2005年8月の映画
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ディボース・ショウ
ジョエル・コーエン監督/ジョージ・クルーニー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ/2003年/アメリカ/DVD
財産目当てで大富豪と結婚した美人妻マリリン(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)が、敗訴知らずの敏腕弁護士マイルズ・マッシー(ジョージ・クルーニー)とのあいだで繰りひろげる、結婚と離婚をめぐるコン・ゲームを描くコメディ。
コーエン兄弟の作品はほとんどすべて犯罪絡みだけれど、 『未来は今』 にしろこの映画にしろ、不思議と犯罪含有率の低いものは出来が
キャサリン・ゼタ=ジョーンズも巡り合せか、本人の趣味か知らないけれど、 『トラフィック』 『シカゴ』 『ターミナル』 、そしてこの作品と、いままでに僕が見た作品では、ことごとく好感が持てないタイプの女性の役ばかり演じているのが不思議だ。きれいな人なのに、なんとなくもったいない。
(Aug 04, 2005)
イン・ザ・カット
ジェーン・カンピオン監督/メグ・ライアン、マーク・ラファロ/2003年/DVD
脱力系女性ボーカルによるアカペラの 『ケ・セラ・セラ』 が流れる中、主人公の妹ポーリーン── 『未来は今』 の清楚な役と随分と雰囲気が違うジェニファー・ジェイソン・リー──が庭を散歩しているオープニング・シーケンスがとてもいい。女性ならではの官能性が滲み出すような、くすんだ映像に魅せられる。僕みたいなタイプはこの時点でもうこの映画を無条件に受け入れずにはいられない。
一般的にはメグ・ライアンが初めてヌードを披露して、大胆な濡れ場を演じたのが一番の話題という感じだったけれど、その辺に関しては、作品の製作に関わったニコール・キッドマンの 『アイズ・ワイド・シャット』 に似ている。確かに大胆なシーンはあるけれど、それはあくまで演出上の必要であって、あまり重要ではないと僕は思う。正直なところ、この映画でのメグ・ライアンは女性としては盛りを過ぎてしまっている感が強くて、彼女のヌードが見られて嬉しいという気分にはなれなかった。
それよりもやはりこの映画の見どころはジェーン・カンピオンによる演出だ。
『ピアノ・レッスン』 『エンジェル・アット・マイ・テーブル』 、そしてこの作品と、ジェーン・カンピオンという人は、女性を女性ならではの感覚で赤裸々に描いてみせる。同性であるがゆえに、女性を描くタッチにあまり美化したところが見られない。そのせいで──メグ・ライアンには気の毒なことに──、 『電話で抱きしめて』 のわずか3年後の作品だというのに、この映画の彼女は、あれから十歳も年をとってしまったかのように見える。ライアンとリーが演じる姉妹のだらしのない生活ぶりにエロチックな気分を
そんな等身大の中年女性像をあからさまに描けるのも、監督が女性ならではだろう。僕がこの人に惹かれる理由のひとつは、そうした女性であるという自分の立ち位置に、まっこうから向かいあって映画を作っているのがわかるからだ。
この人の魅力はそのユーモアセンスにもある。陰鬱なこの作品においても、彼女はやはりその優れた感性を発揮して見せてくれている。
例えばマロイ(マーク・ラファロ)にデートに誘われたフラニー(メグ・ライアン)が、ポーリーンにドレスを借りるくだり。そのあまり趣味のよくない選択には苦笑を禁じえない。男性だったらばおそらくあの演出はできないだろう。
そしてさらに作品中、最大の悲劇のあとに登場するネズミのオモチャ。あそこであれを登場させる演出は、殺伐としたこの物語の中で非常にインパクトがあった。優しさと残酷さが同居する、なんとも言えない味を生み出している。
この映画のもうひとつの見所は、カンピオンの描くニューヨークの風景にある。今までに見たニ作の舞台は自然あふれる土地だったけれど、今度の舞台は大都会ニューヨーク。ニュージーランド人ジェーン・カンピオンの手にかかると、その街の猥雑な風景にも独特のセクシャリティが滲んでくるような気がする。
(Aug 07, 2005)
X-MEN
ブライアン・シンガー監督/ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート/2000年/アメリカ/DVD
普通の人間と超能力を持ったミュータントが共存する近未来のアメリカを舞台に、人類を滅ぼしてミュータントの世界を作ろうとする勢力と、両者の共存の道を探る勢力との争いを描くアメコミ原作のSFアクション映画。 『X-MEN』 と聞いてまず最初に思い出したのが、シンプソンズに出てくる放射能男だったというのが、ちょっと情けないのだけれど、まあ、それはともかくとして。
同じアメコミの実写版ということで 『スパイダーマン』 『バットマン』 『スパイダーマン』 とくらべた際のこの作品の一番の特徴は、中心となるスーパーヒーローが不在であることだと思う。中ではウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)がそれっぽいけれど、かといってこの作品における彼には、一人で主役を張るほどの存在感はない──ないと思う。なんでも既に彼を主役にした、そのものずばり 『ウルヴァリン』 という作品の製作が決まっているらしいので、そう思っているのは僕だけなのかもしれないけれど。とにかく超能力の持ち主たちがグループで、同じような力を持った別のグループと戦うという構図は、どちらかというと山田風太郎の忍法帖に酷似している。
そもそも超能力者たちのキャラクター設定がなにかと少年マンガにありがちで──天候を自由に操るストーム(ハル・ベリー)は 『ONE PIECE』 のナミとエネルを合わせたみたいだし、ミュータントに改造されちゃう上院議員もルフィの親戚のゴム人間だし(それともあれはクラゲ?)。そうした特異能力をもちいたアクションを実写で観られるのはなかなか新鮮で楽しかった。
あと、物語で重要な役割を果たすことになる少女ローグ役のアンナ・パキン( 『ピアノ・レッスン』 『小説家を見つけたら』 )、いつも困ったような顔をしているこの女の子が、なんとなく可愛い。彼女の超能力は、触れた相手の生命力を奪いとってしまうというもの。それゆえ愛する人と触れ合うことができないという設定が、なんともせつなくてよかった。2時間に満たない短さにも好感が持てた。
(Aug 21, 2005)
X-MEN2
ブライアン・シンガー監督/ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート/2003年/アメリカ/DVD
ミュータントの絶滅を企む科学者ストライカー(ブライアン・コックス)の陰謀により、X-MENの隠れ家である学校にアーミーが急襲。プロフェッサーX(パトリック・スチュワート)も敵に捕まり、ミュータント全滅計画に利用されることに……。。
あって当然、ない方が驚きという感じのシリーズ第二弾。 『スパイダーマン』 と同じく、この続編も娯楽映画としては前作よりパワーアップしていると思うのだけれど、好みとしては、やはりあちらのシリーズと同じ理由で、見知らぬ新しい世界が広がってゆくわくわく感があった分、一作目の方が好きだった。アンナ・パキンも前作の方が可愛いし。あの白髪はちょっと……。
(Aug 21, 2005)