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スピリチュアライズド

2018年9月26日(水)/Studio Coast

And Nothing Hurt

 2012年リリースの『Sweet Heart Sweet Light』で遅ればせながらファンになったスピリチュアライズドのライヴを六年越しでようやく観た。
 まぁ、ファンになったとはいっても旧譜はほとんど聴き込めていないし、ファンを名乗るのもおこがましいんだけれど、このバンドは絶対にライヴがいいはずだと確信していて、ぜひ一度は生で観たいと思っていたので、夏フェスの余韻さめやらぬ時期に単独公演が決まったこともあって、思い切ってチケットを取った。
 初めて観たスピリチュアライズドのライヴでなにより印象的だったのは、とにかくスローなナンバーのオンパレードだったこと。二曲目でいきなり代表曲の『Come Together』が演奏されたので、これはもしやすごい攻撃的なライヴになるのかと思ったら、まったく正反対だった。ここまで遅い曲ばっかのライヴって、過去にあったっけって思い返してみたくなるレベル。七曲目に演奏された新譜のオープニング・ナンバー『The Perfect Miracle』もどう考えたってゆっくりした曲なんだけれど、そこまでの流れがスローすぎたんで、「これってけっこう勢いのある曲だったのか」と思ってしまったくらい。それくらいとにかく全体の印象がスローでメローだった。ある意味、ここまで徹底的にバラード主体のロック・バンドって最近じゃ珍しい気がする。
 まぁ、バラードばっかだから演奏もおとなしいかというとそうではなく。音数少なく静かに始まった曲も、大半は曲が進むにつれて次第に演奏が熱してゆき、クライマックスに至るころにはぶあついサイケデリック・サウンドで同じフレーズをこれでもかとリピートしながらダイナミックに盛り上がる。そういう演奏がほとんど。
 どの曲もメロディーは美しいし、そのゆったりとしたビートに身をゆだねつつ、徐々に増してゆく音圧と繰り返されるフレーズにどっぷり浸れたらならば、気持ちがいいことまちがいなし。ただし、BPMを求めちゃ駄目。ビートの疾走感にこそロックのダイナミズムを期待するリスナーにとっては、逆に耐えがたいライヴなんじゃないかって気がする。
 僕個人はといえば、そういうバンドだとはいざ知らず。ライヴがよいはずという確信のもと、うちの奥さん(元気で陽気な音楽が大好き)を誘って観にきてしまったこともあり、あ、失敗したという思いが否めず。あと、目の前にいたオーディエンスが場内最高かってくらいに背が高かったり、へんてこりんなダンスで猛烈に盛りあがる珍獣系の人だったりしたのに気が散って、十分に堪能したとはいいがたかった。
 でもまぁ、スピリチュアライズドが独特のスタンスを持った個性的で優れたバンドなのがわかったし、このバンドは今後もフォローしていきたいなと思う。

【SET LIST】
  1. Hold On [Short Ver.]
  2. Come Together
  3. Shine a Light
  4. Stay With Me
  5. Soul on Fire
  6. Broken Heart
  7. A Perfect Miracle
  8. I'm Your Man
  9. Here It Comes (The Road) Let's Go
  10. Let's Dance
  11. On the Sunshine
  12. Damaged
  13. The Morning After
  14. The Prize
  15. Sail on Through
    [Encore]
  16. So Long You Pretty Thing
  17. Oh Happy Day
  18. Hold On [Reprise]

 スピリチュアライズドってオルタナティヴ・バンドでありながら、すごく古典的なヴィンテージ・ロックの感触もあるところがおもしろい。僕は部分部分で、七十年代のストーンズの作品、特に『スティッキー・フィンガーズ』あたりのバラードを聴いているときと近いものを感じた。たとえば『I Got the Blues』のような曲が延々とつづくライヴを想像してもらうといいかもしれない。まぁ、あくまで僕個人の感じ方だから、ぜんぜんそんなことないっていわれそうだけど。
 ステージではバンドの配置も独特だった。主役のジェイソン・ピアース(なんと僕よりひとつ年上)はステージ右手の隅で椅子に座って演奏する。マイクはなぜか二本。ロック・バンドにしては珍しく譜面台もある。
 彼のとなりにはコーラスの黒人女性がふたり(右側の女性の赤い髪が目を引いた)。彼女たちからちょっと離れて、ステージ中央から左手にドラム、ベース、キーボード、ギターのふたりがごちゃっと集まっている。いちばん手前のギターの人に隠れて、もうひとりのギタリストとキーボードの人はよく見えない。主役のジェイソン・ピアースがすみっこにいるから、サポート・メンバーがあまり目立っちゃいけないと思っているかのような、へんてこなバランスの八人編成だった。
 ライヴは一曲目で『Hold On』という曲をワン・コーラスだけ弾き語りっぽく聴かせたあと、前述のとおり『Come Togather』から本編に突入。つづけて旧譜の代表的なナンバーを演奏してから、今回のツアーのハイライト、新譜の『And Nothing Hurt』を全曲アルバムの収録順に披露するという内容だった。そういう意味では今回しか観られない、とてもレアなライヴだったのだと思う。
 この新譜再現パートで印象的だったのは、曲ごとに新譜のヴィジュアル・コンセプトであるモールス信号で曲名がバックのスクリーンに映し出されるという趣向。これがおもしろくて、つい演奏そっちのけでモールス信号を解読するのに夢中になってしまった。まぁ、おかげで新譜に関しては全曲タイトルがわかって楽しさ倍増でした。
 アンコールは前作のとりを飾る『So Long You Pretty Thing』と『Oh Happy Day』のカバーというゴスペル・パーティー。で、それで終わりかと思ったら、そのあとでもう一度、ジェイソン・ピアースがオープニングと同じ『Hold On』をワン・コーラスだけ歌って全編終了とあいなった。
 最初から最後まで様式美へのこだわりを感じさせるステージだった。そしてジェイソン・ピアースは控えめながらもロック・ミュージシャンとしてのオーラがびんびんで、とてもカッコよかった。僕が女の子だったら惚れてるかもしれない。
(Oct 08. 2018)

SUMMER SONIC 2018

2018年8月19日(日)/ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ

 サマソニ二日目は疲れにまけて思いっきり怠けた。序盤は特別に観たいアーティストがいなかったのですべて捨てて、三時すぎに始まるレキシから観にいった。
 サマソニでオープニング・アクトを観なかったのは八年ぶり二度目。正午近くにうちを出たのなんて初めてだ。というか、この日はレキシのほかはチャンス・ザ・ラッパーとベックの三組しか観なかった。サマソニでここまで少ないステージしか観なかったのも初めてだ。今回はいろいろ初めての多い夏だった。
 いやぁしかし、この日のタイムテーブルには最後の最後まで悩まされた。今年の目玉であるチャンス・ザ・ラッパーとヘッドライナーのベックの裏に、セイトン・ヴィンセントがかぶっているもんで。この三組をどう観るか、当日まで悩みつづけた。
 当初はチャンスのステージを途中で抜けて、セイント・ヴィンセントを半分観てから、ベックに戻ってこようかと思っていたんだけれど、でも前日ですっかり疲れてしまって、そんな風にあわただしくスタジアムとメッセを移動してたら、どのステージもじゅうぶんに楽しめない気がした。移動に片道十五分はかかるので、往復で三十分はロスする計算だし、さんざん悩んだあげく、そんなふうに時間を無駄にして、三組のアーティストを中途半端に観るよりは、二組をがっつり観るべきだろうって結論に達した。
 となれば、もうチャンスとベックがつづけて出るスタジアムに腰をすえて、メッセのセイント・ヴィンセントを諦めるしかない。
 幸い──というのもなんだけれど、今回の彼女のステージは春先にコーチェラのネット配信で観たことがあったので、どんなイメージかは知っていたし──当然それを生で観たいという気持ちはあったけれど──中途半端にしか観られないんなら仕方ないと、泣く泣く諦めた。
 ちくしょう、サマソニ事務局。どう考えたってベックとセイント・ヴィンセントをかぶせるのは間違いだって。僕以外にも両方観たかった人がたくさんいるだろうに……。

ムキシ(手書きジャケット付き 完全生産限定盤)

 さて、というわけで若干恨み節まじりのこの日のサマソニの一発目は、すっかりうちの奥さんのご贔屓になったレキシ。
 フェスで観るレキシのなにがいいって、時間が短いぶん、無駄なく演奏が聴けること。去年武道館で観た三時間越えのソロ公演で十四曲しかやらなかったレキシが、この日のライヴではわずか四十五分のあいだに六曲も演奏してくれているんだから、短いながらもけっこう満足度が高かった(まぁ、それにしたって少ないけどね)。
 ライヴは一曲目の『KMTR645』で恒例のイルカのバルーンが飛び交うシーンからスタート。この日は同じ時刻に裏でこの曲にゲスト参加したキュウソネコカミのステージがあったので、なんでも両者で示し合わせてこの曲を演奏したとかなんとか(未確認情報)。
 二曲目の『SHIKIBU』では、池ちゃんはこの暑い夏フェスのステージで、衣装の着物の上からさらに十二単を着用。汗だくの熱演をみせてくれた。
 「重い年貢っていうけれど、実は軽いんです」とミニチュアの俵を宙に放り投げてみたりしながら『年貢 for you』で観客にタオルをぶんぶん振りまわさせたあと、『ゲゲゲの鬼太郎』最新アニメのタイアップ曲『GET A NOTE』を披露。

