2006年8月のサッカー
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- 08/09 ○ 日本2-0トリニダード・トバゴ
- 08/16 ○ 日本2-0イエメン (アジアカップ・最終予選)
- 08/19 △ 鹿島2-2浦和 (J1第18節)
日本2-0トリニダード・トバゴ
2006年8月9日(水)/国立競技場/テレビ朝日
イビチャ・オシム氏が日本代表監督に就任して初めての試合。
トルシエ、ジーコと8年間にわたって不本意な戦いぶりばかりを見せられてきた(と思わずにはいられない)人間のひとりとして、オシム氏の代表監督への就任は、願ってもない朗報だった。川淵さんの失言から始まったドタバタは余計だったけれども、それでも僕には軽率な会長を非難しようという気はまったく起こらなかった。あのオシムさんが日本代表を率いてくれると聞かされてしまっては、期待が大きすぎて、川淵さんの失言なんて問題はたいしたことには思えなかったからだ。
かりにもJ1のチームを応援している人間ならば、誰もがオシム監督が就任してからの千葉の変貌ぶりには脅威を感じていたはずだ。少なくてもアントラーズは、オシム監督の就任以来、千葉に何度も苦杯を飲まされてきた。レッズやマリノスならばともかく、ビッグネームの全然いない千葉にだ。なんてすごい監督なんだと、感心しないではいられなかった。「日本人には海外での経験が足りないから世界では通用しない」なんてことばかり言っているトルシエやジーコには、じゃあヒデも俊輔もいない千葉を、小笠原や柳沢ら、日本代表を多く抱えたアントラーズと五分に戦えるようにしてしまったオシムさんはどうなんだよと、文句も言いたくなろうってもんだ。この人が監督を務めてくれれば、もしかしたらば日本代表も変わるんじゃないかと、期待したくなるのは当然の流れだった。そしていま、その希望がかなった。これが嬉しくないはずがないじゃないか。
そりゃオシムを日本代表に取られたジェフのスタッフやサポーターは腹が立つだろう。それはわかる。でも日本代表を愛している者としては、オシムさんに代表監督をやってもらえるチャンスがあるというのに、それを逃すなんてことは、悪いけれど僕にはできない。そんなもったいないことはして欲しくない。どんなに強引でもかまわない。恨みを買ってもしかたない。いましかチャンスがないのならば、そして本人がやる気を見せているという以上、絶対にオシムを引き抜くべきだと僕は思った。
オシムさんが就任会見で、自らと日本代表との関係を結婚にたとえていたけれど、まさに恋愛と同じだと思う。本気で誰かを求めれば、時としてそれ以外の人を傷つけてしまうことだってある。僕はオシムさんの代表監督就任を心から歓迎する。けれどだからといって、それがジェフ関係者やサポーターの深い悲しみの上に成り立った関係だということを忘れてはいけないのだと思う。ひとつのチームに大きな犠牲を強いての船出だ。オシムさんには次のワールドカップまでの4年間を無事につとめ切って欲しいと心から願っている。
ということで、オシム日本代表監督就任後の初めての試合。わずか13人という異例の代表選手発表からわずか5日だ。その間に6人を追加招集して人数的には普通になったけれど、顔ぶれはやはり随分と新鮮だった。
この日のスタメンは川口、田中隼磨、坪井、闘莉王、駒野、鈴木啓太、長谷部、山瀬、アレックス、田中達也、我那覇という十一人。フィールドプレーヤーのうち、6人が浦和(かつて所属した山瀬も入れれば7人?)という構成だった。
国際Aマッチデーでない上にA3や主要チームの海外遠征とスケジュールが重なってしまい、思うような選考ができなかったのも一因ではあるだろうけれど、それよりもやはり、わずか3日の合宿ではチームとして機能させるには無理があるから、あえて同じチームの選手を多く使ったということのようだ。今年のJ1からどこか1チームを選べと言われれば、レッズが中心になるのは当然のことだとは思う。
