Menu

Recent Notes

  1. FUJI ROCK FESTIVAL '18 @ 苗場スキー場 (Jul 27, 2018)
  2. Wake Up / エレファントカシマシ
  3. エレファントカシマシ @ Zepp Tokyo (Jul 6, 2018)
  4. エレファントカシマシ @ 日比谷野外大音楽堂 (Jun 23, 2018)
  5. フラレガイガール / さユり
    and more...

FUJI ROCK FESTIVAL '18

2018年7月27日(金)/苗場スキー場

 五年ぶり、三度目のフジロックへ行ってきた。
 前回と同じ二十四時間バスツアーでの一日だけの参加ながら、前回とのいちばんの違いは奥さんが一緒だったこと。バスで見知らぬ人と相席になるのも一興かもしれないけれど、やはり長年つれ添った相棒と一緒ってのは気が楽だった。
 あと、一日じゅう快晴だったのも前回との違い。フジロックには雨がつきものだというし、ひとりで行った前回は猫の目のように変わる天候に降りまわされたので、今回も雨を覚悟してレインコートを新調していったのに、まったく降らなかった。うちの奥さん、フジロックに二日参加して降水確率ゼロ。家族三人で出向いた初回はうちの子が晴れ女だからだと思っていたけれど、もしかしたら彼女も晴れ女だったか。ふたりそろうと最強のてるてる坊主かも。

 今回のフジロックはエレカシが初出演するのに加えて、観たいバンドがいくつかあったから行くことに決めたのだけれど、チューン・ヤーズ(Tune-Yards)をはじめとして、興味のあるバンドの過半数が後半に集中してしまい、時間帯がかぶってちゃんと観られなかった。
 よりによって、もっとも楽しみにしていたチューン・ヤーズがエレカシともろかぶりというのが痛恨の極み。なんでそんなことしてくれちゃうかなぁ……。まぁ、あのふたつのバンドを両方観たがる俺みたいなオーディエンスは少ないのかもしれないけれど。エレカシは年中観ているけれど、やっぱフジロック初出演はフルで観ないわけにはいかない。というわけでチューン・ヤーズをたった二曲しか全部観られなかったのは、ほんと残念だった。

 とにかくこのふたつのバンドを効率よくつづけて観なくちゃならないってんで、苗場に到着してすぐに、まずはチューン・ヤーズが出るレッドマーキーからエレカシの出るホワイト・ステージまでの移動時間を測っておこうということになった。でもその前にちょっと休憩……とレッドマーキー前の木陰のところで腰を下ろしたとたん、いきなり小指に熱湯がかかったような痛みが走る。「熱っ!」と手を振ると、なんか蜂みたいなやつが目の前の草むらにジジジと落ちてきた。ちくしょう、刺された。なにこの虫。黒と灰色のしましまで、よく見ると蜂じゃないっぽい(すぐに踏みつけて抹殺)。フジロック最初のイベントはアブだかブヨだか知らないけれど、謎の虫からの洗礼でした。ちくしょう、小指痛い。

 とにかくこのふたつのバンドを効率よくつづけて観なくちゃならないってんで、苗場に到着してすぐに、まずはチューン・ヤーズが出るレッドマーキーからエレカシの出るホワイト・ステージまでの移動時間を測っておこうということになった。でもその前にちょっと休憩……とレッドマーキー前の木陰のところで腰を下ろしたとたん、いきなり小指に熱湯がかかったような痛みが走る。「熱っ!」と手を振ると、なんか蜂みたいなやつが目の前の草むらにジジジと落ちてきた。ちくしょう、刺された。なにこの虫。黒と灰色のしましまで、よく見ると蜂じゃないっぽい(すぐに踏みつけて抹殺)。フジロック最初のイベントはアブだかブヨだか知らないけれど、謎の虫からの洗礼でした。ちくしょう、小指痛い。

Pretty good!!

 ということで、虫に刺されて小指ぱんぱんに腫れあがった状態でさいさき悪く始まった今回のフジロック(指が痛くて拍手がつらかった)。
 まずはグリーン・ステージのモンゴル800からスタート──とはいっても、僕はモンパチってまったく聴かないので、グリーン・ステージに向かった林の入り口あたりの木陰で遠巻きにモニターを観ていた。

SUMMER BREEZE / スタンドバイミー(完全限定生産盤)<CD(12)s+DVD>

 モンパチを三十分くらい観たあと、ホワイト・ステージに移動して、うちの奥さんが視聴したらけっこう好きだったという go!go!vanillas という若いバンドを観た。
 モンパチもゴーゴーバニラズも僕にとっては元気すぎというか、影がなさすぎる印象であまり盛りあがれない。やっぱ日本語のロック(とくに男性のもの)は人生の鬱屈がその言葉のはしばしに見え隠れしてくれないと夢中になれない。

 ホワイト・ステージでは三曲くらいで陽射しの暑さに音をあげて移動。ジプシー・アヴァロンとフィールド・オブ・ヘヴンの場所を確認してまわった。観たいステージがあったわけでもないのに、こんなところで無駄な体力を使ったのを後悔することになるのは夜になってからの話。

All Of Us(初回限定盤)(DVD付)

 ホワイト・ステージからボードウォークの迂回路をつたってグリーン・ステージへと戻ってみると、GLIM SPANKY が演奏中だった。
 このバンドも俺には関係ないと思いこんでいたのでスルーしちゃったけれど、通りすがりに生で聴いたボーカルの子のハスキーな歌声はけっこう気持ちよかった。あ、これならちゃんと観ておいてもよかったかなと思いました。いずれまた機会があれば、次はちゃんと聴こう。

