Coishikawa Scraps / Movies

Menu

最近の五本

  1. 国宝
  2. 罪人たち
  3. 超かぐや姫!
  4. ワン・バトル・アフター・アナザー
  5. THE MONKEY/ザ・モンキー
    and more...

国宝

李相日・監督/吉沢亮、横浜流星/2025年/日本/Amazon Prime

国宝

 実写の日本映画で興行成績ナンバーワン!――とかいうので、どんなにおもしろいのか観てみた。

 物語のスタートは1964年(僕の生まれる二年前)。そこから五十年をかけて、吉沢亮演じるヤクザの息子・立花喜久雄が、いかにして歌舞伎役者となり、人間国宝まで昇りつめるかを描いてゆく。

 はじまりはヤクザの新年会のシーンから。余興で歌舞伎を演じた喜久雄は、たまたま来訪していた歌舞伎役者の花井半二郎(渡辺謙)にその才能を見出される。

 ところが同じその夜、宴の最中に対抗組織の襲撃をうけて父親が殺されてしまう。喜久雄は刺青を入れて復讐を誓うも果たせず。身寄りを失って行き場を失った彼は、花井に引き取られて、歌舞伎の道を歩むことになる。

 花井には喜久雄と同い年の俊介(横浜流星)という息子がいた。ともに歌舞伎の道を極めんとするふたりは実の兄弟のような唯一無二の存在となってゆく。けれど血筋と才能の対立が二人の関係を引き裂き、やがてそれぞれの人生に様々な浮き沈みをもたらすことに……。

 吉沢亮と横浜流星という、当世きってのイケメンふたりが歌舞伎の女形を務めていてビジュアル最強なところへきて、たっぷりと尺を取って描かれる歌舞伎の名場面の数々に魅せられた人が多いのか。喜久雄の少年時代を演じた黒川想矢という男の子も、若き日の宮本浩次みたいなやんちゃな色気があって、きっと人気が出るんだろうなぁって思った。高畑充希と森七菜がアダルトな演技を見せているのも意外性があった。

 まぁ、歌舞伎を見たことのない人間にとっては勉強になる一方で、いささか歌舞伎シーンが長すぎる嫌いあり。説明不足なところもけっこうある。それでも全体的に奇をてらったところがない分、映画自体は好感がもてた。テーマ的にも演出的にも、これぞ邦画の王道なんじゃないかって気がした。

 監督の李相日(リ・サンイルと読むのは無理筋)は在日朝鮮人三世とのことで、そういう人が日本の伝統芸能にリスペクトを込めて、ここまで正統的な日本映画を撮ってみせたという事実に意外性があった。

(Jun. 12, 2026)

罪人たち

ライアン・クーグラー監督/マイケル・B・ジョーダン、ヘイリー・スタインフェルド/2025年/アメリカ/WOWOW録画

罪人たち

 アカデミー賞で『ワン・バトル・アフター・アナザー』と賞を争っていたし、『罪人たち』なんて意味ありなタイトルなので、それなりに文芸色のある作品なのかと思っていたら見当違いもいいところだった。

 アカデミー賞・授賞式の放送で、コメンテイターが黒人の音楽ビジネスがどうとか、ゾンビがなにやら、みたいな話をしていたと思ったら、なるほど、まるで黒人版の『フロム・ダスク・ティル・ドーン』みたいな映画だった。

 舞台は二十世紀前半のミシシッピ。マイケル・B・ジョーダン演じる双子の黒人兄弟が故郷に帰ってきて、黒人専用のクラブを開いて一旗揚げようとしたところ、オープンしたその夜の喧騒のなかで、思わぬ事件が持ち上がる。

 双子がとても似ていて、いったいどちらがマイケル・B・ジョーダンかわからんと思っていたら、なんとこれも彼のひとり二役だった。双子が一緒の画面に登場するシーンがとても自然なので、ひとり二役とは思わなかった。最近の映像技術ってすごい。

 彼らのいとこで、プリーチャー・ボーイという通り名のブルースシンガーを演じているマイルズ・ケイトンという二十歳そこそこの青年が歌うブルースが全編を彩っている。彼の少年っぽさの残る見た目と、それを裏切る深みのある低音ボイスのギャップが印象的だ。

 彼の歌だけではなく、クラブでの演奏シーンもフィーチャーされているし、ある種のミュージカルとしての側面もある。

 でもって、途中まではそんな黒人の奴隷解放期を舞台にした異色のミュージカルっぽかった映画――ヘイリー・スタインフェルドやデルロイ・リンドーといった俳優が脇を固めていてキャスティングも魅力的――が、途中から思わぬ脱線を見せて、後半はなにやら血みどろな様相に……。

 前半と後半でまるで世界観が変わってしまう点でも、やはりこれは少なからず『フロム・ダスク・ティル・ドーン』を意識した作品のような気がする。

 まぁ、あちらの唐突さと比べると、こちらはとりあえず事件に至る伏線が少しずつ描かれているので、あ、ついに来たかという感じで、それほど大きな驚きはないところは違うかもしれない。ほんとあの映画にはびっくりした。

(May. 27, 2026)

超かぐや姫!

