HARRY & THE BIRTHDAY
TOUR 2026 "Gotta Move" FINAL/2026年7月17日(金)/SGCホール有明
スライダーズが解散してから、はや四半世紀以上。いまごろになって初めてハリーのソロでのライブを観た。
これまでハリーのライブで観たことがなかったのは、レコーディング作品にスライダーズのころほど惹かれなかったのに加え、途中からは作品がインディーズでしかリリースされなくなってしまい、手に取りにくくなったのが一因。作品をきちんとフォローできていないと、やはりライブって足を運びにくい。
さらにはライヴの内容も弾き語りとか、ドラムだけとか変則的なものが多くて、絶対に観たいと思うほどではなかったので、観にゆくタイミングがつかめず、今日にいたるという感じだった。
ここ数年はコンサート・チケットの高騰が著しくて、一枚一万円を超えるのがあたりまえになってきてしまい、僕自身の体力の衰えや腰痛や預金残高の少なさもあいまって、以前のように気楽には足を運びにくくくなってきてしまったので、もうこのままハリーのライブは一度も観ずに終わるのかもなぁと思っていた矢先に発表されたのが、以前に夏フェスで共演したThe Birthdayとのツアーだった。
チバくんなきあともThe Birthdayとして活動をつづける三人の演奏をバックにしたハリーのライブが観られる!
もしもこの先ハリーのライブを観るのがたった一度だけだとしたら、これ以上の機会はないのでは? これを観ずしてなにを観る――。
そう思って先行チケットの抽選に申し込んだものの、豊洲PITでの東京公演は落選。二公演ゆくのは懐具合が厳しいので、日和ってZepp Hanedaは申し込まなかったのが失敗だったか……と思うもあとの祭り。残念だけれど、いままでちゃんとフォローしてこなかった自分が悪い。このまま一生ハリーのライブは観れずに終わるんだろうなって思っていたところへ、追加で発表されたのがこのツアーファイナルだった。
会場は三月に開業したばかりのSGCホール有明。東京ガーデンシアターに似た造りのホールで、キャパは五千人とあちらよりは少ないものの、すでに東京で二公演を終えたあとの追加公演だ。さすがに今回はチケットが取れました。しかも一階席のステージ向かって左手の、前から十六列目という良席。スライダーズの復活ライブのときよりもステージが近い! まぁ、右手にいたフジイケンジだけは前の人に遮られてよく見えなかったけれど、あとの三人はしっかりと視野に収まっていた。
【SET LIST】
|
定刻を過ぎてしばらくして客電が落ち、五十年代のオールディーズらしきナンバーがSEで流れるなか、The Birthdayのメンバーが登場~。最後にハリーが出てきて、フジイケンジのギターのイントロからコンサートが始まる。
一曲目は『Respectable Performer』――というタイトルなのを、サビにそのフレーズが出てきて知りました。ごめん、ハリーの履修が浅すぎた。
でも馴染みの薄い曲でもなんの問題もなし。とにかくバンドの音がカッコいい~。
キュウちゃんのドラムとヒライハルキのベースに引っぱられて、ハリーとフジイケンジのギターがノイジーに絡み合う。これこれこれ。こういう音が聴きたかったんだよ~って、まさに僕が望むギター・ロックの理想形。スライダーズとThe Birthdayってどちらも僕にとってはそういうバンドだったので、その両者のコラボは予想以上に最高だった。
この一曲目ではハリーのボーカルがよく聴きとれないほど音もでかかった。二曲目以降はミキサーの調節がよくなったのか、はたまた単にそこまでギターをかき鳴らさない曲がつづいたからか、そんなこともなくなったけれど、でもとにかく一曲目はとにかく音がでかかった。でもって、それがとても気持ちよかった。
かつてはエレカシのライヴ帰りには耳鳴りがして、相方の声がよく聞こえないなんてことがあった。最近はそういう経験がすっかりなくなったけれど、この夜はちょっとだけそのころに近いものがあった。やっぱロックはこういうのがいいよなあって思った。もうこの一曲目を聴いた時点で、この夜のライブが最高のものになるのを確信した。このバンドの音を二時間も浴びられるんだよ? これが最高でなければなんだろう?
ハリーとThe Birthdayのコラボってことで、どのバンドの曲をどんな比重でやるのかも要注目だったわけだけれど、セットリストの中心となったのはハリーのソロ・ナンバーで、それ以外は六曲だけだった。全部で十九曲だったから、約三分の一弱。
ハリーはソロでもスライダーズの曲をやっている印象だったし、それなりにスライダーズの曲も聴けるだろうと思っていたのに、ほとんどやらなかったのは予想外。演奏されたスライダーズ・ナンバーはわずか三曲で、本編で演奏されたのは『On The Road Again』一曲だけだった。
でもこの曲がいい。スライダーズの再結成ライブで必ずやるだろうと思っていたのに聴けずに終わったこの曲を、あえてこのツアーでやってくれたことが嬉しかった。それはアンコールの『Tokyoシャッフル』もしかり。いまさらこの曲をツイン・ギターのバンド・サウンドで聴けるのって、嬉し過ぎでしょう?
