F1 ザ・ムービー
ジョセフ・コシンスキー監督/ブラッド・ピット、ダムソン・イドリス、ケリー・コルドン/2025年/アメリカ/Apple TV+
車も持っていないし、モータースポーツにも興味はないのに、不思議とこの手の映画は観たくなる。
F1団体の全面サポートを受けたとかなんとかいう噂の、ブラッド・ピット主演のF1レース映画。
――だと思って観始めたら、いきなり最初のレースはF1ではなく、デイトナ24時間耐久だった。
ブラピ、F1ドライバーじゃないじゃん!
――という意表をつく始まり方をしたこの映画。
ブラッド・ピット演じる主人公のソニー・ヘイズは、30年前の若き日に事故でキャリアを棒に振ったレーサー。F1にこそ乗っていないけれど、ドライビングにおけるセンスは天才的で、様々なレースに参加しては結果を残している――らしい。
そんな彼にかつてのチームメイトだったハビエル・バルデム(いまだに名前が覚えられない)から、自分がオーナーを務める新参F1チームで走ってくれないかとオファーがある。今季1勝もしていない彼のチームはこのままだと身売りせざるを得ないという状況にあり、ブラピの才能を知ったるかつての旧友が、その天才に一か八かの賭けをすることにしたわけだ。
F1に復帰するには歳をとりすぎているブラピ(実年齢62歳!)に、チームも世間も疑いの目を隠さない。とくにチームの黒人エースドライバー、ジョシュア(ダムソン・イドリス)は反発することしきり。それでもソニーは持ち前の才覚と、反則ぎりぎりの手管を厭わないずるがしこさでもって、チームに多大な貢献を果たすようになり、周囲の信頼を得るのみならず、そのシーズンの主役のひとりになってゆく。
年配者が若者とためをはって戦うという展開には、晩年の『ロッキー』を思い出させるところがあるし、F1のサーキットで世界中をまわりながら、でこぼこだったチームが徐々に団結してゆく展開には少年ジャンプ的な楽しさがあった。
決して傑作とは思わないけれども、そんな風にマンガ的だからこそ、いずれまた観たくなるんだろうなって思った。
(Dec. 27, 2025)
