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2026-07-25『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』
2026-07-22『I AM HERO』
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HARRY & THE BIRTHDAY

TOUR 2026 "Gotta Move" FINAL/2026年7月17日(金)/SGCホール有明

 スライダーズが解散してから、はや四半世紀以上。いまごろになって初めてハリーのソロでのライブを観た。

 これまでハリーのライブで観たことがなかったのは、レコーディング作品にスライダーズのころほど惹かれなかったのに加え、途中からは作品がインディーズでしかリリースされなくなってしまい、手に取りにくくなったのが一因。作品をきちんとフォローできていないと、やはりライブって足を運びにくい。

 さらにはライヴの内容も弾き語りとか、ドラムだけとか変則的なものが多くて、絶対に観たいと思うほどではなかったので、観にゆくタイミングがつかめず、今日にいたるという感じだった。

 ここ数年はコンサート・チケットの高騰が著しくて、一枚一万円を超えるのがあたりまえになってきてしまい、僕自身の体力の衰えや腰痛や預金残高の少なさもあいまって、以前のように気楽には足を運びにくくくなってきてしまったので、もうこのままハリーのライブは一度も観ずに終わるのかもなぁと思っていた矢先に発表されたのが、以前に夏フェスで共演したThe Birthdayとのツアーだった。

 チバくんなきあともThe Birthdayとして活動をつづける三人の演奏をバックにしたハリーのライブが観られる!

 もしもこの先ハリーのライブを観るのがたった一度だけだとしたら、これ以上の機会はないのでは? これを観ずしてなにを観る――。

 そう思って先行チケットの抽選に申し込んだものの、豊洲PITでの東京公演は落選。二公演ゆくのは懐具合が厳しいので、日和ってZepp Hanedaは申し込まなかったのが失敗だったか……と思うもあとの祭り。残念だけれど、いままでちゃんとフォローしてこなかった自分が悪い。このまま一生ハリーのライブは観れずに終わるんだろうなって思っていたところへ、追加で発表されたのがこのツアーファイナルだった。

 会場は三月に開業したばかりのSGCホール有明。東京ガーデンシアターに似た造りのホールで、キャパは五千人とあちらよりは少ないものの、すでに東京で二公演を終えたあとの追加公演だ。さすがに今回はチケットが取れました。しかも一階席のステージ向かって左手の、前から十六列目という良席。スライダーズの復活ライブのときよりもステージが近い! まぁ、右手にいたフジイケンジだけは前の人に遮られてよく見えなかったけれど、あとの三人はしっかりと視野に収まっていた。

【SET LIST】
  1. Respectable Performer
  2. Nowhere to Run
  3. 雨ざらし
  4. 針と匙
  5. Whiskey Heads
  6. ALRIGHT
  7. On The Road Again
  8. Uh, Ah, Oh, Ah (HARD DRUNK MAMA)
  9. 壬生狂言
  10. Sweet Pain
  11. Gotta Move [新曲]
  12. You Can't Be Serious
  13. Naked Rhythm
  14. RUIN
  15. 世界の終わり
  16. ROLLしねえ
    [Encore]
  17. カレンダーガール
  18. Tokyoシャッフル
  19. Let's go down the street

 定刻を過ぎてしばらくして客電が落ち、五十年代のオールディーズらしきナンバーがSEで流れるなか、The Birthdayのメンバーが登場~。最後にハリーが出てきて、フジイケンジのギターのイントロからコンサートが始まる。

 一曲目は『Respectable Performer』――というタイトルなのを、サビにそのフレーズが出てきて知りました。ごめん、ハリーの履修が浅すぎた。

 でも馴染みの薄い曲でもなんの問題もなし。とにかくバンドの音がカッコいい~。

 キュウちゃんのドラムとヒライハルキのベースに引っぱられて、ハリーとフジイケンジのギターがノイジーに絡み合う。これこれこれ。こういう音が聴きたかったんだよ~って、まさに僕が望むギター・ロックの理想形。スライダーズとThe Birthdayってどちらも僕にとってはそういうバンドだったので、その両者のコラボは予想以上に最高だった。

