Coishikawa Scraps / Movies

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最近の五本

  1. フランケンシュタイン
  2. トレイン・ドリームズ
  3. ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今
  4. ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期
  5. リコリス・ピザ
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フランケンシュタイン

ギレルモ・デル・トロ監督/オスカー・アイザック、ジェイコブ・エロルディ/2025年/Netflix

 メアリー・シェリーの名作『フランケンシュタイン』をギレルモ・デル・トロが映画化、しかも冒頭は原作通りに北極のシーン!

 ――ってことで楽しみにしていた作品。

 でもこれがいまいち思っていたのと違った。

 原作にある程度は忠実なのだろう(読んだのがずいぶん前なのでディテールはまったく忘れてしまった)。北極探検船の船長の手記から始まって、フランケンシュタイン博士の手記、そしてモンスターの手記と、三重の入れ子になった書簡小説の形式をとっている原作に基づき、この映画も同じ構成にはなっている。

 ただ、フランケンシュタインが生み出したモンスターのもつ超常的な再生能力は絶対にこの映画のオリジナル。どんな怪我をしても、それこそ銃で撃たれても、爆弾を仕掛けられて爆破されても死なない。どんな傷もあっという間に治癒してしまう。

 人によって生み出されたにもかかわらず、人類を超越した唯一無二の不死の存在。それゆえに天涯孤独な彼の、癒されることのない悲しみを強調するために、あえてそういう設定にしたのかもしれない。

 でも僕にはそこが残念だった。不死の彼に向って、探検隊の隊員たちは遠慮なく発砲する。彼も自分に仇をなそうとする相手に遠慮なく殺す。両者のあいだで繰り広げられるそんな殺伐としたバトルにはいささか辟易としてしまった。

 正直こういうのはもう食傷気味なんだよなぁ……。『フランケンシュタイン』でまで、そんなアベンジャーズや週刊少年ジャンプ的なアクションは観たくなかった。そういう余計なバトルシーンなしだったら、きっともっと好きになれたと思う。ギレルモ・デル・トロにそれを期待するのが間違いなんだろうか? まぁ、異形の者を愛する彼らしい作品なのは確かだけれども。

 出演者はフランケンシュタイン博士役がオスカー・アイザックで、彼のパトロン役がクリストフ・ヴァルツ。僕が知っているのはこのふたりだけ。怪物役を演じているジェイコブ・エロルディもこれからはきっと有名になるんだろう。とはいえずっと特殊メイクをしているので、ほかの映画で彼の顔を見てもわからないこと間違いなし。

(Mar. 12, 2026)

トレイン・ドリームズ

クリント・ベントリー監督/ジョエル・エドガートン、フェリシティ・ジョーンズ/2025年/アメリカ/Netflix

 毎年恒例ネトフリで配信されているアカデミー賞候補作を観ようシリーズ。今年の一本目は二十世紀の初頭のアメリカに生きたブルーカラーの孤独な男性の生涯を描く文芸作品。

 原作はデニス・ジョンソンの中編小説とのことで、あとから知って、まさか読んだことのある作家の作品だったとは……と驚いた。

 予告編――というか本編映像を使ったニック・ケイヴの主題歌のミュージック・ビデオ――の映像の美しさに惹かれて観ようと思った作品で、こと映像に関しては期待を裏切らない素晴らしさ。最近の映画には珍しく、画角がワイドスクリーンではなく、ブラウン管サイズだったのにはいささか戸惑ったけれど、もしかしたらスナップ写真的な映像美を意識した結果なのかなと思ったりした。

 物語は親に見捨てられ、誕生日も知らずに育った天涯孤独な男性が、ゆきずりの町で出逢った女性と恋に落ち、その土地で家庭を持ち、子供を授かり、つかの間の幸せを味わうも……というような話。

 主演はジョエル・エドガートンという人で、ヒロインが『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のフェリシティ・ジョーンズ。あの映画から十年たっているけれど、イメージはあまり変わらない。素朴で飾らない役どころが素敵だった。

 主人公のロバート・グレイニアは無学なので、肉体労働者として働かざるを得ず、愛する妻子をおいて、鉄道施設にともなう材木伐採の仕事に出かけてゆく。彼の家も町から離れた川沿いにぽつんと建つ手作りの一軒家だし、主人公がつねに自然のなかで暮らしているため、スクリーンに映し出されるのは前世紀のアメリカの豊かな自然の風景。ときおり電車や町の風景も映るけれど、とにかく印象的なのは自然の美しさや清々しさ。主人公が無口なこともあって、美しくも静かでもの悲しい作品だった。

