2006年12月のサッカー

Index

  1. 12/02   浦和3-2G大阪 (J1第34節)
  2. 12/03 ○ U-21日本1-0U-23シリア (アジア大会)
  3. 12/06 ● U-21日本1-2U-23北朝鮮 (アジア大会)
  4. 12/17   インテルナシオナル1-0バルセロナ (FIFAクラブワールドカップ・決勝)
  5. 12/23 ○ 鹿島3-2清水 (天皇杯・準々決勝)
  6. 12/29 ● 浦和2-1鹿島 (天皇杯・準決勝)

浦和レッズ3-2ガンバ大阪

J1第34節/2006年12月2日(土)/埼玉スタジアム2002/NHK

 06年シーズンのチャンピオンフラッグがかかった最終戦。2年連続で優勝争いが最終節までもつれこみ、しかも今年はその最終戦が1位と2位の直接対決という展開は、あまりに出来すぎだ。ガンバの優勝には3点差での勝利が必要だという状況はあきらかに浦和有利だとはいえ、サッカーの世界ではなにがあるか、わからない。6万を超える史上最多のサポーターが見守るなか、第三者的なサポーターである僕も、それなりにわくわくしながらキックオフの時間を待っていた──テレビの前で。
 試合は序盤から積極的に得点を狙っていったガンバが、21分に先制するという願ってもない展開。この試合で4試合ぶりに先発復帰を果たした播戸からマグノアウベスへの絶妙のアシストだった。マグノアウベスのゴールも、シュートというよりは、前に流れ込みながら、かかとだけであわせてコースを変えてみせたという感じで、ストライカーとしての感覚の鋭さを存分に感じさせた。さすが得点王。
 これで俄然おもしろくなった。このままもしもガンバがもう一点とって前半を終わるようなことになれば、後半には痺れるような緊迫したゲーム展開が待っているぞと。そう期待しながら試合を観ていられたのは、けれどもその後わずか6分間だけだった。浦和のカウンター攻撃から、最後はポンテがドリブルでボールをもちこみ、同点ゴールを決めてしまう。テレビ放送では直前にリプレイ映像を流していたせいで、カウンターが始まったシーンの映像がなく、あまりに唐突にゴールが決まった印象だった。
 これでほぼ勝負あり。その後ふたたびポンテのアシストでワシントンのゴールが決まった時点で趨勢は決した。最終的な平均失点が0.82なんていう浦和が、そのあと4失点を許すなんてありえない。勝負は前半のみで決してしまった。
 ガンバの失点の場面では、ポンテのマークについたシジクレイの淡白な守備もいただけなかった。シジクレイは2失点目の場面でもマークがずれていたし、後半は半分もしないで足を痛めて途中交替してしまった。ディフェンスの要がこういう状態では、勝てるわけがない。リーグ2位の攻撃力を誇ったガンバだけれど、失点は55とアントラーズより多い。最後はその守備力の弱さに泣いた形になった。
 でもまあね。終わってみればレッズの優勝はやはり順当だったと思うし、選手たちが喜んでいるシーンを見ると、ああ、よかったねと心から祝福したくなる。特にワシントンの素直な喜びようが印象的だった。彼は今シーズン、怪我に苦しみながら26試合の出場で26得点という驚異的な成績を残し、マグノアウベスと並んで得点王に輝いた。本当にこの人は、でかくて強くて上手くて性格が良さそうと、何拍子もそろった素晴らしいストライカーだと思う。ああ、願わくばアントラーズに欲しかった。
 喜びかたが微笑ましかったといえば、途中交替でベンチにさがったアレックスとポンテが、二人してベンチでタイコを叩きながら優勝の瞬間を待っていたのも可愛かった。ほかのチームではあまりああいう風景は見られそうにない。6万の大観衆に囲まれての、なんとも幸福感あふれる、いい優勝シーンだった。