本編の大半はハリーのソロ・ナンバーで、いまいち馴染みが薄かったとはいえ、知らない曲はひとつもなかったし、とにかくバンド・サウンドが最高なので、それだけで十分に楽しいところへきて、このツアーではコラボゆえのサプライズがいくつか用意されていた。これがまたたまらない。
まずは冒頭からソロ・ナンバーをつづけたあと、六曲目に披露されたのが『ALRIGHT』。
The Birthday初期のEP『プレスファクトリー』の収録曲で、オリジナル・アルバムには未収録のせいで、僕はサビにくるまでThe Birthdayの曲だって気がつかなかった。いまいち馴染みの薄いこのバラードを引っぱり出してくるあたりもふるっている。
ちなみに「夢をみようぜBady」と歌うこのナンバー。僕にとっては、いやおうなく宮本を思い出させるこの歌詞に、なんで同じことを歌っても、チバくんやハリーのほうがカッコいいんだろうなぁって思いながら耳を傾けていた。
この曲の次が前述した『On The Road Again』で、ここの流れはこの日の序盤のクライマックスだった。
二つめのサプライズはライブの中盤に演奏された新曲『Gotta Move』。
まさかこのツアーのために、ツアータイトルを使った新曲を用意しているなんて思わないじゃん。ミディアム・テンポのブルージーなナンバーで、一聴しただけで記憶に残るようなキャッチーな曲ではなかったから、もう一度聴かせてもらっても同じ曲だとわからない可能性大だけれど、それでもわざわざ新曲を用意してくれた心意気にぐっときた。
そしてこの夜最大にして最高のサプライズが本編のラスト・ナンバー『Rollしねえ』の前に鳴らされたあの曲――。
フジイケンジが弾き始めた高速ギターカッティングのイントロを聴いて耳を疑った。
えっ?
これって、まさか?
ハリーのソロにこの曲に似ているイントロの曲ってあったっけ?
そんなフジケンのギターに、ヒライのベースが加わり、キュウちゃんのドラムが鳴った瞬間に、戸惑いが確信にかわった。そしてぶわっと鳥肌がたった。
『世界の終わり』だあああぁ~~!!!!
いやいやいやいや。まさかこの曲をふたたび生で聴く日がこようとは……。
それもハリーのボーカルで。
チバくんはThe Birthdayではまったくミッシェルの曲を演奏してこなかったので、フジケンとヒライハルキがこの曲を演奏するのも、おそらく今回のツアーが初めてでしょう? キュウちゃんにとっても、プライベートはいざ知らず、公式ではミッシェルの解散ライブ以来ではないんだろうか。
The Birthdayとのコラボでなぜこれ?――とは思ったけれど、おそらくハリーにとっては、いまは亡きチバユウスケに対する追悼の意味を込めたトリビュートだったんだろう。スライダーズのトリビュートに参加してくれた返礼として、チバくんの曲をカバーするならば、彼の最高傑作であるこの曲をぜひやりたいと思ったんだろうきっと。ハリーのその思いにミッシェルのオリジナル・メンバーであるキュウちゃんが賛同したからこそ実現したと思われる夢のような衝撃のトリビュート・ナンバーだった。
ということで、この名曲のあとに『Rollしねえ』を聴かせてもらって本編は終了。
いまだ『世界の終わり』の余韻さめやらぬ中、最近のライブには珍しくずいぶんと待たされて始まったアンコールの一曲目は、The Birthdayの『カレンダーガール』。
また意外な選曲を……。
でもまぁ、チバくんの不在ゆえに、あえて王道をはずした、変化球的な選曲にならざるを得なかったのかもしれないとも思う。
この曲ではワンコーラス目をハリーが歌ったあと、キュウちゃん、ヒライハルキ、フジケンの順でボーカルをまわして全員が歌うという趣向だった。チバくん抜きのライブでは三人ともボーカルを取っているようなので、そのことに対するハリーからの配慮だったのかなと思った。この曲に限らず、ハリーの歌に三人が持ち回りでコーラスをつけていたのも、このライブのよかった点。
アンコールはそのあとに前述した『Tokyoシャッフル』があって、最後は『Let's go down the street』で締め。そうだよなぁ、スライダーズのトリビュートでThe Birthdayが演奏したこの曲は外せないよねって思いながら聴いてました。
フジケンとキュウちゃんはハリーと十才違いだけれど、ヒライハルキとはちょうど二回り離れている。そのせいか、ハリーがThe Birthdayのメンバーを紹介する際の呼び方が、フジケン、ハルキ、クハラだったのも、なんかメンバー個々に対する距離感が伝わってきておもしろかった。年の離れた彼らと一緒に演奏するハリーがとても楽しそうだったのが、この夜もっとも印象的だったことかもしれない。
あと、ハリーのファンはいかにもって人が多かった。会場へと向かう道すがら、あ、この人はハリー観にゆくんだろうなと思わせるファッションの人たち多数。会場内に長蛇の列ができているから、トイレか物販かと思ったら、列の先にあったのは喫煙ルームだったりするし。いまどき、あんなに喫煙者が多い集団も珍しかろう。
なんにしろ、最近の宮本のライブは圧倒的に女性ばかりだし、ずとまよはもちろん若者中心なので、こういう年季の入ったロックファン大集合みたいなオーディエンス層って、かえって新鮮だった。
いやぁ、でも本当にいいライブだった。ハリーのライブを観るのはこれが最初で最後になるかもと思っていたけれど、もしも彼らがふたたび一緒にツアーをする気になったら、そのときにはまた観にいきたくなってしまうこと必至だわ。
(Jul. 29, 2026)