I'm All Ears

 スタートから3時間目にして、この日はじめてフルに観たのが、その次のレッド・マーキーの LET'S EAT GRANDMA。
 「お婆ちゃん、食べよう」と訳すんだか、それともお婆ちゃんを食べちゃうんだか、いまいち意味のわからない名前の、十代の女の子二人組ユニット。
 ステージにはロングヘアをなびかせたスレンダーな女の子ふたり──遠目だと双子みたい──が並んで立ち、右手に男のドラマーがいるというスリー・ピースの編成で、女の子たちはシンセを弾きつつ、たまに左の子がギターを弾き、右の子がサキソフォンを吹いてみせたりする。若いくせに、意外と芸達者。
 印象的にはハイムと The xx のいいとこ取りをしたみたいなバンドだと思った。女の子のガーリーな外見やポップなメロディ・センスはハイムっぽいのに、音響的には打ち込みの重低音が効いていて The xx ぽいという。レコーディングされた音源はシンセ色が強くてあまり趣味じゃなかったので、途中で移動しようと思っていたんだけれど、予想外に聴き応えがあったので、結局最後まで見てしまった。そこんところも僕にとっては五年前に同じステージで観たハイムと一緒だった。初々しいわりには思いのほか技巧的で、とても楽しいステージでした。

 そのあとすぐにグリーン・ステージへと移動すると、間髪いれずに ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA の演奏が始まった。
 ドラムの池畑潤二という人がバンド・リーダーをつとめるフジロック御用達の大所帯セッション・バンドで、今年のゲストはトータス松本、奥田民生、甲本ヒロト、仲井戸麗市の四人。
 バンドの内訳はギター三本、キーボード二名、ホーン・セクション四人にベース、ドラムにパーカッションの総勢十二名。僕はよく知らない人ばかりだけれど、有名どころだとルースターズの花田裕之や、RCファンには懐かしいサックスの梅津和時氏、SOIL&"PIMP"SESSIONS のトランペットのタブゾンビなんかがいる。あと、エレカシの野音でお馴染みの細身魚さんもいる(終始ノリノリでした)。
 本当は同じ時間にホワイト・ステージでやっているパーケイ・コーツが観たかったんだけれど、このメンツを無視してほかへはいけないでしょう?
 ステージはトータス、民生、ヒロト、チャボが順番に入れ替わりで出てきて、それぞれカバーを中心に二、三曲ずつを歌うという構成。
 トータスは知らない曲(エルモア・ジェイムズとのこと)のあとでヤング・ファイン・カンニバルズの『Johnny Come Home』という意表をつくカバーを聴かせてくれた(三曲目はウルフルズの曲)。おぉ、やはり同世代だと思う。
 民生さんも最初の二曲は古いロックン・ロール・ナンバーのカバー。でもって三曲目がなんとRCサクセションの『スローバラード』。これがめちゃくちゃよかった。
 ホーンとオルガンが苗場の山に気持ちよく響き渡り、そこに民生さんの歌と梅津さんのサックスが鳴り響くんだから、もうこれがよくないわけがないでしょうよって話で。いやぁ、最高でした。
 前のふたりがオールディーズのカバーだったのに、その次のヒロトは日本語だったから、オリジナルかと思っていたら、これもカバーだったらしい。それどころか一曲目はディランの『くよくよするなよ』(えー、マジ?)、二曲目はニール・ヤングの『Don't Cry No Tears』(『Zuma』収録)だというからびっくりだ。まったく気がつかなかった俺の音楽偏差値っていったい……。
 とりを飾るチャボはディランの『Harricane』を日本語に意訳して歌ってみせた。実際にあった黒人ボクサーの冤罪事件を歌ったあの歌を換骨奪胎して、狭山事件なんかを歌詞に盛り込んで、完璧に日本語の歌にしていたのにすごいと思った。
 そのあと、もう一曲フジロックのテーマ曲みたいなのを歌い、最後はゲスト四人そろってエディ・コクランの『C'mon Everybody』をやって終了。フェスならではのお祭りバンドだけれど、だからこその楽しさがあってよかった。
 いや、それにしても民生氏の『スローバラード』が絶品でした。この一曲だけでも苗場に足を運んだ甲斐があるってレベル。

FRANCIS TROUBLE

 次はホワイト・ステージでのアルバート・ハモンド・ジュニア。
 この人のステージもおもしろかった。よもやストロークスという一時代を象徴するバンドのギタリストが、ソロではハンド・マイクで歌ばっか歌ってて、ほとんどギターを弾かないなんて誰が思うって話で。たまにギターを持っても、ソロとか弾かないし。本当にこの人はストロークスのギタリストなんだろうかと不思議に思ってしまった。
 バンドは主役の彼のほか、ギター二本に、ベース、ドラムの五人編成。ベースが女の子で、あとは男。で、見た目はみんな普通に地味。
 主役のアルバート・ハモンド・ジュニアは新譜のださださなジャケットのイメージそのままに、赤いシャツに白いパンツというファッションで、ハンドマイクをコードのところで持ってぐるんぐるんと振り回したり、長すぎるコードを束にまとめたりと、とにかくそのマイク扱いがいちいち気にかかる人だった。なんでギターじゃなくてマイクなのさってずっと思っていた気がする。
 でもまぁ、バンドの演奏はポップでタイトでとてもよかった。僕には無条件にしっくりきて、とても楽しかった。単純に楽しさということでいえば、この日いちばんだったかもしれない。このステージを観て、僕はこれまでに一度もストロークスを観たことがないのを、ちょっとだけ後悔した。できればジュリアン・カサブランカのステージも観たいなと思った。

