2025年3月の本
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- 『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短篇29』 ジェイ・ルービン編
ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短篇29
ジェイ・ルービン編/新潮社
英米文学科の出身者なもので、ペンギン・ブックスのオレンジ色の表紙を見ると、どうにもノスタルジーをそそられてしまう。この本はジャケ買いせずにいられなかった。
ということで、村上春樹の英語版の翻訳家にして、日本文学教授であるアメリカ人、ジェイ・ルービンがペンギン・ブックスから依頼されて編纂した日本文学の短編小説アンソロジーの逆輸入版。村上春樹氏によるボリュームたっぷりの序文つき。
アメリカ人の紹介で日本文学に接するというのも変なものだけれど、日本人のくせに日本文学に疎い者としては、いい機会だという思いもあった。
ただ、序文で春樹氏も書いているように、これがけっこう癖のあるセレクションになっている。
日本文学の全体像を紹介するという趣旨ならば、太宰治や大江健三郎らが収録されていないのは不適切だろう。それどころか、ページ数の都合か、出版社の大人の事情か知らないけれど、この日本版では英語版に収録されている夏目漱石や谷崎潤一郎の作品が割愛されてしまっているから、なおさらだ。
日本文学のアンソロジーに、夏目漱石が入っていないとかあり得る?
願わくば英語版に収録された作品をすべて読みたかった。まぁ、おかげでこれまで読んだことのなかった作家の作品をいろいろ読めて勉強にはなりましたが。
一方で、やっぱ日本文学って苦手だなぁと思わせるような作品もちらほら。
正直なところ、切腹シーンの詳細な描写が数ページに渡ってつづく三島由紀夫の『憂国』とかは、この先もう二度と読まないで済ませたい。
死んで花実が咲くものか。僕にはやっぱり死の美学はわからない。
(Mar. 08, 2025)