2005年7月の映画
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スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐
ジョージ・ルーカス監督/ヘイデン・クリステンセン、ユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン/2005年/アメリカ/ユナイテッド・シネマとしまえん
いまさら僕ごときがどうこう言う必要もない、今年一番の話題作、 『スター・ウォーズ』 新三部作の完結編。これを先々行ロードショーで観た。なんたって僕の妻と竹馬の友は、小学生のときに旧シリーズの第一作をロードショーで見て以来のスター・ウォーズ・ファンを自称する人たちなので、他人さまより先にチケットが入手できる機会があるとなれば見逃すはずもない。そんな二人につきあって僕もこの映画を一般公開よりも2週間ばかり早く観ることになった。
この作品に関しては最初から結末は決まってしまっているわけで、あとはそこまでの過程をいかに描いて見せるか、それがすべてと言ってもいい。そういう意味ではフィクションであるにもかかわらず、ある種、伝記映画にも近い雰囲気をもった、珍しい作品だったりする。そして結果、その珍しい位置付けがこの映画に、ほかでは味わえないタイプの感動を与えている。別に特別な思い入れのない僕をして、クライマックスのいくつかのシーンでは涙腺を弛ませてみせたほどだ。ルーカス恐るべし、である(たんに僕が涙もろいやつだという話もある)。
ま、けちをつけようと思ったならば、いくらでもつけられるだろう。アナキンがダーク・サイドに転身する過程の描き方には、僕としてはあまり説得力を感じなかった。基本的には彼が悪の道へ走るのは愛するパドメを愛するため、というのが表面的な描かれ方だけれど、本来はそれだけではないはずだ。愛のためだけならば、愛する人を悲しますのがあきらかな裏切り行為に対して、あそこまで逡巡しないなんて考えにくい。アナキンの魂の根幹には、より強い権力への渇望があったと見るべきだ。だからこそ、愛する人を守るための裏切り行為ののちに、その人を悲しませるのがあきらかな非道を働き、その人の愛を疑い、その人の命を奪いかねない暴挙に出ることになる。その辺の、より強い力を激しく求めるアナキンの性格が上手く描けていないかなという気がした。オビワンやジェダイ評議会に不満を抱いていたのはわかるけれど、それがあそこまで極端な転身へと誘われるという展開には、不自然さを感じずにはいられなかった。
おそらく辛口な人に言わせればもっともっと突込みどころは多いだろう。大ファンのうちの嫁さんでさえ、 『ジェダイの帰還』 でルークとレイヤがお母さんのことを話していたシーンがあったことについて、あれはなんだったのとつっこみを入れていたし……。
でもまあ、そんなディテールの破綻は瑣末事だ。この作品でもっとも重要なことは、全6作もの長大なサーガが、ここにおいてちゃんとひとつの流れとして完結した点にある。 『エピソード3』 はものの見事にエピソード4へとつながってゆく。この映画のエンディングのあとには、まるで輪廻転生という奇跡を目撃したかのような、えも言われぬ不思議な感慨が残る。アナキンのこの上ない悲惨な運命の顛末を目撃したあとに、あれほど
(Jul 03, 2005)
マーニー
アルフレッド・ヒッチコック監督/ティッピ・ヘドレン、ショーン・コネリー/1964年/DVD
赤色を異常に恐れる美女マーニー(ティッピ・ヘドレン)。偽名を使って会社に潜り込み、金庫の金を盗み出すのを常習とする彼女に一目惚れしたのがショーン・コネリー演じる若社長マーク。彼は彼女が会社の金を持ち逃げしたと知るやすぐに彼女の行方を突き止め、警察に突き出す代わりにと、そのまま強引に結婚してしまう。ところが彼女は犯罪癖があるだけではなく、異常なまでの男性嫌悪症であることが判明。結婚生活はいきなり暗礁に乗り上げてしまうのだった。
新妻にベッドインを拒否されるショーン・コネリーには思わず同情してしまうけれど、でもこの時期は既に007シリーズが始まっているわけで。ここで奥さんにベッドを拒否されている男が、実は裏ではモテモテの007役を演じていると思うとちょっとおかしい。
映画自体としてはなかなかの出来だけれど、この内容で2時間を超えるのは若干長過ぎる嫌いがある。もう少しコンパクトにまとめた方が良かったのではないかと思った。
(Jul 09, 2005)
電話で抱きしめて
ダイアン・キートン監督/メグ・ライアン、ウォルター・マッソー/2000年/BS録画
監督のダイアン・キートンに気をとられていて気がつかなかったのだけれど、この映画の脚本は 『ユー・ガッタ・メール』 のノーラ・エフロンだそうで。メールの次が携帯電話ってのは非常にわかり易いというか、悪くいえば安直な印象さえ受ける。その辺が原因なのかどうなのか、All Movie Guide ではわずが星1つ半という低評価を受けている作品だったりする。でも個人的にはそんなに悪い映画だとは思わない。少なくても同じように入院中の父親を持つ身としては、なかなか身につまされる部分があった。
主演のメグ・ライアンは三人姉妹の次女イヴ役。長女ジョージア(ダイアン・キートン)は有名雑誌の編集者、イヴはイベント・プロモーター、三女マディ(リサ・クドロー)── 『アナライズ・ミー』 でビリー・クリスタルのフィアンセ役を演じていた女性──は端役女優と、それぞれ仕事を持っている。ただし同時に主婦もこなしているのはイヴだけ。それだけでも忙しい彼女は、痴呆症(気味?)で余命幾ばくもない父親(ウォルター・マッソー)の面倒まで任せっきりにされて、仕事と家事と介護にてんてこ舞いということになるのだった。
いや、とにかく前半が騒がしいこと。これだけ
(Jul 10, 2005)
軽蔑
ジャン=リュック・ゴダール監督/ブリジッド・バルドー、ミシェル・ピコリ/1963年/フランス、イタリア/DVD
文学的野心を持った主人公の作家(ミシェル・ピコリ)は、美しい妻(ブリジッド・バルドー)のために金を稼ごうと、映画の脚本執筆を引き受けることになる。監督らとともにロケ地での生活を始めるも、執筆はいっこうにはかどらず、そのせいで悩みすぎたあげく、妻とのあいだにすきま風が吹き始めてしまって……という話。
ラウル・クタールの撮影による鮮やかな映像(などと知ったようなことを書いてみる)と無常観あふれる顛末はゴダールならではの味わい。ブリジッド・バルドーのヌードがうつ伏せのシーンしかなくて、見せるのはお尻だけというのも、いまの時代だとチラリズム的でかえってエロティックかなと思う。
(Jul 30, 2005)