I can feel you creep into my private life [輸入盤CD](4AD0052CD)

 その次がこの日の目玉──になるはずが、わずか二曲しか観ないで終わってしまった──チューン・ヤーズ@レッド・マーキー。
 バンドはステージ中央に主役のメリル・ガーバス、右手に新しく彼女のパートナーとなったネイト・ブレナー、左にドラマーという三人編成。
 CDで初めて聴いたときにはまったく性別不明な印象だったけれど、いざ生で聴くとちゃんと女性らしい声だったのがまずは印象的。シンセを操り、シーケンサーで自らのボーカルをリピートさせながら、個性的なダンス・ビートをつむいでゆくその演奏は予想通りに刺激的だった。オーディエンスも最初から大盛りあがり。
 うーむ。こんなおもしろいステージをわずか二曲であきらめなきゃなんないとは……。まじでもっと聴きたかった。再来日を期待するっきゃないな。ソロで来たら絶対に観にゆく。来てくれそうにないけど。

Wake Up(初回限定盤)(DVD付)

 後ろ髪を引かれながらレッド・マーキーをあとにして、開演の五分前くらいにホワイト・ステージへ移動してみると、ホワイト・ステージはすでにエレカシ待ちの人でぎっしりだった。
 というか、ホワイト・ステージって決して広くないのに、真ん中からうしろは椅子を並べた人だらけってのが問題だと思った。あれってどうなんだ? ライブ開場のモラルとしてNGな気がする。ホワイト・ステージってPAのテントの存在感もありすぎるし、フジロックの中ではもっとも残念なステージな感がある。
 そういや、いつもはコードつきのマイクを使っているエレカシ宮本がこの日はワイヤレスだったけど、あれはホワイト・ステージがもっと広いと思っていたからじゃないだろうか(アルバート・ハモンド・ジュニアもワイアレスにすればいいのに)。ほんと、できればグリーン・ステージで観たかったぜ。
 ……なんて愚痴はまぁいいとして。
 この日のエレカシについては、まずは石くんでしょう。白いタンクトップに黒の短パン、オールバックにサングラスって。なんだそれは。夕涼みしているヤクザにしか見えない。
 途中で宮本にいじられて片側の肩をはだけてからは、江戸時代の賭博師みたいになっていたし、宮本がうしろから頭をつかんで、ロボットのように右へ左へとゆっくりと首を動かすにいたっては、意味不明で大爆笑。世界中にYouTube配信されているステージで、そんなことおくびにも出さすにこれだけ笑いを誘うってのもある意味すげーと思った。
 演奏もアグレッシブでよかった。『Easy Go』『奴隷天国』『RAINBOW』とエレカシ史上もっともスピード感のあるナンバー三連発でのオープニングは文句なしだったし(まぁ、そのうち二曲はあいかわらず宮本の歌がかなり苦しかったけれど)、その後も攻めの姿勢がきわだつ内容だった。洋楽ファンに目にもの見せてやるって気概が伝わってきた。一時間足らずのステージとしては出色の出来だと思った。

【SET LIST】
  1. Easy Go
  2. 奴隷天国
  3. RAINBOW
  4. 悲しみの果て
  5. 旅たちの朝
  6. ガストロンジャー
  7. so many people
  8. ファイティングマン
  9. おはよう こんにちは
  10. 今宵の月のように

 ラス前は「俺たちの唯一のヒット曲です」と紹介して、『今宵の月のように』をやるのかと思ったら、一転して『おはよう こんにちは』をかましてきたのもよかった(苗場であの曲が聴けて嬉しかった)。でもって最後は『今宵』で締め。こういう晴れの場だから、最後はちゃんと知名度のある曲できれいに終えるという姿勢は正しかったと思う。演奏の途中で日が翳ってきて、最後はとても夕焼けがとてもきれいだった。
 宮本がこのところ変にエロに目覚めていて、乳首出してつまんでみたり、股間まさぐったり、前述のとおり石くんいじりで笑いと取ったりと、かっこ悪い姿をたくさん晒していたけれど、でもその一方でカッコいいところもちゃんとあって、やっぱその両極端を行き来するのがエレカシだよなぁと思う。世界じゅう広しといえ、こんなバンド、絶対にほかにない。そのことはちゃんと苗場と世界に知らしめることができたと思う。とても気持ちのいいステージだった。
 そういや、この日のキーボードはソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉でした。テレビ出演なんかで観たことはあるけれど、彼がエレカシと競演するのを生で見るのは、僕はこれが初めて。最近、ソウル・フラワーともすっかりごぶさたしてるしなぁ。エレカシ+奥野(あとミッキー)が観られたという意味でも、個人的に貴重なステージだった。わざわざエレカシのために苗場に来てよかった。

