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Recent Notes

  1. フラレガイガール / さユり
  2. Paradox / Neil Young + Promise Of The Real
  3. You're Driving Me Crazy / Van Morrison
  4. 佐野元春&ザ・コヨーテ・バンド @ TOKYO DOME CITY HALL (Apr 1, 2018)
  5. エレファントカシマシ/Spitz/Mr.Children @ さいたまスーパーアリーナ (Mar 18, 2018)
    and more...

フラレガイガール

さユり / 2016 / CD+DVD / 初回生産限定盤A

フラレガイガール(初回生産限定盤A)(DVD付)

 RADWIMPSの野田洋次郎がさユりという新人アーティストに『フラレガイガール』という曲を提供したと聞いて、それではいっちょう聴いてみようかと思ってから、はや一年半。
 そのときには名曲と思いつつも、Apple Musicで聴いただけで満足してしまい、CDを買うまでには到らなかったのに、いまさらそのシングルを買う気になったのは、初回限定盤AのボーナスDVDに収録されている、わずか7分ばかりのライヴ映像が観たかったから……なのですが。
 いざ聴いてみたら、その映像うんぬん以前に、シングルの最後に収録されている『ルラ』という曲がとんでもない名曲で、そっちに全部持ってゆかれれしまった。
 『ルラ』はシンデレラをモチーフにしたアッパーなポップ・チューンで、メロディ、歌詞、ビート感、音作りとすべてが満点の仕上がり。
 楽曲自体はさユりのオリジナルではなくて、n-bunaというボカロP(ボーカロイドで曲を作っている人をそう呼ぶらしいです)の曲なのだけれど、その歌の描くイメージがさユりの世界観にどんぴしゃ。そしてその楽曲に彼女の歌声がベストマッチ。あまりにはまりすぎているので、まさかこれが他人の曲だとは思わなかった。
 ボカロというからにはオリジナルは初音ミクみたいなやつなんでしょう。少なくても僕がそのバージョンをこれより気に入るとは思えないし(いずれちゃんと聴いてみようかとは思っているけど)、この曲に関してはこっちが世界最強と信じる。
 とにかく、シンデレラをモチーフにして十代の少女のネガティヴな心情をぶつけた、切なくもユーモラスな歌詞が素晴らしい。「かぼちゃの馬車でも出せないとさ、舞踏会なんて行けないんだ」からの流れは絶品だし、「タリルタラ」やら「あっはっは」などといった、意味のないコミカルな言葉に絶妙なペーソスを込めて歌詞にのせるセンスも抜群だと思う。本当にこの歌詞は隅から隅まで素晴らしい。
 かつてボブ・ディランの『風に吹かれて』を聴いたサム・クックが「この曲は黒人である自分が書くべきだった」と嫉妬したという話があるけれど、もしも僕が女の子だったら、同じように「なんでこの曲を書いたのが私じゃないんだろう」って残念に思ってしまいそうなくらい。
 で、この曲の場合、単に歌詞がいいだけではなく、曲自体の出来も秀逸。どことなく和風な感触のあるダンサブルなメロディといい、転がるようなピアノが印象的なギター・サウンドといい、もうすべてが文句なし。そんな素晴らしい楽曲がさユりのあの強烈な声で歌われるんだから、その破壊力たるや唯一無二。ほかにたとえようがない。
 すでに二年前のクレジットの楽曲だけれど、今年の僕にとってのナンバー・ワン・ソングはこれで決まりって一曲。あまりに好きすぎて、僕はわずか一週間のあいだにこの曲を五十回以上もリピートしてしまっている。たった一曲をそんなに何度もリピートしたのって、おそらく長い人生でも初めてだ。自分でもちょっと気持ち悪い。
 しかしまぁ、『フラレガイガール』と『アノニマス』だけでも強力きわまりないのに、そこに『ルラ』が加わったこのシングルのポテンシャルたるや……。
 僕の音楽人生史上、最強レベルのシングルがここにある。
(May 27, 2018)