 孤独な主人公が自然の中で生きる姿を淡々と描写している点では、五年前にオスカーを制した『ノマドランド』に近いものがあるけれど、こちらはその映像美ゆえだろうか、あの映画には感じなかった、おだやかな悲劇がもつ優しいカタルシス? みたいなものがある気がする。とてもよい映画でした。

(Feb. 21, 2026)

ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今

マイケル・モリス監督/レネー・ゼルウィガー、キウェテル・イジョフォー、レオ・ウッドール/2025年/イギリス、フランス、アメリカ/WOWOW録画

ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今

 前作からさらに九年後。五十代になったブリジットさんのいまを描くシリーズ第四作――にしておそらく最終作。

 前作の最後にじつはダニエルは死んでませんでした、という続編への含みみたいなものがあったので、ふたたびマークとダニエルとの三角関係が主題になるのかと思ったら、さにあらず。

 今回はコリン・ファース演じるマークはすでに故人だし、ヒュー・グラントも出番こそあるけれど、すっかり気のいいおじいちゃんって感じになっていて、ロマンティック・コメディの主役を演じるには無理がある。

 ということで、今回ブリジットさんのお相手を務めるのは、『ドクター・ストレンジ』に出ていた黒人のキウェテル・イジョフォー(名前ムズ過ぎ)と新人のレオ・ウッドールで、どちらも年下。原題は「男の子に夢中」みたいな意味なので、前作同様、今回もそれを知っていれば、ある程度は予想ができる内容だったわけだ。

 物語はマークに先立たれて、ひとりで二児を育てるシングルマザーとなった彼女の、新しい恋と仕事と子育ての模様を描いてゆく。

 とにかく、若くてかわいい女の子が主役を演じるのがあたりまえのロマンティック・コメディにおいて、三十代でスタートして、五十過ぎまでシリーズ化されたというのは、きわめてレアケースでしょう。それもこれもレネー・ゼルウィガー(日本語表記がレニーからレネーに変わったらしい)という人の個性があってこそ。

 そんな彼女の親友たち三人――サリー・フィリップス、シャーリー・ヘンダーソン、ジェームズ・カリス――が、一作目からずっと同じキャスティングで出演しているのもこの映画のいいところ。テレビ局の同僚たちも同じだし、前作で産婦人科の担当医をつとめたエマ・トンプソンも引きつづき出演してる。

 恋愛劇としては今回もどうしてそうなるってくらいにイージーだけれど、笑ってなんぼなこのシリーズ、そこをつべこべいうのも野暮ってもの。ディテールの粗とかエッチなギャグに目くじらたてず、笑って流せる呑気な人向けのコメディです。

(Feb. 14, 2026)

ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期

シャロン・マグワイア監督/レネー・ゼルウィガー、コリン・ファース、パトリック・デンプシー/2016年/イギリス、アメリカ、フランス/Netflix

ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期

 WOWOWで『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズ四部作が一挙に放送されたので、せっかくだから旧作も含めていっき観した。

 僕が最初の二作品を観たのがもう二十年前。この第三作目は前作から十二年後に公開されている。

 一作目で三十路の誕生日を迎えたブリジットさんもすでに四十代。前作では結婚して当然って終わり方をしたのに、マーク(コリン・ファース)との関係は結局うまくゆかず、いまだ独身のままテレビ局で働いている。

 キャストにヒュー・グラントの名前がないと思ったら、今回の彼はすでに故人という扱い。序盤に彼の葬儀のシーンがあって、そこでブリジットがマークとひさびさの再会を果たすことになる。

 その後、仕事仲間のミランダ(サラ・ソルマーニ)にグラストンベリーへと誘いだされた彼女は、パトリック・デンプシー演じるジャックと出逢って一夜をともにし、翌週には親友の赤ん坊の洗礼式でふたたびマークと逢って、こちらともベッドイン。でもって、三ヵ月後に妊娠が発覚して、子供の父親がどちらかわからずに、両者を巻き込んで右往左往のドタバタ騒ぎを引き起こすことになる。

