2010年2月のサッカー
Index
- 02/02 △ 日本0-0ベネズエラ
- 02/06 △ 日本0-0中国 (東アジア選手権)
- 02/11 ○ 香港0-3日本 (東アジア選手権)
- 02/14 ● 日本1-3韓国 (東アジア選手権)
- 02/23 ○ 鹿島1-0長春亜泰 (AFCチャンピオンズリーグ)
- 02/27 △ 鹿島1-1G大阪(PK:5-3) (ゼロックス杯)
日本0-0ベネズエラ
キリンチャレンジカップ2010/2010年2月2日(火)/九州石油ドーム/フジテレビ
さあ、ワールドカップ・イヤーの国内初戦だっ──と盛りあがりたいところなのだけれど、なんともこう、そういう興奮と縁遠いというか、なんというか……。
アントラーズ・ファンの僕としては、小笠原がひさしぶりに代表に招集され、最後のチャンスを与えられたことで、ある種の複雑な思いを抱かずには見られない試合だった。今回の試合とそれにつづく東アジア選手権の3試合で結果を出せなければ、もうW杯出場はかなわないだろう。それも「悪くない」ぐらいじゃ駄目で、有無をいわさぬ活躍をしてみせないかぎり、現状の23人枠に割って入ることはできないだろうと思われる。
そんな状況で小笠原はスタメン出場のチャンスをもらった。で、その出来はというと……。
うーん。正直なところ、やはりそこそこといった印象。持ち前の攻守のバランスのよさでもってチームに貢献はしていたと思うけれど、「こいつは違う!」というほどの存在感は示せなかった。積極的にミドル・シュートを打ってみせた──しかも2本ともきちんと枠を捕らえていた──のはプラス材料だったけれど、岡田さんがその言葉どおり、オガサにボランチ的な仕事ではなく、攻撃的なプレーを求めているとするならば、結果として得点につながるプレーがなかった時点で、及第点はつけられない気がする。
ただ、遠藤と憲剛とともに中盤を構成してバランスを保っていた点──かなり流動的で、右へ行ったり左へ来たりしていた──はそれなりに評価できるんじゃないだろうか。ボールを持ったときに受け手が見つからず、横パスで終わってしまうというシーンがけっこうあったのは気になったけれど、初めて参加してあれだけボールに絡めれば、まずはオッケーかなと思う。いまからスタメンに割り込むのは無理だとしても、遠藤、憲剛のバックアップとして考えた場合、攻守のバランスという点において、オガサ以上の適任者はいないだろう。本田や松井では守備面で不安だし、今野や阿部では攻撃面でもの足りない。総合力でいうならば、やっぱオガサだろーと鹿島ファンの僕は思うのだった。
てなことで、この日のスタメンはGK楢崎、DF徳永、中澤、闘莉王、長友、MF稲本、遠藤、憲剛、小笠原、FW大久保、岡崎という11人。
注目はわれらが小笠原と、帰国して川崎フロンターレ入りしたばかりの稲本。あとはテレビ放送がなかった(涙)1月のイエメン戦で代表Aデビュー、即ハットトリックを達成した平山!──のはずだったのだけれど、その平山はベンチ。
こういうところが岡田さんはおもしろくない。いくら前回は若手主体の別チームだったとはいえ、相手はふつうにA代表だ。仮にもハットトリックを決めた選手を次の試合で使わないってのはないだろう。平山の出番は後半途中からの30分だけだったけれど、相手DFにはかなりのプレッシャーを与えていたように見えたし、けっこういいポスト・プレーなどもあった。なまじ好印象だっただけに、もっと長いこと彼のプレーが見られなくて残念だった。
で、その平山の代わりのスタメンが大久保だってのもわからない。言っちゃ悪いけれど、僕には彼がそれほどいいとは思えなかった。守備面ではベネズエラに申し訳なくなってしまうような危険なファールを連発していたし、逆に相手の接触プレーには大げさに痛がってファールを誘うし。フェア・プレーの印象がつよい日本代表にあって、彼のそういうプレーはあまり気持ちよくなかった。まあ、後半はけっこういいプレーがあったけれども。
ちなみにこの日の途中出場は平山のほか、駒野、佐藤寿人、金崎、香川の計5人。アウトは憲剛、徳永、小笠原、岡崎、大久保。