Y R U Still Here

 エレカシのあと、フィールド・オブ・ヘヴンに移動して、マーク・リボーのセラミック・ドッグをちょっとだけ観た。
 このころにはすっかり日が暮れて暗くなっていた。ここまでに四ステージをスタンディングで観てきたので、疲れきっていて、立ち見する気になれず。でもここのステージは砂利びきで埃っぽくて地べたに座っているのも気が進まず。演奏もちょっと小難しい感じだったので、二曲くらいで切り上げて戻ることにした。
 バンドはギター、ベース、ドラムの三点セットだったけれど、でもそうとは思えなくくらい硬質で音数の多い演奏を聴かせていた。三人とも椅子に座っての演奏で、当然かもしれないけれど、なんかむちゃくちゃ技術が高かった。
 リボーさん、孤高のギタリストなイメージの割にはラップっぽい饒舌なボーカルを聴かせいたりしていて、けっこう思っていたのと違った。少なくてもコステロやトム・ウェイツと競演していたころのホンキートンクな印象は皆無だった。なんか学究肌の向井秀徳みたいでした。

THIS OLD DOG

 そのあとはレッド・マーキーのマック・デマルコを観にゆくつもりだったんだけれど、そのころになるともうすっかり真っ暗になっていて──苗場は街灯がないので、夜になるととても暗い──グリーン・ステージにたどり着いたあたりでうちの奥さんが疲れたから休みたいというし、僕もさすがにグロッギーだったので、マック・デマルコは諦めて、朝と同じ林の入り口あたりで休みながら、ヘッドライナーのN.E.R.Dを待った。
 マック・デマルコのステージは変な意味でおもしろかったらしいので、ちょっと後悔。でもまぁ、体力的にはここらがまじで限界だった。

No One Ever Really Dies

 僕はN.E.R.Dをほんんど聴いていないので、漠然としたファレル・ウィリアムズのイメージから、陽気なパーティー・バンドかと思っていたら、ぜんぜん違った。そもそもファレルのイメージからして違う。ソロのときより扇情的でこわもて。俺たちには伝えるメッセージがあるんだという意気込みが伝わってくる。
 ステージ自体は映像を駆使したカラフルでダンサブルなものだったから、乗りのよさはじゅうぶん以上だし、途中にファレル・ウィリアムズのソロ・コーナーがあって、ファレルがプロデュースしたグウェン・スティファニの『Hollaback Girl』やダフト・パンクの『Get Lucky』を聴かせてくれたりもしたけれど、でもそういうお祭り騒ぎだけが売りじゃないんだってことが、はしばしに感じられるステージだった。いや、それともあれは単に、日本のオーディエンスの乗りの悪さに怒っていただけ?
 とにかくヒップホップのライヴの経験値が低いオーディエンスを相手に、ファレルがサークル・モッシュの仕方を懸命に指導していたり──輪になれって言ったり、左右に分かれろと指示してみたり(モーゼの十戒ごっこかと思った)──相棒の人が終始仏頂面だったりして(あの人はいつもあんななのか、それとも今回は本当に機嫌が悪かったのか、うちの奥さんがとても気にしていた)、やっている側にしてみるといまいち思うように盛りあがっていない感があったのかもしれないけれど、でも観客のなかに混ざっている身としてはじゅうぶんな盛りあがりようだった。
 僕らは疲れきっていたので、最初のうちは遠くに腰をおろして遠巻きにモニターの映像を眺めていたのだけれど、これはやっぱ近くで大音量と映像の極彩色を体感しないともったいないだろうと、途中からがんばって下りていって、オーディエンスの狂騒に混ざった。やっぱヒップホップは坐って聴くもんじゃない。いやぁ、まわりのみんながみんな、やたらと楽しそうに踊っていて、とても気持ちよかった。
 初日のヘッドライナーがN.E.R.Dだと聞いたときには、ボブ・ディランとケンドリック・ラマーが出るのに、なにゆえ唯一自分が聴いていないヘッドライナーの日にあたっちゃうんだと思ったものだけれど、いざ観てみたら、そこはヘッドライナーをつとめるほどのアーティストだけあって、とてもいいステージでした。自分からは絶対に観にゆこうと思わないアーティストだけに、かえって観られてよかったと思った。
 考えてみたら僕はこれまで夏フェスでヒップホップ系のアーティストがトリを飾るのを一度も観たことがなかったので、とてもいい体験をさせてもらいました。

 ということで、この日のフジロックはこのステージでおしまい。ホワイト・ステージなどではまだパフォーマンスが行われていたけれど、体力的にもう無理。わざわざ出口から遠いステージまで移動する気力がなかった。いやぁ、楽しかったけれど、やっぱフジロックは疲れる。一日でじゅうぶん。三日は無理。
(Aug 14. 2018)

Wake Up

エレファントカシマシ / 2018 / CD

Wake Up(初回限定盤)(DVD付)