 ブリジットが妊娠!――という展開に驚いていたら、原題は『Bridget Jones' Baby』だった。あらら。あらかじめ予告済みだった。

 なんにしろ、主演の組み合わせこそ変わったけれども、冴えないヒロインがイケメンふたりとの三角関係に右往左往するという展開はこれまでと一緒。今回はそこに出産という一大イベントが加わっているところが肝だ。

 あと、ロックファンとしてはグラストンベリーを観客目線で見られるがちょいお得。目玉は本人役で出演して、笑いを誘っているエド・シーラン。

 音楽といえば、定番のラブソングたっぷりだった旧作とは違って、今回はヒップホップや『江南スタイル』なんかがかかるのも時代を反映していておもしろかった。

 そういや、今回ブリジットはタバコをやめている。十二年でずいぶん時代が変わったなぁって思った。

(Feb. 11, 2026)

リコリス・ピザ

ポール・トーマス・アンダーソン監督/アラナ・ハイム、クーパー・ホフマン/2021年/アメリカ/Apple TV

リコリス・ピザ

 ハイム三姉妹の末娘、アラナ・ハイムを主演に起用したというので気になっていたポール・トーマス・アンダーソ監督の2021年のアカデミー賞ノミネート作品。最新作の『ワン・バトル・アフター・アナザー』が話題になっているこのタイミングで、遅ればせながらようやく観た。――って、もう五年も前の映画なのか! そりゃびっくり。

 もうひとつ驚いたのは、出ているのがアラナだけではなかったこと。姉のエスティ、ダニエルもそのまま三姉妹の役どころで出ている。しかも役名は三人とも本名と同じ(さすがに苗字はハイムではない)。さらには彼女たちの両親を演じているのも実の親御さんたちだそうで、つまりハイム一家が総出で出演しているのだった。なんだそりゃってキャスティング。

 アラナの相手役を務める主役のクーパー・ホフマンは、いまは亡きフィリップ・シーモア・ホフマンの息子さんだそうで、そういわれると、なるほど父親に似ている。2003年生まれだそうだから、このときまだ十代で、演じているのは十五歳の役だから、まぁ年相応なわけだ。ぽっちゃり体系で、いまいちそうは見えないけれども。彼もこれがデビュー作とのこと。

 対するアラナ(このころはすでに三十歳近い)は二十五歳という設定。

 これはそんな十歳年の離れた年の差カップルの話で、しかも冒頭から男の子が彼女に一目惚れをするという展開――なのですが。

 失礼ながらアラナさん、美人というタイプではないので、その展開に戸惑ってしまった。いったいなぜ彼が彼女を見初めるのか、よくわからない。

 物語的には、典型的な美男・美女を配したほうが納まりがいいのに、あえてそうしていないところがこの映画のポイントなのだと思う。いまの時代ならではの反ルッキズムのたまものなのかもしれない。

 映像はわざと七十年代っぽいテイストで撮ってあるし、使われている音楽もその時代のものだし、全体的に七十年代の青春恋愛映画って作りなのに、主演のふたりの存在がそういう典型からはずれているところに、珍妙な味わいが生まれている――気がしないでもない。『リコリス・ピザ』という意味不明なタイトルも、その辺のずれを象徴しているのかもしれない。

 そもそも、ホフマンはいまいち高校生には見えないだけではなく、彼の演じるゲイリーは、すでに子役として稼いでいて、ウォーターベッドを売ったり、ピンボール店をオープンしたりと、やたらと商売っ気がある、高校生らしからぬ役どころだ。

 対するアラナは年よりも若く見えて、逆に彼女のほうが高校生といっても通りそうな頼りない感じなので、いったいどっちが年上なのか、よくわからない。少なくても十才も歳の差があるようには見えない。そんな物語とキャスティングのミスマッチが変てこりんな味わいを生んでいる。

 脇ではショーン・ペンがウィリアム・ホールデンをモデルにした俳優役を演じていて、そんな彼と親しい映画監督役で、なんとトム・ウェイツも出演している(ふたりとも妙に楽しそう)。さらにはバーブラ・ストライサンドの恋人だったという実在の映画プロデューサー、ジョン・ピーターズ役がブラッドリー・クーパー(いわれないとわからない)。

 主演に映画初出演のふたりを配しながら、脇役にそんな豪華なキャスティングをしてみせたのもこの映画の見どころのひとつかもしれない。

(Jan. 25, 2026)