 ちなみにこの試合のスコアは僕の予想どおりで、おかげさまでtoto GOAL 3の2等を獲得(賞金はわずかだけれど)。はずした1つは清水-広島戦の3-0で、広島のゼロのほう。佐藤寿人とウェズレイを擁する広島のスコアレスは予想し難かった。でもあとで調べてみたら、ここ3試合ウェズレイは出場してないじゃないか。しまった、リサーチが甘かった。
 それにしても広島は、開幕戦で鹿島と戦って4-3と善戦したときには、今年もそれなりの成績を残しそうに思えたのに、終わってみれば最後まで鳴かず飛ばずのままだった。セレッソはJ2降格が決まってしまうし、去年活躍したチームがそのまま翌年もおなじ成績を残せるわけじゃないというあたり、やはりサッカーは難しい。

 ともかくこれにて06年シーズンも終了。われらがアントラーズの最終順位は6位だった。浦和、川崎、G大阪の三強はともかく、最終的には清水や序盤で低迷していた磐田よりも下ってのが無念だ。アウトゥオリは今シーズン限りで退任してしまうそうで、来年はまた新しい監督のもとで再出発となる。今年はアウトゥオリの攻撃的サッカーがうまく機能しなくて残念な一年だった。小笠原の移籍の穴をきちんと埋められなかったのも痛かった。これにこりて来年は戦力強化を怠らず、最後まで優勝を狙えるチームにして欲しいと思う。でもまずその前に残された天皇杯のタイトル奪取へ向けて、年内のもうひとふんばりに期待しよう。
(Dec 03, 2006)

U-21日本1-0U-23シリア

アジア大会・グループF/2006年12月3日(日)/ドーハ(カタール)/TBS

 アジア大会グループリーグにおける五輪代表の二試合目。
 反町監督はこの試合でフォーメーションを4バックに変更してきた。とはいっても、3バックのメンツはそのままで、そこに右サイドバックとして本来はFWの辻尾が加わるという形での4バック。左サイドに入った一柳はほとんど攻めあがっていなかったので、4バックというよりは、左にシフトしただけの変則3バックなんじゃないかという気がした。
 最終ラインの枚数を変えた以外にも、微妙な変更が加わっている。ボランチは出場停止の青山敏弘に代わってスタメン起用された本田拓也の一枚のみ。谷口はその得点能力を買われてか──なんたって前の試合で2得点だから──、高めのポジションで増田とともにシャドウストライカーといった役割を果たしていた。右ウィングは初めて見る愛媛FCの高萩という選手。で、平山の1トップと。
 シリアがFIFAランキングでどれくらいのところにいるチームなのかは知らないけれど、この試合を見る限りでは決して弱くはなかった。まあ強いというほど強くもないけれど、じゃあ簡単に勝てるかというとそういう相手でもない。ましてや相手はA代表の経験者がほとんどだという。それでなくても2歳の年齢差+オーバーエイジ3人分のハンディがあるのだから、楽な試合になるはずがない。実際に見ていても、シリアがボールを持って一気にゴールを目指す時のスピードには、お、これはちょっと手ごわいかもと思わされた。
 でもまあ、そうは言ってもアジアでは日本代表の技術は頭ひとつ抜け出ている気がする。パスワークやボールさばきでは確実に日本が上に思えた。このチームは守備意識も高いし、見ていてもそれほど負けそうな気はしなかった。得点力には問題があるので、無得点のまま一瞬の隙をつかれての失点して最小得点差での敗戦というパターンはあるかもしれないけれど、大敗を喫したりすることはないだろうと、そういう感じだった。
 そんなふうに力の差は拮抗していたから、前半はスコアレスのまま終わる。後半も両チームともに決定力を欠いていて、これはどうもスコアレス・ドローかなという雰囲気の漂い始めた、残り12分ばかりの時間帯になって。平山がヘディングで貴重な決勝ゴールをあげてみせてくれた(アシストは本田圭佑)。GKに止められ、ビデオで見て初めてゴールラインを越えたことがわかるような、ぎりぎりのゴールだった。それでもゴールはゴール。エース・ストライカーが結果を出したのは朗報だ。日本に戻ってきてからのプレーにいまひとついい印象がなかった平山だけれど、この日は効果的なポストプレーもいくつか見られたし、徐々によくなってきているようだ。
 なにはともあれ日本代表はこの1点を守り切って連勝、勝ち点を6と伸ばした。ロスタイムに高萩が遅延行為の判定を受けてイエローをもらい、それに異議を唱えて2枚目のイエローで退場になる(それ以前に一枚もらっていたのかもしれない)なんて余計な出来事もあったけれど、それでもこの試合をきちんと勝ち切ったのは大きい。次の北朝鮮に負けなければ、グループリーグの1位抜けが決定する。ただこの大会はグループリーグの1位6チーム+2位の上位2チームが勝ち抜けという規定なので、ここまでの得失点差がわずか2という日本は、もしも北朝鮮に負けるようだと厳しいかもしれない。次の試合の課題は負けない試合運びができるかどうかだ。
 ちなみにこの日のキャプテンマークは大学生の本田拓也。どうやらボランチにキャプテンを任せるのが反町スタイルらしい。それにしてもこの子にしろ、辻尾にしろ、なんであれくらい良いプレーができる選手たちが大学になんて通っているかな。プロになれよなあと、貧乏人の僕は無責任なことを思う。
(Dec 04, 2006)

