2007年4月の音楽

Index

  1. Sermon on Exposition Boulevard / Rickie Lee Jones
  2. 平成風俗 / 椎名林檎×斎藤ネコ
  3. 第一回林檎班大会の模様 / 椎名林檎

Sermon on Exposition Boulevard

Rickie Lee Jones / 2007 / SACD+DVD

Sermon on Exposition Boulevard (Dlx)

 リッキー・リー・ジョーンズ、4年ぶりの新作。
 やたらとサウンドの完成度が高く、きっちりとした印象だった前作から一転して、今回はラフな肌触りのギターサウンドが特徴。エレキとアコギで半々くらいという感じだろうか。とにかく全編でシンプルなコードストローク中心のギターが鳴っていて、これまでのキャリアのなかでも、もっともアメリカン・ロック・テイストの強い一作となっている。前作の延長線上の音を期待していると、じゃっかん肩透かしをくうかも知れないけれど、僕としてはこういうのも意外と悪くないと思った。 "Tried To Be A Man" なんて、まるでストーンズみたいで、とてもカッコいい。
 サウンド・イメージにあわせてか、インナージャケットの写真で見られるリッキー・リー姐さんも、ジャージにスニーカー、みたいな若々しい格好が多いのが印象的だ。もとより年齢不詳な女性だから、最初見たときには本人じゃなくて、娘さんかと思ってしまった。
 通しナンバー入りの限定盤はSACD仕様で、全曲5.1サラウンド・バージョンを同時収録。ボーナスのDVDにはメイキング映像とともに、256VBRでエンコーディングされた高音質のMP3ファイルがあらかじめ入っている。コピーコントロールCDなんか出す{やから}とは正反対のその姿勢やよし。音楽はもとより、そのサービス精神にも感銘を受け、あらためて惚れなおしました。
(Apr 15, 2007)

平成風俗

椎名林檎×斎藤ネコ / 2007 / CD

平成風俗(初回限定盤)

 東京事変ではなく、個人名義としては4年ぶりとなる椎名林檎の新作が出る! リリースが決まったときには、そう聞いておおいに喜んだものだけれど……。
 残念ながらその新作というのが、映画『さくらん』のサントラで、アレンジャーに斎藤ネコ氏を迎えたビッグバンドによるセルフカバーアルバムだった。新曲も収録されているけれど、過半数は過去の楽曲なので、あまり新鮮さはない。
 まあ、『絶頂集』 に収録されていた 『ギャンブル』 が、オーケストラをバックにしてもなんら違和感のないことに感心したり、兄の椎名純平とのデュエットを聞かせる 『この世の限り』 がひさしぶりに明朗でキャッチーなナンバーで嬉しかったりと、聴きどころもけっこうある。それでも、そのクラシックな装いゆえの大仰さは、基本的に僕の趣味からずれてしまっているので、あまり盛りあがれないのだった。よって後発となるDVD盤の『平成風俗 大吟醸』の購入は、ややうしろ髪ひかれつつも見送りということに決定。
 それにしても、リッキー・リー・ジョーンズの新譜に(限定盤とはいえ)5.1サラウンド・リミックスが全曲収録されていたり、ベックのアルバムにおまけで全曲分のPVがついてくる輸入盤の現状を考えると、その手のものを別商品として、CDよりも高い価格で売ろうしている日本の音楽業界のあり方が、あらためて不健全に思えてしまって仕方ない。
(Apr 15, 2007)

第一回林檎反対界の模様

椎名林檎 / 2007 / DVD

第一回林檎班大会の模様 [DVD]

 『平成風俗』と同時発売となった椎名林檎の最新ライブ作品。二部構成になっていて、前半が斎藤ネコ氏ひきいるマタタビオーケストラをバックにしたビッグバンドでのステージ(ドラマーは古田たかしさん)、後半がこのところ親しくしているという長谷川きよし氏とその愛娘のフルート奏者MAKIさんを迎えてのアコースティック・ステージとなっている。どちらもファンクラブの会員向けに行われたシークレット・ライブの映像ということで、演奏時間は短めだ。
 このライブを観ると、最近の僕が椎名林檎になじめないでいる理由がよくわかる。特に前半のステージ。そのボーカル・スタイルが、あまりに歌謡曲寄りすぎる。無理に声を作っている感じで、聞いていて気持ちよくない。最近の彼女のボーカルで、僕が特に苦手だと思う部分が、このステージでは全開になってしまっている。そういう意味では、演奏的にはそれほど惹かれない後半のほうが、ほとんど飾り気がない分、よほど好ましかった。
 ポップ・ミュージックを聴く上で、ボーカリストの声質やスタイルに対する嗜好というのは、かなり大きな比重を占めるものだと思う。どんなに彼女の才能に感銘を受けているにせよ、現状では僕が彼女の音楽を好きになりきれないのも当然だなと、あらためて思わされる作品だった。
(Apr 15, 2007)