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2025-12-31『プリンス論』 New!
2025-12-29『忍法相伝73』
2025-12-27『F1 ザ・ムービー』
2025-12-23『THANK YOU SO MUCH』
2025-12-18『プレイグラウンド』
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猿 村上朝日堂 はいほー!(新潮文庫)

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プリンス論

西寺郷太/新潮新書/Kindle

プリンス論(新潮新書)

 僕はプリンスのファンを名乗るにはおこがましいリスナーだけれど、それでもプリンスに対しては、ほかのアーティストにはない特別な思い入れを持っている。

 プリンスが『パープル・レイン』で一世を風靡した高校時代。サザン、ビートルズ、ストーンズ、スプリングスティーンなどを一緒に聴いていた友人らが、プリンスにはまったく関心を示さない中、僕ひとりが彼の音楽に夢中になった。

 僕にしたって最初から彼のことが好きだったわけじゃない。初めて『When Doves Cry』を聴いたときには、そのあまりの異質さになんだこりゃと思ったし、セクシャリティを前面に打ち出した彼のルックスは正直気持ち悪かった。

 それでも大ヒットしていたその曲は、聴くともなしに聴いているうちに、僕の中に深々と刺さっていった。どのタイミングで『パープル・レイン』を聴いたのか、記憶がさだかじゃないけれど、そのアルバムを聴くころには、僕はすっかりプリンスの音楽に夢中になっていた。『パープル・レイン』の試写会に応募して、ひとりきりで有楽町へその映画を観にいったりもした(いまの自分からは考えられない行動力)。

 そして、それまで比較的オーソドックスなロックファンだった僕の音楽志向は、プリンスの音楽の持つ多様性とクリエイティビティに触発されたことで、それまで以上の広がりを持つことになった。そのときに獲得した音楽性の広がりが、その後四十年以上にわたって、僕が音楽を聴きつづける原動力になったといっても過言ではない。

 かつての友人たちが高校時代の趣味のまま年を重ねて新しい音楽を聴かなくなってしまったのに、僕だけがいまだ飽きることなく音楽を聴きつづけているのは、もっとも多感なその時期にプリンスと出会った影響が大きいと思っている。

 いわばプリンスは僕の音楽人生における恩人のひとり――。

 さて、ということで前振りが長くなってしまったけれども、これはノーナ・リーヴスの西寺郷太が書いたそんなプリンスの入門書。

 奇しくもプリンスが亡くなる前の年に出た本なので、もしかしたら改訂版が出るかもと思って待っていたのだけれど、出ないまま十年が過ぎたので、ここいらで読んでしまうことにした。

 新書だからそんなに詳細な内容ではないし、キャリアの後半部分が駆け足になってしまっているのはいささか残念だけれど、それでもミュージシャンが片手間で書いたとは思えない、とてもしっかりとした内容に仕上がっている。

 西寺クンのなにがすごいかって、プリンスやマイケル・ジャクソンに出会ったのが小学校五年生のときだということ。

 その年で洋楽に――それもメロディよりもビートを強調したブラックミュージックに――目覚めるのって、単純にすごいなぁと思う。音楽家として世に出る人はひとあじ違う。

 でもまぁ、青春真っただ中の高校時代にプリンスやスプリングスティーン、最盛期のサザンや佐野元春を聴けた僕らだって、十分に幸運だよねって、いまとなると思う。

(Dec. 31, 2025)

忍法相伝73

山田風太郎/講談社/Kindle

忍法相伝73 (ROMANBOOKS)

 忍法帖シリーズの長編で唯一、これまでに一度も文庫化されたことがない、わけありの作品。

 文庫化されていないってことは、要するに風太郎先生が読まれることを望んでいなかったってことなわけで。

 2013年に単行本化されているけれど、ほかの忍法帖は文庫本しか持っていないのに、そういう作品をわざわざ単行本で所有する気になれずにスルーしてしまった。最近になってものすごく昭和レトロな表紙がついたKindle版が出ているのを見つけて、ようやく読むことができたわけだけれども……。

 なるほど。これは駄目でしょう?