 この一曲目ではハリーのボーカルがよく聴きとれないほど音もでかかった。二曲目以降はミキサーの調節がよくなったのか、はたまた単にそこまでギターをかき鳴らさない曲がつづいたからか、そんなこともなくなったけれど、でもとにかく一曲目はとにかく音がでかかった。でもって、それがとても気持ちよかった。

 かつてはエレカシのライヴ帰りには耳鳴りがして、相方の声がよく聞こえないなんてことがあった。最近はそういう経験がすっかりなくなったけれど、この夜はちょっとだけそのころに近いものがあった。やっぱロックはこういうのがいいよなあって思った。もうこの一曲目を聴いた時点で、この夜のライブが最高のものになるのを確信した。このバンドの音を二時間も浴びられるんだよ? これが最高でなければなんだろう?

 ハリーとThe Birthdayのコラボってことで、どのバンドの曲をどんな比重でやるのかも要注目だったわけだけれど、セットリストの中心となったのはハリーのソロ・ナンバーで、それ以外は六曲だけだった。全部で十九曲だったから、約三分の一弱。

 ハリーはソロでもスライダーズの曲をやっている印象だったし、それなりにスライダーズの曲も聴けるだろうと思っていたのに、ほとんどやらなかったのは予想外。演奏されたスライダーズ・ナンバーはわずか三曲で、本編で演奏されたのは『On The Road Again』一曲だけだった。

 でもこの曲がいい。スライダーズの再結成ライブで必ずやるだろうと思っていたのに聴けずに終わったこの曲を、あえてこのツアーでやってくれたことが嬉しかった。それはアンコールの『Tokyoシャッフル』もしかり。いまさらこの曲をツイン・ギターのバンド・サウンドで聴けるのって、嬉し過ぎでしょう?

 本編の大半はハリーのソロ・ナンバーで、いまいち馴染みが薄かったとはいえ、知らない曲はひとつもなかったし、とにかくバンド・サウンドが最高なので、それだけで十分に楽しいところへきて、このツアーではコラボゆえのサプライズがいくつか用意されていた。これがまたたまらない。

 まずは冒頭からソロ・ナンバーをつづけたあと、六曲目に披露されたのが『ALRIGHT』。

 The Birthday初期のEP『プレスファクトリー』の収録曲で、オリジナル・アルバムには未収録のせいで、僕はサビにくるまでThe Birthdayの曲だって気がつかなかった。いまいち馴染みの薄いこのバラードを引っぱり出してくるあたりもふるっている。

 ちなみに「夢をみようぜBady」と歌うこのナンバー。僕にとっては、いやおうなく宮本を思い出させるこの歌詞に、なんで同じことを歌っても、チバくんやハリーのほうがカッコいいんだろうなぁって思いながら耳を傾けていた。

 この曲の次が前述した『On The Road Again』で、ここの流れはこの日の序盤のクライマックスだった。

 二つめのサプライズはライブの中盤に演奏された新曲『Gotta Move』。

 まさかこのツアーのために、ツアータイトルを使った新曲を用意しているなんて思わないじゃん。ミディアム・テンポのブルージーなナンバーで、一聴しただけで記憶に残るようなキャッチーな曲ではなかったから、もう一度聴かせてもらっても同じ曲だとわからない可能性大だけれど、それでもわざわざ新曲を用意してくれた心意気にぐっときた。

 そしてこの夜最大にして最高のサプライズが本編のラスト・ナンバー『Rollしねえ』の前に鳴らされたあの曲――。

 フジイケンジが弾き始めた高速ギターカッティングのイントロを聴いて耳を疑った。

 えっ?

 これって、まさか?

 ハリーのソロにこの曲に似ているイントロの曲ってあったっけ?

 そんなフジケンのギターに、ヒライのベースが加わり、キュウちゃんのドラムが鳴った瞬間に、戸惑いが確信にかわった。そしてぶわっと鳥肌がたった。

 『世界の終わり』だあああぁ~~!!!!