 全国四十七都道府県ツアーに紅白出演と、デビュー三十周年を祝いたおしたエレカシが新たなシーズンへ向けて第一歩を踏み出した注目のニュー・アルバム。
 二年前のシングル『夢を追う旅人』から先行配信シングル『Easy Go』を含めたシングル曲とそのカップリングが六曲、タイトルナンバーの『Wake Up』ほかの新曲が六曲。計十二曲が収録されている。
 このところの常で半分は知っている曲だから、新譜を聴いたって満足度があまり高くないのがネックだけれど、作品の質自体は高いと思う。なんたって近年の最重要曲『Easy Go』が収録されているのがなにより大事。
 エレカシってスタジオ録音の音源よりもライヴがいいことのほうが多いんだけれど、この曲に関しては宮本がいまだライヴだとまともに歌いこなせていないので、このスタジオ・テイクのしっかりと歌えているバージョンがなおさら最高に思える。五十を過ぎてからこんなに高速でノイジーでパンキッシュな曲が書けるのって尋常じゃないと思う。
 これであとは宮本がライヴでもっとうまく歌えれば最強なのに。しかしなんで自分で書いた曲をあそこまで歌えないかな。そこだけがいつまでたっても残念で仕方ない。まぁ、ファンとしてはそこんところの駄目さ加減が愛おしかったりもするんだけれど。いつの日か生で完璧な『Easy Go』を聴ける日がくるのを待ち望んでいます。
 とにかくこの曲と『RESTART』という昨今のシングルでは最高の強度を誇るロック・ナンバーが一緒に収録されている一方で、『夢を追う旅人』のようなキャッチーなシングルや、『風と共に』や『今を歌え』のような優しいバラードが一緒に並んでいる。『神様俺を』のようなエレカシ初のレゲエ・ナンバーもある(あまりレゲエっぽくないけど)。先日のツアーを観ても思ったことだけれど、この振り幅の広さ、バラエティの豊かさが今回のアルバムではとても印象的。
 あと『旅立ちの朝』『いつもの顔で』『オレを生きる』という新曲が三曲ならんだラストがいい。ここんところには、どことなくEMI期を思い出させるテイストがあって、ぐっとくる。とくに『オレを生きる』はあのころの無骨な宮本っぽさが濃厚で、個人的には最高のラスト・ナンバーだと思う。
 もうひとつ印象的だったのは『旅立ちの朝』のサウンド・スケールの大きさ。
 基本エレカシの音ってどうしてもライヴハウスが最適で、スタジアムの規模で鳴らすのは無理があるってイメージが強いのだけれど、この曲からはエレカシの作品では初めてスタジアムで鳴らしても遜色なく聴けそうな印象を受けた。
 今回のアルバムでは全曲に村山☆潤がプロデュースでクレジットされている。ムラジュンのプロデュースって、彼自身の好みかエンジニアリングの問題か知らないけれど、なぜだか音は厚いのに芯が軽いイメージがあって、洋楽ファンの僕にはもの足りなく感じることが多い。そんな彼が全編的に絡んだ今回のアルバムは、あ、なるほどムラジュン印って感触が強いのだけれど、それでも『Easy Go』と『旅立ちの朝』は文句なし。この二曲に関しては本当にいい仕事をしてくれている。
 いやしかし、やっぱ『Easy Go』がいいです。聴いてるとやみくもに力が湧いてくる。エレカシの曲をこんなに繰り返し聴いたのって本当にひさしぶりだ。
(Jul 31. 2018)

エレファントカシマシ

TOUR 2018 "WAKE UP!!"/2017年7月6日(金)/Zepp Tokyo

Wake Up(初回限定盤)(DVD付)

 野音からわずか二週間たらずで観ることになったアルバム『Wake Up』のお披露目ツアー。
 ほんと、なんでワールドカップ中に二回もエレカシのライブがあるんだと、サッカー・ファンとしては悩ましかったこの時期だった。連日の睡眠不足で疲弊していたので、あれから二週間ちょいで、なんだかすっかり印象が薄くなってしまっている。なので今回はちょい短め。
 この日のライブでは、まずは宮本の服装が目を引いた。上下の黒(もしくは濃紺?)のスーツ姿で、ストライプのネクタイを緩めずきちんと締めて、ジャケットのボタンまで留めていた。シャツの裾もパンツにしまっていて、最後まではだけることがなかった。こんなフォーマルな宮本は初めてだ。──ってまぁ、三、四曲目ですでにジャケットを脱いで、いつもの白シャツ姿になっていたけど。
 でもそういえば、そのあとなにかの曲で歌いながらもういちどジャケットを着ようとしたところが、片手にマイクでなかなか着れず、歌い終わるころにようやく両袖を通し終わって、ああよかったねと思ったら、その次の曲くらいですぐに脱ぐという謎の行動をとっていた。あれはなんだったんだろう? 曲のイメージで正装して歌いたいと思ったとか? それともちょっと寒いと思って着てみたけれど、やっぱ暑かったとか? なんにしろちょっぴり笑える奇行でした。
 さて、肝心のライブはどうだったかというと──。

【SET LIST】
  1. Easy Go
  2. 風と共に
  3. RAINBOW
  4. 悲しみの果て
  5. 神様俺を
  6. 自由
  7. i am hungry
  8. ガストロンジャー
  9. RESTART
  10. 夢を追う旅人
  11. 今を歌え
  12. いつもの顔で
  13. 旅立ちの朝
  14. オレを生きる
  15. Wake Up
    [Encore]
  16. 今宵の月のように
  17. 笑顔の未来へ
  18. シャララ
  19. 俺たちの明日
  20. 歩いてゆく
  21. so many people
  22. ファイティングマン

