2015年6月の音楽
Index
- RADWIMPS Live & Document 2014「×と○と君と」 / RADWIMPS
- Short Movie / Laura Marling
- Duets: Re-Working the Catalogue / Van Morrison
RADWIMPS Live & Document 2014「×と○と君と」
RADWIMPS / Blu-ray Disc + MP3 / 2014
去年の暮れに出たRADWIMPSの最新ライブ作品。いまさらだけれど、ちょっとだけ書いておきたい。
作品はMC含めたライブ全編(たぶん)と、そのツアーを追った長編ドキュメンタリー作品のセット。初回限定盤には、さらにMP3音源が期間限定のダウンロード特典としてついていた。
映像については、結局買った当時に一度ずつ観ただけだから、いまさらつべこべ言えない──というか、どんなだったか、すでによく覚えていない。
ただひとつ、確かに思ったこと。みんなタフになったなぁと。
『絶体絶命』で野田くんのあまりに
でもこのライブを観たかぎり、もうまったく心配はいらなさそうだ。
震災のショックと真摯に向きあい、それをしっかりと乗り越えたことが大きかったのだろうと思う。彼らは確実にひとまわり大きくなった。
この作品からは、いまの彼らの音楽家としての充実感が存分に伝わってくる。音楽をやることの喜び。それを受け取ってくれる人がこんなにもいるという幸せ。その人たちから受ける期待にしっかり答えようとする責任感。そういうポジティブな感触がひしと伝わってくる。そんな風に成長した彼らの姿が見られて、ファンとしてはとても嬉しい。年配者のくせして、あいかわらずの自分が恥ずかしくもなる。
ダウンロード版のMP3では単に楽曲のみではなく、MCまで含めた映像作品と同じ音源をそのまま丸ごと全部提供してくれている。考えてみたら2時間半ものライブ作品を映像なしでフルに聴くことってこれまでなかったので、絵があるときとはまた違った感じで、意外と新鮮だった。なにより、音源だけだと、持ち歩ける分、映像作品より親しみやすい。
ただ、ほんとMCもまるまる入っているので、楽曲を個々にピックアップして聴いたり、シャッフルで聴くにはいまいち適さない(どうしてもMC邪魔とか思ってしまう)。あくまで順を追ってまるごと聴くための作品って感じ。最近はデジタル化の影響で、楽曲個々をピックアップして聴くことが多くなったので、そうやってアルバム単位での聴き方を強いられるってのはイレギュラーな感じがする。やはり映像つきと映像なしって違うものなんだなぁと思いました。
それにしても、気がつけば彼らも今年でもう三十ですって(かくいう僕も来年は五十なんだが)。月日の流れるのの、なんて早いことか……。
(Jun 03, 2015)
【追記】よもやこんなことを書いたすぐあとに山口くんの無期限活動停止が発表されようとは……。
Short Movie
Laura Marling / 2015 / CD
ローラ・マーリング、2年ぶり通算5枚目のスタジオ録音盤。
このところLAで暮らしている(いた?)とのことで、あぁ、なるほどアメリカっぽいかも……と思うような音作りになっている。
第一印象でおっと思ったのは、エレクトリック・ギターを使っていること。
以前のアルバムでエレキを使ったことがないわけではないけれど、それでも基本、彼女が演奏するのはアコースティック・ギターで、エレキを弾くのはゲストの仕事、みたいな印象だった。
それが今回は、彼女自身がギターをアコギからエレキに持ち替えました、という楽曲が何曲かある。
まぁ、とはいっても、数えてみたら、2曲目の『False Hope』のほか、せいせい数曲だし、べつにいきなりスタイルが変わって、派手なギター・ソロを弾きはじめたりもしない。単にアコギをエレキに持ち替えて、いつも通りに演奏してみましたという感じ。それでも、これまでアコースティック・ギターのイメージがとても強かった人なので、おぉ、そうきたかというインパクトがあった。
あとひとつ、音響面での特徴は、ほとんどの曲にストリングスが入っていること。それも、これといったメロディーを奏でるわけではなく、バックでずーっと鳴っている、みたいな使われ方も多い(こういうのを通奏低音っていうんでしょうか?)。なので、派手さはないけれど、ぱっと聴いたイメージよりも音が厚い。よくいえばカラフル、悪くいえば、やや厚化粧気味?――と思うような音作りになっている。
そんなストリングスがもっとも効果的に使われているのが、アルバム・タイトル・ナンバーの『Short Movie』。この曲のアグレッシヴで凝ったストリングス・アレンジは最高にカッコいい。──といいつつ、サビの「ショート・ファッキン・ムービー」という卑語入りのフレーズが気になってしまうのがたまに疵だったりする。
前作で僕は「夾雑物いっさいなし」という表現を使ったけれど、そういう意味では今作は、混ざりものを気にしない、おおらかさが特徴だと思う。そういうところが、いかにもアメリカ的な気がしました。
とはいえ、彼女の涼やかな声には、やはり以前のような全編アコースティック・ギターの繊細な調べのほうがあっている気がする。少なくても、僕個人はこのアルバムに以前の作品ほどに入れ込めないでいる。
僕はこれとマムフォード&サンズの新譜をつづけて聴いたことで、ザ・バンドを引き連れてステージに上がったディランに向かって「ユダ!」と叫んだフォーク・ファンの気持ちが少しだけわかったような気がしてしまいました。あくまで少しだけ。
(Jun 14, 2015)
Duets: Re-Working the Catalogue
Van Morrison / 2015 / CD
ヴァン・モリソンが多彩なゲストを迎えて自作曲をデュエットしてみせた最新作。
参加しているのは、僕が音源を一曲でも持っている名前だけあげると、ボビー・ウーマック、メイヴィス・ステイプルズ、ジョス・ストーン、ミック・ハックネル、ナタリー・コール、ジョージー・フェイム、スティーヴ・ウィンウッド、マーク・ノップラー、タジ・マハールなどなど。娘さんのシャナ・モリソンも参加して、親子デュエットを聴かせてくれている。
楽曲はあえて初期の名作群はスルーして、90年代以降のアルバムを中心とした新しめのセレクション。個人的には、ヴァン・モリソンを聴き始めたころに出た、それゆえもっとも思い入れの深いアルバムのひとつ『Hymns to the Silence』──当時の邦題はなぜか『オーディナリー・ライフ』──から2曲がセレクトされているのが嬉しかった。でもって、そのうちの一曲が、オープニングを飾るボビー・ウーマックとのデュエット曲『Some Peace of Mind』。いまは亡きボビー・ウーマックの歌声でいきなり始まって、ちょっとびっくりした。いつ録ったんでしょう?
それにしても、このアルバムを聴いていると、あらためてヴァン・モリソンのボーカリストとしての圧倒的な存在感に感心してしまう。ぼーっと聴いていると、ゲストの印象がまったく残らない。あたかもヴァン・モリソン個人の新録の裏ベスト・アルバムを聴いているかのよう。
機械っけゼロのアナログ白人R&Bサウンドも、いかにもこの人ならではって音で気持ちいいし――不思議とイントロを聴いただけでヴァン・モリソンってわかるのはなぜだろう――やっぱヴァン・モリソンっていいなぁと思いました。そんな品質保証付きの一枚。
(Jun 14, 2015)