U-21日本1-2U-23北朝鮮

アジア大会・グループF/2006年12月6日(水)/ドーハ(カタール)/TBS

 前の試合を観て、日本がアジアでは頭ひとつ抜けている、なんて思ったのはとんだ勘違いだったようで。この試合に負けたU-21代表は、あえなくグループリーグ敗退という屈辱を味わうことになった。
 いや、とにかく始まってすぐに、北朝鮮が思っていたより全然上手くてびっくりしたのだった。パスのスピードは速いし、前へ向かう迫力もある。ああ、これは楽な試合にはならないなと思っていたらだ。わずか4分にFKを直接決められ、先制を許してしまう。おいおい、引き分けでもいい試合だというのに、なに先制点とられているんだ。壁はもっとジャンプしないと駄目じゃん。
 この先制点を許した場面に顕著だと思うのだけれど、このチームには妙に淡白なところがある。あまり闘争心が感じられないというか……。あの場面だって、壁のなかに闘莉王がいたら、きっと顔面にボールをあててでもシュートを防いでいただろう。そういう必死さがたりない印象を受けてしまった。
 まあ先制点を許したのち、わずか3分後に一柳のダイビング・ヘッドで同点に追いついたのは見事だった。流れるような攻撃からの、増田のアシスト。これで再び有利な立場に立てた。続けてあと1点取れれば、試合の趨勢は決まりだろうと思った。でもその1点がとれない。とれる気配もない。同点でも決勝トーナメント進出という状況に安心していたということもないんだろうけれど、とにかく手詰まりのまま、試合はこう着状態に。そして後半もまだ半分くらいのところで、またもや直接FKを決められてしまうことになる。なぜ2本も?
 いや、北朝鮮のキッカーも上手かった。2本目なんて、本当に隅の隅だ。あれはさすがに止められない。それでも問題はおそらくその位置でのFKを与えてしまった守備にある。この日はやたらとファールが多かった。集中力を欠いたようなパスミスも目立った。サイドを変えようと出したロングボールに味方が反応せず、そのままサイドラインを割ってしまうなんてシーンもあった。なんだかチーム全体が試合に集中し切れていないような印象を受けた。これじゃあ、年上のチームには勝てなくても当然だ。
 攻撃力にも問題がある。増田──なんとこの日はキャプテンマークを任されていた──は悪くはなかったけれど、攻守のリーダーと呼ぶにはまだまだ。平山のプレーは凡庸だったし、谷口も存在感がなかった。なにより本調子ではないFWと本来はボランチの選手、攻撃面でこの二人に頼らざるを得ないというのが心許ない。少なくてももう一人、攻撃において確実にリーダーシップをとれる選手が出てこないと厳しいんじゃないだろうか。
 4年前のアジア大会では、阿部や松井が中心の当時の五輪代表が準優勝を果たしている。そのチームでもオリンピック本戦では決勝トーナメント進出を果たせなかったことを考えると、今回のチームがこの先、果たしてどれだけの成績を残せるのか、非常に心許ない気分にさせられる。オリンピックに出場できないなんてことにならないよう、気を引き締めて来年の最終予選にのぞんで欲しいと思う。
 最後になってしまったけれど、この日のフォーメーションはシリア戦と同じ4バックに、1ボランチが出場停止明けの青山敏。左サイドにはJリーグの優勝争いに絡んでいたため合流が遅れていたガンバの家長が入り、本田圭佑は右サイドへと回った。あとは前と同じメンバーだった。途中出場は本田拓也と前田とカレン・ロバート。みんな上手いと思うんだけれどねえ……。やっぱり課題は精神面なんだろう。
 それにしても、アジアユースでU-19が北朝鮮に負けて初優勝を逃したのに続いての、五輪代表の痛すぎる敗戦。どうもここへきて北朝鮮は政治のみならず、サッカーの上でも日本にとっての鬼門になりつつある。
(Dec 07, 2006)

