2024年11月の映画
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ルックバック
押山清高・監督/声優・河合優実、吉田美月喜/2024年/日本/Amazon Prime
『チェンソーマン』の作者・藤本タツキによる書きおろしマンガのアニメ化作品。
最近は原作の魅力を十二分に引き出した上で、さらなる魅力を加えてみせる素晴らしいアニメが多いけれど、これもそのうちのひとつ。それも出来は極上だ。正直なところ原作を読んだときの何倍も感動した。
この映画、もとのマンガが単行本一冊の読み切りということもあって、劇場公開されたのに58分しかない。でもそうは思えないくらいに濃い。
主人公の藤野はクラスで人気の女の子。学級新聞の四コママンガを担当していて、自分にはマンガの才能があると自負している(下手なのに)。
そんな彼女に強力なライバルが登場する。あるときから彼女の作品と並んで学級新聞に載るようになった同級生のマンガは(内容はともかく)画力が桁違いだった。
描いたのは引きこもりの京本。登校拒否で学校に来ないため、顔も知らないその同級生の才能にショックを受けた藤野は、負けてなるものかと、これを機にマンガの世界へとのめり込んでゆく。
やがて訪れる二人の少女の出逢いはお互いの運命を大きく変えることになり……。
この作品でとにかく印象的なのが、机に突っ伏して夢中でマンガを描く藤野のうしろ姿。全編にわたって何度も繰り返し描かれるその風景が、マンガという創作活動に没頭する一アーティストの孤独と恍惚を浮かび上がらせて、深く胸を打つ。
こんなもの、好きにならずにいられるわけがない。
(Nov. 17, 2024)