2017年5月の映画
Index
- キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー
- シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
- ローマでアモーレ
- 世界中がアイ・ラヴ・ユー
- ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
- 教授のおかしな妄想殺人
キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー
ジョー・ジョンストン監督/クリス・エヴァンス、ヘイリー・アトウェル/2011年/アメリカ/WOWOW録画
ようやく観ました、『キャプテン・アメリカ』三部作のシリーズ第一弾。
先に二作目の『ウィンター・ソルジャー』を観てしまったことで、僕はこの一本目の内容について、大いに勘違いしていた。あちらでは最初からナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)とともに行動をしていたので、彼女やニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)とのなれそめがこの一作目で描かれているのだろうと思っていたら、そうではなく。ニック・フューリーこそ出てくるけれど、それもほんのわずか。それ以外はほぼ全編、第二次大戦中が舞台だった。
つまりキャプテン・アメリカはいかにアベンジャーズの一員となったかではなく、キャプテン・アメリカとは何者かを──純然たる主人公としての、スーパーヒーローとしてのキャプテン・アメリカを描いたのがこの作品。
ということで、舞台は過去、それも第二次大戦の戦時中ってことで、他のマーベル作品とは大いに印象が異なる。敵対するナチス配下の悪の組織ヒドラの兵器こそ過剰に未来的だけれど、それをのぞけば、あとはほぼ全編、二十世紀的なレトロ感満載。
アクションは銃撃戦プラス肉弾戦だけって感じだし、物語も適度にコミカルかつロマンチック。他の作品とのクロスオーバーがほとんどないという点も、最近の作品を見慣れた目からすると新鮮だった。戦時中のポスター使ったエンディング・クレジットもすごく気が効いていてカッコいい。
個人的にはあの珍妙なコスチュームの出自が軍事費調達のキャンペーンのためのものってわかったのがグー(笑えた)。これまで「なにこの人?」って感じだったキャプテン・アメリカというキャラクターが、これを観てようやくどういうヒーローかわかった。そしていきなり好感度が大きくアップした。
キャプテン・アメリカ、なんだかけっこうカッコよく見えてきました。
(May 07, 2017)
シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
アンソニー&ジョー・ルッソ監督/クリス・エヴァンス、ロバート・ダウニー・ジュニア/2016年/アメリカ/WOWOW録画
『キャプテン・アメリカ』三部作の完結編(?)──というよりはむしろ、『アベンジャーズ』シリーズ(正式には「マーベル・シネマティック・ユニバース」というらしい)の最新作って印象の一編。
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』での事件が原因となって、アベンジャーズが国連の支配下に入る、入らないという問題が起こり、それに加えてキャプテン・アメリカが親友で極悪暗殺者のウィンター・ソルジャーことバッキー(セバスチャン・スタン)をかばったことから、アベンジャーズが仲間割れの事態に陥るという話。
『エイジ・オブ・ウルトロン』を踏まえて、超能力ガールのワンダ(エリザベス・オルセン)と人工知能のウルトロン改めヴィジョン(なんとポール・ベタニーだった)が仲間に加わり、さらにはアントマン(ポール・ラッド)に新スパイダーマン(トム・ホランド)にブラック・パンサー(チャドウィック・ボーズマン)という新キャラまで登場するという。このオールスター・キャスト感がすごい。
ハルクとソーとニック・フューリーは出てこないけど、こりゃもう『アベンジャーズ』でいいんじゃないの? これがどうして『キャプテン・アメリカ』?──と思わないでもないんだけれど、振り返って考えてみるに、最終的にすべての事件の鍵を握っているのはキャプテンの正義感と友情だったって話なので、ここはやっぱ『キャプテン・アメリカ』のタイトルで正しいんでしょう。いやぁ、先に『ザ・ファースト・アベンジャー』を観ておいてよかった。