ちなみにサブに入ったほかのメンバーは、山岸(浦和GK)、栗原(横浜)、今野、小林大悟(大宮)、中村直志(名古屋)、佐藤寿人、坂田(横浜)、そして最年少の清水の青山というメンバー。このうち、山岸、故障中の今野、U-21代表戦から帰国したばかりの青山をのぞく全員が、この日のピッチに立った。
こうして見ると、選ばれたメンバーは選ばれて当然という活躍をそれぞれのチームで見せている選手ばかりだ。特に小林大悟や中村直志など、低迷しているチームに所属しているから知名度は低いけれど、チームへの貢献度はとても高い。そういう選手がちゃんと呼ばれてる。さすがJ1監督歴3年のオシムさんという感じがした。
しかしそうは言っても、このメンバーだといまひとつA代表の試合を見ているという気がしないというのも正直なところだったりする。半数以上がアテネ五輪の時のメンバーだから、なんだかあの時のチームが再結成したような感じで、見ていて妙な気分だった。もう少しジーコ・ジャパンの選手が残っていても良かったんじゃないかと思わないでもないけれど、でもまあ、あのチームの中心が海外組だったことを考えれば、国内組だけで戦った今回はこういうことになるのも仕方のないことなんだろう。いずれにせよ、スケジュール的に今回の日本代表に多くを望むのは無理がある。
対するトリニダード・トバゴもW杯を終えてチームの再編成中。W杯では無得点のままで予選敗退したチームだから守備力が高いのかと思っていたけれど、今回のチームはあまりそういう印象でもなかった。ま、こちらがホームならまず負けないだろうというレベルだと思った。
試合は前半15分にアレックスのFKが直接決まって日本が先制。追加点もアレックスだった。中盤から全速力で駆けあがり、駒野からのロングパスを受けて、GKと1対1のチャンスをループシュートで落ち着いて決めた。これは実に見事な得点だった。やっぱりアレックスは攻撃に参加してなんぼだ。ジーコの最大の失敗は彼をサイドバックに起用して、その攻撃力を相殺してしまったことかもしれない。
この日の日本代表の得点はこの2点のみ。再出発の試合でゴールを決めたのが、前のチームでDFを務めていたアレックスだけというのはちょっとさびしい。でもところどころでダイレクトパスの交換から見事なコンビネーションを見せてくれるシーンもあったし、それなりにこれからを期待させる内容だったと思う。やはり今回は初代表の選手が多かったためもあり、前半に張り切りすぎてしまったのか、後半は疲れて動きが鈍くなってしまった印象があった。
個人的にこの日の試合で一番好印象を受けた選手は、鈴木啓太だった。豊富な運動量でやたらとディフェンスラインに飲み込まれまくっていた姿勢が印象的だ(それがいいかは別として)。オリンピック代表の時には最終選考に漏れた彼の、「止まっていた時計ががまた動き出した気がする」というコメントが泣ける。今度は代表に定着させてあげたいと思う。でも今回のチームでもボランチは激戦区だからなあ……。さてどうなることやら。
(Aug 10, 2006)
日本2-0イエメン
アジアカップ最終予選/2006年8月16日(水)/新潟スタジアム/BS1
オシム采配第二弾にして初の公式戦となるイエメン戦。
この試合ではA3が終わって追加招集された遠藤、加地、阿部、巻がスタメン出場した。途中出場したのは羽生、佐藤勇人&寿人の3人。つまり追加招集した6人全員が出場機会をもらったことになる。一般的にはオシムの目指すサッカーをよく知っているジェフ千葉の選手が重用された、みたいな見られ方をしているけれど、もしかしたら呼んだ選手全員のプレーを見たかったんではないかという気もする。いずれにせよ実際にオシムがどういうチーム作りをしてゆくのかが見えてくるのは、アウェイニ連戦となる次のサウジ戦以降だろう。
