暗闇に戯れて 白さと文学的想像力
トニ・モリスン/都甲幸治・訳/岩波文庫
トニ・モリスンがアメリカ文学における黒人の存在意義を考察した論文集。
『ハックルベリー・フィンの冒険』についても取り上げられているようなので、ちょうどいいから、このタイミングで読んでおくことにした。
わずか百七十ページ強の薄い文庫本なので、二、三日で読み終わるかと思ったら、そうはいかない。この人の小説同様、文章が難解で、さらっと読み流そうとすると、まったく内容が頭に入ってこない。序盤で挫折して、数日間読まずに放置してあったこともあり、結局二週間近くかかってしまった。
内容はアメリカ文学=白人男性作家の作品限定という状況にあった当時の文学評論のあり方に対して異議を唱えたもの。
書き手は白人男性ばかりだけれど、でも彼らの作品の根底には黒人奴隷と人種差別主義がはびこるアメリカ社会の状況が計り知れないほどの影響を与えているぞと。黒人の存在抜きにしてアメリカ文学を語るなかれ!――ってくらいの勢いで、「アフリカニズム」という造語とともに、アメリカ文学における黒人の重要性が主張されている。
序文+全三章の構成で、それぞれの章では黒人問題を論じてから、具体例として作品が分析されるという形で、第一章がウィラ・キャザーの『サファイラと奴隷娘』、第二章で『ハックルベリー・フィンの冒険』やポーやフォークナーらが語られ、第三章がヘミングウェイの『持つと持たぬと』と『エデンの園』が取り上げられている。
白人男性がうんぬんと語ったあとで最初に取り上げた作品が女性作家の作品だったり、白人男性至上主義の代表選手のようなイメージのヘミングウェイについて詳細に分析してみせているのに意外性があった。
まぁ、全体としては
(Oct. 13, 2025)