 いやいやいやいや。まさかこの曲をふたたび生で聴く日がこようとは……。

 それもハリーのボーカルで。

 チバくんはThe Birthdayではまったくミッシェルの曲を演奏してこなかったので、フジケンとヒライハルキがこの曲を演奏するのも、おそらく今回のツアーが初めてでしょう? キュウちゃんにとっても、プライベートはいざ知らず、公式ではミッシェルの解散ライブ以来ではないんだろうか。

 The Birthdayとのコラボでなぜこれ?――とは思ったけれど、おそらくハリーにとっては、いまは亡きチバユウスケに対する追悼の意味を込めたトリビュートだったんだろう。スライダーズのトリビュートに参加してくれた返礼として、チバくんの曲をカバーするならば、彼の最高傑作であるこの曲をぜひやりたいと思ったんだろうきっと。ハリーのその思いにミッシェルのオリジナル・メンバーであるキュウちゃんが賛同したからこそ実現したと思われる夢のような衝撃のトリビュート・ナンバーだった。

 ということで、この名曲のあとに『Rollしねえ』を聴かせてもらって本編は終了。

 いまだ『世界の終わり』の余韻さめやらぬ中、最近のライブには珍しくずいぶんと待たされて始まったアンコールの一曲目は、The Birthdayの『カレンダーガール』。

 また意外な選曲を……。

 でもまぁ、チバくんの不在ゆえに、あえて王道をはずした、変化球的な選曲にならざるを得なかったのかもしれないとも思う。

 この曲ではワンコーラス目をハリーが歌ったあと、キュウちゃん、ヒライハルキ、フジケンの順でボーカルをまわして全員が歌うという趣向だった。チバくん抜きのライブでは三人ともボーカルを取っているようなので、そのことに対するハリーからの配慮だったのかなと思った。この曲に限らず、ハリーの歌に三人が持ち回りでコーラスをつけていたのも、このライブのよかった点。

 アンコールはそのあとに前述した『Tokyoシャッフル』があって、最後は『Let's go down the street』で締め。そうだよなぁ、スライダーズのトリビュートでThe Birthdayが演奏したこの曲は外せないよねって思いながら聴いてました。

 フジケンとキュウちゃんはハリーと十才違いだけれど、ヒライハルキとはちょうど二回り離れている。そのせいか、ハリーがThe Birthdayのメンバーを紹介する際の呼び方が、フジケン、ハルキ、クハラだったのも、なんかメンバー個々に対する距離感が伝わってきておもしろかった。年の離れた彼らと一緒に演奏するハリーがとても楽しそうだったのが、この夜もっとも印象的だったことかもしれない。

 あと、ハリーのファンはいかにもって人が多かった。会場へと向かう道すがら、あ、この人はハリー観にゆくんだろうなと思わせるファッションの人たち多数。会場内に長蛇の列ができているから、トイレか物販かと思ったら、列の先にあったのは喫煙ルームだったりするし。いまどき、あんなに喫煙者が多い集団も珍しかろう。

 なんにしろ、最近の宮本のライブは圧倒的に女性ばかりだし、ずとまよはもちろん若者中心なので、こういう年季の入ったロックファン大集合みたいなオーディエンス層って、かえって新鮮だった。

 いやぁ、でも本当にいいライブだった。ハリーのライブを観るのはこれが最初で最後になるかもと思っていたけれど、もしも彼らがふたたび一緒にツアーをする気になったら、そのときにはまた観にいきたくなってしまうこと必至だわ。

(Jul. 29, 2026)

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち

スティーヴン・ウィット/関美和・訳/早川書房/Kindle

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち (早川書房)

 いまやすっかりあたりまえになったデジタル配信を中心とした音楽シーンがいかにして実現したかを三つの側面から紐解いてみせたノンフィクション。

 ひとつめはMP3を開発した技術者たちの話。僕はこれを読むまで、iTunesのファイルフォーマットであるAACをアップルが開発したコーデックだと思いこんでいたので、それがじつはMP3を開発した技術者たちが、MP3の後継規格として開発したものだと知ってびっくりだった。AAC、王道中の王道じゃん。あと、なぜDVDの音声フォーマットにMPEG-2が採用されるまでの覇権争いの話――技術力が政治力に負けるの図――も勉強になった。

