2024年11月の音楽
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- Songs of A Lost World / The Cure
Songs of A Lost World
The Cure / 2024
ザ・キュアー、渾身のマスターピース!
じつに十六年ぶりとなる今回の新譜、なにが驚きかって、これほどバンド・イメージまんまのアルバムがいまさら届いたこと。
ほんと、キュアーが好きな人ならば、百人中百人が好きだっていうに違いない。――これはそういうアルバムだ。
かつて『トリロジー』と称して、『ポルノグラフィー』『ディスインテグレーション』『ブラッドフラワーズ』というアルバム三枚の再現ライブをしたけれど、今後はそこにこれを加えて、『テトラロジー』(四部作)と呼ばなきゃ嘘だろうって出来。
もしくは『ブラッドフラワーズ』を外して、このアルバムを入れたほうが、『トリロジー』にはふさわしいんじゃなかろうか?
――そう思ってしまうほど、渾身の出来映えになっている。
とはいえ。
逆に。キュアーが好きではない人にとっては「なにこれ? これのどこが傑作?」と思ってしまうようなアルバムなんだろうなとも思う。
だって、僕らキュアーのファンって、三分を超える単調なイントロを喜んで聴ける辛抱づよい人ばかりなわけです。
サブスク時代のポップミュージックは、イントロなしでさっさと歌に入らないと、飽きられて飛ばされてしまうから売れない、みたいな話を聞いたことがあるけれど、キュアーの音楽はまさにその対極にある。こういう音楽が好きな人がいまでも世界中にたくさんいるってことがなにげに嬉しい。
ほんと今回のアルバムは、これぞまさにキュアーの集大成と呼びたくなる一枚だ。
もう一曲目のイントロが三分超えている時点でキュアー。
ラストナンバーなんて10分超えで、そのうち六分がイントロだし。
音響もまごうことなくキュアー。ドコドコしたタム多用のドラムに、歪んだベースラインと浮遊感のあるドリーミーなシンセ。そこにシャラシャラしたロバート・スミスのギターが加わる。これぞまさにキュアー・サウンドの王道。
で、歌われるのはあいもかわらず、「わかりあえない君と僕」と「必ず終わりがくる世界への絶望」だ。
いやぁ、あまりにキュアー過ぎて笑ってしまう。こんな暗くて悲しい音楽を聴いて、ニヤニヤしているなんておかしな話だとは思うんだけれども。でもファンとしては嬉しくって、どうしたって頬が緩んでしまう。
このアルバムでは、そんないつも通りのロバート・スミス・ワールドが、「これが僕らが歌うすべての曲の終わり」という歌いだしの一曲め『アローン』で始まり、ラストの『エンドソング』で「ナッシング」を連呼して終わる。
どの曲でも絶え間なく「エンド」(やそれに類する言葉)がリフレインされる。
これってどう聴いたってラスト・アルバムじゃん!
若き日のロバート・スミスは狼少年的に「解散する」を繰り返してきたというから、もしかしたら今後まだつづきがあるかもしれないけれど、でもこれで本当に終わりだとしてももう満足。最後の最後にこんなアルバムが聴けたらファンとして本望だ。
だってこの後にまだなにを期待するのさ?
まさに名盤。有終の美とはこういうことをいうんだって思った。
(Nov. 28, 2024)