SCインテルナシオナル1-0FCバルセロナ

FIFAクラブワールドカップ/2006年12月17日(日)/横浜国際総合競技場/日本テレビ

 去年から始まったトヨタカップ改めFIFAクラブワールドカップの決勝戦。
 海外クラブ同士の対戦をじっくりと見るのも随分とひさしぶりだ。調べてみたところ、最後にトヨタカップをきちんと見たのは、もう5年以上前のことになるらしい。もとより海外のサッカーには疎いけれど、ここ数年は意識的に日本代表限定サポーターに徹していて、チャンピオンズリーグなんかもあえて観ないようにしていたから、トヨタカップもその流れで、横目でやり過ごすのが習慣になっていた。
 でもまあ今年はワールドカップイヤーだったし、なにかと評判のいいバルセロナが出るという。現在のバルセロナのことを「世界の至宝」とまで形容している人がいたりするし、それじゃあせっかくだからサッカー三昧の一年の最後を飾る意味で、その世界の至宝が繰りひろげる世界最高峰のサッカーというものを見せてもらおうじゃないか。そう思ってテレビに向かったわけなのだけれど……。
 残念なことに、この試合でバルセロナが見せたサッカーが世界最高のものだったとは、僕には思えなかった。そもそも世界最高のサッカーをできていたならば、負けるはずがないのだろうし、やはりこの日のバルサはよくなかったんだろう。日程上、インテルナシオナルよりも一日休養が少なかったのも影響しているのかもしれない。世界一を決めるといいながら、コンディション上のハンディがついてしまうというのは、どうにもフェアじゃない気がする。他にもレギュレーションにはいろいろ問題がありそうな大会ではある。
 いずれにせよどちらのチームも知らない選手ばかりだったし──ブラジル代表がひとりもいないというインテルナシオナルはともかく、バルセロナでさえ知っていたのは、ロナウジーニョとデコとシャビだけという男なもので──、誰がどうだったかなどは語りようがない。それでも両方とも接触プレーで簡単に倒れたりしない強さが一貫していた点には世界を感じた。Jリーグや日本代表でもずいぶんと簡単には倒れない選手が増えてきたけれど、それでも世界標準を目指すならば、やはりまだまだみたいだ。
 まあそれしても、圧倒的にバルサ有利という下馬評をくつがえしてのインテルナシオナルの優勝はお見事だった。だてに南米王者になっちゃいないってことなんだろう。一方でロナウジーニョが真価を発揮できないまま、格下だと思われた相手に0-1で負けるという展開は、まるで半年前のワールドカップでのブラジルの敗退のリプレイを見ているみたいだった。ロナウジーニョには気の毒だけれど、これぞまさにサッカーだという気がした。
(Dec 17, 2006)

鹿島アントラーズ3-2清水エスパルス

天皇杯・準々決勝/2006年12月23日(土)/熊本県民総合運動公園陸上競技場/BS1(録画)

