2023年4月の映画
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シン・仮面ライダー
庵野秀明・監督/池松壮亮、浜辺美波/2023年/日本/グランドシネマサンシャイン池袋
去年の『シン・ウルトラマン』につづき、今年も『シン・仮面ライダー』を映画館で観てきた。
なんたって『仮面ライダー』は、僕が生まれて初めて観たテレビ番組だ。
初代ライダーの放送開始は1971年だから、当時の僕は四歳か五歳。そのころに父親と一緒に『仮面ライダー』を見たのが、僕の記憶にあるもっとも古いテレビの思い出だったりする。ブラウン管テレビでみた蜘蛛男のイメージが鮮明に残っている。
対する『ウルトラマン』が始まったのは1966年だそうだから、ちょうど僕が生まれた年だ。リアルタイムで観た最初のウルトラマンは、1972年に始まった『帰ってきたウルトラマン』ということになる(まぁ、それ以前に初代やセブンを再放送で観ている可能性もあるけれど。少なくても記憶の中ではその三つがごっちゃになっている)。
対する『仮面ライダー』は1号からストロンガーまでをリアルタイムで観ていたのだから、その分だけ仮面ライダーに分がある――かというとそんなこともない。それぞれに違ったよさがあるので、どっちが好きだったかとか問われても答えなんか出せない。仮面ライダーとウルトラマンは、僕らの少年時代を彩ってくれた偉大なる二大特撮ドラマだった。
その両作品を、かの庵野秀明がつづけて劇場版としてリメイクするとなれば、観てみたいと思うのが当然。しかも『シン・ウルトラマン』を劇場で観ておいて、もう一方は観ないとかあり得ない。
ということで、珍しく池袋の、数年前にできた大きな映画館で『シン・仮面ライダー』を観てきた。
予告編を観たときにもっとも印象的だったのは、浜辺美波ってものすごくきれいな子だなぁってことだったけれど、本編をすべて観てもその印象は変わらず。もしかしてこの映画は、浜辺美波という女優さんをいかにきれいに撮るかがテーマだったんじゃないかって思ってしまうレベルの仕上がりになっている。
仮面ライダーの生みの親である科学者の娘として、最初から主人公と行動をともにしつつ、つんとすまして心を開こうとしないツンデレ娘。まるで綾波レイと葛城美里を足して二で割ったような、これぞ庵野弘明ってヒロイン像を、徹底的にクールに演じている。この映画は特撮ヒーロー映画であるのと同時に、ある種のアイドル映画なんじゃなかろうか。
とはいえ、特撮の面でもオリジナルに対するリスペクトがたっぷり。『シン・ウルトラマン』は現在進行形なアレンジがそれなりに入っていたけれど、こちらはムードがまんま七十年代。「蜘蛛男」が「クモオーグ」とカタカナになっていたり、ショッカーがなんだか長たらしい英語の省略形だったり、それなりに今風なところもあったけれど、舞台のほとんどが人里離れた場所だったりすることもあり、昭和レトロ感がすごい。サイクロン号がもうもうと白い排気ガスを吹き出しながら走るのとか、地球温暖化に反しているあたりもまさに昭和レトロ。
あ、でも冒頭のショッカー戦闘員とのバトルシーンがやたらスプラッターなのはさすがに現代風だ。いきなりタランティーノかと思った。
とにかく大好きな特撮ドラマの名作を、オリジナルへの敬意を込めつつも、自らの趣味で味つけしてみせたという感じの意欲作。
最後の戦いが途中から妙にぐだぐだな小学生の喧嘩みたいになってしまったのはちょっとなんだけれど、少なくても最後までライダー対ショッカーの構図が崩れずにバトル・シーンが小気味よくつづいただけでも、『シン・ウルトラマン』よりこちらのほうがおもしろかった。
(Apr. 15, 2023)
ジェイソン・ボーン
ポール・グリーングラス監督/マット・デイモン、トミー・リー・ジョーンズ、アリシア・ヴィキャンデル/2026年/アメリカ/WOWOW録画
前作から九年のインターバルをへて製作されたジェイソン・ボーン・シリーズの第四弾。
正確にいうと、第四弾は『ボーン・レガシー』らしいのだけれど、そちらは主人公がジェイソン・ボーンではないそうだし、個人的にはまったく興味を惹かれなくてスルーしてしまったので、僕の中ではこれが第四弾。
でも出来は正直いまいちだと思う。序盤でジェイソンのパートナーを襲う悲劇とか、CIAのお偉いさんによる陰謀劇とか、衝突事故だらけのカーチェイスとか、内容がまるで第二作の焼き直しみたいだった。なぜポール・グリーングラスがわざわざマット・デイモン主演でもう一本撮ろうと思ったのか疑問になった。
まぁ、金はすごくかかっているんだろう。冒頭のボーンが賭け試合に出てワンパンチで一発KOをかますシーンなんか、なんでこれだけのためにこんなにエキストラ集めてんだろうって感じだったし。その後のアテネでのデモ中の逃走劇とか、ラスベガスでのカーチェイスとか、本当に予算はんぱないなって感心してしまった。
まぁ、金をかければいい映画になるってものではない証拠のような作品じゃないかと――ってわざわざケチをつけるほどひどいとも思わないんだけれど。でもそこはかとなく失望感の残る出来だった。
ちなみに、僕が飛ばした『ボーン・レガシー』は、調べてみたら主演が『ホークアイ』のジェレミー・レナーで、そのほかにもレイチェル・ワイズ、エドワード・ノートン、アルバート・フィニーら、錚々たるメンツが出演しているようなので、いまさらながら観てみてもいいかなと思ったりした。
なぜ主人公がジェイソンではないのにシリーズのうちの一本にカウントされているのかも気になるので、時間が許せば――あと機会があれば――まぁいずれ。
(Apr. 22, 2023)