【レキシ】
  1. KMTR645
  2. SHIKIBU
  3. 年貢 for you
  4. GET A NOTE
  5. 狩りから稲作へ
  6. きらきら武士

 この曲、僕はアルバム待ちでシングルを聴いていないので、きちんと聴くのはこの日のライヴがほぼ初めてだったのだけれど、すごいっすね、レキシの語呂合わせのセンス。「下駄の音」という日本語を『GET A NOTE』という英語タイトルに変換して、『Get Up, Stand Up』的なサビのフレージングを生み出すその言語センスには素直に感心してしまった。たんにギャグをかましているだけでなくて、曲自体もカッコいいし。のみならず「からんころん」という初代アニメ主題歌のフレーズまで効果的に取り込んである。レキシすげーって思いました。
 そのあとは定番の『狩りから稲作へ』と『きらきら武士』で締め。
 池ちゃんは「洋楽フェスだからアウェイだと思ってたけど、めっちゃ楽しい」といいながら、途中のアドリブ・コーナーではPファンクのフレーズなんかを聴かせるも、いまいち盛り上がらず。「お前ら、意外と洋楽詳しくないな?」とかいいつつ、「じゃあ、なんとかアンガーはどうよ?」とオアシスの『Don't Look Back in Anger』を演奏して、観客の大合唱を引き起こしてみせた。よもや二日連続でこの曲の大合唱を聴くことになるとは思わなかったよ。
 すべての演奏が終わったあと、池ちゃんはビートルズの『ジ・エンド』をBGMに流して去っていった。レキシはサマソニでもたいへん楽しゅうございました。

Coloring Book [Explicit]

 レキシのあと、チャンス・ザ・ラッパーまでは一時間半もあったんだけれど、セイント・ヴィンセントを観ないと決めたことで、無理して知らないアーティストまで観なくていいやって気分になっていたので、さっさとスタジアムに移って、早めの食事を済ませたあと、スタジアムの一階スタンドに移動した。
 そしたらまぁ、アリーナのすいてること、すいてること。結局チャンスのステージが始まる時間になっても、後方のブロックはほとんど無人だった(その後すこしずつ増えて、最終的にはそれなりに埋まってたけど)。
 仮にもグラミーで最優秀新人賞とったアーティストだよね? それでこんなに客が少なくていいのかいって思ってしまいました。やっぱり配信だけで活動している関係だろうか、日本ではまだCDで発売しないと知名度があがらないのかなと思った。
 チャンス・ザ・ラッパーの音楽って、ラップとはいっても、けっこう古典的な感触があるし、合唱団的なコーラスを多用していたりして、オールド・ファッションな黒人音楽ファンにも通じやすいと思うので、日本でももっと人気が出てもいいと思うんだけどな。単純に音響的に温かみがあってポップだし、少なくても今年のフジのヘッドライナーをつとめたケンドリック・ラマーよりも日本では受けそうな気がするのは僕だけ?
 まぁ、いずれにせよこの日のステージを観た人のほとんどは大満足だったに違いない。とてもいいステージでした。

【Chance The Rapper】
  1. Mixtape
  2. Blessings
  3. Angels
  4. 65th & Ingleside
  5. Work Out
  6. What's the hook?
  7. I'm the One (DJ Khaled cover)
  8. Ultralight Beam (Kanye West cover)
  9. Favorite Song
  10. Cocoa Butter Kisses
  11. All We Got
  12. No Problem
  13. All Night
  14. Summer Friends
  15. Same Drugs
  16. Blessings (Reprise)

 スタンドから観ていたので、距離があってメンバー構成はいまいちはっきりしないけれど、ステージにはバンドのメンバーの乗るひな壇があって、その左隅にドラム、右隅にキーボード、真ん中に白黒男女混声のコーラスのメンバーが四人と、その右手にトランペットを吹いたりする人がひとりという構成。
 チャンスは黒のぴったりとしたTシャツに黒いパンツ。右足にはレモンみたいな黄色い楕円が五つ並んでいる。トレードマークのベースボールキャップは白。
 僕はチャンス・ザ・ラッパーという人をシャイで穏やかそうな人だと思っていたけれど、生で観た彼のパフォーマンスには思っていたよりタフな感触があった。ポップなんだけれど根がまじめで真剣だから、ニヤニヤしてなんかいられない、みたいな。その点では苗場で観たファレル・ウイリアムズに通じるものがある。
 考えてみれば、普通にCDをリリースせずにデビューして、配信だけで音楽を売ってみせたラジカルな人だった。そんな人がただおとなしいばかりであるわけがなかった。
 フジロックで観たN.E.R.Dに比べると演出は控えめだったので、序盤はそれほど盛り上がらないのかなと思ったのだけれど、時間とともに確実に熱量があがっていった。演出がシンプルなぶん、黒人音楽が本質的に持っている音楽自体の力がダイレクトに広がってゆくようなステージだったと思う。途中、友達らしきラッパーとふたりでのコラボがあったりもしたけれど、やはりもっとも感動的だったのはコーラスの四人が大々的にフィーチャーされた楽曲郡。特にラスト・ナンバーの『Blessings (Reprise)』はその極みでした。いやぁ、最高に感動的なエンディングだった。
 正直、それほど聴き込んでいないアーティストだったからスタンドで観てしまったけれど、アリーナで観なかったことを少なからず後悔した。やっぱヒップホップはアリーナで観ないと駄目だわ。あと、やっぱこういうステージをさらに深く味わうためにも、もっと英語がわかるようになりたい──ひさびさにそう思わされた素敵なパフォーマンスでした。セイント・ヴィンセントは残念だったけれど、でもこれを半端に観たら、もっと後悔したと思う。いやぁ、フルで観ておいて本当によかった。
 このステージを観て以降、音楽の聴き方がちょっぴり変わった気がしている。

カラーズ - ジャパン・デラックス・エディション(完全生産限定盤)(DVD付)

 さて、この日はあまり暑くなかったので、海風の吹き抜けるスタジアムのスタンド席はとても心地よかったので、そのままそこで酒を飲みながらライヴを観ていたい気持ちもあったんだけれど、チャンス・ザ・ラッパーを座ったまま観てしまったことを少なからず後悔したので、せっかくだからベックはアリーナに降りて、できるだけ近くで観ることにした。
 チャンスからベックへの流れだと客がほとんど動かないんじゃないかと思っていたら、まったくそんなことなし。チャンスのときにアリーナにいたほとんどの客がベックを観ないで帰っちゃいました。やっぱラップとロックではぜんぜんリスナー層が違うらしい。これはちょっと意外。
 でもそのおかげでベックは思いっきり前で観られた。でもってそれが最高に楽しかった。前にいったのが大正解で、音もでかいのに分離がよくて聴きやすく、ギターの音もバキバキしていて最高に気持ちよかった。まだ終わらないうちに、これと同じライヴをいますぐもう一度観たいと思ったくらい。それくらいに楽しかった。ベック、最高~。
 バンドのメンバーは右手のドラムとベースが黒人、左手にギタリストとキーボード、そしてB53'sと紹介された男女三人組のコーラス・グループという編成で、ベック、ギタリスト、ベーシストの三人だけがフロア、あとのメンバーはひな壇の上という配置。
 ベックさんは黒ずくめの衣装で、ジャケットはスパンコールだかスワロフスキーだかできらっきらでした。

【Beck】
  1. Devils Haircut
  2. Loser
  3. The New Pollution
  4. Mixed Bizness
  5. Colors
  6. Wow
  7. Think I'm in Love
  8. Sexx Laws
  9. Soul of a Man
  10. Black Tambourine
  11. l'm So Free
  12. Dreams
  13. Girl
  14. Up All Night (with DAOKO)
  15. E-Pro
    [Encore]
  16. Where It's At