 この試合、NHKの放送が録画だったため、前半が終わった時点で2時間の放送枠の半分を使い切る展開に、ああ、これは延長戦はなかったなとわかってしまった。おかげでおもしろみは何割減。しかもその時点でアントラーズは1-0と負けている。ボール支配率は相手より高かったと思うけれど、今年よくあるパターンで、どうにも点が取れそうなムードがない。かといって清水にもセットプレーの1点以外、それほどビッグ・チャンスは与えていないし、90分で終わるとしたら、次の1点をとった方が勝ちだろうと思った。
 そうしたら後半わずか5分にその1点をとったのはエスパルスだ。失点は2点とも大卒ルーキーの矢島という選手の得点だった。どちらもフリーでシュートを打たれている。ルーキーとはいえ、背番号9のFWにマークがついていないのが間違いだろう。とにかくこれで2点差と突き放され、こりゃ負けたとがっくりしながら続きを見ることになった。
 ところがなんと、そこから逆転してくれてしまうのだから驚きだ。流れの上では、2失点目の直後に田代のヘディングが決まったのが大きかった。彼は今年一年でずいぶんと伸びた。高さもあるし、来年以降はFWの柱として計算できるようになってくれればと思う。
 とにかくこのゴールで1点差と詰め寄ると、あとはもう押せ押せ。本山の左足で同点に追いついた時点で、これは勝ったなという感じだった。最後は途中出場の柳沢。内田のグラウンダーのクロスに逆サイドであわせたもので、W杯で大ひんしゅくを買ったやつに近い形だった。あんな風にW杯でも決められていれば──なんて話をしてもしかたない。いや、なんにしろ見事な逆転劇だった。
 この日のスタメンは曽ヶ端、内田、岩政、青木、新井場、中後、野沢、ファビオ・サントス、本山、ダ・シルバ、田代。放送の直前まで食事に出かけていて、その席で飲んでほろ酔い加減だったから、フォーメーションが中後の1ボランチだったかどうかとか、よくわからなかった。途中出場で山本拓也という選手も出ていたけれど、そんなだから評価のしようがない
 しかし増田、深井、柳沢がベンチっていうのはどうなんだろう。今シーズン限りで退団の決まっているファビオ・サントスやダ・シルバを使うくらいならば、増田や深井にチャンスをあげて欲しいところだ。なんでも深井は出場機会に恵まれないことを不満に思って、移籍を希望しているというじゃないか。アウトゥオリという人は経歴には申し分がないけれど、その辺の選手起用はやはりいまひとつだった気がする。若手やブラジル人を優遇する彼の起用方法が、今シーズンのチーム全体のモチベーションをさげてしまっていたような気がしてしかたない。
 でもまあ、そんなアウトゥオリが指揮をとるアントラーズが観られるのも、多くてあと2試合。今シーズン所属していた外国人とは一人も契約更新しないそうで、アレックス・ミネイロや故障中のフェルナンドは、すでにブラジルに帰ってしまっている。本田と名良橋もついに戦力外だとのことだ。今年加入した若いブラジル人二人を除けば、あとの選手はみんな好きだったので、これきり見られないと思うとさびしい。例年になくシビアなニュースの多い年の瀬だった。
 本田はこのままアントラーズ一筋を貫いて引退するそうだ。彼の退団でJリーグ発足時からの生え抜きの選手はついに一人もいなくなることになる。それを思うと本当にひとつの時代が終わるんだなあという気がする。できればそんな節目の年の最後を飾る意味でも、ぜひ十冠を達成して欲しいと思う。
 いやしかし、ナビスコカップ決勝でジェフに負けた時には、本気で今年はもう駄目だ、いや今年どころか向こう数年は浮かぶ目もないんじゃないかと思ったものだったけれども。その敗戦で憑きものが落ちたのか、その後のJ1を4勝1敗で乗り切って、その勢いで天皇杯もなんとか準決勝進出を決めてみせてくれた。次の相手はJ1王者、浦和レッズ。ちょっと前までならば勝てる気がしなかったけれど、いまはワシントンもアレックスも闘莉王もいないとなれば、それほど悲観しないでもよさそうだ。故障明け以来、本山の調子がとてもいいみたいだし、決勝進出も夢じゃない気がしてきた。とりあえず年内最後まで好きなチームのサッカーが観られるだけでも幸せだと思う。メリー・クリスマス。
(Dec 24, 2006)