 これはあとからセットリストを観て気がついたんだけれど、本編で新譜『Wake Up』の全曲を披露していて、そのアルバム以外の曲はわずか三曲しか演奏していなかった。だから本編は一時間半強と短く、長めのアンコール──宮本は出てきてから「第二部」といっていたけれど、今回はそのあとアンコールに出てこなかったから、こちらの気分としてはあれはアンコール──を含めても二時間ちょいという短さだった。
 しばらく前からエレカシのライブは二部構成で三時間近くやるのがあたりまえになっていたから、この短さが逆に新鮮だった。今回は二週間前に野音を堪能したあとだったし、前述のとおりW杯で疲れている時期だったので、新譜のお披露目というコンセプトがはっきりとしたコンパクトなライヴがちょうどよかった。まぁ、ものたりないという人もいるかもしれないけれど、僕個人はじゅうぶん満足だった。
 あ、でもそういえば、この日は腰痛持ちのうちの奥さんが「整理番号がいいから、Zepp Tokyoのフロアにあるバーにもたれられる場所を取りたい」というので、開演時間より一時間も前、開場前に着いたんだった。だから結局場内には三時間以上いたし、待ち時間も含めた疲労感もあって、もうじゅうぶんと思っている可能性もなきにしもあらず(体力なし)。
 それにしても本編のほとんどが新譜の曲だったってのは、いまさらながら意外。そうは思えないほど、バラエティに富んだ、バランスのとれたセットリストって印象だったから。まぁ、それはつまり新譜の内容がそれだけバラエティ豊かだってことの証拠なんだろう。
 あとそれに加えて、『風と共に』や『夢を追う旅人』、『RESTART』、『i am hungry』などの楽曲は、去年のツアーから何度も聴いて、すっかり耳になじんでしまっているってのもある。申し訳ないけれど、「え、それって新譜に入ってるんだっけ?」って感じだし(聴き込みのあまさを露呈している)。
 新曲で印象的だったのは、いまだに宮本が歌いこなせてない感ありありの名曲『Easy Go』、レゲエといいつつ、レゲエならではのグルーヴを欠いた(でもかわいい)『神様俺を』、サウンド・スケールの大きさではエレカシ史上最高ではないかと思われる『旅立ちの朝』、劇渋バラード『オレを生きる』、そして多重録音のコーラス・パートを宮本が生で再現するのがちょっぴりコミカルな味わいになっている本編ラスト・ナンバーの『Wake Up』など。
 アンコールでもっともインパクトがあったのは、もちろん『シャララ』。でもそれは昔懐かしいナンバーだったからではなく、かつてとは明らかに違うモードで演奏されていたからだ。以前はブレイクを多用した宮本ならではの無骨なビート感が印象的だったけれど、この日はリズムがもっとスムーズになって、以前より若干スマートな演奏になっていた。昔から大好きだった曲がいまのエレカシ流にブラッシュアップされているのが、なんとも新鮮でした。そもそも、この曲っては宮本が座ってギターを弾くのがあたりまえだったのに、今回は野音の『男は行く』と同様、立ったままだったし。そんなところにも懐古趣味に流されない前向きな姿勢を見る気がした。
 アンコールの最後はこの夜も『ファイティングマン』。三十年近く聴きつづけている曲だけれど、なんだかこの一年ばかりでまた新たに新鮮な気分でこの曲を聴けるようになった気がしている。
 最後はメンバー四人にヒラマミキオに村山☆潤というおなじみの六人でストーンズ風の挨拶をして、にこやかに帰っていった。そういや、野音では宮本から「つまらねえ髪型」と揶揄されていた石くんがこの日はリーゼントで決めていたのもおもしろかった。
 ツアー初日が宮本の喉の不調で延期になったりもしたけれど、とりあえず心配はいらないようでなによりだった。お互いもう若くないのだから、あまり無理はしないで、末永く活躍してください。
(Jul 22, 2018)

エレファントカシマシ

2018年6月23日(土)/日比谷野外大音楽堂

Wake Up(初回限定盤)(DVD付)

