2010年9月のサッカー

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  1. 09/04 ○ 日本1-0パラグアイ
  2. 09/07 ○ 日本2-1グアテマラ

日本1-0パラグアイ

2010年9月4日(土)/日産スタジアム/日本テレビ

 日本代表監督への就任が発表されたばかりのアルベルト・ザッケローニ氏がスタンドで見守るなか行われた、ワールドカップ南アフリカ大会後、初となる日本代表の親善試合。
 当初、僕はこの試合の意義について疑問だった。代表監督が決まらないのは仕方がないけれど、そんな状態でスケジュールだけ組んで、「決めてしまったんだからやってくれ」って、そんな試合にどんな意味があるんだと。たしかにアジアカップまで時間がないから、数少ない国際マッチデーを無駄にしたくないのはわかるけれど、それだってまずは監督が決まらないことには始まらない。
 W杯で活躍した本田や松井ら、海外組も招集されているので、凱旋公演的な意味で喜ぶサポーターもいるんだろうけれど、選手らにしてみればリーグ序盤の大事な時期に、興行的な試合に呼び出されたんでは、たまったもんじゃないだろう。ナビスコ杯や天皇杯のあいまを縫って出場するJリーグの選手だって、モチベーションが上がらないだろうし。
 そんなわけで僕はこの試合、直前まではかなりネガティヴな気分だった。
 ただ、試合の2、3日前になってようやく新監督が決まったことで、ずいぶんと見方が変わった。ザッケローニ氏はこれまでのジーコやオシムと違って、日本のサッカーのことをなにも知らないはずだ。その人がスタンドで視察しているのだから、選ばれた選手たちにしてみれば、自分のプレーをアピールできる願ってもない機会だ。つまらない試合はできないだろう。こりゃいい試合になるかもしれないと思った。
 逆に、代表監督の決定がここまでずれ込んだのは、この試合があったせいじゃないかと僕は{にら}んでいる。新しい監督にしてみれば、就任早々に国際Aマッチがあるってのは、それなりのプレッシャーだろう。ましてやそのチームのことをほとんど知らないとなれば、なおさらだ。完璧主義ならば、フレンドリーマッチとはいえ、よく知らないチームを率いて、自分の星取表に黒星をつけたりするのは嫌だろう(少なくても僕ならば嫌だ)。なので、ザッケローニ氏は自分が指揮をとらないで済むぎりぎりまで決定を先延ばしにした──協会もそれを知っていて容認した?──、そんな気がしてならない(うがち過ぎ?)。
 まあ、なんにしろ監督は決まったんだからよし。これはそんな新監督ザッケローニ氏が見守るなか、原博実代表監督の指揮のもとで行われた日本代表のパラグアイ戦。
 そういや、この局面で、W杯で最後に戦ったパラグアイを呼んでくる協会もどうなんだと思ったんだった。新鮮味がない割には、守備力が高い相手だから苦戦は必至。ある意味じゃ仕切り直しの一戦にはもっともふさわしくない相手のように思えた。
 でも、いざ開けてみれば、パラグアイはきちんとW杯出場選手を揃えてきてくれた。かの国の守備力の高さは、攻撃的な海外組の選手を前線にならべた新代表の実力を試すにはもってこい。で、結果が1-0での勝利となれば、これはもう申し分なしでしょう。守備に明け暮れた印象のW杯とは違い、けっこういい形で攻撃を仕掛けていたし、ブラジルW杯を目指す日本代表の再出発を記念するにふさわしい、いい試合になった。
 原さんがこの試合に選んだスタメンは、GK川島、4バックが内田、中澤、栗原、長友、ボランチが中村憲剛と細貝、攻撃的なポジションが香川、本田、松井、そして森本の1トップという形。
 こうして見ると、W杯でスタメンに名前を連ねていた選手が5人しかいない。まあ、闘莉王、長谷部、阿部、大久保が故障や移籍の都合で招集されず、遠藤がふくらはぎを痛めてベンチ入りしなかった(あと今野も故障)というチーム事情もあるけれど、それでも過半数が替わっているわけだ。
 でもまったく見劣りがしない。というか、「おいおい、このスタメンの方がW杯のときよりおもしろいんじゃないか」と思わせてしまうものが、この日の日本代表にはあった。なんたって、いまとなるとスタメン11人中、7人が海外でプレーしているわけだ。Jリーグ組が少数になってしまう現状ならば、文句がないのも当然。
 というか、なにもこの試合に出ていた選手は、細貝を除けば、昨日今日になって初めて招集された選手じゃない。岡田さんだってこのメンツで戦おうと思えば、戦えたわけだ。それなのに彼はそうせずに、結局これといった形を作れないまま、最後に方向修正をして守備的な戦い方をした。僕はそこが気に入らなかった。そういう意味では、今回の原さんが選んだ日本代表は、岡田さんに足りなかった部分をきちんと埋め合わせてくれている点で、かなり好印象の持てる顔ぶれだった。
 なかでも誰より感心させられたのが細貝萌。ひさしぶりに見たら、やったら存在感のある、素晴らしいボランチになっていて、ちょっとばかり驚いた(ちなみに僕は彼の名前を「はじめ」と読むって、いまさら知りました。ずっと「もえちゃん」だと思っていた。馬鹿)。この試合では長谷部、阿部、遠藤、今野というボランチ勢がこぞって出場できなくなったため、細貝にチャンスが巡ってきたわけだけれど、それをきっちりと生かして、成長をアピールしてみせたのは、今後の代表定着に向けてとても大きいと思う。
 もちろん、貴重な決勝点を叩き込んだ香川もよかった。ドルトムントでの活躍で注目を浴びているいま、きっちりと結果を出してみせたところがあっぱれ。憲剛からのスルーパスも難しいボールだったのに、ゴール前に駆け込みながらそれを見事トラップして、シュートまで持っていったプレーはパーフェクトだった(ポストにゃ当てたけど)。
 われらがアントラーズの岩政大樹も、足を痛めた栗原と交替で後半途中から出場したけれど、彼はいまいち見せ場なし。栗原がセットプレーからのヘディングの強さで存在感をみせていたのと比べると、岩政はそういうチャンスもなく、逆に中澤との連係ミスでピンチを招いたりして、いまいち生彩を欠いた気がした。今回は闘莉王が不在だからスタメンのチャンスかと思えば、栗原に持っていかれちゃうし。どうも岩政は代表とは縁がない気がして仕方ない。
 そのほかの途中出場選手は、岡崎、藤本、橋本、槙野、駒野の計6人。本田に代わって橋本が出てきたあたりからは、なにがなんだかよくわからなくなってしまったけれど──残り1分での駒野の起用ってのもわからない。あれは単なるファン・サービスなんでしょうか?──、ま、なんにしろ全体的な印象はよかったし、なによりかつては苦手といわれていた南米のチームになにげなく勝っているんだから文句なし。ひさしぶりに気持ちのいい試合だった。
(Sep 05, 2010)