 セットリストは去年の武道館とそれほど変わらなかったけれど、今回はフェスってことで、あの日演奏された『Lost Cause』などのバラードはいっさいやらず、かわりに必殺の『Sexx Laws』を聴かせてくれるという、まさにフェス向けのサービス・メニュー。
 あと、驚きだったのが、わずか二曲目で『Loser』が演奏されてしまったこと。えー、この曲をいきなり最初にやっちゃうのかよ!って思いました。
 まぁ、それだけクライマックスを飾る『Colors』の新曲郡に自信があるってことなのかなとも思った。ツアーを重ねて熟成してきただけあって、実際にそれらの曲はたいそうな盛りあがりだったし。
 あと、ラス前の『Up All Night』では、ベックがこの曲のスペシャル・バージョンで競演したDAOKOがゲストで出てきた。たまたまこの日のサマソニには彼女も出演していたので(僕はすっかり忘れいていた)、なるほどってゲストだったけれど、彼女がいたこともあって、クライマックスは『Loser』ではなく、この曲にしたかったのかなと思った。
 DAOKOさん、なんだかまだまだステージ慣れしてないのか、ベックとの大舞台での競演に緊張感しているのが伝わってくるパフォーマンスでした。ベックおじさんに絡まれて困っているみたいなところがちょっぴりおかしくもあり。でもまぁなかなか可愛かった。
 アンコールでは定番の『Where's It At』の途中にメンバー紹介と『One Foot in the Grave』を絡めるって演出も去年のまんま。でもこの日はスタジアムに鳴りわたるベックのブルースハープの音がえっれーカッコよかった。あの音を聴けただけでもアリーナで観た甲斐があると思いました。あと、メンバー紹介でギターのジェイソン・フォークナーがストーンズの『Miss You』をひとくさり聴かせてくれたのもぐっときた。
 アンコールにはDAOKOもふたたび出てきて、メンバー全員でのダンスに加わってました──が。ベックが自分の帽子を彼女にかぶせたりして、終始特別扱いしてもらっていたけれど、やはり最後までぎこちなさが抜けない感じだった。彼女はこんな調子でこの先、芸能界で生き残ってけんのかなって、いらぬ心配をしたくなりました。ほんと余計なお世話だ。

 ということでこの日のサマソニは、ベックの素晴らしいライヴを堪能したあとで、恒例の花火があがるのを見て大団円──のつもりが……。
 あまりステージ近くに寄りすぎていて、ステージが邪魔して花火が見えませんでした。もしやとは思っていたけれど、こんな落とし穴があるとは!
 途中からはうしろに下がって見える位置まで移動したけれど、それでもやはり一部はステージに隠れたまま。終演の花火をじゅうぶんに楽しみたかったら、もうちょっとうしろに陣取らないといけないという教訓を得ました。あぁもったいない。
 でも、あの距離でベックを観るか、花火を見るかっていったら、やっぱそれはベックだよねぇ……。
 とはいえ、アリーナからの退出の列がスタンドで見ていたチャンスのときよりも渋滞していなかったから、客の入りはいまいちだったっぽい。すんげーよかったのに。なんかもったいないなぁ……とちょっぴりさびしく思いながら、スタジアムをあとにしました。

 ということで今回のサマソニは花火を楽しみそこなって終了。帰りは新宿までのツアーバスを予約してあったので、いつもより楽だった。スタートが遅かったこともあって、この日はこれまでのサマソニでいちばん疲れなかった。
 結果としてたった三組のアーティストしか観られなかったけれど、でもじゅうぶん満足できたし、観たいアーティストだけピンスポットで観るフェスってのも意外と悪くないもんだなと。十年以上フェスに足を運んでいるくせに、今回初めて思ったとさ。なんだかいろいろと間が抜けている五十代男でした。おしまい。
(Sep 03. 2018)

SUMMER SONIC 2018

2018年8月18日(土)/ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ

月と花束

 ソニマニのあとホテルでわずかばかりの仮眠をとって出かけたサマソニ初日。トップバッターは酸欠少女さユり@レインボウ・ステージ。
 悩んだ末にこの日のサマソニを観ることに決めたのは、彼女のステージが決め手だった。さユりのシングルやアルバムについてきた特典のライヴ映像を観ていたら、やはり一度くらい彼女の歌を生で聴いてみたくてたまらなくなった。
 それらの映像作品で印象的だったのは、さユりの歌にかぶせてアニメや歌詞がスーパーインポーズされていたことなのだけれど、生で観て驚いたのが、ステージの最前面にシルクスクリーンが張ってあって、映像がそこに映し出される仕組みだったこと。
 BUMPや椎名林檎などでもそういう演出をするのは何度か観てきているけれど、さユりさんの場合、そのスクリーンが最後まで設置されたままなのが特色。
 つまり僕らは最後までシルクスクリーン越しにしか彼女の姿を観ることができない。
 なるほど、2.5次元パラレルシンガーソングライターという肩書きは伊達じゃなかったのかと思いました。

【さユり】
  1. 平行線
  2. ミカヅキ
  3. オッドアイ
  4. フラレガイガール
  5. るーららるーらーるららるーらー

 おもしろかったのが、開演の10分ちょい前にけっこうなボリュームで彼女の歌が聴こえだしたので、BGMかと思ったら本人の生歌だったこと。去年のコヨーテ・バンドや、この日の午後のスペアザ、翌日のレキシもそうだったけれど、どうやらサマソニでは日本のアーティストがセッティング中に自ら演奏するのが恒例になっているらしい。
 でも、佐野元春やレキシはバック・バンドだけの演奏だったのに、さユりは本人が出てきて歌まで歌い、なおかつ自己紹介の挨拶までしていた。短い出演時間のなかで精一杯自分の音楽を表現したいというアーティストとしての彼女の思いが伝わってくるようで、ちょっとばかり感動的でした。ただ、ステージは暗いままな上に、前述のスクリーンごしで様子がよくわからず、観ているオーディエンスにも戸惑いがあったのか、残念ながらいまいち盛り上がりを欠いた感あり。
 いったん引っ込んで出直してから始まった本編はわずか三十分で、曲目は五曲だけと、とても短かった。おかげで始まったと思ったら、あっという間に終わってしまった。ほんと、わずか一瞬の出来事って感じで、もの足りないにもほどがあった。
 僕はアコギをガチャガチャ真剣にかき鳴らしながら歌う彼女の姿がものすごく好きなので、それをようやく生で観られたのはとても嬉しかったし、まったくぶれのないその力強い歌声の素晴らしさにも感動したけれど、でもとにかく三十分は短すぎた。「これからツアーがあるので、絶対に観にきていただきたいです」と彼女は言っていたけれど、チケットさえ取れるようならば絶対にいますぐ観に行きたいくらい(でも簡単には取れないよね?)。
 それにしても、僕は彼女のことをいまの若い女の子のなかでも音楽的に特別なセンスを持っている人だと思っているのだけれど、世間的にはそれにふさわしい評価は得てないんだろうか。この日も集まったオーディエンスの反応はそれほどでもなかった。同じステージでそのあとにつづくBiSHやポルカドットスティングレイより前ってのも僕的にはぜんぜん納得がゆかない。
 でもまぁ「酸欠少女」という肩書きと「さユり」って名前には、いかんせん昭和なアングラ・テイストが漂っているし、いつでもポンチョというコスチュームも変てこりんで風変わりすぎる。2.5次元うんぬんのアニメ・オタクっぽさに引いてしまう人も多そうだ。その辺で少なからず損をしている部分はあるのかなとは思う。
 でもそれが本人の意志なんだから致し方なし。僕は彼女の才能には間違いがないと思っているし、少なくてもいまや僕の音楽生活にはなくてはならないアーティストのひとりだ。黙ってその才能の行く末を見守るしかない。次にいつ生で観れるかわからないけれど、ふたたびその日がくるのを楽しみに待ちたい。

Dream Wife MY MIND MAKES NOISES
Hoodrich Vol. 3 [Explicit]

 さて、この日はそこから先しばらくは観たいアーティストがなかったので、比較的おもしろそうだと思ったバンドを漠然と観て歩いた。そしたらたまたまそれが Dream Wife、Pale Waves、Billie Eilish、IAMDDBと、女性アーティストばかりだった。さユりも含め、朝から女の子ばっかり観ていた前半戦だった。
 まぁ、観たとはいっても、ドリーム・ワイフ(すごいバンド名だな)はさユりとかぶっていたので二、三曲だったし、ペール・ウェイヴズはフルに観たけれど、遠巻きに座って眺めていただけで、それほど感銘は受けず。R&B系のIAMDDBは寝転んで耳を傾けていただけで、名前をなんと読むかさえわからない(アイアムDDB?)。

dont smile at me

 ということで、その中でもっともおもしろかったのがビリー・アイリッシュ。
 この子のことは現地で実際に観るまで名前さえ知らなかったのだけれど──それこそビリーなんて名前だから男の子かと思っていた──ペール・ウェイブスのあとで時間が空いたので、となりのステージだし、ちょっと観てみようと思ったところが、あまりにインパクトがあったので最後まで観てしまった。
 音楽的にはナラ・デル・レイのようなアンニュイなバラードを聴かせる女の子なんだけれど、ラナ・デル・レイに比べると、もっとダンサブルな要素があって、でもって存在自体がもっと自由きままな感じ。
 で、なにより驚きなのがこの子が十六歳だという事実。
 えー、マジ? 嘘でしょう? この子が十代って、そんなことあり得る?
 なにゆえ、わずか十六歳の子があんなに自信たっぷりに、あんなに成熟した歌が歌えちゃうんだ? それも別にわざとらしく色気を演出しているってんではなく、ごく自然体でやりたいようにやっているだけって感じなのに。ファッション的にもだぶっとした派手なパジャマみたいな服装で、色っぽいというのとは違うし。そもそもスタイルもよくなさそうだし。
 演出としてディズニーのプリンセスやベティ・ブープのアニメーション、『シャーロック』、『ツイン・ピークス』などの海外ドラマの映像をたっぷりと使いまくり、けだるいムードたっぷりのスロー・バラードを歌いながら、ステージをぴょんぴょん飛び回っている。でもって、なぜだか若い女の子のファンから、きゃーきゃー黄色い歓声を浴びている。
 名前も知らなかった十代の白人の女の子が、日本にきて同世代の女の子たちから歓声を浴びながら、元気にステージを飛び跳ねつつ、年に不相応なアダルトな歌声を聴かせている。イケメンの男性DJと一緒に踊ったり(どうやら実の兄貴らしい)、ウクレレ弾いてみせる曲があったりもする。なんかそのすべてが謎だらけで、とてもインパクトがあった。
 去年のデュア・リパとはまったく違うタイプだけれど、この子もこの先きっと大化けするんじゃないかと思った。ビリー・アイリッシュ、要注意です。