Paradox

Neil Young + Promise of The Real / CD / 2018

PARADOX

 なんだかこのところ、この人とヴァン・モリソンの新譜ばっかり聴いている気がしますが。今回のニール・ヤングの新譜は同名映画のサントラ。
 芸能情報にうとい僕が知らないうちに、ニール・ヤングは奥さんのペギーと三年ほど前に離婚してしまったそうで、現在は女優のダリル・ハンナと交際中だとかなんとか。
 で、そのダリル・ハンナさんが監督を務めたNetflix制作のオリジナル映画のサントラがこれ。
 まぁ、サントラといっても、抽象的な映画音楽っぽさはほとんどなくて、演奏はバンドの音そのまま。とはいっても、決して一本調子なものではなく、音作りはバラエティに富んでいて、あたかもギター・サウンドの見本市のような趣がある。そこがいい。
 楽曲はニール・ヤングの過去の楽曲をプロミス・オブ・ザ・リアルとともに再録したものが中心で、『デッドマン』のようにインストだけではなく、歌ものもたっぷりと収録されている(ルーカス・ネルソンがボーカルの曲もある)。
 曲の長さは長短まちまちで、映画の内容にそった1分ちょいの断片的なトラックがある一方、『Cowgirl Jam』というタイトルで『Cowgirl in the Sand』のインスト・バージョンが10分以上にわたって収録されていたりもする。そうした21曲にも及ぶ楽曲群がバラエティ豊かなギター・サウンドとあいまって、とても味わい深い作品に仕上がっている。
 Netflixで公開されている映画も観てみたけれど、そちらはニール・ヤングとプロミス・オブ・ザ・リアルの面々が主演をつとめる風変わりな西部劇で、映像はパキっとした色使いが鮮やかでとても美しいけれど、内容はいまいちよくわからなかった。西部劇といいながら途中でバンドのライヴ・シーンがあったりするし、まるで長すぎるミュージック・ビデオを観ているみたいだった。
 ということで、ダリル・ハンナさんには悪いけれど、僕個人はその映画を観ているよりも、このアルバムを聴いているほうがよほど楽しかった。
(May 27, 2018)

You're Driving Me Crazy

Van Morrison & Joey DeFrancesco / CD / 2018

YOU'RE DRIVING ME CRAZ

 またもや前作から半年たらずという短いインターバルで届けられたヴァン・モリソンの新譜。
 今回はジョーイ・デフランチェスコという人との共作なので、さてどんなだろうと思ったら、この人がオルガン奏者にしてトランぺッターというジャズマンで、それゆえバンドの音はオルガンを中心としたジャズ系のもの。でもって選曲はカバーとモリソン氏の旧作のリメイクが半々といったところ。
 ということで、要する前二作とほとんど同じ路線の、温故知新シリーズ第三弾って感じのアルバムだった。
 サウンドがオルガン主体なので、全体的な印象はジョージ・フェイムとの共演作に近い。でもそれよりもっとジャズ寄り──というか、もろにジャズ(なんたってビルボードのジャズ・アルバム部門1位)。わざわざクレジットが共作になっているくらいだから、バンドの主導権を握っているのはジョーイさんなんでしょう(なんと僕より年下)。そのナチュラルな響きはとても心に優しい。ジョージ・フェイムとの相性もよかったし、ヴァン・モリソンの歌ってオルガンにとてもよくあう気がする。
 なかでも個人的にもっとも好きなのは、かの名曲『Have I Told You Lately?』の新録バージョン。オリジナルではしっとりとしたバラードだったこの曲が、このアルバムではシャッフル・ビートのポップな仕上がりになっていて、オリジナルとはまた違った旨みがある。娘のシャナ・モリソン嬢とのデュエットってところも沁みます。
(May 27, 2018)

