茨城県立カシマサッカースタジアム改めメルカリスタジアムでの初めての試合は、柏レイソルとの首位攻防戦。
この日のスタメンは、早川、濃野、植田、キム・テヒョン、小川、三竿、船橋、小池、チャヴリッチ、レオ・セアラ、優磨の11人。途中出場は樋口、松村、田川、知念、津久井の5人だった。
この4日前に行われた天皇杯3回戦の長崎戦では、CBが千田と津久井、ボランチには柴崎と知念にコンビを組ませて、優磨を温存して、トップ下に荒木を起用するという布陣で戦って勝っているので、この試合でもスタメンをいじってこないかと期待していたのだけれど、鬼木はごくオーソドックスな布陣に戻してきた。まぁ、このメンツがいまいちばん信頼できるということなんだろう。
逆にいえば、このところ3連敗している布陣とベースは一緒。それで大丈夫なの?――と思った試合は、やはり不本意な展開をみせる。
いや、前半に2点を先行したのはいい。
前半9分にセンターサークル付近でのボール奪取からパスを受けたレオ・シルバが、相手GK小島が前へ出てきているのを見逃さず、まさかのロングシュートをゴールへと突き刺す驚愕のゴラッソで先制。39分には左サイドのFKから植田のヘディングが決まって追加点。2ヵ月ぶりの複数得点で、2点のリードを奪ってみせる。
よし、これであとは前半を無失点のまま終えるだけ――とか思っていたのに、それから5分もせずに失点を許す展開がよろしくない。それもミスからだ。
ゴール前の混戦でマイボールを捌こうとした船橋が相手にボールを奪われ、そこから小屋松の芸術的なシュートが決まってしまう。
船橋~、上手くつなごうとなんかせずに、セイフティーに蹴りだしてくれれば、問題なかったのに。まだまだ危機察知能力が足りない。
結果1点差で始まった後半、途中出場の瀬川にこれまた芸術的なトラップからミドルシュートを許して同点。さらにはその2分後には樋口がハンドでPKを取られる始末(樋口いまいち安定感なし)。
2点のセイフティーリードを守れず、ついには逆転のピンチに陥るという、直近の連敗と同じような展開に……。
おそらくこのPKを決められていたら万事休すだった。
ところがこのPKを蹴った小屋松のシュートはバーの上。これで九死に一生を得た鹿島に、勝利の女神が微笑むことになる。
後半のアディショナル・タイム。早川のゴールキックが左のサイドラインを割って、プレーが切れたあと。カメラもそこから試合が動くとは夢にも思わずに、ベンチに下がった小屋松の表情を追っている最中、スローインのボールにプレッシャーをかけた田川が、古賀太陽のミスを誘う。
古賀がGKへと戻そうとしたパスが中途半端になり、それを奪った松村が小島をかわして柏のゴールネットを揺らしてみせた。ミスの瞬間をカメラが追っていなかったため、瞬時にはなにが起こったかわからなかった。青天の霹靂のように降って湧いた突然の決勝ゴール! 松村にとっては鹿島復帰後初! えらいっ!
ということで、ひさびさに3ゴールを決めた鹿島が首位の柏に競り勝ち、勝ち点44で並んだ両者の順位が逆転した。前節2位だった神戸が勝って今季初の首位に立ったので、鹿島の順位は2位。
よし!――って喜べるかというとそうでもない。連敗が止まったのはよかったけれど、得点はレオ・シルバの個人技に、ひさびさのセットプレーに、相手のミス絡みで、きちんと崩せた得点がひとつもない。単純にサッカーの内容では相手のほうが上だったと思う。こんな試合をしていたら、優勝は無理だろう。
でもまぁ、両チーム合計5ゴール、年間最優秀ゴール賞候補入り間違いなしなレオ・シルバのゴールを筆頭に、どれもが素晴らしいゴールばっかりだったし、結末は劇的だったしで、試合としてはとてもおもしろかった。
いやしかし、レイソルは強かった。フォーメーションは3バックだけれど、イメージは4バックに近くて、原田、古賀、三丸という三枚のうち、真ん中の古賀を軸に二枚を残して、もう片方の選手が再三攻撃に絡んでくる。後半は原田や三丸がペナルティエリアまで入り込んでフィニッシュに絡むシーンが何度もあった。
両ウィングバックの小屋松と久保藤次郎も技術が高くて危険だったし、この二人に加えてCBの一角が攻撃に絡んでくるのは、かなりの脅威だ。選手層も意外と厚くて、トップ下には小泉佳穂がいるし、途中出場で瀬川、戸嶋、ジエゴ、さらには新潟から緊急補強した小見とかが出てくる。伊達に首位に立っていたわけではないなと思った。
あとね、この日は細谷が欠場で、垣田のワントップだった。柏の1点目につながるボール奪取は、彼の守備だったらしい。なんと。
垣田は柏での活躍が認められ、先日のE-1選手権ではチームメイトの細谷、久保ともども、初めてA代表に呼ばれている。鹿島にいたら、代表なんて夢のまた夢だっただろうから、柏への移籍はほんと大正解だったよねぇ……。
まぁ、正直をいえば、鹿島でスタメンを確保できなかった垣田がなんでA代表なんだよって思わないではいられないんだけれども(ごめん)。
柏にはほかにも犬飼と仲間がいるけれど、この日は両者ともベンチのまま、出番なしだった。ふたりのプレーが観れなくて残念。
最後にあとひとつ。この試合でおもしろかったのが、後半の鹿島のフォーメーション・チェンジ。後半34分に三竿をさげて津久井を入れてから、鬼木は3バックならぬ5バックという、なにそれな布陣を引いてみせた。
いまだ同点なのに守備固めってどういうつもり?――って思ったけれど、両サイドが攻撃力のある小川と濃野だから、それほど守備的ではなかった気がしなくもない。なにより津久井がよかったので、この5バックは意外と印象が悪くなかった。
でもまぁ、やっぱり4バックが好きなのでね。あまり歓迎はしない。
(Jul. 23, 2025)