大久保がひっこんだのはラスト5分だから、ほぼフル出場も同様だ。稲本もフル出場だったけれど、それほど存在感は感じなかった。反対に憲剛、徳永、オガサらは足が止まったでもなく、まだまだプレーできそうだっただけに、さっさと代えられたのが僕としては不満だった。交替がプラスになるんならばいいけれど、あまり効果があったようには思えなかったし。平山と駒野が同時に入ってきたあと、しばらくは攻撃が活性化したように思えたけれど、それもつかのまで、あとはとりとめのないサッカーに終始してしまった。なんだかとても欲求不満。
たしかにベネズエラはよかった。チェックが的確で、手ごわかった。攻撃面ではあまり怖くなかったけれど、その分こちらにも自由にプレーさせてくれなかった。さすがに普段からブラジルやアルゼンチンを相手にしているだけある。年じゅうこういうチームと対戦できたらばいいのにと思った。
でも、そういう手ごたえのある相手だからこそ、きちんと勝って一年を始めて欲しかった。このレベルにホームで勝てないようでは、南アフリカでカメルーンやデンマークに勝つのは、そうとう難しいだろう。ましてやオランダときた日には……。
(Feb 02, 2010)
日本0-0中国
東アジア選手権/2010年2月6日(土)/味の素スタジアム/フジテレビ
ああ、なんかもう愚痴しか出てこない……。
日本、韓国、中国、香港の四ヶ国・総あたりで行われる今回の東アジア選手権は、W杯でのグループ・リーグのシミュレーションとして、うってつけの大会だ。
東アジア限定だから、W杯のようなレベルの高さは望めないけれど、リーグ戦でどうやって勝ち点を積み上げてゆくかという点では、またとないシミュレーションとなる。少なくても母国開催のアジアの公式大会で優勝できないようでは、W杯ではグループリーグ突破さえおぼつかなかろう。ましてやベスト4なんて下手なジョークもいいところだ。
岡田ジャパンがW杯でベスト4を目指すと公言している以上、この大会での優勝は当然のノルマになる。いかにして優勝するかという星勘定もまた、トレーニングのうちだ。
参加国中、韓国とは実力伯仲だから、勝ち点3が計算しにくい。逆に2戦目の香港は計算できる──というか、できないと困る。となれば、大事なのは初戦の中国戦。ここで勝っておけば、単独優勝はできずとも、優勝には限りなく近づく。万が一韓国に負けて優勝を逃したとしても、相手が相手だけに許される(少なくても僕は許せる)。2位以内には入れれば、W杯でのグループリーグ突破に相当するという言い訳はできる。
逆に中国に勝てないようだと、優勝するためには、韓国戦で必勝を要求されることになってしまう。もしも韓国に負けたりしたら、それこそ3位に終わる可能性だってある。W杯にたとえれば、それはグループリーグ敗退を意味する。仮にもW杯出場国が、ホームでの大会で3位に沈むようなことがあれば、それはもう大失態だろう。そんな危ない橋、誰だって渡りたくない。
それゆえ、この中国戦で勝てるかどうかこそ、この大会の一番の見どころだと僕は思っていた。それはW杯では初戦のカメルーン戦がなにより大事だというのと同じだ。中国に勝てないチームがカメルーンに勝てるとは思えない。どれだけ必死になってこの試合に勝ちにゆけるか。そこを見せてもらいたかった。
それなのに結果はスコアレスドローとくる。引き分けってだけでも不甲斐ないのに、その上、無得点って……。
そりゃ中国の高さは東アジア一だけれど、そんなアジアの壁の高さを崩せない日本が、さらに屈強なデンマークから得点できるとは、とても思えない。なんだか試合を重ねるごとに、日本代表に対する期待がしぼんでゆく。
この試合に岡田さんが選んだスタメンは、楢崎、内田、中澤、闘莉王、長友、稲本、遠藤、憲剛、大久保、岡崎、玉田の11人だった。