佐野元春&ザ・コヨーテ・バンド

「MANIJU(マニジュ)」東京特別講演/2018年4月1日(日)/TOKYO DOME CITY HALL

MANIJU(初回限定ボックス盤)(DVD付)

 佐野元春&ザ・コヨーテ・バンドのアルバム『マニジュ』のツアー最終公演を観た。
 TOKYO DOME CITY HALLってあまり馴染みがなくて、この日の僕らの席は第三バルコニーなんていうから、どんな上のほうかと思ったら、ぜんぜん上じゃなかった。このホールは地下へと掘り込むような構造になっているので、エントランスのフロアがそのままが最上階の第三バルコニー。で、僕らの席は2列目──といいながら、席番号の関係で実際には最前列(1列目は左右のみらしい)。しかもステージほぼ真正面。ということで、かなりいい席だった。なんかこのところチケットに恵まれている。
 去年サマソニで観たときには、その音の小ささでびっくりさせたコヨーテ・バンドだけれど、この日はライブハウスということで、大きすぎず小さすぎずなジャストな音量。このバンドにはきっとこのくらいのハコがちょうどいいんだろう。
 コヨーテ・バンドのメンバーは、公式サイトのツアーのページでは「佐野元春:Vo. & G. 小松シゲル:Dr. 深沼元昭:G. 藤田顕:G. 高桑圭:B. 渡辺シュンスケ:Key.」となっているけれど、この日はそこにパーカッションのスパム春日井という人が加わっていた(確かサマソニにはいかなった……よね?)。
 そういえばギタリストの藤田顕という人(プレクトラムの人だそうです)もいつからメンバーになったのか知らないけれど、この人のことはサマソニのときに初めて観た。へー、左利きのギタリストがいるんだと思いました。
 佐野さんがほとんどギターを弾かなくなったのは、この人の加入が大きいんだろう(この日も本編でギターを手にしたのは数曲だったと思う)。五人編成だったころのコヨーテ・バンドでは深沼くんの存在感が際立っていたけれど、いまはそれほどでもないし。そういう意味では、ツイン・ギターになって、バンドとしてバランスがよくなったように思う。
 いやしかし、途中のMCで佐野さんが「ハートランドで13年、ホーボー・キング・バンドで12年、そしてコヨーテ・バンドも今年で13年」というような紹介をしていて、え、もうそんなになるのかと驚いた。正直なところ、佐野元春という人が作るドラマチックな音楽には、ハートランドやホーボー・キング・バンドのように、ホーンやキーボードで飾り立てた彩り鮮やかな音のほうが似あっていると思うので、コヨーテ・バンドのようにギター・オリエンテッドでドライな音を響かせるバンドですでにそんなにキャリアを重ねていたとは思わなかった。

【SET LIST】
    [第一部]
  1. 境界線
  2. 君が気高い孤独なら
  3. ポーラスタア
  4. 私の太陽
  5. 紅い月
  6. いつかの君
  7. 世界は慈悲を待っている
  8. Va Vila e Bella
  9. 空港待合室
  10. 優しい闇
    [第二部]
  11. 白夜飛行
  12. 現実は見た目とは違う
  13. 天空バイク
  14. 悟りの涙
  15. 詩人を撃つな
  16. 朽ちたスズラン
  17. 新しい雨
  18. 夜間飛行
  19. 純恋(すみれ)
  20. 禅ビート
  21. マニジュ
    [Encore 1]
  22. 新しい航海
  23. レインガール
  24. 約束の橋
    [Encore 2]
  25. ヤァ!ソウルボーイ
  26. スウィート16
  27. アンジェリーナ

