辺境・近境
村上春樹/新潮文庫/Kindle
途中で紙の本も並行して読み始めてしまったせいで順番が前後してしまったけれど、これがデジタルで読む月刊・村上春樹の最後の一冊。
収録されているのは、国内外の旅行記が全七本。内訳は海外がアメリカ二本、メキシコ、ノモンハン、国内が長崎、香川、神戸の計六ヶ所。時期は九十年代の後半で、およそ四半世紀以上前の話になる。
アメリカでまずは多くの作家が住むというニューヨーク州のニュー・ハンプトンという街を訪れ、その後に後半のエッセイでは車での大陸横断旅行に出かけている。
長崎では個人が所有する小さな無人島で何泊かしてみようとして、夜間に虫の大群に襲われて一晩で終了。これには笑った。まぁ、他人事だから笑えるんであって、自分が同じ目にあったらたまったもんじゃないけれど。
メキシコでは前半がバックパッカー春樹の一人旅、後半が写真家の松村映三と翻訳家のアルフレッド・バーンバウムと合流して、あちこちを回っている。
香川では安西水丸氏と一緒にただひたすらうどんを食いまくっている。
ノモンハンでは表紙の写真を撮っている。
神戸では震災の二年後の故郷を二日にわけて散策している。
旅先での風景や出来事をつづる春樹氏の文章は、ふだんのエッセイでのくだけた調子とは違って、いたって普通でとっつきやすい。まぁ、うどんにまつわる章は安西水丸氏と一緒だから、けっこう『村上朝日堂』に近い感じだけれど、そのほかは比較的真面目。そもそもメキシコやノモンハンには、土地柄的に気安くジョークなんかいえない雰囲気が漂っている。このふたつの土地がタイトルの「辺境」たるゆえんだろう。
メキシコってサッカーでは日本のライバルって感じだから、それなりに発展しているんだろうと思っていたのだけれど、このエッセイが書かれた四半世紀前には、まだまだ発展途上国に近い地域がたくさんあったみたいだ。いま現在はどうなんでしょうね。
とりあえず、日本でのほほんと暮らしている自分は幸せだなと思った。
(Nov. 04, 2026)