これを見て、まず小笠原がはずされたことにがっくりきた。もしも岡田さんが小笠原を俊輔のバックアップとして本気で考えているのならば、一試合だけで彼をはずすなんてあり得ない。この4試合すべてで起用して、どこまでフィットかを見るのが普通だろう。前の試合では体調不良でスタメンをはずれたウッチーも戻ってきたことだし、連係面でいえば鹿島のチームメイトのサポートを受けられるこの試合の方が、いパフォーマンスが見られる可能性は高い。それなのに使わなかったのだから、結局、岡田さんの計算には小笠原は入っていないんだろう。なんだよ、ちくしょうめ。
いや、もしかしたら岡田さんもこの試合を重要視していたのかもしれない。必勝を期したからこそ、どれだけフィットするかわからない小笠原をつづけて使いたくなかった可能性もある。だからこそ、あえて信頼を寄せるメンバー中心でスタメンを組んできたと。
でも、だとするならば、なおさら救われない。
この日のスタメンは、要するにこれまでの岡田ジャパンで、俊輔と長谷部がいない場合のベスト・メンバーだ。ボランチが稲本だった点を除けば、これまでもっとも長い時間を一緒にプレーしてきた選手たちが顔をそろえている。それなのに中国──それも若手主体だという噂の、決して上手くない中国──相手にスコアレスって……。
しかも、これが単なるスコアレス・ドローではなく、相手にPKを与えたシーンさえあるんだから、たまらない(長友がハンドをとられた)。楢崎の見事なセーブでことなきを得たけれど、楢崎が「負け試合をドローにしただけ」と謙虚に語っていた通りで、もしもあれが決まっていたら負けていた可能性大だ。そういえば、ゴール前で不用意なスペースをあたえて、あわやというミドル・シュートを打たれた場面もあった。あれなんて、相手がオランダだったらば、確実に失点しているケースだ。
ボール保持率では日本優勢だったし、ウッチーのシュートがポストを叩いたり、ペナルティ・エリア内で大久保の打ったシュートが相手DFにあたったりと、惜しいシーンもあることにはあったけれど、個人的な印象では、PKがあった分、中国のほうが勝利に近かった気がした。そうそう、楢崎がDF(たぶん中澤)と交錯して、あわやオウン・ゴールなんて場面もあったっけ。ああ、救われない。
シーズン開幕前でコンディションが不十分だという話もある。でもこの試合に出ていた選手たちは、W杯出場という狭き門のもっとも近くにいる人たちばかりだ。それがシーズン前だからって、コンディションを言い訳に、不出来なサッカーをして欲しくない。連係不足って、この顔ぶれで去年どれだけ試合をしてきたんだよと言いたい。
そもそも僕は岡崎をFWの軸にしている現状だって疑問だ。去年15ゴールという成績は立派だけれど(なんでも世界一だというから、なおさらびっくりだ)、彼のゴールの大半は格下相手のもので、ハードな試合を制するようなゴールってほとんどない。少なくても、強豪相手に彼のゴールで1-0で競り勝ったという試合は一試合もない。本当に苦しいときにチームを救っていない選手をエースと呼ぶのは抵抗がある。
岡崎が南アフリカへ行くのは、現状ならば当然だと思うけれど、かといって、そんな彼がFWの軸でいいとも思えない。この日の試合のように、ゴール前での仕事よりも、サイドに流れてクロスを上げるシーンのほうが多いようだとなおさらだ。点が取れないときの岡崎はそういう傾向が強い。彼をFWの軸にするならするで、もっと彼がゴール前で仕事ができるようなチーム作りをしなければ仕方ないだろう。ただ個人の発奮に期待するばかりでは芸がない。
あと、この日も交替カードの切り方には不満が残った。玉田を平山に代えたのが後半17分。僕としては平山はもっと早い時間から使って、遠藤や憲剛との連係を高めたら、どれくらいやれるようになるのかを見たいのに、岡田さんはそんな期待にはまるで答えてくれない。その後、あとの2枚のカード(憲剛→金崎、大久保→寿人)を切ったのなんて残り5分だ。遅すぎるし、無効すぎる。
岡田さんは試合後の記者会見で、「交代で出す選手が劇的にゲームを変えられるとは思えなかった」なんて発言をしているけれど、これにもびっくりだ。要するに彼は自分が選んだサブの選手に信頼をおいていない──もしくは自分には戦局を変える有効な手が打てない──ってことを白状しているわけだから。なんだそりゃと思う。