 というか、そもそもこれは忍法帖ではないのでは?

 タイトルに「忍法」とはあるけれど、「73」というアラビア数字がついていることで予想がつくように、舞台は現代だ。

 「忍法帖」の「帖」は暗黙のうちに時代劇を意味しているのだろうから、時代劇ではないこの小説をシリーズとしてカウントするのは間違っている気がする。内容的にも、これをあの一連の傑作群に加えるのには、心理的な抵抗を感じてしまう。

 物語は昭和のいまを生きる若者が、先祖が書き残した忍法の覚え書きに従ってみたところ、本当に忍法が使えてしまいましたというナンセンス・コメディ。作風的には忍法帖というよりは『男性週期律』あたりに近い印象だった。風太郎先生らしいシニカルな視点から生み出された、社会風刺に満ちた馬鹿話。

 もともと1964年に発表した『忍法相伝64』という短編を膨らませて連作長編化したものだとのことで、長編化にあたって数字がなぜ「73」に変わったのかは不明。物語的にはこの数字は西暦とは関係がなくて、忍法書に書かれた七十三番目の忍法を最初に使ったのがその名の由来。その後も各章は「忍法相伝85」、「忍法相伝99」と数字の部分をカウントアップしながら進んでゆく。

 試される忍法はどれも荒唐無稽なだけではなく、とても馬鹿らしくて下品なものばかりだから、わざわざ書き残そうって気にもなれない。クライマックスで序盤の伏線を回収したどんでん返しがあるけれど、最後の落ちときた日には脱力ものだ。なにそれ? まるでコントじゃん。

 いやぁ、これは文庫化したくなかったのもわかる。風太郎先生、若気の至り。悪ふざけにもほどがある。山田風太郎の長編ワースト部門に入ること確実な一冊。

 まぁ、そんなわけで内容には感心しなかったけれども、昭和の世相を色濃く反映している点は一興だった。山登りした先のゴミの多さに国民の道徳意識の低さを嘆くあたりには、外国人に国の清潔さを絶賛されている令和の現代とは隔世の感があった。

 とりあえず、忍法帖シリーズもほぼ読みつくして、残すところあと一冊。これがその最後の一冊なんてことにならなくてよかった。

(Dec. 29, 2025)

F1 ザ・ムービー

ジョセフ・コシンスキー監督/ブラッド・ピット、ダムソン・イドリス、ケリー・コルドン/2025年/アメリカ/Apple TV+

F1R ザ・ムービー

 車も持っていないし、モータースポーツにも興味はないのに、不思議とこの手の映画は観たくなる。

 F1団体の全面サポートを受けたとかなんとかいう噂の、ブラッド・ピット主演のF1レース映画。

 ――だと思って観始めたら、いきなり最初のレースはF1ではなく、デイトナ24時間耐久だった。

 ブラピ、F1ドライバーじゃないじゃん!

 ――という意表をつく始まり方をしたこの映画。

 ブラッド・ピット演じる主人公のソニー・ヘイズは、30年前の若き日に事故でキャリアを棒に振ったレーサー。F1にこそ乗っていないけれど、ドライビングにおけるセンスは天才的で、様々なレースに参加しては結果を残している――らしい。

 そんな彼にかつてのチームメイトだったハビエル・バルデム(いまだに名前が覚えられない)から、自分がオーナーを務める新参F1チームで走ってくれないかとオファーがある。今季1勝もしていない彼のチームはこのままだと身売りせざるを得ないという状況にあり、ブラピの才能を知ったるかつての旧友が、その天才に一か八かの賭けをすることにしたわけだ。

