2017年1月の映画
Index
ファンタスティック・フォー
ジョシュ・トランク監督/マイルズ・テラー、マイケル・B・ジョーダン、ケイト・マーラ/2015年/アメリカ/WOWOW録画
新年一発目に観た映画がこれってのはちょっとどうかと思う。後悔先に立たず。
そもそもこの映画、僕は前回の映画化がいまいちだったことに対して、マーベルが「オレたちが作ればこんなにおもしろくなるんだぜっ」って作った作品だと思い込んでいたんだけれど、これが間違い。製作はふたたび20世紀フォックスだった。それでいて出来映えは前回より劣るという。
なぜにフォックスがリメイクしてまでこんな作品を作ろうと思ったのか、さっぱりわからない。CGこそ前作よりグレードアップしているんだろうけれど──とはいっても、前作も映像的にはけっこうすごかった記憶がある──、それ以外の点ではよくなったといえるところがこれといって見当たらないんだから。
キャスティングもこれといって魅力的とは思えなかったし、物語的にも平凡すぎる。前作はかなり能天気なイメージだったのに対して、今回は笑えるところほとんどがない分、なおさら救われない気がする。
手足が伸びたり、全身火だるまだったり、透明になったり、岩男だったりって。いい大人がそんな話をしかつめらしくやっちゃいかんでしょう。
僕はキャスティングいまいちとか思ったけれど、調べてみれば、主役のマイルズ・テラーは『セッション』の主役の彼だし(なんと。まったく気づかず)、ヒューマン・トーチ役は『クリード』でロッキーの後継者を演じたという黒人青年、紅一点のケイト・マーラはこの翌日に観た『ザ・シューター/極大射程』のヒロインだった。
要するに僕が知らなかっただけで、キャスティング自体は決して悪くないわけだ。それでいてこの出来ってのはもうなにをいわんや。
ふだんあまり映画を悪くいわないうちの奥さんが、観終わるなり「これって評判悪くない?」と聞いたくらいの残念な出来映え。調べてみたら、IMDbでの評価は4.3だった。そんな低い数字、最近ほかで見た記憶ないよ?
まぁ、史上最低というほどにひどいとは思わないけれど、それでもワースト・グループ入りは確実という一本だった。
(Jan 21, 2017)
ブルー・ジャスミン
ウディ・アレン監督/ケイト・ブランシェット、アレック・ボールドウィン/2013年/アメリカ/WOWOW録画
ひとつ前に観た映画があまりに残念な出来だったので、口直しにと思ってつづけて観た作品なのですが……。
これまた失敗。いや、ウディ・アレンの映画だから、当然おもしろかったんだけれど、でもこの人にはよくある俗物の愚かさを描いて苦笑を誘うシニカル路線のコメディで、あまりに救われなさすぎた。新春のおめでた気分に水を差すにはじゅうぶん。今年は映画に関しては幸先わりぃかもしれない……。
この映画でケイト・ブランシェットが演じる主人公のジャスミンは、詐欺師だった旦那さん(アレック・ボールドウィン)が捕まり、破産して無一文になった元セレブ婦人。貧乏な妹のアパートに転がり込んで、自力で一旗揚げようと思うも、これといって手に職のない彼女にはできることもなく……。
とにかくこの人のキャラクターが強烈に痛い。理想ばかり高くて内実をともなわない俗物で、しかも虚言癖の持ち主。精神安定剤を飲みまくり、精神的に追い込まれると過去の思い出に浸って、知らぬ間にひとりごとをつぶやいてしまうという危ない人。ここまで切実に駄目な人の姿を迫真の演技で見せられると、もうなんにもいえない。ケイト・ブランシェットの演技力とウディ・アレンの演出に乾杯。
脇役では妹役のサリー・ホーキンスという人とその恋人役のボビー・カナヴェイル(最近よく観るねぇ)がよかった。気のいい貧乏人って、みえっぱりの金持ちよりもよほど魅力的だ。高望みをして醜態をさらす主人公との対比で、なおさら彼らの陽気な凡庸さが好ましく思える。
そんな風に、ふつうならば冴えない駄目な人たちで終わりそうなこのふたりを、なんとなく魅力的に見せてくれてしまうところがこの映画のいいところ。やはりウディ・アレンはひと味違う。
(Jan 21, 2017)
ザ・シューター/極大射程
アントワーン・フークア監督/マーク・ウォールバーグ、マイケル・ペーニャ、ダニー・グローヴァー/2007年/アメリカ/Amazon Prime Video
スティーヴン・ハンターの傑作サスペンス・スリラー『極大射程』の映画版。原作があまりにおもしろかったので、あの傑作がどんな映画になっているのか、興味があって観てみた。
主役のボブ・リー・スワガー役のマーク・ウォールバーグも、相棒のニック役のマイケル・ペーニャも、僕が小説を読んでイメージしていたキャラとはかなり違うタイプで、なんとなく同じ作品という気がしなかったけれど、それでもまぁ、映画としてはそれなりにおもしろかった。ヒロインのケイト・マーラも、のちの『ファンタスティック・フォー』よりもだんぜん色っぽく、かつまだ若いぶん初々しくていい。
でも、この映画で印象的だったのは、そうしたキャストよりもむしろ壮大で美しい風景描写。アクション映画にしては意外なほどに風景描写に力が入っていて、アクション・シーン以外でも思いのほか映像が魅力的だった。外国の戦場にアメリカの森林地帯、フィラデルフィアの街中に雪山にと、舞台となる場所がどれもスケールの大きな美しい映像で捉えられていて、とても見ごたえがあった。
一方でやや残念だったのが、原作で僕をおおいに感心させたクライマックスの法廷劇が簡略化されていて、そのあとにいかにもハリウッドらしい西部劇的な結末がつけ加えられていたこと。
僕にとって原作のいちばんの魅力は、ボブ・リーが無法者として大暴れしたあとにどんでん返しがあり、法廷で正義の裁きが下って事態がすっきり解決するところだったので、そこが改竄されて違う形になっていたのは、やはり残念。原作のファンとしては、サム・ヴィセント老が出てこないのもさびしかった。
(Jan 21, 2017)