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天気の子

RADWIMPS / 2019 / CD

天気の子

 RADWIMPSと新海誠とのコラボ第二弾、『天気の子』のサウンドトラック。
 二度目のサントラ挑戦ということで、バンドにとってはさらなる成長を実感した自信作なのかもしれないけれど、僕個人が受けた全体的な印象は『君の名は。』とそれほど違わず。
 でもそれは決して悪い意味ではなく。トレント・レズナーやジョニー・グリーンウッドらの作るサントラのように映像のシーンに沿った環境音楽のようなふわふわしたものではなく、あくまで全編がバンド・アンサンブル(+管弦楽)を中心にしたものなので、圧倒的に聴きやすくて楽しい。そこが前作と同じ。
 僕が思う『君の名は。』とのいちばんの違いは、歌ものとインスト・ナンバーの関係性。あちらの作品では『三葉のテーマ』のようなインスト・ナンバーが繰り返しパターンを変えて演奏されて、歌もの四曲はそれらからは独立した作品という感じだった。要するに歌ひとつひとつの個性が際立っていた。
 それに対して今作では映画のメイン・テーマである『愛にできることはまだあるかい』や『グランドエスケープ』の旋律がインスト・ナンバーでも繰り返し鳴らされる。そのために全体的な統一感が高くなっている一方で、アルバムのなかで歌ものが鳴らされたときのカタルシスが前作よりも控えめになっている気がした(あくまで当社比)。
 あと、三浦透子という女性ボーカリストをゲストに迎えている点も前作との大きな違い。五曲収録された歌もののうちの二曲は彼女のボーカルによるものだ。
 つまり野田くんがボーカルを取っている曲は三曲しかない。そのせいもあって、なんだか前作よりもRADWIMPSっぽさが薄まっている気がする。
 僕個人はこれまでとくべつ洋次郎のボーカルが好きだと思ったことがなかったんだけれど、このアルバムを聴いて、もっと彼のボーカル曲が入っていてくれればいいのにと思ってしまった。さすがに干支がひとまわりするくらいファンをやっているから、すっかり彼の声が耳になじんでしまっているみたいだ。
 そんなわけでアルバム自体の印象は『君の名は。』と似た感じながら、「どちらかというと前のやつのほうが好きかなぁ」とか思いながら聴いていたのだけれど……。
 映画を観て、そのクライマックスで『グランドエスケープ』や『愛にできることはまだあるかい』がかかったときの異常な高揚感にびっくりしてしまった。
 えーっ、なんでこんなに感動的なんだ?
 ――情けないことに、僕にはその理由がまったく説明できない。
 でもおそらくあの感動は、このアルバムが映画との関係において、素晴らしい成功を収めているということの証明なんだろうなと思った。
 映画に寄り添うことで初めてその真価を発揮する――。
 僕にとってこれはそういうアルバムだった。
(Mar. 23, 2020)

宮本、独歩。

宮本浩次 / 2020 / CD+DVD

宮本、独歩。(初回限定612バースデーライブatリキッドルーム盤)(DVD付)