 F1に復帰するには歳をとりすぎているブラピ(実年齢62歳!)に、チームも世間も疑いの目を隠さない。とくにチームの黒人エースドライバー、ジョシュア(ダムソン・イドリス)は反発することしきり。それでもソニーは持ち前の才覚と、反則ぎりぎりの手管を厭わないずるがしこさでもって、チームに多大な貢献を果たすようになり、周囲の信頼を得るのみならず、そのシーズンの主役のひとりになってゆく。

 年配者が若者とためをはって戦うという展開には、晩年の『ロッキー』を思い出させるところがあるし、F1のサーキットで世界中をまわりながら、でこぼこだったチームが徐々に団結してゆく展開には少年ジャンプ的な楽しさがあった。

 決して傑作とは思わないけれども、そんな風にマンガ的だからこそ、いずれまた観たくなるんだろうなって思った。

(Dec. 27, 2025)

THANK YOU SO MUCH

サザンオールスターズ / 2025

THANK YOU SO MUCH [完全生産限定盤A] [CD + SPECIAL DISC(Blu-ray) + SPECIAL BOOK]

 若い子たちの音楽ばかり聴いていた一年だけれど、せっかくだから最後にこの人たちを。

 今年の三月にリリースされたサザンオールスターズの十年ぶり、通算十六作目の最新アルバム。

 とかいいつつ。失礼ながら、僕はこのアルバムにまったく期待していなかった。

 先行シングルとして配信されていた『恋のブギウギナイト』『桜、ひらり』『盆ギリ恋歌』『歌えニッポンの空』などがどうにも好きになれなかったから。

 どれもサザンらしいといえばらしい曲だけれど、音作りが人工的すぎて、僕の趣味にはあわない。

 かろうじていいなと思えたのは『ジャンヌ・ダルクによろしく』と『Relay~杜の詩』くらい。それだって単発で聴いている限り、かつての曲ほどには夢中になれなかった。

 まぁ、とはいっても、わが青春のバンドと呼んでしかるべきサザンの新譜だ。聴かないわけにはいくまいと、迷わずにCDは買いました。そしていざ聴いて驚いた。

 いや、よくない、このアルバム?

 前述した楽曲が中心の序盤は、あぁ、やっぱりなぁって感じなのだけれど、原坊が歌う『風のタイムマシンにのって』や、大谷翔平の名前が歌詞に出てくる『夢の宇宙旅行』など、あ、意外といいかもって曲を経たあと、終盤になってこのアルバムのクライマックスと呼ぶべき二曲がやってくる。

 それが『悲しみはブギの彼方へ』と『ミツコとカンジ』。

 なに、このリトル・フィート・ファン丸だしな『悲しみはブギの彼方へ』って曲は?

 ――と思ったら、それもそのはず。これがデビュー前のアマチュア時代にやっていた曲だそうで。いまさらマジか?

 つづく『ミツコとカンジ』(アントニオ猪木夫妻のことですよね?)は新曲だけれど、これまたその曲のテイストを踏襲した、オールド・スタイルのサザン・ナンバー。まさかそんなタイトルの曲に魅了されようとは予想もしなかった。

 初回限定盤についてきたボリュームたっぷりのインタビューによれば、大半の曲は桑田佳祐が片山敦夫らとスタジオで最新のレコーディング技術を駆使して緻密に音を組み立てたものなのに、この二曲はサザンのメンバーが一堂に会して、普通にバンドとしてレコーディングされたらしい。なるほど、気持ちがいいいわけだ。やっぱバンド・サウンドはこうでないと。

 ほんとこれだよ、これ。これこそ僕がずっと聴きたいと思ってきたサザンの音だぁ~!――と大盛り上がりだった。

 この二曲から、これまたピアノがフィーチャーされた『神様からの贈り物』を経て、配信シングルではもっとも感動的だった『Relay~杜の詩』で終わるという。この締めの部分が文句なしに素晴らしい。終わりよければすべてよし。こんなにあと味のいいサザンのアルバムはひさしぶりだ。

 とにかく、なにはともあれ、僕と同世代のサザンファンだったら、『悲しみはブギの彼方へ』と『ミツコとカンジ』の二曲だけは絶対に聴くべし。嬉しくて頬が緩むこと間違いなしです。ぜひ。

