彼が夢見る、華麗なるミュージカルの世界……。
監督自身の自伝的内容なのだそうだ。生きている人が自分をモデルにして、死に行く人が主人公の映画を作ると言うのは結構興味深い。なにはともあれダンス満載で、人の身体の動きのおもしろさを堪能できる作品だった。映像的には鮮明さを欠くため、あまり惹かれなかったけれど。
どちらかというときちんと演出されたダンス・シーンよりも、主人公と元妻オードリーが日常会話を交わしながら踊っているシーンや、恋人ケーティと娘のミシェルが彼のために自宅の部屋中を飛び跳ねながらお祝いのダンスを披露するシーンの方が好きだったりした。
(Sep 04, 2005)
プライベート・ベンジャミン
ハワード・ジーフ監督/ゴールディ・ホーン/1980年/アメリカ/BS録画
世間知らずのお嬢さんが陸軍で巻き起こすどたばた騒動をメインに、彼女がひとりの女性として自立するまでを描くコメディ。
ジュディ・ベンジャミン(ゴールディ・ホーン)は、再婚相手に結婚式の夜に腹上死されて、ショックのあまり失踪。傷心旅行の最中に陸軍のスカウトに声をかけられ、甘い言葉に騙されて入隊してしまう。
若い頃、僕はゴールディ・ホーンという人にすごく憧れていたのだけれど、今こうして見ると、特に強く惹かれたりすることがないってのは、やはり年をとったってことなんだろうなと。だってこの時の彼女は35歳。今の僕よりも少しだけ年下だ。
この映画には 『名探偵再登場』 のアイリーン・ブレナンが、嫌味な上司役で出演している。あと 『パリ、テキサス』 のハリー・ディーン・スタントンが出ているというけれど、どの人かわからなかった。おそらくブレナン演じるルイス大尉やベンジャミンの同僚とデキちゃう軽薄なハンサム将校役じゃないかと思う。
(Sep 23, 2005)
ファースト・ワイフ・クラブ
ヒュー・ウィルソン監督/ベット・ミドラー、ゴールディ・ホーン、ダイアン・キートン/1996年/アメリカ/BS録画
学生時代の親友の自殺を機に集まった旧友三人が、そろって離婚していたり、離婚の危機にあったりすることを知って、力をあわせて前夫に復讐しようと立ち上がる、という話。
『プライベート・ベンジャミン』 から16年。この時すでに51歳のゴールディ・ホーンの若々しさが恐ろしい。この人の場合、この映画にしろ 『永遠に美しく…』 にしろ、その変わらぬ若々しさを自虐的に芸にしちゃっているところが脱帽ものだ。そろそろいい年になったいまの僕にはダイアン・キートンの方が魅力的に見えるけれど。
とりあえず個性的な中年女優三人の揃い踏みにはなかなかのインパクトがあった。
(Sep 23, 2005)
オータム・イン・ニューヨーク
ジョアン・チェン監督/リチャード・ギア、ウィノナ・ライダー/2000年/アメリカ/BS録画
ハンサムな初老のレストラン・オーナー、ウィル・キーン(リチャード・ギア)が、自分の娘より年下の女の子シャーロット(ウィノナ・ライダー)とベッドイン。ところがこの男がすごい遊び人で、女性とは深い関係に陥らないことをモットーとしているようなやつなので、次の朝には「ふたりの関係には未来はないから」とか言い訳を始める。そうしたら相手の反応は「私は不治の病で長くは生きられないからちょうど良かった」みたいな。男、愕然。
結局、彼女とつきあっている間にも彼の長年の浮気性は改善されず、ほかの女性と寝たことがばれて二人の仲はひとまず破局。でもこの別離によりウィルは自分にとって彼女がかけがえのない存在となっていたことに気づき、彼女のもとに戻る。しかしその時にはすでに、シャーロットの病状は余命数週間という状態になっていた。
不治の病に冒された恋人との、短くも熱烈な恋愛という古典的題材を、いかにも現代的なセレブなシチュエーション──舞台はニューヨーク、主役は親子ほど年の離れたイタリアン・レストランのオーナーと装飾デザイナー──において描こうとしたのだろうけれど、残念ながらあまり成功しているとは思えなかった。
(Sep 23, 2005)