やはり追加招集されたなかで意外だったのは遠藤だ。特別、運動量が多いとも思えない彼がなぜ選ばれたのか、しかもこの試合でスタメンだったのかがわからない。まあ、遠藤のプレイヤーとしての才能は確かだし、直前のJリーグの試合では大活躍したようだし、代表にふさわしくないということではないのだけれど、彼の場合、ジーコのチームでも海外組の穴を埋める貴重な存在として重用されてきたプレーヤーなだけに、新風吹き荒れるオシム・ジャパンでも声がかかったというのが、ちょっと意外だった。本人も意外だったみたいだけれど。
ちなみに追加招集された選手の代わりに、今野、栗原、青山が代表から外れた。故障中の今野、U-21の青山はわかるけれど、栗原が外された理由はちょっと疑問。その結果、センターバックの選手は坪井と闘莉王の二人だけになってしまったのだから、なおさらだ。栗原は次世代の日本代表の最終ラインを担う有力候補の一人なんだろうと、漠然とながら思っていたので、そんな彼がここで簡単に代表から外されてしまったのは、ちょっと気になった。
試合内容については、前半はもう最低だった。ジーコ・ジャパンの悪いときのまんまという印象。公式戦だから格下の相手は当然引いてくる。そんな敵をどう崩していいのか、まったくアイディアを感じさせないだらだらした試合内容だった。全然ボールは回らないし、人も動かない。Jリーグの試合の翌日に代表が発表されて、その日のうちに即練習で、この試合の前日さえみっちりと練習をさせられていたらしいので、疲れがたまっていたというのもあるのだろう。けれど、遠藤や加地が加わったせいで、前代表の悪しきスタイルを引きずってしまっているんじゃないかというような、悪い印象を受けてしまった。
試合がなんとか見られるようになったのは、後半開始とともに駒野に代えて羽生を投入してからだ。駒野との交替にはおやっと思ったけれど、なんでも彼は足を痛めて、自ら交替を願ったということ。まあこの日の駒野は、前半あまり積極的に攻撃参加もできていなかったから、この交替は有効だった。その結果アレックスがジーコの時と同じように左サイドバックに入ることになってしまったけれど、このレベルの相手ならば、彼の守備力で十分太刀打ちできる。結果オーライ。
とにかく後半からピッチに立った初代表の羽生が、持ち前の豊富な運動量を発揮して、チームにリズムをもたらしたおかげで、後半はいくらか見られる試合になった。初得点はその羽生が取ったCKからだ。アレックスのキックに阿部がニアであわせたもの。
追加得点は後半ロスタイムの佐藤寿人。これもセットプレーからで、最初のヘディング・シュートをGKに弾かれながらも素早く反応して、二度目は足で決めた。佐藤寿人は体格的に近い田中達也にスタメンを奪われているけれど、ゴール前でのボールへの反応の良さはかなりなものなので、ベンチに置いておくのがもったいないと思う。この試合では巻の出来がいまひとつだったから、いっそのこと達也と組ませて、小柄で俊敏な2トップというのもおもしろいんじゃないだろうか。
とりあえず勝ち点3をあげることはできたけれど、やはり内容的には満足するに程遠い試合だった。いまみたいに集まっては即試合という日程では、そう簡単にオシムが目指すサッカーを実践できるようになるにはならないのだろう。どうやらチームとして一定期間まとまって時間が取れるアジアカップ本戦までの向こう一年くらいは、ジーコ・ジャパンの時と同じようなモヤモヤした気分にさせられる試合が続くのかもしれない。
(Aug 19, 2006)
鹿島アントラーズ2-2浦和レッズ
J1第18節/2006年8月19日(土)/カシマスタジアム/BS1
スタメンに日本代表6人を擁するレッズとの対戦だから、苦戦は必至だと思っていた。その点では引き分けという結果に悲観する必要はないはずだった。ただし89分までは勝ち越していたことを考えると、やはり勝ち点3を逃したと言わざるを得ない。ドローという結果は非常に痛かった。
