2018年4月の映画

Index

  1. このサイテーな世界の終わり
  2. ドクター・ストレンジ
  3. ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス
  4. スパイダーマン:ホームカミング

このサイテーな世界の終わり

ジェシカ・バーデン、アレックス・ロウザー/2017年/イギリス/Netflix(全8話)

The End Of The F***ing World (Original Songs and Score)

 ブラーのグレアム・コクソンが手がけたサントラがよかったので観てみたNetflix制作の青春ドラマ。これがとてもおもしろかった。
 内容は高校生カップルの家出を描いたロードムービー。安直に表現すれば、ティーンエイジャー版のタランティーノ映画みたいな作品。自らをサイコパスと自認する不感症の男の子(でも殺人は未経験)と不幸な家庭環境のせいで年じゅう不機嫌な女の子がなりゆきでなんとなくカップルになり、衝動的に家出をしてからの顛末を描いてゆく。
 なんたって生活力のない高校生どうしの家出なので、その道中は軽犯罪の連続となって、危なっかしいことこの上ない。自称サイコパスのジェームズ(アレックス・ロウザー)は一緒にいる女の子をどうやって殺そうかって考えていたりするし。一方のアリッサ(ジェシカ・バーデン)は思春期の女の子だけあって、セックスに興味津々なんだけれど、相手のジェームズが淡白すぎて、なかなか深い関係になれない。
 やがてこのふたりの性癖と性格のずれが予想外の重大事件を引き起こし、物語は怒涛の後半戦へとなだれ込んでゆく。このへんになると、もう目が離せない。ちょっとのつもりで観始めたのに、一日でいっき観してしまった(一話25分の全8話なので、トータルでも3時間半たらず)。観ているうちに特別に美男・美女でもない主演のふたりがだんだんと愛おしくなってくる。彼らのゆくえを追うのが同性愛の女性刑事のコンビというのも時代を反映していて興味深い。
 シーズン1とはいっているけれど、あのあとを描いたら蛇足になりそうな気がするので、この話はここで終わったほうがいいように思う。とはいえ、もっとジェームズとアリッサのふたりを観たいとも思う。んー、そんなジレンマを抱いてしまうくらい、いい作品。グレアム・コクソンのサントラもオールド・ファッションなロックンロール満載で素敵です。
(Apr 11, 2018)

ドクター・ストレンジ

スコット・デリクソン監督/ベネディクト・カンバーバッチ、レイチェル・マクアダムス/2016年/アメリカ/WOWOW録画

ドクター・ストレンジ (字幕版)

 春のマーベルいっき見ウィーク。ということで、まずはベネディクト・カンバーバッチ主演の新シリーズ、『ドクター・ストレンジ』から。
 カンバーバッチ演じる天才外科医が交通事故で両手に障害を追って、外科医生命の危機に直面。西洋医学では回復不能なこの事態の解決を東洋の神秘に求めて、カトマンズへ修行にいって超能力を身につけて帰ってくるという話。
 最近のマーベルの映画らしく、これもキャスティングが豪華だ。主演のカンバーバッチはもちろん、ヒロインがレイチェル・マクアダムス、ドクターの師匠(スター・ウォーズのクワイ・ガン・ジン的な)がティルダ・スウィントンなど、過去にオスカーにノミネートされた人たちがずらり。ドクターの兄弟子にあたるモルド役のキウェテル・イジョフォーという黒人さんも『それでも夜は明ける』でオスカーの主演男優賞にノミネートされているらしい。
 彼らに対する悪役がマッツ・ミケルセンという人なのはネーム・バリュー的にいまひとつな気がするけれど(僕が観た映画では『ローグ・ワン』に出ているとのことだけれど、まるで記憶にない)、まぁ、べつに名前が売れてりゃいいってものではないし、演技は問題なしなのでノー・プロブレム。
 映像的──というかSFX的──に印象的だったのは、ドクター・ストレンジらが超能力でオレンジ色のマントラみたいなのを出すシーンと(マーベル版ATフィールド?)、時空を操る魔術を使うので、建物が巻き上がる『インセプション』みたいなシーンが多かったこと。あと、あの変なマントが率先してドクター・ストレンジのものになるところ(なんだあれは)。
 まぁ、シリーズ第一作だからか、はたまた東洋が舞台のシーンが多いからか、最近のマーベルの作品にしては物語も特撮も控えめな印象だけれど、でも個人的にはこれくらいで十分な気がする。それでもやはり世界は破滅の危機に直面するわけだし。
(Apr 22, 2018)

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス

ジェームズ・ガン監督/クリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、デイヴ・バウティスタ/2017年/アメリカ/WOWO録画