物語的には事件の背後で糸を引いている人物の異常な能力の高さにいまいち説得量がないし(彼はアイアンマンでさえ知らない事実にどうやってたどり着いたんだ。情報収集能力たかすぎ)、アントマンの新変身技もかなり反則感が強いけれど、それらをのぞけばとてもよくできたおもしろい映画だと思う。
こうしてみると『キャプテン・アメリカ』の三部作はそれぞれにスタイルを変えながら一作ごとにグレードアップしている点で、マーベルでもっとも成功した三部作といっていいのではと思います。
あ、ただこの作品の邦題はサブタイトルがシリーズ名より先になっているところが個人的には嫌(原題はちゃんとシリーズ名・サブタイトルの順)。タイトルでソートしたときにシリーズ三作が並ばないのが気持ち悪い。
(May 07, 2017)
ローマでアモーレ
ウディ・アレン監督/ウディ・アレン、ロベルト・ベニーニ/2012年/イタリア、アメリカ/WOWOW録画
ウディ・アレンがローマを舞台に豪華キャストで描くオムニバス風コメディ。
四つのエピソードが同時並行で語られていて、でも舞台がローマってだけで、それぞれには関係性はなし(たぶんない)。そもそもエピソードによって時間軸が違っていて、上京してきたカップルがひょうんなことから別行動を余儀なくされて、それぞれなりゆきで浮気にいたる話──娼婦役でペネロペ・クルスが登場──は一日だけで起承転結してるのに対して、それ以外のエピソードは数日から数週間ってスパンになっている。
スタイルもまちまちで、前述の話はリアリズムだけれど、平凡な中年サラリーマンが突如として有名人になるという話はカフカみたいな不条理劇だし──主人公を演じるのは『ライフ・イズ・ビューティフル』監督・主演のロベルト・ベニーニという人──、ジェシー・アイゼンバーグ演じる建築家の卵が恋人の友達のエリン・ペイジと浮気しちゃう話も、アレック・ボールドウィンが不思議な形で絡んでいて、ちょっと幻想的というか、妄想チックな味わいがある(あの話はボールドウィン自身の若き日の回想シーンってことでしょうか?)。
なかでももっともコメディ色が強いのが、ウディ・アレンご本人出演のエピソード(出ていることを知らなかったからびっくりした)。娘の婚約者に会いにローマを訪ねたアレン夫妻(奥さん役は『バートン・フィンク』のヒロイン、ジュディ・デイヴィス)が、葬儀屋を営む相手方の父親の美声に惚れ込んで、珍妙なオペラを演出するという話で、そのすっとぼけた展開に苦笑せずにはいられない。
四話とも困ったテイストで笑いを誘うおもしろい話なんだけれど、それをひとつの作品にまとめる必然性がまるでない──それでいてまとめたことにより一話一話単独で観るより確実に味わい深くなっている──ところがすごい。ウディ・アレンの頭ん中ってどうなっているんだろう。一度見てみたい気がする。
(May 20, 2017)
世界中がアイ・ラヴ・ユー
ウディ・アレン監督/ウディ・アレン、ゴールディー・ホーン/1996年/アメリカ/DVD
わが家には過去に安いからと買ったのに観ないまま放置されているDVDがあまたあり。そのなかでもウディ・アレン作品は最大勢力を誇っている。ここいらでそれを一気に観てしまおうかって気になった。
ということで、これから毎週一本ずつ、ウディ・アレンを観てゆくことにしました。題して週刊ウディ・アレン。順調にいけば年内で(ほぼ)全作品を制覇できる予定。
さて、ということで記念すべき一本目は──ひとつ前の『ローマでアモーレ』だけれど、まぁ、あれは録画で観たので、話の流れ的にDVDで持っている映画の一本目は──、ティム・ロスが好きなうちの奥さんが観たいといった『世界中にアイ・ラブ・ユー』。
いやぁ、しかしこれはキャスティングが豪華絢爛。誰が出ているか、ほとんど知らないで観始めたので、ワンシーンごとにおーと思っていた。
まずは、オープニングでドリュー・バリモアにおーと思い、相手役がエドワード・ノートンだって気がついてまたおーと思う。主人公一家の母親役がゴールディー・ホーン、父親役は……誰だっけこれ?(答えはアラン・アルダ)。一家の末娘はナタリー・ポートマン、なんと若い~。でもってジュリア・ロバーツまで出ている。さらにはウディ・アレンご本人まで登場だ~。しかもジュリア・ロバーツとの絡みあり!(いやぁ、裸にシーツだけまとった彼女のセクシーなこと……)
あまりの豪華キャストに、語り手役がナターシャ・リオンというあまり有名でない女優さんなのが不思議になるくらい(でも彼女の演技もよかった)。
うちの奥さん注目のティム・ロスはいつまでたっても出てきませんが、いざ、出てきてみれば、それはそれでかなりインパクトのある役どころだった(ちょっと北野武っぽい)。この映画でいちばんの笑いどころは彼の存在かもしれない。