Telepathy (初回限定盤)

 そのあとは、おやつどきに表へ出て、ビーチ・ステージで SPECIAL OTHERS ACOUSTIC を観た。スペアザをライブで観るのもこれが初めて。
 とはいっても、そこは砂浜で直射日光に焼かれての野外ステージ。風が吹いていて、ちょっとは涼しげだったとはいえ、最近の僕は直射日光に当たると湿疹が出てしまうため、野外ではいつも長袖のシャツを着ていたりするので、こういうシチュエーションはあまり楽しめない。うちの奥さんがカキ氷が食べたいというので、無理して近くで観ることもないかと思って、ステージにいちばん近いカキ氷屋にできた長蛇の列に並びながら、遠巻きにそのステージを眺めていた(でもすごい行列で、ライヴが終わってもまだカキ氷は買えなかった)。
 今回のスペアザはアコースティック・セットということだけれど、キーボードの人がヴィブラフォンとピアニカらしき鍵盤を演奏していた以外、いつもとどこが違うのかよくわからず。ギターの人はアコギなんだろうけれど、遠くて識別できず。ドラムとベースにいたっては、普段となにが違うのか、まったくわからなかった。
 でもまぁ、夏の太陽を浴びながら、風に吹かれつつ聴くスペシャル・アザーズの音楽はなかなか気持ちよかったです。でもこのバンドは真夏の太陽の下よりは、春や秋にさわやかな風に吹かれながら観たいかな。

Totally Eclipsing

 さて、その次がいま一度メッセに戻って、この日のお楽しみの二番手、ソニック・ステージのザ・シャーラタンズ。
 シャーラタンズを生で観るのも、これがじつに十六年ぶりらしい。観たいとは思いつつ「絶対に」とまではゆかない距離感のバンドなので、知らないうちにずいぶんごぶさたしてしまっていた。
 とはいえ、このバンドももう四半世紀以上聴きつづけているわけで。この日の一曲目の『One To Another』や、後半に披露された『Weirdo』なんかは本当に大好きで、いまでもコンスタントに聴きかえしているので、イントロが鳴った瞬間にいやおうなく盛りあがる。

【The Charlatans】
  1. One to Another
  2. Just When You're Thinkin' Things Over
  3. Different Days
  4. Future Tense
  5. Plastic Machinery
  6. Let the Good Times Be Never Ending
  7. Totally Eclipsing
  8. Weirdo
  9. The Only One I Know
  10. Come Home Baby
  11. Sproston Green

 マッド・チェスター陣のなかにあって、唯一の生き残りといっていい彼らが、なにゆえに生き残ってこれたのか。彼らの演奏を聴くとそれがよくわかる。
 彼らの音楽はデビュー当時から変わらず、つねにグルーヴィーだ。僕個人は聴きこみが甘くて曲名もわからない最新作『Different Days』の収録曲が並んだ中盤でも、まったく違和感なく、そのグルーヴ感に身をゆだねられる。ちょっぴりウェットなメロディーに、つぼを押さえたキャッチーなフレージング。そして決してぶれないダンサブルなビート。切れのあるギター・サウンドをオルガンの優しい音色が包み込む特徴的なバンド・サウンドはキーボードが二度も入れ替わった現在も健在だ。
 とにかくシャーラタンズのライヴはいつ観てもとても気持ちいい。やっぱこんなにあいだを空けずに、観られる機会にはもっとちゃんと観てくればよかったと思わされる素敵なステージでした。次に単独来日公演があったらぜひまた観たい。
 それしてもこのバンドは『Sproston Green』以外の曲でステージを終えたことがあるんだろうか?

Happier

 シャーラタンズのあと、ヘッドライナーのノエルまではけっこう時間があったんだけれど、その時点ですっかり疲れていたので、それ以上無理をするのはやめて、すぐにマリンスタジアムの一階スタンドへと移動、マシュメロという人のDJプレーをちょっとだけ観た。
 この人は前の夜のソニマニにも出ていて──それで翌日のマリンに出演ってのもなにげにすごい──それを観た渋谷陽一氏が褒めていたので、じゃあ観てみようかと思ったんだけれど、でもやっぱDJって違うなと。大音量で鳴らされるEDMに需要があるのはわからないでもないけれど、やはりそれは僕が聴きたい音楽とは別のものだなと。
 電気グルーヴのように同世代の日本人がやっているとまた別の関心も生まれるけれど、どれだけキャッチーであろうと、見ず知らずの覆面DJのプレイにいきなり共感して盛り上がるのは無理みたいだ。EMDを観るたびに、俺ってやっぱロック・ファンだよなと思う。

Who Built the Moon?

 ということで、この日のとりを飾ったのはそのあとのノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ。
 僕はデビュー当時からオアシスを聴いているけれど、結局オアシスのライヴは一度も観ないで終わってしまったので、ノエルを生で観るのはこれが初めて。
 オアシスのころはリアムのボーカリストとしての資質の高さを評価するあまり、でしゃばって歌いたがるノエル兄貴のことをよく思わなかったりしたものの、バンドが解散してはや十年。その間にソロ・アーティストとしての地位を固めて、こうやってサマソニのヘッドライナーを務めるほどの活躍をつづけるノエルを見ると、素直にすげえなあと思う。
 ボーカリストとしては、やはり弟と違って特別ななにかを持っているとは思わないけれど、でも決して歌が下手ってわけではないし、そのソングライターとしてのセンスには秀でたものがあるなと思った。
 この日のライヴを観ていて僕が強く感銘を受けたのは、やはりそこ。単にメロディーメイカーとして優れているっていうだけではなく、彼の書く曲ってメロディーに対する言葉の乗せ方がとてもうまい気がする。メロディーに対して最高に気持ちのいい言葉の乗せかたをしているというか。それゆえに聴いていると自分でも口に出して歌いたくなる。結果としてライヴでの大合唱が起きる。そういうポップ・ソングとしての最高の形を、ものの見事に実現しているように思う。
 そういう意味で、そのセンスがもっとも見事に発揮された曲が最後から二番目に演奏された『Don't Look Back in Anger』だろう。サビをすべてオーディエンスの合唱に任せて、それでも楽曲がしっかりと成り立つのは、誰もが歌いたくなるあの曲のポテンシャルがゆえ。さすがの僕でも大合唱に加わらずにはいられなかった。

【Noel Gallagher's High Flying Birds】
  1. Fort Knox
  2. Holy Mountain
  3. Keep on Reaching
  4. It's a Beautiful World
  5. In the Heat of the Moment
  6. If I Had a Gun...
  7. Dream On
  8. Little by Little
  9. Whatever
  10. She Taught Me How to Fly
  11. Half the World Away
  12. Wonderwall
  13. AKA... What a Life!
  14. The Right Stuff
  15. Don't Look Back in Anger
  16. All You Need Is Love