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス (字幕版)

 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のシリーズ第二弾は、スター・ロードことピーター・クイルの父親がじつはすごい(とんでもない?)人だったんだぞという話。
 個人的にはマーベルの諸作のなかでもっともしっくりこないシリーズがこれだったりする。嫌いってわけではないんだけれど、個々のキャラクターにあまり魅力を感じないし、物語的にも大仰すぎる上にお涙頂戴でいまいち。つまらないとまではいわないけれど、僕の趣味にはあわない。
 今作は巨木キャラのグルートが前回のラストで小さくなったまま、もとのサイズには戻らず、かわいい子役になってしまったのも痛い。アライグマのロケットはグルートとのコンビだからよかったのに、それが成り立たなくなってロケットの魅力も半減した気がする。最後にウォークマンがリタイアしちゃったのも残念だしなぁ……。
 いや、基本フォーマットは嫌いじゃないわけですよ。70年代のロック・ミュージックをBGMに、エキセントリックな宇宙人たちがチームで戦うというコンセプトはどちらかというと好みだ。ただ、このシリーズの場合、映画化にあたっての味つけにいろいろ失敗している気がしてしかたない。一作目も二作目も下手に感動させようとしすぎているのが個人的には嫌。もっとあっけらかんとしたアクションと笑い中心の痛快な話にもっていけないもんだろうか。そうすりゃもっと楽しめるのにと思う。
 そういや、シルヴェスター・スタローンが出てて(しかも次回作以降でまだまだ登場しそうで)ちょっとびっくり。クイルの父親はカート・ラッセルだし、登場人物がやたらとマッチョでワイルドな人ばかりなのもこのシリーズの特徴な気がする。で、そこがまた軟弱者な僕には性にあわない気が……。
(Apr 22, 2018)

スパイダーマン:ホームカミング

ジョン・ワッツ監督/トム・ホランド、マイケル・キートン/2017年/アメリカ/WOWOW録画

スパイダーマン:ホームカミング (字幕版)

 マーベル・シネマティック・ユニバースのひとつとしてリブートしたスパイダーマン劇場版の第一弾。
 語るまでもない過去のシリーズとの最大の違いは、この映画がまんまアヴェンジャーズの影響下にあること。
 過去のシリーズはどちらもピーター・パーカーがいかにしてスパイダーマンとなりしかを語るところから始まったけれど、この作品ではその部分は思い切りはしょられている。
 トム・ホランド演じるピーター・パーカーは最初からスパイダーマンだし──もしかしてどうやってスパイダーマンになったかは、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で描かれていたんでしたっけ?(記憶にない)──、彼の行動原理も「憧れのトニー・スタークに認められて、アヴェンジャーズの一員になりたい!」というシンプルなもの。彼とトニー・スタークとのつなぎ役として、ジョン・ファブロー演じる『アイアンマン』シリーズの脇役、ハッピーがひんぱんに出てくるし、最後にはなんとグウィネス・パルトローまで登場する。そういう意味では『アイアンマン』のスピンオフ的な作品となっている。
 そのほかにもピーターが通う学校の教材としてキャプテン・アメリカのビデオが使われていたりと、アヴェンジャーズ色の強さは否めない。それでもこの作品が過去のシリーズと共通するのは、これがあくまで高校生を主人公にした青春映画である点。
 やはりスパイダーマン・シリーズのポイントはそこだろう。高校生が主人公だからこその初々しさ。この新シリーズでもその点は失われていない。青春映画だからこそのミニマリズムというか(友達は救えど、地球は救えない)。マーベルの作品にありがちな大袈裟さがこの作品では高校生が主人公であることで大いに緩和されている。そして最後まで貫かれている。そこがとてもいいと思った。
 マーベルらしいといえば、今回のスパイダーマンの身体能力の高さ、身体の丈夫さは史上最強じゃないだろうか。どんだけ激しい攻撃を受けてふっとばされても、ビルのがれきの下敷きになっても大丈夫。壁にはりつく粘着力の強さもおそらく過去最高。その身体能力の高さはもしかしてキャプテン・アメリカを上回っているんじゃないかって思ってしまうくらい。これなら自分をアヴェンジャーズの一員としてアピールしたくなるのも当然だよねと思ってしまった。
 まぁ、そんなわけでちょっとばかり強すぎの感はあるものの、今回の新シリーズでもスパイダーマンはやっぱりおもしろかった。映画のスパイダーマン・シリーズってもしかしてスーパーヒーローものでは最強にハズレなしかもしれない。
(Apr 22, 2018)