この日の東京はとても寒くて、キックオフ直前の気温が3度だったそうだ。おそらくそのせいもあって、味スタのスタンドはガラガラだった。入場者数は2万6千人弱だというから、およそ半分強しか埋まっていなかったことになる(味スタの定員は約5万人)。
大分での試合も空席が目立ったけれど、あれは地方の一都市の話だから、まだ仕方ないのかなと思った。それに対して、東京での試合でこの客の入りってのは……。
まあ、かくいう僕も観に行っていないわけだけれど、こんな試合を寒空の下で観たいとは、とてもじゃないけれど思えない。珍しく試合後のブーイングがすごかったというのも当然だ。いまの代表のサッカーはあまりに魅力にとぼしい。
この期におよんで、日本代表を強くするには、もはや岡田さんを解任する以外、打つ手がない気がしてきた。
(Feb 07, 2010)
香港0-3日本
東アジア選手権/2010年2月11日(木)/国立競技場/フジテレビ
アントラーズ・ファンの僕としては、「寒空の下、集まってくれた日本代表のサポーターのみなさん、うちの満男のせいで低調な試合になってしまってすいません」と謝りたくなるような試合だった。
いやぁ、小笠原が駄目だった。2試合目だというのに、悲しくなるくらいにチームにフィットしていなかった(少なくても僕はそう思った)。岡田さんの起用法にも文句をつけたい点はあるけれど、彼くらいのキャリアがあれば、どのような形であろうとチャンスをもらった以上、きちんとそれを生かしてくれないと駄目だ。僕が代表監督だったらば、オガサはもう二度と呼ばないと思う。とにかく残念のひとこと。
この日のスタメンは楢崎、内田、中澤、闘莉王、駒野、今野、小笠原、憲剛、遠藤、大久保、玉田というメンツ。岡崎が膝の痛みでメンバーから外れたため、再び小笠原にスタメンのチャンスが巡ってきた。ただし、前回とちがって今回のポジションはボランチ。少なくてもテレビ放送ではそう紹介されていた──のだけれど……。
始まってみたらみたら、どこがボランチなんだってポジションだった。どうやら放送がまちがっていて、役割は前回と同じだったらしい。ただ、スペースを埋めてバランスをとることに気を取られすぎているのか、プレーが窮屈な感じだった。
とにかく、結果としてボールがない方へ、ない方へと移動してしまい、攻撃にはほとんど貢献できない。みずから前線に駆け込んでもボールは出てこない。たまに下がってボールを受けたと思うと、出しどころに困って、横パスやバック・パスでおしまい、みたいな。とにかく球離れが悪い印象だった。
オガサひとりの出来が悪いんならば仕方ないけれど、彼に引きずられて、遠藤や憲剛もポジショニングに気を使い、本来の力を発揮できなくなっていたような気がするから、なおさら悪い。それともあれば逆に、ふたりのそういうプレーに引っぱられて、オガサのほうがリズムを狂わせていたんだろうか。なんにせよ、後半途中でオガサが引っ込み、代わりに稲本が投入されてから、格段にリズムがよくなったのだから、救われない。
どうにも今回の小笠原の代表招集に関しては、最初の岡田さんの「満男には攻撃を期待している」というひとことが大きく影響している気がする。とにかく少しでも得点に絡むプレーを──オガサにはそういう強い思いがあったんじゃないかと。慣れないチームでその思いが足かせになって、中途半端な結果をもたらしてしまったような気がする。
この日の岡田さんの采配は、まあまあ納得がゆくものだった。今野を初めてDFではなく本来のボランチで起用してきたのにはよしと思ったし、後半開始と同時に平山を投入したアクションの速さも好印象だった(できれば平山スタメンだったらば、なおよかったけれど。あと、平山に代わってアウトになったのが、今野ではなくオガサならば、もっと適切だったと思う)。そのあとオガサをイナに代えたのにしろ、香川を入れたのにしろ、きょうは打つ手がそれなりに効果的だった。出てきた選手がそれぞれしっかり持ち味を発揮していた。