 この日のライブは佐野さんいわく「コヨーテ・バンドの曲をたっぷりと聴いてもらおうと思います」とのことで、本編はコヨーテ・バンド名義で出した最近の四枚のアルバムのみからの選曲だった。それも第一部で過去三作品の曲を聴かせたあと、休憩をはさんで第二部で新作『マニジュ』の曲をほぼ全曲、ほぼアルバム収録順通りに聴かせるという趣向(あとで確認したところ、『蒼い鳥』だけ演奏されず、『純恋(すみれ)』と『夜間飛行』の順番が入れ替わっていた)。そうとは知らなかったので、わずか45分で第一部が終わったのには思わず笑ってしまった。短いでしょ、それはさすがに。クラシックのコンサートじゃないんだから。
 でもそうやって新譜の曲だけを別枠で聴かせてくれたことで、今回のアルバムの音作りの違いが明確にわかる内容になっていた。
 第一部の演奏はギター二本のコードで隙間を埋め尽くすような典型的なギター・サウンドって印象だったけれど、『マニジュ』の曲ではギターが一歩うしろに下がって、キーボードやパーカッションがめだつ演奏が多かった。『悟りの涙』のアレンジには山下達郎あたりを思い出させる80年代テイストが濃厚だったし、ボブ・ディランへのオマージュ感たっぷりな『朽ちたスズラン』のようなフォーク・ソングもあったりする。第二部ではそんな演奏の幅の広さが印象的だった。ライブではこの日初めて演奏したという『夜間飛行』のダークでムーディーな演奏もよかった。
 そういう意味ではアルバム『マニジュ』の音作りの豊かさは佐野元春という人の昔からのイメージには近い。コヨーテ・バンドが長く続いてきたのは、ギター・バンドとしての明確なコンセプトを持ちつつ、そういうバリエーションをこなせる技量があったからなんだろうなと思いました。佐野さん本人にしても会心の出来だからこそ、今回のツアーでは新譜だけを二部構成で聴かせるほどの力の入れようなんだろう。
 音楽と関係ないところでおもしろかったのは、第一部と第二部で佐野さんの衣装が違ったこと。最初はカジュアルなジャケット姿だったのに、第二部ではグレーのスーツにネクタイでビシッと決めていた。で、アンコールではまた別のシャツ(Tシャツとかじゃない普通の黒いシャツ)に着替えて出てくるという。佐野さんってそういうとこもスタイリッシュだよねと感心しました。あと、旧譜を語るときにやたらと『Zooey』のタイトルを忘れてるのもおかしかった。
 僕はコヨーテ・バンドの曲のタイトルをほとんどおぼえていない似非ファンなので(恥ずかしながら、前述の曲名はすべて後付で調べたもので、聴いてたときにはわかってません)、やはり知っている初期の曲が並ぶアンコールにもっとも開放感を感じたのだけれど──『サムデイ』をやらずに、あえて『レインガール』や『スウィート16』を聴かせてくれる姿勢が嬉しかった──、そんな僕でもこの日のコンサートは本編を含めて申し分なく楽しめた。
 40年近いキャリアを誇るアーティストがそのキャリアに溺れず、新譜主体でこういう新鮮なコンサートをしてみせてくれるってのがとても素敵だと思った。
(Apr 22, 2018)

エレファントカシマシ/Spitz/Mr.Children

30th ANNIVERSARY TOUR "THE FIGHTING MAN" SPECIAL ド・ド・ドーンと集結!!~夢の競演~/2018年3月17日(土)/さいたまスーパーアリーナ