 あと、ノエルさんは意外と謙虚だった。自分のソロ・ライヴなのに、コーラスの黒人女性にまるまるボーカルを任せたりするし、なんでもオレオレなワンマンではないらしい。バンドとしてもまとまりがあったし、そういう意味でも好印象なライヴだった。
 バンドはメンバーが何人いたのかすでに忘れたけれど、ホーン数名に女性コーラス複数ありで、けっこうな大所帯だった。音的にはオルタナティヴなものより、ポール・マッカートニーあたりの王道ロックって印象。そういう意味でもすっかりUKロックの大御所の一角を占めつつあるのかなって貫禄を感じた。
 サマソニ初日のマリンスタジアムで最後に演奏されたのは、ノエルのソロでもオアシスの曲でもなく、ビートルズのカバー『愛こそはすべて』。『Don't Look Back in Anger』からの流れを受けてこの曲をやられた日には、そりゃもう誰だって合唱に加わらないではいられまいって選曲。よもやポール・マッカートニー以外のライヴでこんな風にビートルズ・ナンバーを歌うことになるとは思わなかったよ。
 ノエルとバンドがその曲の演奏を終えて、さよならの挨拶を始めるとともに、スタジアムの上空に花火があがった。
 これまでに僕がサマソニで観た花火は、ヘッドライナーがアンコールを終えて姿を消したあとに上がるのが相場だったから、まだアンコールどころか、メンバーがステージにいるあいだに花火が上がり始めたのには意表をつかれた。
 主役に拍手を送りつつも花火に気をとられているうちに、ノエルたちはゆっくりとステージを去っていった。そういう流れだから当然アンコールもなし。定石を無視したそんなノエルの姿勢は思いのほかロックだと思った。
 ノエル・ギャラガーのステージは、オーソドックスな音楽性の一方で、予定調和を嫌う反骨心を感じさせた点で、僕の予想のちょっぴり斜め上をいっていた。

 ということでサマソニ初日はノエルの『愛こそはすべて』と花火で終了。まだメッセではテイム・インパラのステージもやっていたし、深夜一時からのウルフ・アリスも観たかったのだけれど、体力的にはその時点ですでにきつかったし、無理して夜更かしして翌日に響くのも困るので──あと、ウルフ・アリスだけのために深夜料金のタクシー代、約二万円を払う決心がつかなかったので──残念ながらこの日はそこでおしまいにして、さっさと自宅へ帰った。
 五十代にとっての夏フェスとは、要するに、音楽への愛情と疲労感および預金残高との戦いではないかと思ったりする(つづく)。
(Aug 26. 2018)

SONICMANIA 2018

2018年8月17日(金)/幕張メッセ

 この夏はこれまでになくフェスで散在した。同じ夏にフジロックとサマソニの両方に行ったのは初めてだし、サマソニの2デイズ・チケットを取ったのも初めて。のみならず、今回はソニックマニアまで観に行った。でもって、ソニマニのあと、一泊だけホテルに泊まった(三時間しか寝れなかったけど)。二日目の帰りには新宿まで片道のツアーバスまで利用した。
 そんなふうに新企画盛りだくさんで満喫した今年のサマソニ。まぁ、おかげでとても充実した三日間だったけれど、やっぱちょっと金を使いすぎたかなぁとも思う。でもまぁ使っちまったもんは仕方ない。そのぶん楽しんだからよしとしよう。

 さて、ということで、今年のサマソニは金曜の夜のオールナイト・イベント、ソニックマニアからスタート。
 今年のソニマニはメインとなるマウンテン・ステージに出演するのが、コーネリアス、ナイン・インチ・ネイルズ、マイ・ブラディ・ヴァレンタイン、電気グルーヴという四組で、個人的にはすべて観たいと思える、珍しいくらいに豪華なラインナップだった。しかもその裏にもジョージ・クリントン、サンダーキャット、フライング・ロータスという魅力的なメンツがそろっている。これは観ないわけには行かないでしょう?
 まぁ、結果的にはマウンテンのラインナップが強力すぎて──あと僕個人の体力がなさ過ぎて──ほかのステージはいっさい観れずに終わってしまったのだけれど。いずれにせよ、今回のソニマニはある意味、サマソニ本編より充実していた。

Mellow Waves

 というわけで、最初に見たのがコーネリアス。
 基本的には昨年の十月にベックのオープニング・アクトとして武道館で観たときと同じく『Mellow Waves』のツアーの一環という内容だったけれど、今回は持ち時間が長い分、三曲多かった。あと、今回はフロアでスタンディングで観たので、スタンドで座って観た前回とはけっこう印象が違った。
 あのときは一階席から見下ろす形で観ていたために、演出の映像的な完成度と音楽とのシンクロ率の高さに舌を巻いているうちに終わってしまった感じだったけれど、今回は近くだったので、もっとバンドの生演奏の魅力が感じることができた。
 近くで観たらその映像美になおさら圧倒されるかと思っていたら、意外とそうでもなく、逆に近いと背景の映像はおまけみたいな感じになって、生だからこそ伝わるバンドの息づかいのようなものが感じられたのがよかった。

【Cornelius】
  1. "Mellow Waves" Intro
  2. いつか/どこか
  3. Point of View Point
  4. Helix/Spiral
  5. Drop
  6. Count Five or Six
  7. I Hate Hate
  8. 夢の中で
  9. Beep It
  10. Fit Song
  11. Gum
  12. Star Fruits Surf Rider
  13. あなたがいるから

 コーネリアスの演奏って技術的にきっちりと整いすぎていて破綻がないような気がしていたけれど、近くで観るとさすがに打ち込みの音楽とは違う、生身の人が演奏するからこその隙のようなものがちゃんとある(さすがにエレカシのように隙だらけじゃないけど)。僕はそれが感じたくてライヴに足を運んでいるような気がする。
 おもしろかったのは、左右の大型モニターに映し出されるステージの映像がやたらときれいだったこと。生でステージを観ているよりコントラストが鮮明で、ホントきれい。モニターを観たあとで肉眼でステージを観ると、色がくすんで見える。これって下手したらモニターを観ているほうが感動しちゃうんじゃないかって思ってしまうくらいだった。でもって、そのモニターが半透明の薄い膜みたいので出来ていて、映像が映ってない時にはうしろが透けて見える。いやぁ、昨今の映像技術の進歩ってすごいっすね。

BAD WITCH

 さて、二番手はナイン・インチ・ネイルズ。
 NINってけっこうテレビでライブをやるので、何度も観たことがあるような錯覚を起こしていたけれど、実際には初めてマソニで観て以来、これが十三年ぶりだった。
 あのころの僕はまだこのバンドの音に慣れていなくて、当時の感想を読むとちょっと引き気味になっていたみたいけれど、あれからNINも変わり、僕も変わり、音楽シーンも変わった。EDMみたいな打ち込みの音楽が隆盛をきわめる昨今、打ち込みを出発点にしつつも、昔ながらのディストーション・ギターをフィーチャーしつづけているNINのゴリゴリとしたロック・サウンドは、いまの僕にはとても好ましく思える。決してフェイバリットとはいえないけれど、好きか嫌いかといわれれば、確実に好きなバンド。
 かつてのサマソニでも、映像で観た何年か前のフジロックでも、NINといえば、映像的な演出のすごさが売りのひとつだと思っていたけれど、この日は違った。ステージの演出はほぼライティングだけ。左右のモニターに映し出される映像も、トレント・レズナーを斜めうしろから移した白黒映像が中心で、きわめて地味だった。でもその分、音楽そのもののパワーがじかに伝わってくる王道・直球のステージになっていた。

【Nine Inch Nails】
  1. Branches/Bones
  2. Wish
  3. Less Than
  4. March of the Pigs
  5. Piggy
  6. The Lovers
  7. Shit Mirror
  8. Ahead of Ourselves
  9. God Break Down the Door
  10. Closer
  11. Copy of A
  12. Only
  13. I'm Afraid of Americans (David Bowie Cover)
  14. Even Deeper
  15. Gave Up
  16. The Hand That Feeds
  17. Head Like a Hole
  18. Hurt

 NINってトレント・レズナーのソロ・プロジェクトだと思っていたけれど、ギタリストのロビン・フィンクという人がボーカル取ったりすることもあり、意外とバンド色が豊かだった。あと、向かって左手のキーボードの人がアティカス・ロスと紹介されていて、あぁ、この人がと思いました(NINのメンバーだと知らなかった駄目なやつ)。
 僕は彼らの曲のタイトルをほとんど言えない外様リスナーなので、これ以上詳しいことは書けないけれど──この日の曲目でタイトルがわかったのは『Copy of A』と『Hurt』だけ──それでもそのステージはとても刺激的だった。ファンというにはおこがましいので隅のほうでおとなしく観ていたけれど、もっと前で観ればよかったとちょっと後悔。
 あとで調べたら、MCでデヴィッド・ボウイの名前を出して紹介された『I'm Afraid of Americans』はボウイのカバーで(『Earthling』収録)、シングルのリミックスにはトレント・レズナーも絡んでいたとか。ちっとも知らなかった。われながら、いろいろと底が浅くて残念だ。
 残念といえば、最後にダメ押しがあった。ラストナンバーの『Hurt』の前にステージが暗転したのをみて、僕のまわりのオーディエンスがいっせいに出口に向かったので、僕もつられて出口へと向かってしまったら、その途中で『Hurt』の演奏が始まってしまったという。あぁ、しまった。やっぱ終演の挨拶もなしには帰らないでしょう。長いことロック聴いてんだから、その辺はちゃんと理解しろ、俺。