 2018年に椎名林檎とのコラボ『獣ゆく細道』から始まったエレカシ宮本のソロ活動、その総決算ともいうべきファースト・フル・アルバム『宮本、独歩。』――これがまさに宮本ソロの総決算と呼んでしかるべき内容になっている。
 配信限定だった『冬の花』や発売済みのシングル2枚は当然として、椎名林檎とスカパラのアルバムにすでに収録されていたコラボ曲がこちらにも再収録されているし、高橋一生に提供した『きみに会いたい -Dance with you-』のセルフカバーまで入っている。宮本絡みの楽曲で未収録なのはおそらくシングル『Do you remember?』のカップリングの『If I Fell』だけ。あれはビートルズのカバー(もちろん英語)だから、ここに加えるのはふさわしくない。なので、これぞまさに集大成と呼ぶにふさわしい内容だと思う。
 でもってその出来が予想外のよさだったりもする。
 いや、正直なところ、単独ソロ名義の最初の作品として『冬の花』を聴かされたときには、今回のソロには期待しちゃ駄目なんじゃないかと思ったんだ。あまりにドがつくほどの歌謡曲路線だったから。
 エレカシで僕がもっとも苦手なタイプのナンバーを、さらにグレードアップして持ってこられたら、盛り上がれっていわれても無理な話だ。
 その曲が好きになれなかったせいか、その後のシングル二枚も――楽曲はスピード感があって悪くなかったのだけれど――いまいち盛り上がり切れず。なので正直、満を持してリリースされたこのフル・アルバムも、僕はそれほど聴かずに終わるんじゃないかと思っていた。
 なんたって、前にも書いた通りで、このアルバムにはこれまでに発表してきた曲はすべて収録されていて、収録曲十二曲のうち、このアルバムで初めて聴くのはたった四曲なわけです。これまでに聴いてきた――でもって大いに盛り上がったわけでもない――曲たちに新曲が四つ加わっただけで、そうそう印象が変わるとは思えない。
 ――ところがどっこい。
 それが変わっちゃうんだからびっくりだよ。
 一曲一曲を個々で聴いていたときには「悪くないんだけどねぇ」とか思っていた楽曲が、ここで一枚のアルバムとしてまとめてどーんと鳴らされてみると、これが予想外の気持ちよさだったりする。個々の楽曲のポテンシャルの高さが、アルバム単位になったことで一気に花開いた感じ。
 なにがいいって、とにかくアッパーな曲が多いところ。一曲目の『ハレルヤ』から、横山健とのコラボ『Do you remember?』をはさんで、ラストの『昇る太陽』に至る、この曲順が素晴らしい。これらハイ・エナジーな珠玉の三曲のイメージがアルバム一枚分に膨れ上がったってくらいの印象がある。
 このなかで聴くと、ちょっと待てよと思った『冬の花』や、他人のためじゃないとこんな曲書けないだろうと思った『きみに会いたい』なんかも、すごく自然に気持ちよく聴けるから不思議だ。林檎さんとスカパラの曲もまったく違和感なくアルバムの流れに溶け込んでいるし、『Fight! Fight! Fight!』のポール・マッカートニー風のアレンジも、いかにも村ジュンの仕事って感じで笑えていい(うちの奥さんには歌詞がつまらなさすぎると不評ですけど)。
 まぁ、このところのつねで歌詞については僕も不満をおぼえるところが少なくないし、ボーカリストとして(特に高音部で)ちょっと衰えたかなぁと思うところがなくもないけれど、それでも五十もそろそろなかばになってなお、この疾走感を生み出し得るパワーには敬服するしかない。51分間というトータルタイムの中から宮本浩次という人のさまざまな魅力が溢れ出まくっている。
 やはり宮本はすごかったと思わされた一枚。
(Mar. 20, 2020)

鹿島アントラーズ2-4北海道コンサドーレ札幌

練習試合/2020年3月21日(土)/カシマサッカースタジアム/DAZN

 新型コロナウィルスのためにJリーグが開幕戦のあと中断してはや一ヶ月。
 いまだ再開の目処がたたない中で、DAZNがアントラーズとコンサドーレのトレーニングマッチを生配信してくれた(メルカリがオーナーになった効果がこんなところに出るとは)。
 練習試合だからキックオフは午前11時、スタンドは無観客、交替枠は制限なしと、いろいろとイレギュラーではあったけれど、それでもひさびさにサッカーが観られたのは単純に嬉しかった。ようやく今季初ゴールも観られたし。――とはいっても、またもや白星はおあずけという……。なんでこんなに弱いんだか。
 それにしても3ヶ月以上ものあいだ、鹿島と日本代表の両方で一勝もできないなんて、おそらく僕がサッカーを観始めて以来、初めてだ。サッカーが観られたこと自体は嬉しかったけれど、やっぱ勝ってくれないと楽しみ半減だなぁと思ったきょうの試合だった。
 さて、この日のスタメンはクォン・スンテ、広瀬、犬飼、町田、永戸、小泉、三竿、荒木、和泉、ファン・アラーノ、エヴェラウドという布陣。
 途中出場は遠藤、永木、名古、ブエノ、関川、松村(練習試合なので記録が公表されていないから、出てきた順番やメンツは若干不正確)。
 レオ・シルバが怪我をして二ヶ月の離脱ということで、小泉がスタメン。あと、ルーキーの荒木が二列目で先発したのが目を引いた(荒木よい)。
 後半途中からCBのコンビがブエノと関川に替わったのも注目点。ブエノ、どこにいったかと思ったらようやく出てきた。でも、彼が出てきてからジェイに2ゴールを許すていたらく。この調子じゃ今年は去就を心配することになりそうな……。
 この日の試合は練習試合ということで、45分ハーフの通常の前後半が終了したあとで、35分ハーフの試合が2セット行われたらしいので、この試合に出ていない土居とかはそちらに出ていたのかもしれない。いずれにせよ、最初の試合に出た選手が現在では主力ということなんだろう。
 それにしてもサイドバックはずっと永戸と広瀬だけだけれど、あとの人たちはいったいどうしちゃったんだろう? 杉岡にいたっては移籍以来一度も出てこないので、ちょっと心配になってきた。
 試合は前半はお互い高い守備意識をみせてスコアレス。後半の頭にファン・アラーノが個人技でゴールを決めて鹿島が先制。
 ようやく今年の鹿島の初ゴールが拝めた!――と喜んだのもつかの間。その後は打ち合いの展開に。すぐあとに鈴木武蔵にどんぴしゃのヘディングを決められて同点。そのあとセットプレーから町田がヘディングを決めて勝ち越すも、武蔵のFKが遠藤の頭にあたってコースが変わったオウン・ゴールで同点。そのあと途中出場のジェイにヘディングで2点を奪われての敗戦となった。
 そのあとの2セットでも4-5で負けて、トータルでは6-9での敗戦とのこと。どうにも守備が安定してなくて困りものだ。
 ま、結果は散々だけれど、あくまでも練習試合だし、とりあえずひさびさにサッカーが観られてよかった。
 いまはさっさとコロナ騒動が治まってくれるのを待つばかりだ。
(Mar. 21, 2020)