日本2-1グアテマラ

2010年9月7日(火)/長居スタジアム/テレビ朝日

 まあ、この試合に関してはこんなもんだろうという感じ。なんたって、これで9月ってのはなにかの間違じゃないかって猛暑のなかでの、中2日の強行軍だ。おかげでスタメンは前の試合と半分が入れ替わってる。結果として、W杯に出場したメンバーでこの日のスタメンに名前があったのは本田と駒野だけ。代行監督のもとでこれだけメンバーが替わって、なおかつ内容を問うのはさすがに酷だろう。とりあえず2-1で勝っているってことで結果オーライ。暑いなかご苦労さまでした。
 この日のスタメンはGW楢崎、DF駒野、岩政、槙野、長友、MF橋本、細貝、乾、本田、香川、FW森本。
 松井はロシア・リーグの移籍先のクラブからの要請でひと足先にチームを離れ、中澤、栗原、遠藤、今野は怪我のため離脱。ということでこの日のベンチには、交替枠ぎりぎりの6人しかサブがいなかった。うちGKの川島とウッチーは出番なし。だから途中出場は残りの4人。永田、藤本は後半開始から、岡崎が途中で入り、憲剛が残り10分足らず。
 終盤は攻め手を欠いていたので、憲剛に関しては、できればもっと早く出して欲しかったけれど、明日ナビスコ杯があることに気を使って、あえてぎりぎりまで出さなかったのかなという気がする。それはそれで仕方ないかなとも思う。
 この日の2得点は両方とも森本。1点目は長友のクロスに頭であわせてきれいにゴールに流し込んでみせた。クロスもヘディングもじつに見事な、胸がすかっとするようなビューティフル・ゴールだった。2点目は香川が右サイドから打ったシュートのこぼれ球を押し込んだもの。半分以上は香川の得点って感じだったけれど、それでもあそこで相手DFより一歩先に足を出して競り勝ったところがナイスだった。森本にしろ香川にしろ、この先コンスタントに今日ぐらいのプレーができれば、代表定着は確実だろう。
 でも、森本の2点目の直後に橋本のミスからボールを奪われ、素早いミドルシュートですぐさま1点差に追い上げられたのが残念だった(最後のところでシュートコースを切れなかったのが岩政だったからなおさら)。
 そのグアテマラの追撃ゴールが前半の22分だったから、この試合はどんな乱打戦になるのかと思ったら、そこから先はどちらにも点が入らず試合終了。遠目からでもがんがんとミドルシュートを打ってくるグアテマラの選手の意外性にひやひやしながら、こちらはそれ以上の数のシュートを打つも決めきれずに終わった。やや消化不良気味ながら、でもまあ即席チームでこれくらい戦えればまあままかなと──なにより今年はここ113年間でいちばんの猛暑だというし──、そういう試合だった。
 かくいう僕も、この夏はあまりの暑さにまるで頭が働かなかった。それともこれは年のせいだろうか(そんな気も……)。だとしたら困ったな。
(Sep 07, 2010)