LOVELESS

 さて、この夜もっとも楽しみにしていたのがその次のマイ・ブラディ・ヴァレンタイン。
 ほかのバンドは過去にも観たことがあるけれど、マイブラは個人的にこれが初めてだったので、噂に聴くその轟音がどれほどのものなのか、とても楽しみにしていた。
 そしたらこれがさ。
 本当にすごかった。最初の一音が放たれた瞬間にぴょんと飛び跳ねそうになったくらい。あまりに音が大きくて、ボーカルなんてほとんど聴こえない。そのまま聴いていたら、なんか身体がおかしくなりそうな気がした。春から親知らずで腫れっぱなしの歯茎がさらに腫れあがるんじゃないかって思った。
 実際に難聴になりかねないレベルだからってことだろう。バンドが耳栓を配布しているって話だったので、うちの奥さんは途中で中抜けして、クリエイティブマンのブースで提供されていた耳栓をもらってきた。ふわふわのウレタンかなにかのオレンジ色のやつ。してみるとなるほど、適度に音量が緩和される──けど、なんか音がこもる感じがして、あまり気持ちよくない。そもそも僕は装身具とか整髪料とか、身につけるものが基本的に嫌いで、なくてすむものは積極的に身につけたくないって男なので、耳栓もしかり。
 そもそも、耳栓してなおかつ普通に聴ける音量ってそりゃなにごとだと思う。なんか間違ってやしませんか?
 大音量はロックの華だと思っていたけれど、さすがにものには限度ってものがあるなと。基本的に音楽は楽しむもの。耳栓なしでは楽しめないレベルはちょっと違うのではないでしょうか。この異常な大音量を快感に思う人がいるのもわからないではないけれど、僕は素直に肯定できなかった。

【My Bloody Valentine】
  1. I Only Said
  2. When You Sleep
  3. New You
  4. [New Song]
  5. You Never Should
  6. Only Tomorrow
  7. Only Shallow
  8. Thorn
  9. Nothing Much to Lose
  10. To Here Knows When
  11. Slow
  12. Soon
  13. Feed Me With Your Kiss
  14. You Made Me Realise

 あと、なにそれって思ったのは最後から二番目の曲での異常なノイズのたれ流し。曲の最後にギターをガーっとかき鳴らして盛り上げる、みたいなのはどのロック・バンドもよくやることだけれど、マイブラはそれをあの異常な轟音でもって、数分にわたって延々とつづけてみせた。メロディーもビートも節操もない、単なる轟音ノイズのたれ流しが延々とつづくわけです。いったい、いつになったら終わるんだとうんざりするほどの長さで。あんなの、ちっとも楽しくないぞ。ほんと、なんの嫌がらせかと思った。あれが好きって人には、ちょっとMの気があるんじゃないだろうか。
 去年のモグワイの轟音もすごかったけれど、あのバンドの場合はインスト・バンドだったから、その音の大きさもまだ納得できた。でもマイブラの場合は基本的には歌ものだ。それなのに彼らは、モグワイをも超える轟音でもって、その歌をわざとかき消してみせる。異常な轟音越しに耳栓を通してかすかに聴こえる柔らく優しいボーカルのメロディ。そこには確かにそこにしかない耽美的な美しさがあるかもしれない。それは否定しない。でもそれは少なくても僕個人がライヴに望むもんじゃないなと思う。
 結論:マイ・ブラディ・ヴァレンタインはレコードでのみ聴けばいいバンドかもなぁって。この夜のライヴを観て、僕はそう思いました。スタジオ音源を自分の好きな音量で、できるかぎり大きな音で聴くのがこのバンドとの正しいつきあい方だって気がする。
 でもまぁ、ほかでは味わえないレアな体験でした。それは間違いなし。
 あらためてこの文章を書くためにスタジオ音源を大音量で鳴らしながら聴いていたら、なんだかあの夜のことを思い出して笑いがこみ上げてきた。ほんとあれはもう笑っちゃうレベルだった。いやぁ、すごかった。

MAN HUMAN / 今夜だけ

 この夜──というのは正しくない時間帯に登場したソニマニのとり、電気グルーヴのMCひとこと目は「おはようございます」だった。実際にライヴが終わって展示場ホールの外に出てみたら、おもてはすっかり朝だった。
 予定では五時前には終わるはずが、ひとつ前のマイブラが押していたので、電気グルーヴのステージも二十分押しで始まった。
 クローズの時間を守るために短めになるかと思いきや、そこは打ち込みのテクノだから簡単には曲をはしょれないからか、はたまたゲストの出番なしでは終われないからか、電グルは結局予定通り(もしくは最初から予定以上?)の長さのステージを演奏しきった。おかげさまで終わってみれば、すっかり朝。こんな時間帯に電グル聴いて踊りまくっている人たちのなんて元気なことか……。
 ひとつ前のマイブラの轟音同様、このバンドをこの時間帯に観るって状況はなんかすごく間違っている気がした。マイブラの轟音にやられたあと、ひきつづき一時間以上にわたって電グルのノンストップのダンスビートにさらされるってのは、こういっちゃなんだけれど、ある種の我慢大会みたいだった。

【電気グルーヴ】
  1. Fallin' Down
  2. モノノケダンス
  3. プエルトリコのひとりっ子
  4. いちご娘はひとりっ子
  5. SHAME
  6. SHAMEFUL
  7. MAN HUMAN
  8. Baby's on Fire
  9. Slow Motion
  10. The Big Shirts
  11. 夏猫
  12. 柿の木坂
  13. ユーフォリック
  14. 燃える!バルセロナ
  15. 人間大統領

 まぁ、嫌ならばさっさと引き上げりゃいいじゃんって話なんだけれど、でも別に嫌いなわけなじゃないしなぁ……、途中で逃げ出すのも気持ち悪いしなぁ……ってんで、我慢して最後まで観ました。でも「我慢して」って時点でなにか間違っているよね。
 五年前に同じソニマニで観た電気グルーヴのステージは、モアイみたいなオブジェがあったりして、けっこう凝ったものだったけれど、この日は演出自体は控えめ。その代わり、途中からゲストとして鈴木サトシというギタリストが出てきたり、最後の『人間大統領』では赤いドレスをまとった日出郎という男性(!)がダンスを披露したりしていた。
 まぁ、どちらも僕らの知らない人なので、ゲストに出てきたからといって盛り上がれるでもなく。とにかくそのたたみ掛けてくるダンスビートと過剰なテンションの高さが、徹夜で疲れきった身体にはとてもこたえました。
 ほぼ同い年なのに石野卓球とピエール瀧のなんて元気なことか……。

 ということで、電気グルーヴのステージが終わってみれば、もう五時を大きくまわっていた。サマソニ初日の次のステージまではわずか五時間半。そこから帰宅して出直して──みたいなのはさすがに無理だったので、すぐ近くのホテルを予約しておいて本当によかったと思った、なんともすがすがしくない朝でした。あぁ、疲れた……。
(Aug 26. 2018)

FUJI ROCK FESTIVAL '18

2018年7月27日(金)/苗場スキー場

 五年ぶり、三度目のフジロックへ行ってきた。
 前回と同じ二十四時間バスツアーでの一日だけの参加ながら、前回とのいちばんの違いは奥さんが一緒だったこと。バスで見知らぬ人と相席になるのも一興かもしれないけれど、やはり長年つれ添った相棒と一緒ってのは気が楽だった。
 あと、一日じゅう快晴だったのも前回との違い。フジロックには雨がつきものだというし、ひとりで行った前回は猫の目のように変わる天候に降りまわされたので、今回も雨を覚悟してレインコートを新調していったのに、まったく降らなかった。うちの奥さん、フジロックに二日参加して降水確率ゼロ。家族三人で出向いた初回はうちの子が晴れ女だからだと思っていたけれど、もしかしたら彼女も晴れ女だったか。ふたりそろうと最強のてるてる坊主かも。

 今回のフジロックはエレカシが初出演するのに加えて、観たいバンドがいくつかあったから行くことに決めたのだけれど、チューン・ヤーズ(Tune-Yards)をはじめとして、興味のあるバンドの過半数が後半に集中してしまい、時間帯がかぶってちゃんと観られなかった。
 よりによって、もっとも楽しみにしていたチューン・ヤーズがエレカシともろかぶりというのが痛恨の極み。なんでそんなことしてくれちゃうかなぁ……。まぁ、あのふたつのバンドを両方観たがる俺みたいなオーディエンスは少ないのかもしれないけれど。エレカシは年中観ているけれど、やっぱフジロック初出演はフルで観ないわけにはいかない。というわけでチューン・ヤーズをたった二曲しか全部観られなかったのは、ほんと残念だった。

 とにかくこのふたつのバンドを効率よくつづけて観なくちゃならないってんで、苗場に到着してすぐに、まずはチューン・ヤーズが出るレッドマーキーからエレカシの出るホワイト・ステージまでの移動時間を測っておこうということになった。でもその前にちょっと休憩……とレッドマーキー前の木陰のところで腰を下ろしたとたん、いきなり小指に熱湯がかかったような痛みが走る。「熱っ!」と手を振ると、なんか蜂みたいなやつが目の前の草むらにジジジと落ちてきた。ちくしょう、刺された。なにこの虫。黒と灰色のしましまで、よく見ると蜂じゃないっぽい(すぐに踏みつけて抹殺)。フジロック最初のイベントはアブだかブヨだか知らないけれど、謎の虫からの洗礼でした。ちくしょう、小指痛い。

 とにかくこのふたつのバンドを効率よくつづけて観なくちゃならないってんで、苗場に到着してすぐに、まずはチューン・ヤーズが出るレッドマーキーからエレカシの出るホワイト・ステージまでの移動時間を測っておこうということになった。でもその前にちょっと休憩……とレッドマーキー前の木陰のところで腰を下ろしたとたん、いきなり小指に熱湯がかかったような痛みが走る。「熱っ!」と手を振ると、なんか蜂みたいなやつが目の前の草むらにジジジと落ちてきた。ちくしょう、刺された。なにこの虫。黒と灰色のしましまで、よく見ると蜂じゃないっぽい(すぐに踏みつけて抹殺)。フジロック最初のイベントはアブだかブヨだか知らないけれど、謎の虫からの洗礼でした。ちくしょう、小指痛い。

Pretty good!!