まあ、しかし勝ったとはいえ、優勝するには大量得点が必要だったこの試合で、3点しか取れなかったのだから、とても満足したとはいえない。その3点だって、どれもチームとして崩した結果というゴールではなかったし。
1点目は玉田が相手DFのミスから拾ったボールをゴールライン際から蹴り込んだもの(本当に彼はあの角度のシュートが上手い)。この先制点が前半40分過ぎってのが、もうすでに遅すぎる。さらに後半、遠藤のCKから闘莉王がヘディングを決めたのが20分過ぎ。さらに怒涛の波状攻撃からのこぼれ球を玉田が決めた3点目は残り10分を切ってから。
要するにサイド攻撃を点であわせたとか、華麗なパスワークで相手を崩したとかいう、チームの熟練度の高さを感じさせるようなゴールはひとつもなかった。相手が香港だったから3点も取れたようなもので、この内容で満足できる人はあまりいないだろう。
個人的には小笠原の出来に対する失望が大きすぎて、ほかのことがあまり気にならなくなってしまっているけれど、そうでなければきっと今回も岡田さんのチーム作りのまずさを批判したくなっていたんだろうなと思う。
困ったことに、前日の試合で韓国が中国に3-0で負けてしまったため、現在、日本と中国が勝ち点、得失点差ともに並んだ状態だ。最終戦のカードが日本-韓国に対し、中国-香港なのを考えると、日本の優勝はかなりむずかしい状況になってしまった。こうなったら結果がどうであれ、せめて最後は韓国に勝って、きっちり終わって欲しい。
この日は雨のせいもあって、国立の入場者数は1万6千人強と、史上最低だったそうだ。ああ哀れ、日本代表の人気低迷もここに至れり。とりあえず、この寒空の下、雨にもめげず屋根のない国立に集まった人たちに祝福を。
(Feb 11, 2010)
日本1-3韓国
東アジア選手権/2010年2月14日(日)/国立競技場/フジテレビ
こんな日本代表を見るのはもういやだって、誰もがそう思ってんじゃないだろうか。それこそ岡田さん以外は。
先に行われた中国-香港戦で中国が2-0で勝ったため、日本が優勝するには2点差以上での勝利が義務づけられたこの試合。
開けてみれば、PKで先制点をもらったにもかかわらず、その1点を守りきれないどころか、前半のうちに逆転を許し、なおかつそれ以降は1点も奪えないまま、1-3という悲惨なスコアで敗戦するていたらく。結局、優勝するどころか3位で終わってしまった。W杯ならば予選敗退という結果だ。東アジア限定のミニ大会でそんな成績を残すチームが、4ヶ月後のW杯でベスト4をめざすってんだから、ちゃんちゃらおかしい。
岡田さんが現時点でのベストメンバーで臨むといって送り出したこの日のスタメンは、初戦の中国戦とまったく同じだった(つまり小笠原の出番はなし)。
試合が動いたのは前半23分。闘莉王がペナルティエリア内で倒されてPKをもらい、遠藤がそれをどーんと決めた。お得意のコロコロPKではなく、日本代表に絡みつく
これで難なく先制したことで、優勝への可能性もでてきたかと思ったのだけれど、そうは問屋が卸さない。そのわずか10分後に、今度は内田篤人がファールを取られ、韓国にお返しのPKを与えてしまう。これで同点。
さらにはその6分後に韓国の20歳の選手が思いきりよく打ったミドルシュートが中澤の背中にあたり、絶妙のループシュートとなって日本のゴールネットを揺らす。追い打ちをかけるように、その2分後には、闘莉王が相手との接触プレーで倒れ込んだ際に、相手に蹴りを入れたということで一発レッドカードの判定を受けて退場……。
そのまま数的不利な状況で戦って負けたんならば、まあ、不運だったと言い訳もできたかもしれないけれど、この試合はさらに乱れる。後半の早い時間に韓国にもイエロー2枚で退場者が出てしまった。
これで戦力はイーヴン。それなのに、その後に日本は追いつくどころか、さらに追加点を許してしまうのだから話にならない。最後に佐藤寿人を投入しても、単なる悪あがきという感じ。
韓国がとても強かったというならばともかく、僕はこの日の韓国にはそれほど感心しなかった。顔ぶれもGKのイ・ウンジェと右サイドバックのパク・チュホ(元鹿島、おー!)、途中出場のFWイ・グノ(磐田)などを除けば馴染みのない選手ばっかりだし、このくらいの韓国に惨敗を喫するなんて情けないにもほどがある。あぁ、なんとも駄目ダメな試合だった。