 二年ぶりのエレカシ野音はひさしぶりの雨だった。
 最近はエレカシ人気の高騰と転売屋対策でチケットの取り扱いがすっかり面倒になってしまっていて、ファンクラブでも購入できるのはひとり一枚までだし、入場の際にはファンクラブの会員証と身分証明書の提示が求められる。
 今年はめでたく夫婦そろってチケットを入手できたけれど、そんなわけで席は離ればなれ。また、入場の際に必要だというファンクラブの会員証を僕がなくしたので(なんでなくなるかな?)、入場時に捕まって時間を取られるとまずいからと、開演時刻の一時間も前に会場についた。
 そしたら雨だというのに野音のまわりはすでに外聞きの人たちでごった返している。入場待ちの行列も長蛇の列。結局ざあざあ降りの雨のなか、入場するまで四十五分近く待たされることになった。でもまぁ、雨のせいで入場が押していたせいか、IDチェックがなかったのは不幸中のさいわい。なんのおとがめもなく無事に入れました。
 前回のさいたまスーパーアリーナで史上最高の席をゲットした僕のチケット運はいまだに続いていて、この日も前から四列目という特等席だった。前はすべて背の低い女性陣だから、視野を遮るものはなにもない。でもって、宮本の白シャツの皺やら、ストーンズ風のお辞儀をしたトミのつむじが肉眼で確認できるくらい近い。当然かもしれないけれどスーパーアリーナの一列目より野音の四列目のほうが確実に近い。
 俺はそこまで熱心なファンじゃないので、観られさえすれば、なにもこんなに近くでなくてもいいんだけどな……なんて罰あたりなことを思っていたんだけれど、でもこの日は雨が降っていたので、いざ始まってみたらこの近さがとてもありがたかった。
 なんたって近いもんだから、視野に入るのは照明に照らされたステージばかりなわけです。おかげで途切れとぎれに降りつづけた雨がぜんぜん気にならない。閉演後に奥さんと合流して「それほど降ってなくてよかったね」っていったら、「なにいってんの、すごい降ってたよ」といわれて、違う会場にいたのかと思ったくらい。席が違うと印象もずいぶんと違うものらしい。
 さて、そんなわけで「ごめんなさいね、熱烈なエレカシ女子のみなさん」と謝りたくなるようないい席で観させてもらった二年ぶりの野音。この日のオープニングを飾ったのは新譜のタイトル・ナンバー『Wake Up』だった。さらに二曲目には『Easy Go』がつづく。
 野音のわずか二日後にはツアーが始まるから、新曲群はそこまで温存するかと思っていたので、これには意表を突かれた。そもそも、これまでの野音って懐古モードで始まるのが常だったから、まさか新譜のタイトル・トラックと代表曲を一発目に持ってくるとは思わなかった。
 最終的にこの日は『神様俺を』『いつもの顔で』『旅立ちの朝』『オレを生きる』も披露された。アルバム収録のシングル曲はひとつも演奏されなかったけど、それでもこれでたぶん新曲のうち『自由』をのぞく全曲がライヴで公開されたことになる。
 野音というと温故知新な「過去のお宝ナンバー発掘」ライヴという印象が強いし、実際にこの日も前半にはエピック時代の名曲をずらりと並べて、僕のようなロートル・ファンを大喜びさせてくれたわけだけれど、この日はそこに初めて聴かせてもらう新曲群が加わったことで、これまでとはひと味違うフレッシュさがあった。新たな十年に向けての第一歩をつよく印象づける、とてもいいコンサートだったと思う。
 新曲群については二週間後にZepp Tokyoでふたたび聴けると思うので、そのときにあらためて書くことにして、今回は省略。
 やっぱ野音といえば、普段のツアーでは聴けないオールド・ナンバーがたっぷりと演奏されるのが醍醐味でしょう。この日も三曲目の『おはよう こんにちは』からは古いナンバーのオンパレードで、そのワン・アンド・オンリーな世界をたっぷりと楽しませてくれた。
 あいかわらず初期の曲──特に宮本がハンドマイクで歌う曲──の迫力には圧巻の凄みがある。それが至近距離でみるとなおすごい。宮本がぎょろりと目をむき、喉も裂けろとばかりに絶叫する姿をわずか数メートルの距離で観られるというのは、これはもうほかにたとえようのない経験だった。
 宮本、なんであんなに細くて、あんなにパワフルなんだろう? 同い年としてもう圧倒されてしまう。僕もどちらかというと痩せている方だけれど、さすがにあそこまでじゃないし、そもそも体力がけた違い。第一部だけで疲れてしまって、第二部に入るころにはステップを踏むのが勢一杯なんて自分が情けなくなった。

【SET LIST】
    [第一部]
  1. Wake Up
  2. Easy Go
  3. おはよう こんにちは
  4. 浮き草
  5. 上野の山
  6. 人間って何だ
  7. おれのともだち
  8. 星の砂
  9. 珍奇男
  10. 武蔵野
  11. 神様俺を
  12. いつもの顔で
  13. さよならパーティー
  14. かけだす男
  15. Destiny
  16. なぜだか、俺は祷ってゐた。
  17. ズレてる方がいい
  18. オレを生きる
  19. RAINBOW
    [第二部]
  20. 今宵の月のように
  21. 笑顔の未来へ
  22. 友達がいるのさ
  23. シグナル
  24. 悲しみの果て
  25. 歩いてゆく
  26. 月の夜
  27. 旅立ちの朝
  28. 男は行く
    [Encore]
  29. 星の降るような夜に
  30. ファイティングマン

 野音のキーボードは今年も細海魚さん。やっぱりエピックの曲にスポットをあてるから、細海さんが適任ってことなんでしょうかね。優しいオルガンの音が心地よかった。
 去年のツアーではしゃべりまくりだった宮本くん。この日は一転してほとんどMCなしだったけれど、『おれのともだち』ではそんな細海さんとのレコーディング秘話を披露していた。最初に細海さんがアレンジしてくれたのに、宮本が途中から別のアレンジにしたくなり、最終的には細海さんの優しいアレンジと、宮本の乱暴なアレンジが相まって、いい感じに仕上がった……みたいな話(うろ覚え)。あまり鍵盤のイメージのある曲ではないので、へーと思いました。
 その曲もよかったけれど、個人的な前半の山場はそのあとの『珍奇男』から『武蔵野』への流れ。どちらもエレカシ史上もっともダンサブルな曲だと思っているので、ここでのグルーヴの気持ちよさは半端なかった。そのちょっとあとの『さよならパーティー』もあわせて、ここいら辺が僕にとっての前半のハイライト。
 あと、野音だと『なぜだか、俺は祷ってゐた。』とか、新曲『オレを生きる』などの侠気{おとこぎ}を感じさせる激レアなバラードが、すんげー沁みる。宮本、カッコよすぎる。
 第一部のとりの『RAINBOW』では、サビのコーラスに宮本のボーカルがエコー(リバーブ?)で繰り返される演出があったのにも、おおっと思った。いままであんなのやってなかったよね?(え、俺が気がつかなかっただけ?)
 残念だったのは、第二部に入って最初の『今宵の月のように』では歌いはじめに宮本の声がかすれてしまっていたこと。何曲かあとの『悲しみの果て』もそうで、不思議とこれらの歌い慣れているはずの曲で、喉の不調を感じさせた。なので二日後のツアー初日が喉の不調により延期になったと聞いたときには、あぁ、やっぱりと思ってしまった。さしもの宮本も五十の坂を超えて、さすがに喉の酷使に耐えられなくなってきているだなぁと思わせたんでしたが──。
 それらの曲よりもあとに演奏された第二部の締めの『男は行く』──。
 この曲のボーカルがとんでもなかった。なんでさっきまであんなしわがれ声を出していた人が、こんなに爆発的な歌が歌えるんだって、呆れてしまうほど圧巻の声量。演奏もラウドで素晴らしかった。
 この曲はこれまで宮本が坐って演奏するのが常だったけれど、この日は立ったままのパフォーマンスだった。それがよりいっそう能動的な印象を与えて、この曲の並々ならぬ破壊力を増幅させていた気がする。直前のどこかのフェスで最後にこの曲をやって大いに盛りあがったと聞いていたけれど、なるほど、こんなもの聴かされたら、そりゃ盛りあがるだろうよと納得だった。いやぁ、すごいもの見せてもらいました。
 第二部では、たぶん初めて聴く宮本弾き語りの『歩いてゆく』(アルバム『RAINBOW』の隠しトラック)が披露されたのも激渋で激レアでした。
 笑ったのは、なんの曲だったか忘れたけれど、宮本が石くんにステージの前に出て間奏のギターソロを弾くようにうながしておきながら、ソロのあいだじゅうスキャットしまくっていたせいで、石くんのギターがほとんど聴こえなかったこと。
 アンコールは『星の降るような夜に』と『ファイティングマン』の二曲。このところ、お祭りさわぎの『ファイティングマン』がつづいていたので、ごく普通にエレカシの『ファイティングマン』が聴けて、しかもその曲で今年の野音はおしまいってのが、なんかとてもすっきりといい気分だった。
 最後は宮本がメンバーひとりひとりと握手して、六人(当然ミッキーもいる)でストーンズ風の挨拶をして終演──。いやぁ、大満足でした。
 野音はすっかりチケットを取るのも大変になってしまったし、このごろはIDチェックがどうとか、うっとうしいことをいわれるので、そろそろ観なくてもいいんじゃないかと思っていたけれど、いざ観てしまうとなぁ……。やはり野音は格別でした。
 もしも来年チケットが取れたら会員証を再発行してもらわないといけない。
(Jul 01, 2018)