 ふたつめは音楽業界がデジタル化の波にもまれる中で、いかに変わっていったかという話。このパートはユニヴァーサル・ミュージックというレコード会社の盛衰記といった内容になっている。ずっとYouTubeでよく見かけるVEVOってなんだろうと思っていたので、それがレコード会社主導で配信ビジネスから広告収入をあげるために生み出されたプラットフォームだとわかったのが有益だった。

 最後の三つめは、音楽をMP3にリッピングしてネットにリークしていた海賊サイトの運営者たちの話。冒頭でこの本の作者が、若いころからそうした人たちによって無料で公開された音楽をダウンロードしまくっていて、音楽は無料で聴くのがあたりまえだと思っていたと語っているのを読んで、著作権を重視する僕としては、あ、これは読んじゃいけない本だったのでは?――と思ったりしたけれど、それでも内容はとても興味深いものだった。

 この本では以上の三つのエピソードが同時並行して語られてゆく。技術的な話はコンピュータを仕事にしている身としては大変興味深かったし、音楽業界の裏話も洋楽ファンならば一読の価値があると思う。でもって海賊サイトにまつわる話には、ある種のクライム・ノベル的なおもしろさがある。

 一粒で二度おいしい――じゃないけれど、これはそんな一冊で三ジャンルが一度に楽しめる良作。僕みたいに著作権法違反者への献金になるのでは……みたいなことを気にしないで済む人にはお薦めの一冊。

(Jul. 25, 2026)

I AM HERO

宮本浩次 / 2026

I AM HERO(通常盤)

 宮本浩次、四年半ぶりのオリジナルアルバム!――といわれて驚いた。いつの間にか、そんなに時間がたっていたとは。

 なるほど、『縦横無尽』は2021年の作品だ。翌年のミニアルバム『秋の日に』から数えても三年半。最近の邦楽のつねで、タイアップ曲が五月雨式に発表されているので、そこまで時間がたっているとは思わなかった。

 さて、カバー盤をのぞけば三枚目となる今回のソロ・アルバム。最大の特徴は、音作りにエレカシのころに通じる宮本らしいラフさが感じられることだと思う。

 小林武史の全面プロデュースで作った前作『縦横無尽』は、これぞプロというきっちりとしたサウンド・プロダクションの作品で、宮本絡みの作品では過去一の完成度の高さだった。でもそれゆえ「エレカシの宮本」っぽさは薄かった。これはエレカシではなく宮本のソロなんだという事実を、前作に増してよりはっきりと感じさせられる作品だった。

 ところが今回は違う。このアルバムにもプロデューサーとして小林さんの名前があるけれど、その数はあくまで半分。しかも小林さんの単独プロデュースは、収録曲のうちもっとも古いシングルの『close your eyes』とそのカップリングの『哀愁につつまれて』、その次の配信シングル『over the top』の三曲だけ。あとは宮本との共同プロデュースだ。

 要するに、いまだアルバムとしての方向性が定まらない時期の曲は、前作同様、小林さんに頼っていたけれど、途中からは方向転換して、より自由な姿勢で創作にいどんだ結果がこのアルバムなのだろうと思う。

 一曲目(アルバムのクレジットでは0曲目)の一分足らずの小曲『さあ、出かけよう!』は宮本のセルフ・プロデュースだし、その後の『かなりニュールネッサンスなnew dayよ!』や、『武蔵野』を思わせるグルーブ感をもつ『feel so fine』もそう。これらの曲の、エレカシに通じるちょっぴりラフな手作り感――風通しのよいいい加減さ――が、『Today -胸いっぱいの愛を-』みたいなウェルメイドなポップスと同居しているごった煮感が、僕にとってのこのアルバムの最大の魅力だった。