 まずは初めに謝っておきます。これから書くことは単なる自慢話でしかないかもしれない。
 エレカシが30周年記念ツアーの締めに、スピッツ、ミスチルを対バンに迎えてスペシャル・ライヴを行うと発表されたときには、そんなのレアすぎてチケット取れないんじゃないかと思ったんだけれど、エレカシのファンクラブ枠が多かったのか、いとも簡単に取れちゃいました。それも取れちゃったとか抜かすんじゃねぇって怒られそうな、とんでもなく素晴らしい席が。
 いや、馬鹿な話だけれど、僕は実際に当日会場で席につくまで、自分の手元にあるのがどれほどのプラチナ・チケットなのか、まったく認識してなかった。
 まぁ、手元にあるとはいっても、この日は全席、電子チケットだったから、いつものように紙のチケットが手元になかったってのも油断した要因だと思う(個人的には電子チケットは人生初)。うちの奥さんから一列目と聞いても、へー、でもきっと隅のほうなんでしょう? とか思っていた。
 でもさ。会場についたら、アリーナがやたら広いわけです(そりゃそうだ、スーパーアリーナなんだから)。いちばんうしろの入り口から入って、席に着くまで歩く歩く。で、いちばん前の列にたどり着いて、自分の席番号を確認して愕然とした。
 え、ここなの?
 ほとんど真ん中じゃん……。
 そう、僕らの席はアリーナの最前列、ステージに向かってやや左寄りのところだった。で、これって僕個人の意見では、この広い会場で最高の席だった。
 単純に考えれば、僕らよりもセンターに近い、ステージのど真ん中の席のほうがいいように思うでしょう?
 違うんだな。そういう席だとボーカリストに隠れて、ドラマーが見えない。
 宮本命でミヤジが見れればそれでいいって人はそういう席が最高かもしれないけれど、僕は違う。最後にギターを弾いてから何十年も過ぎているけれど、それでもやはり、いまでも気分はミュージシャン。だから単にフロントマンに近いよりは、バンド全体が見渡せる席がいい。
 でもって、さらにいえば、右よりは左側のほうがいい。なぜってこの日のボーカリストは三人とも右利きだから。
 右利きのボーカリストがギターを弾きながら歌を歌う場合、おのずと身体はやや右向きになる。つまりステージに向かって左側、僕らの席のほうを向くわけです。逆側だとギターの裏側を眺めることになる。
 要するに僕らの席は、バンドのメンバー全員を見晴らしながら、各フロントマンがギターを弾く姿をその指さばきまでをばっちりと拝める、この会場において最良の席だったわけです。僕らのすぐ斜め前にテレビカメラの撮影スタッフが陣取っていたのが、僕らの席がどれだけいいポジションだったかのを物語っている。
 いやぁ、ほんとすごかった。二万人入る会場での最前列ってはんぱないです。アリーナ規模を前提とした演奏をライブハウス並みの距離で観るのって、ライフハウスで同じ距離で観るのとはまた違う感触がある。なんかとても非現実的な。ほんと夢でも見ているようなってのはこういうことかなと思いました。
 だってないよ? スピッツとミスチルとエレカシを十メートルも離れてない距離から観るなんて、こんな贅沢な体験。しようと思ったって、そう簡単にはできない。おそらくコネがあったって、おいそれとはできない。というか、おそらく今後二度とない。
 かれこれ三十年以上ライヴ会場に足を運んでいるけれど、おそらく最前列のチケットってこれが初めてだと思う。それがこんなプレミアム・ライヴという……。
 俺はいったいどんな幸運な星の下に生まれてきたんだろうって思ってしまいました。

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 さて、あまりの神席に舞いあがってすっかり前ふりが長くなってしまったけれど、本編はここから。この日のスペシャル・ライヴのオープニングを飾ったのはスピッツだった。
 年齢的にもキャリア的にもミスチルのほうが下だから、トップバッターはミスチルかと思っていたのだけれど、やっぱセールスの順でしょうか? それともミスチルとエレカシは一昨年のミスチルのツアーで対バンしたそうだし、小林武史のつながりもあって、ミスチルのほうがいくらか距離が近いのか。いずれにせよこの日の先頭バッターはスピッツだった。
 で、僕らにとってはそれがラッキーだった。
 いやぁ、カッコよかったんだ、この日のスピッツが。もう登場シーンからして最高。バンド自身のオリジナル曲(『SUGINAMI MEMORIES』だったとか)のインスト・バージョンをBGMに、ぐるぐる回転する放射状のライトを背にうけて登場してきた四人の姿に、僕は思わず鳥肌がたった。まさかスピッツの登場にそれほどまでに感動するなんて、自分でもびっくりした。
 まぁ、感動の一因はさきほど熱弁した席のよさをそのときに改めて実感したからってのも大きい。人がステージに立つのを見て、改めて、うわっ、こんなに近いんだと思った。で、いざ演奏が始まってまた感動がひとしおとなった。
 だって、ドラムの人がスティックを打ち鳴らす、カッ、カッ、カッ、カッってカウントの音が直接聴こえてくるんだよ? どんだけ近いんだよって話で。