アントラーズ・ファンの僕にとって、この試合での思わぬ収穫は、闘莉王が退場になったことにより、後半のあたまから岩政に出番が回ってきたこと。
ただ、その岩政も出来はいまいちだった。出てくるなり、いきなりDFラインの裏を取られて決定的なピンチを与えていたし、失点の場面でも守備網を完璧に崩されていた。この大会で流れの中から許した唯一の失点に絡んでいるのだから、まったく褒められたもんじゃない。
でも、この日のプレーで岩政を非難するのもどうかと思う。これまで中澤と闘莉王のどちらかが欠けた場合のシミュレーションを岡田さんはいっさいやってこなかったのだから、いきなり投入された岩政が十分に力を発揮できるはずもない。指揮官の準備不足こそ非難されてしかるべきだ。本番でも同じようなシチュエーションは考えられるわけだから、この試合で図らずもそうしたケースのテストができてよかったとさえ思う。そのバックアップとして岩政が代表に残れるかはまた別の話だけれど。
そういえば、岩政を入れるにあたって、香川──足を痛めた大久保に代わって前半途中から出場していた──を引っ込めた岡田采配にもびっくりした。1点ビハインドの状況で、若くて元気な香川をひっこめるかな、ふつう。あの辺の用兵をみても、僕には岡田さんには指揮官としてのセンスがまるでない気がしてしまう。
なんにしろ、本当に残念な試合だった。こんなひどい結果に終わったにもかかわらず、犬飼会長には岡田さんを解任する意向はないようだ。このままではW杯での3連敗は決定的な気がする。ああ、もういやだ……。
(Feb 15, 2010)
鹿島アントラーズ1-0長春亜泰
AFCチャンピオンズリーグ・グループF/2010年2月23日(火)/カシマサッカースタジアム/BS朝日
アントラーズの2010年シーズンもいよいよ始動。今年一発目の公式戦はAFCチャンピオンズリーグ、長春亜泰(中国)との対戦。
増田、田代、ダニーロ、パク・チュホ、小澤といった準レギュラー級の選手がごそっと抜けた今年のアントラーズだけれど、代わりの補強の方針はとてもわかりやすい。
田代の抜けたFWは現状維持で、大迫、佐々木ら、若手の台頭に期待。中盤も、もともと中田浩二が復帰してきた時点でだぶつき気味だったので、ダニーロの抜けた穴を24歳の若いブラジル人、フェリペ・ガブリエで補ったのみ。
で、なにより一番のポイントは、最終ラインに入ったふたりの外国人、センターバックのイ・ジョンス(李正秀)と左サイドバックのジウトンの存在。
僕はうかつにも忘れていたけれど、このふたりは去年のJOMO杯で監督を任されたオリヴェイラさんが、Jリーグ選抜のメンバーとしてスタメン起用した選手なのだった。そのときの4バックは内田篤人、岩政、イ・ジョンス、ジウトンという顔ぶれ。つまりオリヴェイラ氏は、半年前に自身がJリーグ最強と考えた守備陣を、まんま手中に収めたことになる。
そういえば、去年のアントラーズは、序盤は鉄壁の守備力でもって首位を独走していたにもかかわらず、中盤になって守備が不安定になったたために、首位陥落の憂き目を見たんだった。もしも一年間通してディフェンスが安定していたら、ぶっちぎりで優勝していた可能性もある。だから今年はその反省を踏まえて、もともと強力だったディフェンス・ラインをさらに強化しましたと。そういう補強なのだと思う。
はたしてこの日、センターバックとして岩政とコンビを組んだのは、去年のレギュラーだった伊野波ではなく、イ・ジョンスだった。ジウトンはベンチ・スタートだったけれど、最後の方でちょっとだけ出番をもらっていたし、新井場の調子次第では、去年のパク・チュホ同様、あっという間にレギュラーを奪う可能性も大だろう。
さらにこの4バックの前に、中田浩二、または青木という、もともと守備力に定評のある元日本代表のボランチがどーんと構えるのだから、なにをいわんや。
