2022年8月の音楽
Index
- 余命10年 / RADWIMPS
- A Light for Attracting Attention / The Smile
余命10年
RADWIMPS / 2022
RADWIMPS、通算三作目となる映画のオリジナル・サウンドトラック。
新海誠とタッグを組んで作った前の二枚とは異なり、今回はアニメではなくて実写――しかもヒロインが不治の病に苦しむ恋愛もの――なので、内容もそれ相応のものになっている。
歌ものは最後の主題歌『うるうひと』一曲だけだし、インストの曲調もアップテンポなものは皆無。いつごろレコーディングした作品なのかわからないから、確かなことはいえないけれど、桑原くんが活動休止中なので、その影響もあるのだと思う。これまででもっともギターの出番が少ない。
ということで、主となるのは洋次郎の素朴で優しい音色のピアノ。そこにオーケストラでいろいろ味をつけたって感じの曲が大半という印象だった。
前の二枚は、歌が入ることによって起承転結がついていた感があったけれど、今回はずっと映画の流れをインスト曲だけで辿っていって、最後に『うるうひと』でクライマックスを迎えるって感じの仕上がりだった。
映画を観たあとで、ひとつひとつ曲名を確認しながら聴くと、あぁ、ここはあのシーンなのかと、映画のシーンがよみがえってきてじーんとくるけれど、逆にいうと、映画を知らないで聴くと十分にその魅力を味わえない作品という気もする。
そういう意味では、ラッドとしては、これまででもっとも映画のサントラらしいサントラかもしれない。
CDのブックレットは16ページ分の小松菜奈と坂口健太郎の写真集みたいなので、映画のファンの人は買って損はないと思います。眺めているだけでけっこうくるものがある。
ただし、音楽ファンとしては、最近のCDは楽曲や演奏者のクレジットが知りたくて買っているようなものなので、個々の楽曲ごとにそれらのデータがきちんと書いていないのが不満。暗黙の了解ってことなのか、作詞・作曲のクレジットさえない――少なくても僕は見つけられなかった――のはさすがにどうかと思う。
(Aug. 07, 2022)
A Light for Attracting Attention
The Smile / 2022
レディオヘッドのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッドが立ちあげた新プロジェクトのファースト・アルバム(二枚目が出るかは知らない)。
このアルバムはいまいち存在意義がわからない。
ストーンズにたとえれば、要するにミック・ジャガーとキース・リチャーズがふたりだけでコンビを組んで、ストーンズ以外のバンドをやりましたって話なわけで。ライブでセッションしたとかならばともかく、アルバム一枚新しく作りましたって――そんな話、ほかで聞かなくないですか? 僕が知らないだけで、なくもないのかな?
メンバーはそのふたりに、ジャズ・ドラマーのトム・スキナーという人。でもってプロデュースがナイジェル・ゴドリッチ。
――つまりプロデューサーもレディオヘッドと同じ。
ということで、レディオヘッドの中心人物ふたりがお馴染みのプロデューサーとともに作った作品だけあって、当然のように音の方向性はレディオヘッドに極めて近い――というか、なにも知らずに聴かされたら、レディオヘッドの新譜だといわれてもまったく疑わないだろうって作品に仕上がっている。
ただ、最近のレディオヘッドの作品と比べると、ややラフでバンドっぽさが強いかもしれない。そこのところがこのアルバムの魅力。
正直なところ、最近のレディオヘッドの緻密な音作りには、その密室性ゆえに若干の息苦しさを感じてしまうようなところがなきにしもあらずだけれど、この作品では、基本的な方向性は同じながら、いい感じで力が抜けている。完全体のレディオヘッドではないからこその隙のようなものがある。
二十一世紀の最重要バンドというマスイメージが定着しているレディオヘッドだけに、その期待を裏切るような作品は出したくないけれど、でも新型コロナで閉塞気味なこの社会にあって、なにかしらの作品は残したい――そんな思いから生まれた作品なのかなと思った。
(Aug. 07, 2022)