【SET LIST】
  1. 春の歌
  2. 恋する凡人
  3. 8823
  4. 初恋クレイジー
  5. チェリー
  6. 愛のことば
  7. スターゲイザー
  8. 浮雲男
  9. みなと
  10. 涙がキラリ☆
  11. さわって・変わって
  12. スパイダー
  13. トンガリ'95

 いやぁ、もうとにかく臨場感がすごかった。アリーナなのに、ちゃんとバンドの音がじかに聴ける。目の前でプレーしている楽器の音がそのまま聴こえてくる。実際には左右のスピーカーからの音なのかもしれないけれど、観ている分には直接アンプやドラムから出ている音に聴こえる。それがもうたまらなく感動的だった。
 で、この距離で聴いてみて初めて、僕はスピッツにすごくロックを感じた。以前に同じ会場で彼らのワンマンを観たときには音作り的にはとくに感銘を受けなかったんだけれど、この日はそのバンド・サウンドをとても素敵だと思った。
 四人がそれぞれの音をしっかりと出して、そのアンサンブルがばちっとはまり、草野マサムネという人の歌の世界を引きたてている。そういうロック・バンドとして、非常に芯の通ったしっかりしたものを感じた。
 四人それぞれの佇まいもいい。草野くんはたんに歌が上手いだけではなく、ギターでも予想外に存在感のある音を出していた(あと、口笛もハーモニカもうまかった)。地味なルックスで派手に飛び回るベースの田村明浩、派手な見ための割にはプレーが地味なギターの三輪テツヤ、ちゃんとコーラスも務めるドラムの崎山龍男、そしてサポートのクジヒロコさん。このうちの誰ひとり欠けてもスピッツの音にはならないぞって。そんな感じの一体感のある、とてもいい演奏だった。
 演奏時間も一時間以上あったと思う。いかにもスピッツらしい軽やかなエレカシのカバー『浮雲男』や大好きな『8823』も聴かせてもらって大満足だった。
 この日の三バンドで個人的にもっともよかったのはスピッツだった(わりぃエレカシ)。でも、おそらくそう思ったのは僕がとても近くで観ることができたからだ。スピッツはやはりアリーナよりもライブハウスで観るべきバンドな気がした。