はっきりいって、この守備陣はやばいと思う。穴がなさすぎでしょう。なんたって去年リーグ最小失点だった守備力に、さらなる上積みがあったわけだから。他のチームにとっては、さぞややっかいだろう。これでもしも攻撃がうまく機能しさえすれば──なおかつ、選手層の厚さゆえにベンチを温める可能性が高い青木や伊野波らが腐ったりしなければ――、本気で4連覇も夢じゃない気がしてきた。
そうそう、この試合でおもしろかったのは、小笠原が出場停止のため、中田と青木のダブル・ボランチだったこと(なぜ小笠原がいないんだと思ったら、彼は去年のACLの最後の試合でレッドカードをもらったので、出場停止なんだそうだ。シーズンまたぐのなんてあり?)。おかげでディフェンスの安定感がさらに何割増しで、なおさら鉄壁の感があった。どうしても負けられないという試合では、この布陣もありかもしれない。
ということで、2010年の初陣を飾った新生アントラーズのスタメンは、GK曽ヶ端、4バックが内田篤人、岩政、イ・ジョンス、新井場、MFが青木、中田浩二、野沢、フェリペ・ガブリエル、そして興梠とマルキーニョスのツートップという布陣。途中出場は遠藤、ジウトン、大迫。
試合は前半の残り5分過ぎに、野沢のFKに浩二がきれいに頭であわせて鹿島が先制。結局、その虎の子の1点を守りきって、新シーズンの初戦を白星で飾った。
小笠原、本山が不在で、新加入のフェリペ・ガブリエルもまだまだ手探り状態のため、攻撃面ではあまりいい形が作れていなかったけれど、その分、ディフェンスは期待通りの安定感があった。いやぁ、このところ日本代表が不甲斐ないだけに、好きなクラブが順調なスタートを切ってくれてよかった。
(Feb 24, 2010)
鹿島アントラーズ1-1ガンバ大阪(PK5-3)
FUJI ZEROX SUPER CUP/2010年2月27日(土)/国立競技場/日本テレビ(録画)
アントラーズがJ1三連覇中、ガンバが天皇杯二連覇──ということで去年と同じ顔合わせになったJリーグの前哨戦、ゼロックス・カップ。残念ながら、今年はわが子の金管バンドの発表会とキックオフの時間が重なってしまったため、録画での観戦とあいなった。
さて、すでにACLの初戦を戦っている両者。アントラーズはそのときの試合で出場停止だった小笠原が青木に替わってスタメン出場した点をのぞけば、あとはあの試合と一緒の顔ぶれ。つまり本山を欠いた現時点でのベスト・メンバーといえる布陣。
それに対して、ガンバは山口、中澤、明神らの守備的な主軸や、ペドロ・ジュニオールをはじめとした3人のブラジル人FW(新加入が2人もいるらしい)をごそっと欠いている。
ところが、それでもガンバは強いから困りもの。強いというか、うまいというか。中盤のパスワークの見事さには、さすがJ1屈指のチームと思わせるものがあった。少なくてもACLで対戦した中国のクラブより、断然強かった。
ディフェンスにしろ、センターバックのレギュラーふたりを欠いてなお、バックアップで高木和道がいたりする選手層の厚さがある。結果、こちらの攻撃はPKの1点に抑え込まれてしまった(決めたのはマルキ)。ACLでもアウェイの水原三星戦をスコアレス・ドローでしのいでいるし、今年のガンバは意外と守備力もあなどれない。
とはいえ、対するこちらもディフェンスは安定しまくっている。失点は加地が打ったミドル・シュートが小笠原の頭にあたってコースが変わってゴール隅に飛び込んだ、アンラッキーなものだったし──先日の日韓戦での韓国の決勝ゴールを再現したみたいだった──、今年はそうとうのことがない限り、大崩れはしないだろうと思わせた。
結局、試合はドローに終わり、決着はPK戦へと持ち越し。で、驚いたことにそこで、ガンバのひとり目のキッカーだった遠藤が、これをはずしてしまう。なんでも芝に足が引っかかってしまったんだそうだけれど、PKの名手と呼ばれる彼らしからぬミス・キックだった。
対するこちらは5人全員がきちんと決めて、まずは今年ひとつ目のタイトルを手にした。ACLにつづいて順調なスタートが切れた。幸先よし。
(Feb 28, 2010)