 おもしろいのは、すべての楽器を宮本がひとりで演奏している『生きているから』や、一曲目と対になったラストナンバーの『愛を抱きしめろ』――タイトルのせいでまったく期待していなかったら、セカンドラインの意外といい曲だった――が、それらの曲と同じような宮本主導の音作りでありながら、小林さんとの共同プロデュースになっていること。その辺に、自由を満喫しつつも、締めるところは締めて、しっかりとしたアルバムを作りたいという宮本の意志と、意外と冷静な状況判断がうかがえる。

 小林さんが絡まない残り半分の曲でも、基本的には宮本が主となり、そこに村☆ジュンや河野圭といった、過去につきあいがあった人たちの助けを借りながら、さらにはGiorgio Blaise Givvnという誰それ?って若手の協力もあおいで、バラエティに富んだ音を聞かせてくれている。

 演奏面もバンドのメンバーをほぼ固定していた前作とは違う。ドラムをRADWIMPSのトリビュートで共演した石若駿(King Gnuの常田大希の同級生らしい)や大御所・カースケさんにお願いしていたり、サザンでもお馴染みの山本卓夫氏や西村浩二氏、ずとまよとも共演している吉田宇宙ストリングスなどが参加していたりする。キーボードには同級生・奥野真哉の名前もある。

 結果として出てきた音は、前述した宮本主導のラフなロックンロールあり、『零地点Bomb』でのアッパーな打ち込みサウンドあり、Adoに提供した『風と私の物語』のセルフカバーのしっかりとしたストリングス・アレンジありと、これまでになく多彩だ。

 印象的には『宮本、独歩』に近いけれど、あれよりも宮本浩次という人の音楽的なパーソナリティがよりはっきりと刻み込まれた作品に仕上がっていると思う。

 まぁ、歌詞については、このところの常で、どうしてそう安直な英語ばっかり使うかなぁと残念に思うところはある。『I love 人生!』とか、『I AM HERO』とか、なにいってんのって思ってしまう。曲は好きなんだけれどなぁ……。

 でも、考えてみればこの人は、デビューしたときから「ベイビー、ファイティングマン!」って歌ってた人なんだよねぇ。「ファイティングマン」が年を取って「ヒーロー」に成長しただけで、じつはあまり変わってなかったりするというか、意外と原点回帰の意味合いがあったりするのかなとか思ったりした。

 あと『I AM HERO』ってタイトルに冠詞がついてないのが気持ち悪かったりするんだけれど、これもあえて冠詞を使わないことで、「俺はヒロ(ジ)だっ!」って、こっそり自分の名前を叫んでいたりするのかなって思ったりも……。

 いずれにせよ、ソロ・アルバムとしてはとても充実した出来映えだと思う。

 ただ残念なのは、宮本の軸足がすっかりソロに移ってしまったせいで、この先エレカシの新譜が聴ける日がくるのかが、すっかり不透明になってしまっていること。

 宮本さん、これはこれでとてもいい作品だと思う。でもやっぱり俺は一日でもはやくエレカシの新しいアルバムが聴きたい。

(Jul. 22, 2026)

サバイバー

チャック・パラニューク/池田真紀子・訳/ハヤカワ文庫NV

サバイバー〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)

 『ファイト・クラブ』の作者による長編第二作。

 帯にある「この作家の伝道のために生きています」という担当編集者の煽り文句につられて、『ファイト・クラブ』と一緒に買った本。

 これにつづく三作品(紙は絶版)も、Kindleのバーゲン期間に見つけてつい買ってしまったので、いまだ『ファイト・クラブ』も読まないうちから、僕のライブラリにはチャック・パラニュークの本が五冊もある状態だった。

 で、いざ読んでみれば、『ファイト・クラブ』は正直なところ、それほど好みではなく、つづくこの作品も冒頭からいまいち物語に入り込めなかったので、読んだことのない作家の本をいきなりまとめ買いしたのはまちがいだったかと、ちょっぴり後悔していたのだけれども。

 でも読み終えてみれば、これが意外とわるくなかった――というか、けっこうすごかった。『ファイト・クラブ』同様、僕にとっては共感のしにくい世界観ではあるけれど、小説としては好き嫌いを超越したパワフルさがある。

 物語は航空機をハイジャックした語り手が、乗客をすべて降ろして、操縦士も脱出させてひとりきりになったあと、自動操縦にした飛行機の燃料が切れて墜落するまでのあいだ、フライトレコーダーに吹き込んだ録音だという設定になっている。

 なぜ彼は飛行機をハイジャックして、ひとりで自殺しようとしているのか?