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 二番手のMr.Childrenについては、僕はアルバム一枚しか聴いたことがないし、そのアルバム『BOLERO』も『Everything (It's You)』が大好きでその曲が聴きたいからって理由で買って、その曲以外はほとんど聴き込んでない。テレビもあまり観ないから、CMソングやドラマのタイアップ曲にもなじみがない。
 要するにあまり知らない──とは思っていたけれど、本当に知らなくて自分でもびっくりした。知ってる曲が3曲しかなかったのはともかく、桜井和寿以外のメンバーをひとりも知らなかったのにびっくり。あとの人、今回はじめて見たよ。
 いやもとい。僕はかつてエレカシが出たAct Against AIDSでこのバンド観ているはずなんだった(宮本もMCでミスチルをはじめて観たのはそのときだといっていた)。なので初めては嘘。たんに覚えていなかっただけ。
 まぁ、とはいえそのときの会場は武道館だし、僕らは一階席か二階席にいて、あちらはまだ新人バンドのころだったから、個々のメンバーまで知らなくても当然ちゃあ当然なんだけれど。
 ということで、今回ほぼ初めてちゃんと観ました、ミスター・チルドレン(宮本はなぜか一度もミスチルという略称を使っていなかった)。
 この日の出演バンドはどこも構成が一緒で、ドラム、ベース、ギターの三点セットにギター・ボーカルのフロントマンがいるカルテット。で、どこもメンバーチェンジなく四半世紀一緒にプレーを続けているという。そういう同世代のバンドが三つも集まったってのもかなりレアでしょう。
 ミスチルはミスチルでかなり見ためのアクが強かった。ギターの田原健一という人はロック畑の内藤陳みたいだし、ベーシストの中川敬輔は成ちゃんに通じるナイスミドル。そして大口あいてニコニコとドラムをたたく個性豊かなドラマーの鈴木英哉(この人がとにかくめだってた)。あと、エレカシでもお馴染みのサニーさんがキーボーディストとして参加して、コーラスでも存分に存在感を発揮していた。ミスチルの音楽って、サニーさんいないと成り立たないんじゃないだろうか(でもサニーさん、僕らの席からだとギターの人の陰になってよく見えなかったのが残念なところ)。
 そしてなにより桜井和寿。この人がやっぱすごい。

【SET LIST】
  1. Everything (It's you)
  2. HANABI
  3. innocent world
  4. 太陽ギラギラ
  5. and I love you
  6. here comes my love
  7. himawari
  8. 名もなき詩

 まずファッションがすごい。ドレープたっぷりの胸元のあいた白いドレスシャツにコート風ジャケット、ボトムはぴっちりしたブラック・ジーンズにナイキのスニーカー。弾くギターもラメが入ってキラキラした緑のストラトキャスターだし。少なくてもエレカシ、スピッツとは確実に方向が違う。
 キャラも違う。とにかくハイテンション。宮本のずれっぷりとか、草野くんの自然体とかと違って、ロック・スターかくあるべしみたいなキャラを自然と演じちゃっているような感じがした。僕がふだん接しているミュージシャンにはあまりいないタイプ。なんとなく矢沢栄吉や藤井フミヤを観たときに近い感覚があった(それはもしかしてオーラがあるって話?)。
 バンドの音はさすがに売れてるだけあってアンサンブルがきれい。ただ逆にいうとまとまりすぎていて、おもしろみには欠けるかなぁと思わなくもない。ま、その点は最近のエレカシも同じだけど(だからこそこの日はスピッツがいちばんよかったわけで)。
 でもね、エレカシのカバーの『太陽ギラギラ』はよかった。掛け値なしによかった。エレカシのバージョンはオーソドックスだけれど、ミスチル・バージョンにはオルタナティヴな感触があって、そこにエレカシとはまた違った深い情感が宿っていて、非常にカッコよかった。スピッツとのカバー合戦ではミスチルの勝ちだと僕は思った。
 あとね、一曲目が『Everything』ってのが個人的にはもー。ミスチルだったらこの曲が聴きたいと思っていたその曲から始まるんだから──あと、二曲目はうちの奥さんが聴きたいといった曲だった──この日の僕らはもう本当にラッキーだった。
 ま、なんにしろ桜井くんはとてもいいやつでした。「今年はこの日をいちばんのモチベーションにしてきました」なんて嬉しいことを言ってくれてたし。あと、エレカシを初めて観たときの思い出話もおもしろかった。
 なんと彼が初めてエレカシを観たのは、明治大学の学祭だそうですよ。おー、知ってるよ、俺それ。なんたってそのころまさに在学中だったから。まだファンじゃなかったから観なかったけど、へー、エレカシがくるんだとは思っていた。その会場にのちのミスチル桜井までいたとは……。

All Time Best Album  THE FIGHTING MAN(通常盤)