 ということで、虫に刺されて小指ぱんぱんに腫れあがった状態でさいさき悪く始まった今回のフジロック(指が痛くて拍手がつらかった)。
 まずはグリーン・ステージのモンゴル800からスタート──とはいっても、僕はモンパチってまったく聴かないので、グリーン・ステージに向かった林の入り口あたりの木陰で遠巻きにモニターを観ていた。

SUMMER BREEZE / スタンドバイミー(完全限定生産盤)<CD(12)s+DVD>

 モンパチを三十分くらい観たあと、ホワイト・ステージに移動して、うちの奥さんが視聴したらけっこう好きだったという go!go!vanillas という若いバンドを観た。
 モンパチもゴーゴーバニラズも僕にとっては元気すぎというか、影がなさすぎる印象であまり盛りあがれない。やっぱ日本語のロック(とくに男性のもの)は人生の鬱屈がその言葉のはしばしに見え隠れしてくれないと夢中になれない。

 ホワイト・ステージでは三曲くらいで陽射しの暑さに音をあげて移動。ジプシー・アヴァロンとフィールド・オブ・ヘヴンの場所を確認してまわった。観たいステージがあったわけでもないのに、こんなところで無駄な体力を使ったのを後悔することになるのは夜になってからの話。

All Of Us(初回限定盤)(DVD付)

 ホワイト・ステージからボードウォークの迂回路をつたってグリーン・ステージへと戻ってみると、GLIM SPANKY が演奏中だった。
 このバンドも俺には関係ないと思いこんでいたのでスルーしちゃったけれど、通りすがりに生で聴いたボーカルの子のハスキーな歌声はけっこう気持ちよかった。あ、これならちゃんと観ておいてもよかったかなと思いました。いずれまた機会があれば、次はちゃんと聴こう。

I'm All Ears

 スタートから3時間目にして、この日はじめてフルに観たのが、その次のレッド・マーキーの LET'S EAT GRANDMA。
 「お婆ちゃん、食べよう」と訳すんだか、それともお婆ちゃんを食べちゃうんだか、いまいち意味のわからない名前の、十代の女の子二人組ユニット。
 ステージにはロングヘアをなびかせたスレンダーな女の子ふたり──遠目だと双子みたい──が並んで立ち、右手に男のドラマーがいるというスリー・ピースの編成で、女の子たちはシンセを弾きつつ、たまに左の子がギターを弾き、右の子がサキソフォンを吹いてみせたりする。若いくせに、意外と芸達者。
 印象的にはハイムと The xx のいいとこ取りをしたみたいなバンドだと思った。女の子のガーリーな外見やポップなメロディ・センスはハイムっぽいのに、音響的には打ち込みの重低音が効いていて The xx ぽいという。レコーディングされた音源はシンセ色が強くてあまり趣味じゃなかったので、途中で移動しようと思っていたんだけれど、予想外に聴き応えがあったので、結局最後まで見てしまった。そこんところも僕にとっては五年前に同じステージで観たハイムと一緒だった。初々しいわりには思いのほか技巧的で、とても楽しいステージでした。

 そのあとすぐにグリーン・ステージへと移動すると、間髪いれずに ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA の演奏が始まった。
 ドラムの池畑潤二という人がバンド・リーダーをつとめるフジロック御用達の大所帯セッション・バンドで、今年のゲストはトータス松本、奥田民生、甲本ヒロト、仲井戸麗市の四人。
 バンドの内訳はギター三本、キーボード二名、ホーン・セクション四人にベース、ドラムにパーカッションの総勢十二名。僕はよく知らない人ばかりだけれど、有名どころだとルースターズの花田裕之や、RCファンには懐かしいサックスの梅津和時氏、SOIL&"PIMP"SESSIONS のトランペットのタブゾンビなんかがいる。あと、エレカシの野音でお馴染みの細身魚さんもいる(終始ノリノリでした)。
 本当は同じ時間にホワイト・ステージでやっているパーケイ・コーツが観たかったんだけれど、このメンツを無視してほかへはいけないでしょう?
 ステージはトータス、民生、ヒロト、チャボが順番に入れ替わりで出てきて、それぞれカバーを中心に二、三曲ずつを歌うという構成。
 トータスは知らない曲(エルモア・ジェイムズとのこと)のあとでヤング・ファイン・カンニバルズの『Johnny Come Home』という意表をつくカバーを聴かせてくれた(三曲目はウルフルズの曲)。おぉ、やはり同世代だと思う。
 民生さんも最初の二曲は古いロックン・ロール・ナンバーのカバー。でもって三曲目がなんとRCサクセションの『スローバラード』。これがめちゃくちゃよかった。
 ホーンとオルガンが苗場の山に気持ちよく響き渡り、そこに民生さんの歌と梅津さんのサックスが鳴り響くんだから、もうこれがよくないわけがないでしょうよって話で。いやぁ、最高でした。
 前のふたりがオールディーズのカバーだったのに、その次のヒロトは日本語だったから、オリジナルかと思っていたら、これもカバーだったらしい。それどころか一曲目はディランの『くよくよするなよ』(えー、マジ?)、二曲目はニール・ヤングの『Don't Cry No Tears』(『Zuma』収録)だというからびっくりだ。まったく気がつかなかった俺の音楽偏差値っていったい……。
 とりを飾るチャボはディランの『Harricane』を日本語に意訳して歌ってみせた。実際にあった黒人ボクサーの冤罪事件を歌ったあの歌を換骨奪胎して、狭山事件なんかを歌詞に盛り込んで、完璧に日本語の歌にしていたのにすごいと思った。
 そのあと、もう一曲フジロックのテーマ曲みたいなのを歌い、最後はゲスト四人そろってエディ・コクランの『C'mon Everybody』をやって終了。フェスならではのお祭りバンドだけれど、だからこその楽しさがあってよかった。
 いや、それにしても民生氏の『スローバラード』が絶品でした。この一曲だけでも苗場に足を運んだ甲斐があるってレベル。

FRANCIS TROUBLE

 次はホワイト・ステージでのアルバート・ハモンド・ジュニア。
 この人のステージもおもしろかった。よもやストロークスという一時代を象徴するバンドのギタリストが、ソロではハンド・マイクで歌ばっか歌ってて、ほとんどギターを弾かないなんて誰が思うって話で。たまにギターを持っても、ソロとか弾かないし。本当にこの人はストロークスのギタリストなんだろうかと不思議に思ってしまった。
 バンドは主役の彼のほか、ギター二本に、ベース、ドラムの五人編成。ベースが女の子で、あとは男。で、見た目はみんな普通に地味。
 主役のアルバート・ハモンド・ジュニアは新譜のださださなジャケットのイメージそのままに、赤いシャツに白いパンツというファッションで、ハンドマイクをコードのところで持ってぐるんぐるんと振り回したり、長すぎるコードを束にまとめたりと、とにかくそのマイク扱いがいちいち気にかかる人だった。なんでギターじゃなくてマイクなのさってずっと思っていた気がする。
 でもまぁ、バンドの演奏はポップでタイトでとてもよかった。僕には無条件にしっくりきて、とても楽しかった。単純に楽しさということでいえば、この日いちばんだったかもしれない。このステージを観て、僕はこれまでに一度もストロークスを観たことがないのを、ちょっとだけ後悔した。できればジュリアン・カサブランカのステージも観たいなと思った。

I can feel you creep into my private life [輸入盤CD](4AD0052CD)