無実はさいなむ

アガサ・クリスティー/小笠原豊樹・訳/クリスティー文庫/早川書房/Kindle

無実はさいなむ

 二年前に母親を殺した容疑で有罪判決を受けた男性がじつは無実だったことがわかったことから、では真犯人は誰だということで残された一家の面々が疑心暗鬼に陥るというノン・シリーズのミステリ。
 殺された女性は子供ができなかったために五人の子供を養子として育てた資産家で、その末っ子とのあいだで金銭トラブルがあった直後に殺され、その青年(犯罪者気質の持ち主)がアリバイが証明できなかったために有罪判決を受けて、そのまま獄中で病死していた。
 ところがその二年後にアーサー・キャルガリという男性が現れ、息子さんは殺人犯ではないという。南極探検のために国を離れていた彼は事件のことを知らなかったため、証言できなかったけれど、彼には被告のアリバイが証明できると。
 事実を知らされた一家の面々は困惑する。なぜなら事件の状況は被害者に近い人間の犯行であることを物語っていたから。死んだ息子が犯人ではないとすると、一家の誰かが殺人者であるということになる。
 それではいったい誰が……ということで疑心暗鬼に陥った一家の苦悩を描くのがこの作品の主題。
 でも残念ながらその悩みを解決して人々を救うお馴染みの名探偵がこの作品には出てこない。ヒーロー不在のまま、殺人事件の謎は悩みをもたらしたキャルガリによってやすやすと解き明かされる。
 この人の名探偵ぶりがとってつけたような印象なのがこの作品の弱みだと思う。学者として南極探検に同行するくらいだから、知能的に優れた人物ではあるんだろうけれど、それにしても彼の探偵としての有能さにはいまいち説得力不足の感がある。
 この内容ならばポアロが登場してもおかしくないし、ポアロなりマープルさんなりが出てきて事件を解決してくれていれば、より説得力のある作品になっていたんじゃないかって気がする。
 クリスティーのノン・シリーズのミステリには、シリーズものでないことにきちんと理由がある場合が多いけれど、これに関してはなぜポアロを起用しなかったのか、疑問をおぼえる内容だった。
 まぁ、その一点を除けば、ミステリとしては決して出来は悪くないと思う。足りないのはミステリとしてのケレンミだけ。そういう作品。
(Mar. 15, 2020)