 ということで、ミスチルも終わってこの日の主役、エレカシが最後に登場。
──とはいっても。この日のエレカシは前日に三時間を超えるライヴをしたあとなわけです。さすがに燃えつき感がはんぱなかった。
 宮本も「この企画の意味がわからないんですが」というような、スピッツとミスチルに対して失礼千万な発言をしていたけれど──スタッフ主導で決まったイベントなのかもしれないけれど、それをいっちゃあオシマイよ──確かにこのブッキングはモチベーション的に無理があったと思う。イヤモニの調子が悪くて、宮本がいらいらする場面なんかもあったし、前の二つのバンドと比べるとスタッフの技量にも差を感じてしまった。なんか主催なのに準備が足りてない感ありあり。
 でも逆にいうと、前日にあれだけ充実したコンサートを見せてもらったから、まぁこれくらいでも十分かなと思わせるものもあった。前日の管弦楽付き豪華ワンマンに比べるのは難があるけれど、でも6ピース・バンド(この日も当然ミッキーと村ジュンが一緒だった)としてのエレカシには通常営業だからこそって安心して聴けるよさがあった。前日が豪華な食材をふんだんに使ったフレンチだったとしたら、この日は大好きな定食屋の定番メニューみたいな。
 セットリストも前日の超ダイジェスト版のような感じ。『RAINBOW』、『奴隷天国』で始まり、代表曲を並べて、新曲『Easy Go』のあと、『FLYER』で締めてみせた。

【SET LIST】
  1. RAINBOW
  2. 奴隷天国
  3. 悲しみの果て
  4. 星の砂
  5. 風に吹かれて
  6. 笑顔の未来へ
  7. 桜の花、舞い上がる道を
  8. 風と共に
  9. ガストロンジャー
  10. 今宵の月のように
  11. Easy Go
  12. FLYER
    [Encore]
  13. ファイティングマン (w/スピッツ・Mr.Children)

 ツアーではやっていなかった『FLYER』が最後ってのがいい。「オレは右から、オマエは左から、そしていつの日にか落ち合おう」って歌詞はスピッツとミスチルへのメッセージでしょう。別々の道を歩んできた三つのバンドがこの夜、この場所で落ち合った。宮本はそのことへの感謝をこの歌に託してみせた。いやぁ、いい話だ。
 あと、『Easy Go』では「まだ息継ぎができないんですよね」と宮本が練習不足を嘆いていたのがおもしろかった。夏のツアーでもっと上手い『Easy Go』が聴けたらいいなと思う。でもその前にさっさとレコーディング音源が聴きたい。6月のアルバムが楽しみだ。
 この日のアンコールはたった一曲だけ。それもよもやのコラボ。フロントマン三人を前に、バックはエレカシとスピッツのメンバーで、ツイン・ドラム、ツイン・ベース、ツイン・ギター、そしてミスチルのメンバーはダンス(なんで~)での『ファイティングマン』だった。
 エレカシってかたくなに他のバンドとの共演を拒んできた感があったので、この日みずから率先してスピッツのメンバーと一緒に演奏してみせたのには本当に驚いた。それぞれのバンドのキーボードの人たちが村ジュンの狭いキーボードブースにぎゅうぎゅう詰めで総出演していたのもなにげに最高だった。
 まぁ、演奏自体はお祭り騒ぎで『ファイティングマン』本来の持ち味はなくなってしまっていたし、僕個人はこういう企画はそれほど好きではないんだけれど(桜井くんはともかく、草野くんはちょっと困った感じじゃなかったですか?)、でもやっている宮本は本当に楽しそうだった。ステージであんなに幸せそうな宮本を見たのは初めてな気がする。あんな顔を見せられちゃあ、この企画を悪く思えるはずがないじゃん。
 いやぁ、ということで、最後まで見どころだらけのすごい一夜だった。生涯に一度あるかないかって貴重な経験をさせていただきました。この日のチケットを僕に与えてくれたどこかの誰かさんに心からのお礼を申し上げる(ふつうにイープラスで取ったんだけど)。どうもありがとう~。
(Mar 31, 2018)