 その次がこの日の目玉──になるはずが、わずか二曲しか観ないで終わってしまった──チューン・ヤーズ@レッド・マーキー。
 バンドはステージ中央に主役のメリル・ガーバス、右手に新しく彼女のパートナーとなったネイト・ブレナー、左にドラマーという三人編成。
 CDで初めて聴いたときにはまったく性別不明な印象だったけれど、いざ生で聴くとちゃんと女性らしい声だったのがまずは印象的。シンセを操り、シーケンサーで自らのボーカルをリピートさせながら、個性的なダンス・ビートをつむいでゆくその演奏は予想通りに刺激的だった。オーディエンスも最初から大盛りあがり。
 うーむ。こんなおもしろいステージをわずか二曲であきらめなきゃなんないとは……。まじでもっと聴きたかった。再来日を期待するっきゃないな。ソロで来たら絶対に観にゆく。来てくれそうにないけど。

Wake Up(初回限定盤)(DVD付)

 後ろ髪を引かれながらレッド・マーキーをあとにして、開演の五分前くらいにホワイト・ステージへ移動してみると、ホワイト・ステージはすでにエレカシ待ちの人でぎっしりだった。
 というか、ホワイト・ステージって決して広くないのに、真ん中からうしろは椅子を並べた人だらけってのが問題だと思った。あれってどうなんだ? ライブ開場のモラルとしてNGな気がする。ホワイト・ステージってPAのテントの存在感もありすぎるし、フジロックの中ではもっとも残念なステージな感がある。
 そういや、いつもはコードつきのマイクを使っているエレカシ宮本がこの日はワイヤレスだったけど、あれはホワイト・ステージがもっと広いと思っていたからじゃないだろうか(アルバート・ハモンド・ジュニアもワイアレスにすればいいのに)。ほんと、できればグリーン・ステージで観たかったぜ。
 ……なんて愚痴はまぁいいとして。
 この日のエレカシについては、まずは石くんでしょう。白いタンクトップに黒の短パン、オールバックにサングラスって。なんだそれは。夕涼みしているヤクザにしか見えない。
 途中で宮本にいじられて片側の肩をはだけてからは、江戸時代の賭博師みたいになっていたし、宮本がうしろから頭をつかんで、ロボットのように右へ左へとゆっくりと首を動かすにいたっては、意味不明で大爆笑。世界中にYouTube配信されているステージで、そんなことおくびにも出さすにこれだけ笑いを誘うってのもある意味すげーと思った。
 演奏もアグレッシブでよかった。『Easy Go』『奴隷天国』『RAINBOW』とエレカシ史上もっともスピード感のあるナンバー三連発でのオープニングは文句なしだったし(まぁ、そのうち二曲はあいかわらず宮本の歌がかなり苦しかったけれど)、その後も攻めの姿勢がきわだつ内容だった。洋楽ファンに目にもの見せてやるって気概が伝わってきた。一時間足らずのステージとしては出色の出来だと思った。

【SET LIST】
  1. Easy Go
  2. 奴隷天国
  3. RAINBOW
  4. 悲しみの果て
  5. 旅たちの朝
  6. ガストロンジャー
  7. so many people
  8. ファイティングマン
  9. おはよう こんにちは
  10. 今宵の月のように

 ラス前は「俺たちの唯一のヒット曲です」と紹介して、『今宵の月のように』をやるのかと思ったら、一転して『おはよう こんにちは』をかましてきたのもよかった(苗場であの曲が聴けて嬉しかった)。でもって最後は『今宵』で締め。こういう晴れの場だから、最後はちゃんと知名度のある曲できれいに終えるという姿勢は正しかったと思う。演奏の途中で日が翳ってきて、最後はとても夕焼けがとてもきれいだった。
 宮本がこのところ変にエロに目覚めていて、乳首出してつまんでみたり、股間まさぐったり、前述のとおり石くんいじりで笑いと取ったりと、かっこ悪い姿をたくさん晒していたけれど、でもその一方でカッコいいところもちゃんとあって、やっぱその両極端を行き来するのがエレカシだよなぁと思う。世界じゅう広しといえ、こんなバンド、絶対にほかにない。そのことはちゃんと苗場と世界に知らしめることができたと思う。とても気持ちのいいステージだった。
 そういや、この日のキーボードはソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉でした。テレビ出演なんかで観たことはあるけれど、彼がエレカシと競演するのを生で見るのは、僕はこれが初めて。最近、ソウル・フラワーともすっかりごぶさたしてるしなぁ。エレカシ+奥野(あとミッキー)が観られたという意味でも、個人的に貴重なステージだった。わざわざエレカシのために苗場に来てよかった。

Y R U Still Here

 エレカシのあと、フィールド・オブ・ヘヴンに移動して、マーク・リボーのセラミック・ドッグをちょっとだけ観た。
 このころにはすっかり日が暮れて暗くなっていた。ここまでに四ステージをスタンディングで観てきたので、疲れきっていて、立ち見する気になれず。でもここのステージは砂利びきで埃っぽくて地べたに座っているのも気が進まず。演奏もちょっと小難しい感じだったので、二曲くらいで切り上げて戻ることにした。
 バンドはギター、ベース、ドラムの三点セットだったけれど、でもそうとは思えなくくらい硬質で音数の多い演奏を聴かせていた。三人とも椅子に座っての演奏で、当然かもしれないけれど、なんかむちゃくちゃ技術が高かった。
 リボーさん、孤高のギタリストなイメージの割にはラップっぽい饒舌なボーカルを聴かせいたりしていて、けっこう思っていたのと違った。少なくてもコステロやトム・ウェイツと競演していたころのホンキートンクな印象は皆無だった。なんか学究肌の向井秀徳みたいでした。

THIS OLD DOG

 そのあとはレッド・マーキーのマック・デマルコを観にゆくつもりだったんだけれど、そのころになるともうすっかり真っ暗になっていて──苗場は街灯がないので、夜になるととても暗い──グリーン・ステージにたどり着いたあたりでうちの奥さんが疲れたから休みたいというし、僕もさすがにグロッギーだったので、マック・デマルコは諦めて、朝と同じ林の入り口あたりで休みながら、ヘッドライナーのN.E.R.Dを待った。
 マック・デマルコのステージは変な意味でおもしろかったらしいので、ちょっと後悔。でもまぁ、体力的にはここらがまじで限界だった。

No One Ever Really Dies

 僕はN.E.R.Dをほとんど聴いていないので、漠然としたファレル・ウィリアムズのイメージから、陽気なパーティー・バンドかと思っていたら、ぜんぜん違った。そもそもファレルのイメージからして違う。ソロのときより扇情的でこわもて。俺たちには伝えるメッセージがあるんだという意気込みが伝わってくる。
 ステージ自体は映像を駆使したカラフルでダンサブルなものだったから、乗りのよさはじゅうぶん以上だし、途中にファレル・ウィリアムズのソロ・コーナーがあって、ファレルがプロデュースしたグウェン・スティファニの『Hollaback Girl』やダフト・パンクの『Get Lucky』を聴かせてくれたりもしたけれど、でもそういうお祭り騒ぎだけが売りじゃないんだってことが、はしばしに感じられるステージだった。いや、それともあれは単に、日本のオーディエンスの乗りの悪さに怒っていただけ?
 とにかくヒップホップのライヴの経験値が低いオーディエンスを相手に、ファレルがサークル・モッシュの仕方を懸命に指導していたり──輪になれって言ったり、左右に分かれろと指示してみたり(モーゼの十戒ごっこかと思った)──相棒の人が終始仏頂面だったりして(あの人はいつもあんななのか、それとも今回は本当に機嫌が悪かったのか、うちの奥さんがとても気にしていた)、やっている側にしてみるといまいち思うように盛りあがっていない感があったのかもしれないけれど、でも観客のなかに混ざっている身としてはじゅうぶんな盛りあがりようだった。
 僕らは疲れきっていたので、最初のうちは遠くに腰をおろして遠巻きにモニターの映像を眺めていたのだけれど、これはやっぱ近くで大音量と映像の極彩色を体感しないともったいないだろうと、途中からがんばって下りていって、オーディエンスの狂騒に混ざった。やっぱヒップホップは坐って聴くもんじゃない。いやぁ、まわりのみんながみんな、やたらと楽しそうに踊っていて、とても気持ちよかった。
 初日のヘッドライナーがN.E.R.Dだと聞いたときには、ボブ・ディランとケンドリック・ラマーが出るのに、なにゆえ唯一自分が聴いていないヘッドライナーの日にあたっちゃうんだと思ったものだけれど、いざ観てみたら、そこはヘッドライナーをつとめるほどのアーティストだけあって、とてもいいステージでした。自分からは絶対に観にゆこうと思わないアーティストだけに、かえって観られてよかったと思った。
 考えてみたら僕はこれまで夏フェスでヒップホップ系のアーティストがトリを飾るのを一度も観たことがなかったので、とてもいい体験をさせてもらいました。

 ということで、この日のフジロックはこのステージでおしまい。ホワイト・ステージなどではまだパフォーマンスが行われていたけれど、体力的にもう無理。わざわざ出口から遠いステージまで移動する気力がなかった。いやぁ、楽しかったけれど、やっぱフジロックは疲れる。一日でじゅうぶん。三日は無理。
(Aug 14. 2018)