内容はウディ・アレンの元妻ゴールディー・ホーンを中心とした大家族それぞれの恋愛劇を描くミュージカル・コメディ。とくべつ歌が上手い人がいるでもないんだけれど、そこんところがかえって味になっている感じの作品。ウディ・アレンの映画にしては珍しく、半透明の幽霊が踊ったり、ゴールディー・ホーンが宙を舞ったりする特撮があるのも一興だった。
(May 20, 2017)
ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
ギャレス・エドワーズ監督/フェリシティ・ジョーンズ、ディエゴ・ルナ/2016年/アメリカ/BD
エピソードⅣでデススターを打倒した裏にはこんな隠れたエピソードがありました……というスター・ウォーズの番外編。いまさらになってようやく観ました。
監督がハリウッド版『GOZILLA』のギャレス・エドワーズだというので、どんなもんかと思っていたけれど、これはなかなかおもしろかった。
まぁ、これまでのシリーズにはない悲愴感たっぷりの「続編なんてあり得ないぜ」って終わりかたをしているので、おもしろかったという言葉はあまりふさわしくない気もするし、スター・ウォーズ・ファンならば必見という話でもないと思うけれど、スター・ウォーズと同じ世界を舞台にした単発のSFアクション映画としては、そこそこいい出来なのではないでしょうか。フォレスト・ウィティカー(キャスティングを見るまで気がつかなかった)以外にはあまり有名な俳優を起用していないのも、初代スター・ウォーズの流れを踏襲している感があって、それはそれでこのシリーズならではという気がする。
それにしても、『フォースの覚醒』もそうだったけれど、このところのスター・ウォーズは女性を主人公にしたり、黒人やアジア系の俳優を使ったりして、意識的に男女差別や人種差別のない世界を描こうとしているようにみえる。
ヒューマノイド以外の宇宙人がともに生きる宇宙が舞台なんだから、性別や人種にかたよりがあるほうが不自然だというリアリティを追求した結果なのか、はたまは自分たちで主導して差別のない平和な世界を作ってゆこうというディズニーのメッセージなのかはわからない。いずれにせよ、それ自体は意味のあることだと思う。
ただその結果、アングロ・サクソン系の白人男性が帝国軍の悪役のみに限定されてしまっていて、ルークやハン・ソロのようなステレオ・タイプの白人ヒーローが登場しないのは、やはり残念な気がする。見映えのいいハンサムなヒーローが大活躍する単純明快なスペース・オペラとしての新作も観てみたい。
(May 28, 2017)
教授のおかしな妄想殺人
ウディ・アレン監督/ホアキン・フェニックス、エマ・ストーン/2015年/アメリカ/WOWOW録画
今週のウディ・アレンはWOWOWで放送されたばかりの最新作──とはいっても、ロードショーではすでにこの次回作『カフェ・ソサエティ』がかかっているという。ウディ・アレンの多作ぶりに脱帽。
この作品は『マッチポイント』や『夢と犯罪』と同系統の、演出的にコミカルな味つけのほとんどない、ドライなクライム・コメディ。生きる意味を見失っていた哲学科の教授(演じるのはホアキン・フェニックス)がひょんなことから完全犯罪をもくろむという話。彼に想いをよせる女子大生役でエマ・ストーンが前作『マジック・イン・ムーンライト』につづいて、二作品連続でヒロインを務めている。
この映画で僕が好きなのは、最初から自分に対する好意を隠さないエマ・ストーンに対して、ホアキン・フェニックスが最初のうちは懸命に自制しているところ。こんなかわいい女の子(しかも生徒)に自分みたいな親父が手を出しちゃいけないと自制に自制を重ねる彼のまじめさがとても切実でいい。
でもそんなふうに恋愛に関してはモラリストとしてふるまっていた彼が、いざ殺人となるとまったく倫理観を失ってしまう。一方のエマ・ストーンはといえば、恋人と教授をふたまたにかけることにまったく躊躇しないくらい恋愛に関してモラルが低いのに、こと殺人となるといきなり道徳的になる。このふたりの倫理的な価値観の違いが最終的な悲喜劇を生むことになるわけで、このカップルの性格付けが見事だと僕は思った。まぁ、非道徳的ということではどっちもどっちなので、うちの奥さんからはこのふたり最低って評価されてましたが。
この映画はクライマックスの落ちのつけ方がとてもヒッチコック的だ。その後のラストシーンでショートカットになったエマ・ストーンをロングショットでしか映さないのもよかった。その表情をアップで見たいって気持ちも当然あるけれど、ここでは見られないところに見られないからこその味がある。
それにしても、エマ・ストーンは前作の相手役もコリン・ファースだったし、ウディ・アレンはなにゆえ彼女に年の離れた相手をあてがうんでしょうかね?
(May 28, 2017)