2024年11月の映画
Index
ルックバック
押山清高・監督/声優・河合優実、吉田美月喜/2024年/日本/Amazon Prime
『チェンソーマン』の作者・藤本タツキによる書きおろしマンガのアニメ化作品。
最近は原作の魅力を十二分に引き出した上で、さらなる魅力を加えてみせる素晴らしいアニメが多いけれど、これもそのうちのひとつ。それも出来は極上だ。正直なところ原作を読んだときの何倍も感動した。
この映画、もとのマンガが単行本一冊の読み切りということもあって、劇場公開されたのに58分しかない。でもそうは思えないくらいに濃い。
主人公の藤野はクラスで人気の女の子。学級新聞の四コママンガを担当していて、自分にはマンガの才能があると自負している(下手なのに)。
そんな彼女に強力なライバルが登場する。あるときから彼女の作品と並んで学級新聞に載るようになった同級生のマンガは(内容はともかく)画力が桁違いだった。
描いたのは引きこもりの京本。登校拒否で学校に来ないため、顔も知らないその同級生の才能にショックを受けた藤野は、負けてなるものかと、これを機にマンガの世界へとのめり込んでゆく。
やがて訪れる二人の少女の出逢いはお互いの運命を大きく変えることになり……。
この作品でとにかく印象的なのが、机に突っ伏して夢中でマンガを描く藤野のうしろ姿。全編にわたって何度も繰り返し描かれるその風景が、マンガという創作活動に没頭する一アーティストの孤独と恍惚を浮かび上がらせて、深く胸を打つ。
こんなもの、好きにならずにいられるわけがない。
(Nov. 21, 2024)
デッドプール&ウルヴァリン
ショーン・レヴィ監督/ライアン・レイノルズ、ヒュー・ジャックマン/2024年/アメリカ/Disney+
くっっっだらねーーー。
『デッドプール』と『ウルヴァリン』、両シリーズをクロスオーバーさせた続編が、マーベル・シネマティック・ユニバースに組み込まれて、マーベルの最新作として制作されたというので、いまいち気乗りはしなかったけれど、とりあえず観ておこうかと思ったら、これがひどい出来だった。
まぁ、くだらなさは『デッドプール』の十八番だから、くだらないってのは、ある意味誉め言葉なのかもしれない。
でもこの作品のくだらなさは、前二作とそれとは違う。
基本『デッドプール』は主人公の不死身性を盾にした、死者の尊厳を冒涜するような不謹慎なギャグが売りのコメディだった。人は虫けらのように殺されてゆくけれど、まぁこの作品の場合は確信犯的なんだろうし、そこでめくじらを立てるのもなぁって思ってしまうような作品だった。
でもこの作品は違う。
『LOGAN/ローガン』で死んだウルヴァリンの死体をデッドプールが掘り起こして大暴れする冒頭のシーケンスは、そんなデッドプールならではの不遜なギャグの代表だけれど、でもこの映画でデッドプールらしいと思ったのはそこだけ。
それ以降、マルチヴァースを絡めて主人公ふたりの出逢いを描いたあたりから先は、最近のMCUシリーズに顕著な、ご都合主義にまみれたB級SFに堕してしまう。ギャグよりお涙頂戴に走ってしまう。
この映画を観ると、マーベルが駄目になったいちばんの要因が、なんでもありのマルチヴァースの導入にあったことがわかる。なんでもできてしまうから、なにをやらせていいかわからなくなり、物語をうまくハンドリングできなくなっている気がする。
アントマンをかたどった廃墟とかビジュアルとしてはインパクトがあったし、エマ・コリンという女優さんが演じる『X-MEN』シリーズの某重要キャラの妹も悪くない。クリス・エヴァンスのキャスティングもひねりが効いていて好きだ。
でも全体的な出来がこれでは、そんなディテールばかり褒めたところでねぇ……。
とにかく、メインとなる舞台造形が『マッドマックス』からの借りものだって時点で、マーベルがなにやってんだって話だ。
なによりひどいと思ったのは、ウルヴァリンの娘ローラ(ダフネ・キーン)の扱い。
ローラは『X-MEN』シリーズ最重要キャラの娘なわけですよ。次世代X-MENの中心人物でしょうよ。そうなってくれないと困るでしょうに。
それをこの映画では、単なるモブのひとりにしてしまっている(かのウェズリー・スナイプやジェニファー・ガーナーも同列)。そこがなにより最低。
冒頭に「『LOGAN/ローガン』のファンの人は気を悪くしないでね」みたいなエクスキューズがあったけれど、いや無理だって。いくらMCUのメインがアベンジャーズだといっても、アメコミ界で重要な地位を占めているはずのX-MENを軽く扱っていいわけがないでしょう?
いやはや、本当にこの映画は残念すぎた。
本気でもうこれ以上マーベル作品は観ないほうがいいんだろうなと思わされた一本。
(Nov. 26, 2024)