フラレガイガール

さユり / 2016 / CD+DVD / 初回生産限定盤A

フラレガイガール(初回生産限定盤A)(DVD付)

 RADWIMPSの野田洋次郎がさユりという新人アーティストに『フラレガイガール』という曲を提供したと聞いて、それではいっちょう聴いてみようかと思ってから、はや一年半。
 そのときには名曲と思いつつも、Apple Musicで聴いただけで満足してしまい、CDを買うまでには到らなかったのに、いまさらそのシングルを買う気になったのは、初回限定盤AのボーナスDVDに収録されている、わずか7分ばかりのライヴ映像が観たかったから……なのですが。
 いざ聴いてみたら、その映像うんぬん以前に、シングルの最後に収録されている『ルラ』という曲がとんでもない名曲で、そっちに全部持ってゆかれれしまった。
 『ルラ』はシンデレラをモチーフにしたアッパーなポップ・チューンで、メロディ、歌詞、ビート感、音作りとすべてが満点の仕上がり。
 楽曲自体はさユりのオリジナルではなくて、n-bunaというボカロP(ボーカロイドで曲を作っている人をそう呼ぶらしいです)の曲なのだけれど、その歌の描くイメージがさユりの世界観にどんぴしゃ。そしてその楽曲に彼女の歌声がベストマッチ。あまりにはまりすぎているので、まさかこれが他人の曲だとは思わなかった。
 ボカロというからにはオリジナルは初音ミクみたいなやつなんでしょう。少なくても僕がそのバージョンをこれより気に入るとは思えないし(いずれちゃんと聴いてみようかとは思っているけど)、この曲に関してはこっちが世界最強と信じる。
 とにかく、シンデレラをモチーフにして十代の少女のネガティヴな心情をぶつけた、切なくもユーモラスな歌詞が素晴らしい。「かぼちゃの馬車でも出せないとさ、舞踏会なんて行けないんだ」からの流れは絶品だし、「タリルタラ」やら「あっはっは」などといった、意味のないコミカルな言葉に絶妙なペーソスを込めて歌詞にのせるセンスも抜群だと思う。本当にこの歌詞は隅から隅まで素晴らしい。
 かつてボブ・ディランの『風に吹かれて』を聴いたサム・クックが「この曲は黒人である自分が書くべきだった」と嫉妬したという話があるけれど、もしも僕が女の子だったら、同じように「なんでこの曲を書いたのが私じゃないんだろう」って残念に思ってしまいそうなくらい。
 で、この曲の場合、単に歌詞がいいだけではなく、曲自体の出来も秀逸。どことなく和風な感触のあるダンサブルなメロディといい、転がるようなピアノが印象的なギター・サウンドといい、もうすべてが文句なし。そんな素晴らしい楽曲がさユりのあの強烈な声で歌われるんだから、その破壊力たるや唯一無二。ほかにたとえようがない。
 すでに二年前のクレジットの楽曲だけれど、今年の僕にとってのナンバー・ワン・ソングはこれで決まりって一曲。あまりに好きすぎて、僕はわずか一週間のあいだにこの曲を五十回以上もリピートしてしまっている。たった一曲をそんなに何度もリピートしたのって、おそらく長い人生でも初めてだ。自分でもちょっと気持ち悪い。
 しかしまぁ、『フラレガイガール』と『アノニマス』だけでも強力きわまりないのに、そこに『ルラ』が加わったこのシングルのポテンシャルたるや……。
 僕の音楽人生史上、最強レベルのシングルがここにある。
(May 27, 2018)