2023年2月の映画
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ザ・メニュー
マーク・マイロッド監督/レイフ・ファインズ、アニャ・テイラー=ジョイ/2022年/アメリカ/Disney+
舞台は孤島にある超人気のレストラン。アニャ・テイラー=ジョイ演じる主役のマーゴがタイラー(ニコラス・ホルト)という青年にエスコートされて訳ありでその店を訪れる。
その日その店に集まった客は、落ちぶれた映画スターとその恋人、有名女性料理評論家とその同僚、IT長者風の青年三人組、CEO風の熟年夫婦など、基本セレブな人たちばかり。料金も破格で、革ジャン姿のマーゴとあまり裕福でなさそうなその連れはいささか場違い。
やがてレイフ・ファインズ演じる天才シェフが腕をふるったフルコースがサーブされ始める。
一品目、二品目、三品目……とコースが進むにつれて、斬新さを通り越したメニューと意味不明なシェフの言動が客を戸惑わせ始め、四品目になったところでスーシェフ(副料理長)が思わぬ行動に出て、唐突な不条理劇の幕が上がる――。
というような作品だけれど、んー、これは僕としてはいまいち。
予告編の思わせぶりなムードに惹かれて観たいと思った作品だったけれど、全編にわたって単に思わせぶりなだけって感じがしてしまって、その不条理なブラック・ユーモアがいまいちしっくりこなかった。『ミッドサマー』に通じるテイストがあるものの、あそこまでの不気味さにはたどり着けていないというか。
僕が思うこの映画の欠点は、予約もできない超人気店だという設定の割には、あまりその店が魅力的に思えないこと。
ここしかないって特殊なロケーションでどれだけ美味な料理をふるまわれようと、あんな軍隊みたいなキッチンで提供される料理を食べにゆきたいとは僕だったら思わない(うちの奥さんもいまいち料理がおいしそうに見えないといっていた)。
おかげでお客さんたちが不条理な運命を従順に受け入れるラストにも納得がゆかず、どうにも消化不良感が否めない(レストランの映画だけに)。
まぁ、ということで僕は期待していたほどには盛り上がれなかったけれど、だからといってそこまでひどい出来とも思わないので、今が旬のアニャ・テイラー=ジョイか、熟練のレイフ・ファインズや、映画スター役のジョン・レグイザモが好きならば、観てもおいて損はないかも。
(Feb. 02, 2023)
ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生
デヴィッド・イェーツ監督/エディ・レッドメイン、キャサリン・ウォーターストン/2018年/アメリカ/Netflix
ファンタスティック・ビースト・シリーズの第二弾。
今作については、とにかく記憶力がないのと酒を飲みながら観ていたことの相乗効果で、話がてんでわからなかった。
前作の最後で捕まったジョニー・デップ演じる悪い魔法使いグリンデルバルド(やっと名前を覚えた)が脱走するところから話は始まったのは覚えているんだけれど、そのあとの展開が、すでにとんと記憶にない。
なんたって前作を観てからまだ一年にもならないのに、重要な役割を果たすクリーデンス(クリアウォーター・リバイバルとつづけたくなる。演じてるのはエズラ・ミラーという俳優さん)が誰なのかも、オブスキュラスがなんなのかもすっかり忘れていたので、話が見えないにもほどがあった。
あと、前作で記憶を奪われたはずのジェイコブが、なにゆえに恋人のクイニー(アリソン・スドル)とともにイギリスにやってきたかも謎。魔法使いとマグル(人間)は結婚できないという法律があることに抗議しにきたとか、そんな感じでしょうか?
そのほかでは、ニュートの兄テセウス(『エマ』に出ていたカラム・ターナー)とその婚約者にしてニュートの幼馴染のリタ・レストレンジ(『ザ・バットマン』でキャットウーマン役だったレニー・クラヴィッツの娘さんゾーイ)が新キャラとして登場。さらには若き日のダンブルドア役でジュード・ロウが出ている。
ジュード・ロウはすっかり貫禄がついていい感じにダンブルドアだった。
なんにしろ、若干暗いところはあっても、基本的にはにぎやかで陽気な印象だった前作と比べると、今作は悪役面のジョニー・デップが暗躍しつづけているせいか、全体的に重くてシリアスな雰囲気だった。
そういう意味では、最初の二、三作は可愛かったのに、途中から重くなってしまったハリー・ポッター・シリーズ本編に通じるところがある気がする。
たった二作であのシリーズの半分くらいを消化した印象がなきにしも。――そんな風に感じるってことは意外と内容が濃いのかもしれない。
(Feb. 07, 2023)
ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密
デヴィッド・イェーツ監督/エディ・レッドメイン、マッツ・ミッケルセン/2022年/アメリカ/Netflix
引きつづきファンタスティック・ビースト・シリーズの第三弾――なのだけれど。
この作品に関してなにより残念なのは、グリンデルバルド役のジョニー・デップが降板してしまったこと(家庭内暴力の裁判で負けたせいらしい)。
なまじ前作での悪役っぷりが板についていたので、その彼がいなくなって、代わりをマッツ・ミケルセンが演じていることへの違和感がすごかった。
この人だって人気と実力を兼ね備えた俳優なのはわかるけれど、それにしてもあまりにキャラが違い過ぎた。とても同一人物とは思えない。ジョニー・デップと比べると、いまいち腹黒さが足りないというか、悪徳の底が浅いというか……。
まぁ、なぜだか終盤になってグリンデルバルドが魔法界の最高権力者の選挙に立候補する、なんて展開になるので、その点ではマッツ・ミケルセンのほうが説得力はある気がしないでもない(ジョニー・デップのままだと、だれも投票しそうにない)。
考えてみれば、グリンデルバルドはあのダンブルドアと親交の深い人なのだから――今回はこのふたりの因縁話が中心(恋人どうしだったってマジですか?)――単なる悪人などではなく、それ相応の魅力を持ったキャラクターでないとおかしいし、そういう意味では小悪党っぽいジョニー・デップよりも、冷酷さと温厚さを兼ね備えた大物感のあるマッツ・ミケルセンのほうが、役どころにはあっているのかもしれない。
――とはいえ僕個人はジョニー・デップの悪そうなところが好きだった。
この作品でそんなジョニー・デップの降板と並んで意外だったのは、ヒロインのティナ役のキャサリン・ウォーターストンの出番がほとんどないこと。
前作でもニュートと彼女のラブロマンスはほとんど進展しなかったけれど、次回作でほぼ皆無になるとは思わなかった。もしかして、そちらもキャスティングの都合かなにか? 詳しいことはわかりません。
ということで、主役のはずの二人をそっちのけにして、今回はジェイコブとクイニーのカップルがいかによりを戻すかがメインみたいになっている。
人間界を代表するジェイコブは、僕が知らないだけで、実はシリーズきっての大人気キャラなのかもしれない。
(Feb. 07, 2023)