この試合でもやはりスタメンは本山ではなくファビオ・サントスだった。やはりこの形がアウトゥオリが考える現在のアントラーズのベストメンバーなのだろう。小笠原が海外移籍するという噂もあるので、もしかしたらば、再び本山に出番が回ってくることも考えられるけれど、そうでないならばきっとこのままの形でシーズン終了までいってしまうに違いない。なんとも残念だ。
しかしながら、この日の出来では、本山がスタメンでないのも仕方ないかなと思う。いや、本山に限ったことではなく、それは小笠原や相手の小野も一緒なのだけれど、ジーコに代表に選ばれていた選手たちが、みんなどうにも覇気がない気がした。代表から外されたのだから、もっと奮起してもう一度返り咲いてやる、みたいな意欲に燃えているのかと思ったのに、どうもそうではなく、ああ、おれの代表人生も終わってしまった……、みたいな。そういう感じを受けてしまうのは、やはりあまり活気のあるプレーを見せてくれていなかったからだろう。なんとも歯がゆくて仕方ない。オシムに足を運ばせるような活躍を見せて欲しいのに……。
ま、なんにしろこの日は4-0とボロ負けした前回とは違い、ある程度は評価できる試合となった。前半から浦和に圧倒される時間帯が長かったものの、アントラーズもゴール前のチャンスを何度かは作り出してたし。ただゴール前までは運べるのにフィニッシュで終われない、というシーンが多かった。その点はかなり不満だ。
先制点は前半40分。小笠原の右CKをニアに駆け込んだアレックス・ミネイロがヘッドで流し込んだ。3日前の代表戦における阿部のゴールをリピートしたみたいな秒殺のゴールだった。
後半14分には柳沢が開幕戦以来のゴールを決めて2-0と突き放す。アレックス・ミネイロとのワンツーが見事に決まって得たGKとの1対1のチャンスを、ヤナギには珍しく落ち着いて決めてみせた。ああいうプレーがコンスタントに出せるようになって欲しい。
さてこれで勝ったかと思ったのだけれど、そうは問屋が卸さない。そのわずか2分後に小野に追撃のゴールを許してしまった。さらには後半終了まで残り1分で、ワシントンに同点ゴール。痛恨の同点弾だった。
これらの失点にはどちらも新井場が絡んでいる。最初の失点の時には、ハイボールの目測をあやまって、みすみす相手にチャンスを与えてしまった。2点目の時には右サイドへの寄せが甘く、簡単にクロスをあげさせ過ぎた。こういうのを見ると、やはり新井場の守備力には疑問をおぼえる。
日本代表でジーコがアレックスを左サイドバックでの起用して守備力の低下を招いたのと同じで、ウィング・プレーヤーだった新井場をサイドバックにコンバートしたことが、ここ数年、アントラーズが優勝にあと一歩届かない理由のひとつのような気がしてきた。相馬が抜けて以降のアントラーズの右サイドには、どうにも小さくない穴があいているような気がする。現在ヴェルディにレンタル中の石川竜也も守備力はあやしかったし。ああ、やはりもっとも攻守のバランスが取れている印象の根本を残しておかなかったのが間違いのもとだ。なんで大分に出しちゃったかなあと、いまさらながら残念に思う。
あと、この日のアウトゥオリに不満があるとすれば、選手交替が後手後手を踏んでいたことだ。昨日は東京でも最高気温が34度という猛暑のなかでの試合だった。選手の消耗も並じゃなかっただろう。それなのに最初の交替(本山)は小野のゴールが決まったあとだし、残りの二人、野沢と深井を投入したのも、同点ゴールが決まったのと同じ時間、つまり残り1分となってからだ。絶対に選手交替のタイミングが遅すぎる。その点では新井場のミスにもあまり厳しいことは言えない気にもなる。だって昨日は本当に暑かったんだから。あのなかで90分間走り続けている選手にケチをつけるのはちょっと酷なんじゃないかという気にもなる。
なにはともあれ、ロスタイムには野沢と深井のコンビネーションでかなり惜しいシーンを演出していたこともあって、二人の投入があと10分早かったらば、引き分けなんてことにはならなかったんじゃないかと思えて仕方ない。無念の勝ち点1だった。
(Aug 20, 2006)