(Dec. 23, 2025)

プレイグラウンド

リチャード・パワーズ/木原善彦・訳/新潮社

プレイグラウンド

 リチャード・パワーズ三年ぶりの最新作。

 今回の作品では時系列の異なる三つの物語が同時進行で語られてゆく。

 メインとなるひとつめの舞台はマカテア島というポリネシアの島。かつてはリン鉱石が取れたことで栄えたものの、資源の枯渇とともに衰退(ここまでは実話)。現在は過疎化して、住民が八十人くらいしかいないこの島に、新たな開発事業の話が持ち上がる。その是非をめぐる住民投票の顛末が、群像劇として、最新時間軸で描かれる。

 ふたつめはその島で子供ふたりと暮らすアメリカ人夫婦、ラフィ・ヤングとイナ・アロイタ、そして彼らとかつて親密な関係にあったIT長者、トッド・キーンの物語。

 貧乏家庭に生まれた黒人のラフィと大富豪の息子トッドがいかに知りあって親友となったか、ポリネシアからの留学生だったイナとラフィが出逢ったことから、彼らの関係がどのように変わっていったかが、認知症が進行しつつあるトッドの回想談として、一人称で語られてゆく。

 最後はトッドが幼いころに憧れた女性海洋生物学者、イーヴリン・ポーリューの話。この人も現在はマカテア島の住人で、海で死ぬのが本望とばかりに、九十二になってなおスキューバダイビングに精を出す元気なお婆さん。女性学者の先駆けとして道なき道を歩んできた彼女の波乱に富んだ人生が幼少期までさかのぼって綴られている。

 博覧強記なパワーズのことだから、海洋生物学やAIや囲碁の話など、ディテールの蘊蓄うんちくもたっぷりだけれど、とにかく以上の三つの物語がどれもおもしろい。

 まぁ、それらが最後にどのように結びついてゆくのかと思っていたら、「え、それってあり?」と思うような落ちがつくのには、ちょっとだけ釈然としなかったけれども。

 それでもかつての作品ほどの難解さはないし(まぁ、だからといってすべてが理解できたといえないところが情けない)、読み物としてはとても楽しめました。

 きちんと読み取れなかった点も多々あったので、これはいずれ再読しないといけない。――というか、パワーズの作品はすべて一度といわず何度でも読み直したい。

(Dec. 18, 2025)



【相棒】
しろくろや

【Shortcuts】
音楽 作品 / ライブ / 会場 / 購入 / エレカシ
作品 / 作家 / 翻訳家 / 出版社 / 読了 / 積読
映画 作品 / 監督 / 俳優 / / シリーズ / ドラマ
蹴球 鹿島 / Jリーグ / 日本代表 / W杯

【新譜】
01/07あまりもの / 奥田民生
01/14Cry High Fly / aiko
01/23Somebody Tried To Sell Me A Bridge / Van Morrison
02/06Tenterhooks / Silversun Pickups
02/20Prizefighter / Mumford & Sons
03/04二人称 / ヨルシカ
03/11禁じ手 / 椎名林檎
03/20The Mountain / Gorillaz
06/10I AM HERO 「俺と、友だち」盤 / 宮本浩次
06/10I AM HERO 「最高の日、最高の時」盤 / 宮本浩次

【コンサート】
01/10宮本浩次@日本武道館
02/28ずっと真夜中でいいのに。@日本武道館
10/28BUMP OF CHICKEN@有明アリーナ

【新刊書籍】
01/07『消失』 パーシヴァル・エヴェレット
02/26『書簡型小説「二人称」』 n-buna

【準備中】
12/22ずっと真夜中でいいのに。@東京ガーデンシアター
12/27RADWIMPS@有明アリーナ
12/30高校のカフカ、一九五九

【過去のコンテンツ】
Coishikawa Scraps Bootleg 2.0