山下清悟・監督/声:夏吉ゆうこ、永瀬アンナ、早見沙織/2026年/日本/Netflix

 一部で熱狂的な絶賛を受けていて、BUMP OF CHICKENの『ray』が作中で使われているというので観てみたくなった長編アニメ。

 タイトル通り『かぐや姫』をモチーフにしつつも、女子高生を主人公に、YouTubeやら仮想世界を中心に物語が展開する、いかにもいまどき!って感じのアニメだった。

 全体的な印象は、『サマーウォーズ』の仮想空間部分や、【推しの子】の2.5次元舞台のパートに近い印象で、とくに斬新さとかは感じなかったけれど、でもまぁ、基本的には最近のアニメだけあって絵はきれいだから、最後まで飽きることなく観られた。ただし、かぐやが結局なにものだったのかはよくわからない。

 ヒロイン三人のうち、一番のキーパーソンである彼女のキャラ――と彼女を中心にしたアニメの語りの口調みたいなもの?――がマンガっぽ過ぎるのが僕にとってはマイナスだった。

 何度か書いているように、僕はキャラを三頭身にするマンガのデフォルメ表現をアニメでそのまま再現する手法には批判的な人間なので、このアニメでのかぐやちゃんのマンガ的なキャラの軽さがいまいちしっくりこなかった。三頭身にこそならないけれど、過剰にきゃぴきゃぴしていて現実味が乏しい(まぁ、月から来ているわけだが)。アニメにはできればマンガよりも実写に寄せて欲しいんだよねぇ。

 『ray』が使われているというので、音楽は懐メロカバー大会みたいなものを想像していたら、それも間違い。その一曲だけが例外で(エンド・クレジットで使われていた)、あとの劇中の曲はすべてこの映画のオリジナル(たぶん)。でもって、それらの楽曲のアピールもいまひとつ。

 ということで、アニメ界隈の人たちが気に入るのはわからないでもないけれど、でもこれは僕にはちょっと違うかなって作品だった。

(May. 20, 2026)

ワン・バトル・アフター・アナザー

ポール・トーマス・アンダーソン監督/レオ・ディカプリオ、ショーン・ペン/2025年/アメリカ/WOWOW録画

ワン・バトル・アフター・アナザー

 今年のアカデミー賞で六部門を制覇したポール・トーマス・アンダーソンの最新作。

 トマス・ピンチョンの『ヴァインランド』が原作だというから、マジで?――と思っていたら、冒頭から「こんな話、俺は知らない」って物語が展開する。

 ディカプリオ演じる主人公のボブ・ファーガソン(仮名)がテヤナ・テイラーという人の演じる奔放な黒人女性パーフィディアとともに反政府のゲリラ活動に奔放しつつ、白人至上主義者の捜査官(ショーン・ペン)に狙われる、みたいな話。

 で、パーフィディアが唐突に大きなお腹をした妊娠姿になったところで、あ、そういや『ヴァインランド』って十代の女の子が母親を探しに行く話だったっけ――と、原作との関連に思い到った。

 つまりここから彼女が失踪して、その子供が成長してからが『ヴァインランド』本編ってこと?

 ――と思ったら、あたらずとも遠からず。そこからの展開もおそらくピンチョンの話とはずいぶんと違った――というか、おそらくぜんぜん違う。反社会主義者の片親に育てられた少女による母親探しの旅というテーマを、意訳しまくって逆転させた結果がこの映画なんだろう。

 とにかく原作の記憶が曖昧なので(二度も読んでいるのに……)確かなことはいえないけれど、僕の知っている『ヴァインランド』はこんな話じゃない。でもおかげで原作どおりではないからこそ、オスカーに輝くほどの、独特の味わいを持った映画となりえている気がした。

 アカデミー賞の最優秀助演男優賞をとったショーン・ペンはなるほどの怪演。でもディカプリオやベニチオ・デル・トロの、なんとなくなさけなくも憎めない感じのほうが、これぞピンチョンって味わいな気がした。

 あと、ディカプリオの娘ウェラ役を演じているチェイス・インフィニティという女の子、これから人気が出るんだろうなぁって思った。

 ジョニー・グリーンウッドの音楽もよいです。どこがどういいんだか説明できないけれど、その音作りに対して、おっと思う瞬間が何度かあった。

(May. 16, 2026)

THE MONKEY/ザ・モンキー

オズグッド・パーキンス監督/テオ・ジェームズ、クリスチャン・コンヴェリー/2025年/アメリカ/WOWOW録画

THE MONKEY/ザ・モンキー

 日本のホラーをつづけて観たあとなので、ついでだからおまけにもう一本アメリカのホラーを。

 怖いものが苦手そうなのに、なぜだかスティーヴン・キングが好きなうちの奥さんが「絶対観る!」といっていた作品。スティーヴン・キングの短編を原案にしたという、太鼓をたたく猿のおもちゃの呪いかなんかのせいで人が死にまくるスプラッター・ホラー・コメディ。

 これはもう、なぜ人が死ぬかなんてどうでもいいという姿勢がいい。こういう話で、変に理屈とかつけても困ってしまう。基本が馬鹿話なので、余計な理由づけは不要。

 とにかく猿のおもちゃ(意外とでかい)が太鼓を叩き終わると、理不尽に人が死ぬ。それも尊厳もなにもあったもんじゃないってひどい死に方ばかり。首が落ちたりするのは序の口で、爆破して粉々になってしまった人が何人いたかわからない。悪趣味にもほどがある。

 物語はいまは亡き父親が残したそんな呪いのモンキー人形を見つけた双子の男の子が主人公。子供の話かと思ったら、序盤で少年時代を語ったあと、時間が一気に飛んで途中から大人の話になる。

 で、子役はクリスチャン・コンヴェリー、成長後をテオ・ジェームズという俳優さんが演じているのだけれど、どちらも双子をひとり二役で演じていたらしい。

 マジか? まったく気づかずに、ふつうに二人とも別人だと思って観ていた。この二世代に渡るひとり二役は見事だった。とはいえ、内容が内容だけに、そんな演技の見事さも焼け石に水というか……。

 とにかく馬鹿らしくも残酷で滑稽な血みどろ映画。血と笑いに飢えた人にはお薦めです。少なくてもひとつ前の『近畿地方~』よりはまちがいなくおもしろかった。

(May. 10, 2026)