浦和レッズ2-1鹿島アントラーズ

天皇杯・準決勝/2006年12月29日(金)/国立競技場/NHK

 残念ながら元日の決勝にあと一歩届かず。これがパウロ・アウトゥオリ監督のアントラーズでの最後の試合となった。なんちゅうか、この一年を象徴するような一戦だったと思う。
 アントラーズのスタメンはFWがダ・シルバから柳沢に替わっただけで、あとは前の清水戦と同じメンバー。対するレッズは前にも書いたように、ワシントン、三都主、闘莉王、さらには坪井や堀之内までも故障で欠いた満身創痍の状態だった。3バックはネネと内館と細貝だ。リーグを戦っていた時とは大きく入れ替わっているし、これならばいかに堅守を誇ったレッズとは言え、従来の守備力はないだろうと思っていたのだけれど……。
 やはりこの日のアントラーズはレッズのディフェンスを崩しきれない。ボールはよく回るのだけれど、肝心のフィニッシュに到らないという、じれったいパターンが続く。結局今年のチームに足りなかったのは、ゴール前での思い切りのよさなんじゃないだろうか。俺が点をとってチームを勝利に導いてやるという、そういう選手がいなかった。シーズンを通してチーム全体にそうした積極性が感じられなかった。負けず嫌いの小笠原が抜け、エースのアレックス・ミネイロが不調をきわめていたリーグ戦の終盤は特にそうだ。最後のほうで失速して終わってしまったのは、そういう意味では当然だったような気がする。
 対するレッズはそのあたりがしっかりしている。この試合に足の痛みを押して出場した小野や、ポンテのブラジル人らしい積極性、それこそアントラーズに足りなかったものだと思う。結局この二人にゴールを決められて、アントラーズは元日決戦への夢を断たれることになった。
 それにしても今年は小野にやられた。アントラーズ戦だけで4ゴールって……。なんでそんなに決めてくれちゃうのかな。ポンテにも結構やられている印象があるし。小野にしろポンテにしろ、個人的には好きな選手なのだけれど、これくらいやられると、好きとか言っている場合じゃないだろうという気分になる。ああ、やれやれ。
 アントラーズ内部に目を向ければ、この日の敗戦にはやはりアウトゥオリの選手起用が少なからず影響していたような気がしてならない。2失点両方に絡んでいるのが青木なのが、そうした印象を助長している。1点目では小野をフリーにしてしまい、2点目ではポンテのシュートが彼にあたってコースが変わったことにより、ゴールを許してしまうことになった。2点目は不運だとしか言いようがないけれど、その不運を招いた原因だって、本来ボランチの選手をセンターバックとして起用した采配なのではないかと、そんな見方をしたくもなろうってものだ。
 僕がシーズンを通してアウトゥオリの采配に疑問を感じていたのは、青木のCB、増田のボランチでの起用、そしてファビオ・サントスの重用だった。青木はこの日のような形で何度も失点に絡んでしまっているし、増田はここへきてベンチを温めるばかりとなっている。そしてファビオ・サントスだ。
 この日の彼は攻撃的なポジションかボランチかという位置でスタメン起用され、途中交替で新井場が引っ込んだあと、左サイドバックに回った。特に経験豊富というわけでもない若い彼をそうやって中盤、ボランチ、左サイドバックと、いろんなポジションで使ったせいで、チームに一貫したリズムというものが出てきにくくなっていたような気がしてならない。
 ファビオ・サントスは結局この試合で、最後の最後に2枚目のイエローカードをもらって退場してしまった。パワープレーに最後の望みをつないでいた、残りわずかな時間帯におけるその退場劇はゲームの行方を決定づけた。ベンチへも寄らず、そのまままっすぐロッカールームに引き上げていった彼のうしろ姿が、今シーズンのアントラーズの中途半端な成績を象徴しているような気がしてならなかった。

 というわけで残念ながらアントラーズの決勝進出はならず、07年元日におこなわれる天皇杯決勝戦は、浦和レッズとガンバ大阪の対戦に決定した。二連覇がかかるレッズに対して、ガンバはこれがJリーグ発足以来、初めての決勝進出となる。ともに日本代表を数多く擁し、最後までJ1の優勝を争った両チームの再戦だ。天皇杯の決勝でこうやって強豪同士が対戦するというのも随分とひさしぶりだし、せっかくだからポスト・ワールドカップ・イヤーの幕開けを飾るにふさわしい、素晴らしい熱戦を見せてもらいたいと思う。
(Dec 30, 2006)