 カルト教団の生き残りとして数奇な人生を歩んだ彼が、その状況に至るまでの道のりが、残りのページを通して描かれてゆく。

 ハヤカワ文庫ではお馴染みの、登場人物の紹介ページにある名前はわずか四名。それもひとりとして本名とはいえない。

 たったそれだけの出自のあやしいキャラを動かして、四百ページ強のボリュームで描き出される物語のイメージは、そのディテールの曖昧さに反して、とても鮮烈だ。

 『ファイト・クラブ』につづけて、こういうパンチのある作品を書けるのだから、この人の作家としての力量は疑うまでもなさそうだ。

 まぁ、それでもやはり、作風の好き嫌いは別として――という断りはついてしまうのだけれど。

(Jul. 20, 2026)

プロジェクト・ヘイル・メアリー

フィル・ロード&クリス・ミラー監督/ライアン・ゴズリング、ザンドラ・ヒュラー/2026年/アメリカ/Amazon Prime

プロジェクト・ヘイル・メアリー

 一大ベストセラーになったアンディ・ウィアーの同名SF小説の映画版。

 地球滅亡の危機を救うべく、ひとりきりで宇宙へと旅立つことになった主人公が、なにゆえ単身赴任で宇宙に送り出されたのか、そしていかにして地球を救うことになるかを描いてゆく。

 原作を読んでいる僕はともかく、読んでいないうちの奥さんもとくに疑問に思うところなく観ることができたようなので、とてもうまく出来た映画だと思う。

 ただ本好きとしては、アストロファージについての説明が簡単だったり、宇宙船でいかに重力を発生させるかという部分のおもしろさが、映画だと十分に描き切れていない感じがしたのがいささか物足りなかった。

 映画としての出来映えは十分だと思うのだけれど、でもやっぱりおもしろさという点では小説のほうに軍配があがる。まぁ、本が好きなので致し方なし。

 いずれにせよ、これも原作同様、なにも内容を知らないで観た方がいい作品だと思うので、内容についてはこれ以上、詳しくは触れない。興味のある人はネタバレを踏む前にさっさと観ておいた方がよいです。

(Jul. 12, 2026)



【相棒】
しろくろや

【Shortcuts】
音楽 作品 / ライブ / 会場 / 購入 / エレカシ
作品 / 作家 / 翻訳家 / 出版社 / 読了 / 積読
映画 作品 / 監督 / 俳優 / / シリーズ / ドラマ
蹴球 鹿島 / Jリーグ / 日本代表 / W杯

【新譜】
08/12RADWIMPS 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR [BD] / RADWIMPS
08/14Lost Weekend / Phoebe Bridgers
08/21Weezer (The Gold Album) / Weezer
08/21Hazel Eyes / Sam Smith
08/28There Near / Dinosaur Jr.
08/28Timeless / Prince
08/28I Must Be Dreaming / Alabama Shakes
09/11Anatomy Of A Brief Romance / Bloc Party
09/18Ride Lonesome / Beck
10/09Do Not Dare To Dream / Teenage Fanclub

【ライブ】
10/28BUMP OF CHICKEN@有明アリーナ
02/06BUMP OF CHICKEN@東京ドーム
02/11宮本浩次@代々木第一体育館

【サッカー】
08/07[J1 第1節] 横浜FM-鹿島
08/15[J1 第2節] 鹿島-名古屋
08/22[J1 第3節] 鹿島-福岡
08/29[J1 第4節] 東京V-鹿島
09/02[J1 第5節] 水戸-鹿島
09/06[J1 第6節] 鹿島-浦和

【新刊書籍】
07/28『サリンジャー初期短篇全集』 柴田元幸・訳

【準備中】
08/03[本] 夏帆

【過去のコンテンツ】
Coishikawa Scraps Bootleg 2.0