マネーボール
ベネット・ミラー監督/ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル/2011年/アメリカ/Amazon Prime
セイバーメトリクスという統計情報をもとに、MLBの貧乏球団を地区優勝に導いたオークランド・アスレティックスのゼネラル・マネージャー、ビリー・ビーンのバックネット裏での戦いを描いた伝記映画。
前から気になっていた作品で、たまたま『数学者たちの楽園 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』という本を読んでいたら、シンプソンズにこの映画をモチーフにしたエピソードがあるというので、いい機会だから観ることにした。といいつつ、アニメの放送はこの映画よりも前だそうだから、映画というよりは原作本が元ネタなのかもしれない。
ブラッド・ピット演じる主人公が、金持ち球団に主力選手を引き抜かれて窮地に陥り、窮余の策でセイバーメトリクス(この映画の少なくても字幕にはこの言葉は出てこなかった気がする)をつかったチーム作りを断行する。
野球は塁に出てなんぼという考えから、移籍金は安いけれど出塁率が高い選手たちを獲得してチームを再編成。当初は成績が低迷して周囲の非難を浴びるも、その後は奇跡的な追い上げでリーグの連勝記録を更新、ついには地区優勝を成し遂げる。
ブラッド・ピット以外の出演者は、セイバーメトリクス専門家の太っちょ補佐役がジョナ・ヒル(前にも見たこのとのある俳優さんだけど、なんの映画かは忘れた)、ビリーの元妻が『フォレスト・ガンプ』のロビン・ライト。あと、ビリーに引き抜かれて捕手から一塁手に転向する選手役を『ガーディアン・オブ・ギャラクシー』のクリス・プラットが演じている。でも残念ながら、いまいち野球が上手そうに見えない。
金にものを言わせる強者に、弱者が知恵と勇気をふりしぼって勝つ話!――ということで、期待通りのおもしろさ。MLBに詳しくなく、アスレチックスがどこまで勝ち上がったのか知らなかったので、終盤の優勝争いの展開は先が読めず、実際にゲームを観ているかのようにはらはらした。
ただ僕の趣味からすると、音楽や演出はややシリアスで大仰すぎ。もうちょっとユーモアを効かせてくれていれば最高だったのに。いい映画だとは思うんだけれど、無条件で好きとはいえないのが惜しい。
あと、主人公のビリー・ビーンは実名だけれど、ジョナ・ヒルが演じた補佐役はポール・デポデスタという人をモデルにした架空の人物で、本人の許可が降りなかったため、ピーター・ブランドという別名となったのだそうだ。
実物はその後ドジャーズのGMやメッツの副社長まで昇り詰めたという人物なのに、この映画のジョナ・ヒルは――味のある演技を見せてくれてはいるものの――どちらかというと最後まで主人公の引き立て役に徹していて、そんな明るい未来を感じさせる風格がない。そんな大物ならば、名前を貸したくなかったのも当然かもと思った。
どうせならば主演をダブルキャストにして、デポデスタ氏の業績をしっかりと浮かび上がらせるようなシナリオになっていれば、本人の許諾も撮れて、もっといい映画になっていたかもしれないのに。そう思うとなおさら惜しい。
(Jun. 28, 2025)