2024年9月の映画

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  1. アンブレラ・アカデミー シーズン4
  2. ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

アンブレラ・アカデミー シーズン4

スティーヴ・ブラックマン制作/エリオット・ペイジ/2024年/アメリカ/Netflix(全6話)

 『アンブレラ・アカデミー』の最終シーズン。有終の美を期待していたのだけれども、残念ながら出来映えはいまいちだった。
 おそらくナンバー・ファイヴ役のエイドリアン・ギャラガーくんがすっかり成長してしまったため、今回は前作から六年後という設定になっている。
 前作の最期で超能力を失った一同は、現在はそれぞれ普通に――ではないかもしれないけれど、とりあえず一般人として――生活している。
 ルーサー(トム・ホッパー)は男性ストリッパー、ディエゴ(デイビッド・カスタニェーダ)はライラ(リトゥ・アルヤ)と家庭をもち、アリソン( エミー・レイヴァー・ランプマン)は芸能界に復帰(でも売れてない)、クラウス(ロバート・シーハン)はアリソン家の居候、ナンバー・ファイヴはCIA捜査官として活躍中、ベン(ジャスティン・H・ミン)は詐欺で刑務所に入れられ、でもってヴィクター(エリオット・スミス)は兄弟から離れてカナダでバーを経営しているといった具合。
 そんな兄弟たちが、ディエゴの娘たちのバースデイ・パーティーとベンの出所をきっかけに再会して、あれこれあったあとで、昔の力を取り戻す。
 ――のだけれど。それは第二話に入ってから。
 つまり第一話の時点ではこのシリーズをヒーローものたらしめている主役らの力は封印されたままなわけで。全六話と全体がこれまでよりも短いのに、そのうちの一話をそこまで引っ張らなくたっていいじゃんって思ってしまう。
 残りの五話で描かれるのは、ジーン&ジーンという中年カップルに率いられたカルト教団絡みの事件と、ナンバー・ファイブとライラが異世界へとつながる地下鉄に乗り込んで迷子になる話。そしてベンがジェニファーという女性と恋に落ちたことで、またもや世界が滅びる騒ぎが持ち上がる。この三つを中心に物語が進んでゆく。
 このシリーズの最重要キャラはナンバー・ファイブで、セカンド・シーズンではライラが登場して徐々にその存在感を高め、シーズン3ではベンが異次元チームのリーダーとして、それまでとは違うポジションを得た。
 今シリーズがその三人を中心に展開するのにはとくに文句はないのだけれど、おかげでほかのメンバーの存在感が薄まってしまっているのが残念なところ。エリオット・ペイジなんて、いったいなにをしていたのか、ほとんど印象に残っていない。
 ナンバー・ファイブとライラが地下鉄の世界に閉じ込められるエピソードは文学性さえ漂わせていて、本シリーズ屈指の名エピソードだと思うけれど、そのあとのカタストロフはいささかヤケクソ気味で、シリーズの締めとしてはいまいちだと思った。結果として不完全燃焼感が残ってしまった。
 これで最後というのならば、もうちょっといい終わり方をして欲しかった。残念。
(Sep. 01, 2024)

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

スティーブン・ダルドリー監督/トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、トーマス・ホーン/2021年/アメリカ/WOWOW録画

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い (字幕版)

 同時多発テロで大好きな父親を失い、トラウマをかかえた少年の心の回復を描くヒューマンドラマ。
 以前に読んだ原作の小説がよかったので、ずっと観たいと思っていた作品だった。
 原作とのいちばんの違いは、少年の祖父母に関する過去のエピソードをまるまる端折ってあること。まぁ、その部分は戦争絡みでもあるし、そこまで描くと三時間超えの超大作になってしまいそうなので、この改変は映画化にあたっての必然だったんだろう。
 実際にその部分をはしょって少年の行動だけにフォーカスしたことで、この映画はとても心温まる感動作に仕上がっている。
 まぁ、子役のトーマス・ホーン少年のイメージが僕が抱いていたものとは違ったり、音楽がハリー・ポッター的な仰々しさだったりしたのには若干違和感を覚えたけれど、あとはとくに文句なしの感動作だった。
 いまは亡き父親役がトム・ハンクスで、母親がサンドラ・ブロック。マンションの受付がジョン・グッドマンだったり、少年が父親の部屋でみつけた謎の鍵の秘密を解き明かすべく訪ねてゆく数多のマンハッタンの住人たちの中に、ヴィオラ・デイヴィスやジェフリー・ライトがいたりするキャスティングもいい。
 名作と呼べるほどの出来映えではないけれど、『小説家を見つけたら』や『シェフ』などと同じように、いずれまた観たくなること確実な良作。
(Sep. 07, 2024)