潜潜話

ずっと真夜中でいいのに。 / CD / 2019

潜潜話

 去年のうちになにか書かなきゃと思いつつ、結局年を越してしまいました。
 現時点での僕にとっての最重要アーティスト「ずっと真夜中でいいのに。」――通称ずとまよ――待望のファースト・フル・アルバム『潜潜話{ひそひそばなし}』。
 気がつけば去年の僕はたった六枚のアルバムの感想しか書いていないけれど、その理由がこのずとまよだった。去年の夏ごろにこのバンドと出会って以来、僕はほぼこのバンドしか聴いてないぜってくらいの状態になってしまっていたから。あ、あとヨルシカ。去年は完全にこのふたつのバンドが僕の音楽生活の中心だった。
 いやしかし、なぜに俺はこれほどまでにずとまよが好きなんだろうって。自分でも不思議に思うくらい、僕はACAねの作る音楽に夢中になっている。
 このアルバムの収録曲は十三で、そのうち六曲は先行する二枚のミニ・アルバムから再収録されている。ミニ・アルバムには六曲ずつが収録されていたから、つまり既存曲のちょうど半分がこのアルバムに再収録されていることになる。
 僕は去年の夏以来その二枚のミニ・アルバム――『正しい偽りからの起床』と『今は今で誓いは笑みで』――を、それこそアナログ盤だったら擦り切れているんじゃないかってくらいに聴いてきた。なのでその収録曲がこのファースト・アルバムにも再び収録されることで、いやおうなくアルバムの新鮮さが損なわれてがっかりする――はずなんだけれど。
 まったくそんなことがないことに、自分でも驚く。
 僕はこのアルバムに再収録されたナンバー――『脳裏上のクラッカー』『勘冴えて悔しいわ』『眩しいDNAだけ』『ヒューマノイド』『正義』『秒針を噛む』の六曲――をいまだ飽きることなく、繰り返し聴きつづけている。
 なんでこんなに飽きないんだろう?
 ほんと、僕は自分でも不思議に思うくらいにずとまよが大好きだ。
 なにが好きって、その性急に言葉を詰め込むビート感が好きだ。難解な日本語の歌詞が好きだ。メロディーのセンスが好きだ。多彩なアレンジが好きだ。そしてACAねの声が最高に好きだ。
 ――要するにお前はずとまよのすべてが好きなんじゃないかよって話だ。
 わがことながら、自分の娘くらいの女の子が作った音楽をこんなに好きになってしまった自分がちょっと気持ち悪い。でも好きなんだからどうしよーもない。
 このアルバムでは『Dear Mr「F」』『グラスとラムレーズン』『優しくLAST SMILE』の三曲で、それまでに聴かせてこなかったスローバラードを披露しているのも意外性があった(この子は速いナンバーしか歌わないのかと思っていたから)。『蹴っ飛ばした毛布』のジャズ・テイストも新鮮だし、『こんなこと騒動』でのイントロのスキャットを歌詞カードに「でぁーられったっとぇん」と書いてみせるセンスには笑った。
 あと『優しくLAST SMILE』で女子高生の恋愛をストレートに歌ってみせたのも驚きだった。それまでの楽曲と違って、ハイスクールライフを描いた歌詞があまりに直球で少女マンガ的すぎたもので、ライヴで初めて聴いたときには他人の曲のカバーかと思ったくらい。『居眠り遠征隊』の歌詞にも高校生活的なキーワードが多いし、あぁ、ACAねさんにとっては高校時代っていまだに直近なんだなって。この子って本当に若いんだなぁってしみじみと思った。
 ほとんど大好きな曲ばっかりのアルバムだけれど、あえてフェイバリット・ナンバーをひとつだけあげるとするならば、『ハゼ馳せる果てまで』。
 「曖昧な解決/どう踠いても/単純問題回答ならば」という歌いだしから始まって、「異なる自分を愛していたいの」と歌いきって終わるところまで、構成も歌詞も音も歌もすべてが完璧な4分5秒のポップ・ソング(タイトルは意味不明だけど)。
 もう本当に好きで好きでしかたありません。
 果たして僕がこの深い深い「ずとまよ」沼から抜け出す日はいつになるやら……。
(Mar. 08, 2020)

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【相棒】
しろくろや

【過去のコンテンツ】
過去の噂
Coishikawa Scraps Bootleg

【Shortcuts】
音楽 CD/DVD / ライブ / エレカシ / 購入
作品 / 作家 / 翻訳家 / 読了 / 積読
映画 作品 / 監督 / 俳優 / 公開年 / シリーズ
蹴球 日本代表 / Jリーグ / 鹿島 / W杯

【新譜リリース予定】
04/03The Prettiest Curse / Hinds
04/08ニュース / 東京事変
04/08シン・スチャダラ大作戦 / スチャダラパー
04/10The New Abnormal / The Strokes
04/22 / さユり
04/24Women In Music Pt.III / Haim
04/24MTV Unplugged (Live At Hull City Hall) / Liam Gallagher
05/01To Die For / Sam Smith
05/01Such Pretty Forks In The Road / Alanis Morissette
05/08Pick Me Up Off The Floor / Norah Jones
05/13WAVE / SPECIAL OTHERS
05/15Van Weezer / Weezer
05/15ALICIA / Alicia Keys
05/22I Love The New Sky / Tim Burgess

【ライヴ】
04/18宮本浩次@LINE CUBE SHIBUYA
04/21G.ラヴ&スペシャル・ソース@渋谷CLUB QUATTRO
05/06ずっと真夜中でいいのに。@幕張イベントホール

【新刊書籍】
04/23『猫を棄てる 父親について語るとき』 村上春樹

【新刊コミックス】
04/03『ONE PIECE(96)』 尾田栄一郎
04/08『弱虫ペダル(66)』 渡辺航
04/17『ジョジョリオン(22)』 荒木飛呂彦
04/17『五等分の花嫁(14)』 春場ねぎ
04/24『アシガール(14)』 森本梢子
04/24『おとななじみ(3)』 中原アヤ
04/24『美食探偵 明智五郎(4)』 東村アキコ
04/24『テリトリーMの住人(10)』 南塔子
04/27『バディドッグ(9)』 細野不二彦