2016年4月の映画
Index
はじまりのうた
ジョン・カーニー監督/キーラ・ナイトレイ、マーク・ラファロ/2014年/アメリカ/WOWOW録画
以前ネット上で、とある女の子がアコースティック・ギターを弾きながら歌を歌っている写真を見て、「おー、かわいい子だな。なになに、新人バンド?」と思ったら、それがこの映画のワン・シーンでしたと。キーラ・ナイトレイかいっ! そりゃかわいくて当然じゃん! と思ったという。
そのときからあしかけ2年くらい?ずっと気になっていた作品。つい先日ツイッターでアジカンのゴッチも「おもしろかった」といっていたので、とても楽しみにしていたこの映画がようやくWOWOWで放送された。
これ、設定にはちょい意外性があった。
キーラ・ナイトレイ演じる主人公のグレタは、レコード・デビューしたばかりの恋人についてニューヨークに出てきた女の子という役まわり。彼女自身も彼と一緒になって曲を書いたりしているけれど、レコード会社から見れば、あくまで期待の新人にくっついてきたガールフレンドでしかない。
そんな彼女が、とあるNYのライブハウスに出演中の男友達からステージに引っぱり出されて一曲披露するところから物語は始まる(この時点での彼女は、彼氏に浮気されて失意のどん底にいるというのが、あとから回顧シーンであきらかになる)。
その場に偶然居あわせたのが、マーク・ラファロ演じる落ちぶれたミュージシャン兼プロデューサー。一瞬で彼女の才能に惚れ込んだ彼は、即座に契約の話を持ちかけるのだけれど、じつは彼自身もこの時点では会社を追い出されたばかり(これもあと追いでわかる)。デモを作るにもスタジオを借りるだけの資金がない。
ならばとばかりに彼が持ちかけたのが、NYでの路上ライブ・レコーディング。かくしてふたりはコネを頼りにかき集めた気のいいミュージシャンらとともに、ニューヨークの街のあちこちでゲリラ・ライヴを敢行してゆくことになる。
この映画の魅力のひとつは、そういう演奏シーンの数々を初めとして、随所でたっぷりと描かれるニューヨークの風景。主役のひとりはこの街自体といってしまいたいくらい、いい絵がたくさん。ニューヨーク好きにはたまらない映画だと思う。
もちろん、音楽映画なのだから、まずは音楽がよくないと話にならないわけだけれど、その点も当然ばっちり。意外やキーラ・ナイトレイの歌がとてもいい。ギターはさすがに素人っぽさが抜けていないけれど、飾り気のない素朴な歌声はとても素敵だと思う。
とにかく、声のいいキュートでスレンダーな女の子が、気のいい仲間たちとともにニューヨークのあちらこちらでライブ・レコーディングを繰り広げてゆくという──この設定だけでもう音楽好きにはたまらなく魅力的なわけです。
あと、この映画は共演者がふるっている。
マーク・ラファロのかつての音楽上のパートナーにして現在の所属レコード会社の社長役がモス・デフ(いつの間にか改名して、いまはヤシーン・ベイというらしい)、音楽仲間のヒップホップ・アーティストとしてシーロー・グリーンが出演している。
さらにはキーラ・ナイトレイの恋人役もすごい。序盤のレコーディング風景を見て、おいおい、この人めちゃくちゃ歌が上手いなと思ったら、なんとこれがマルーン5のフロントマン、アダム・レヴィーンでした。
なるほど、グラミー受賞者だったか。そりゃ上手くて当然。この人の見た目が、アーティストとしてのキャリアとともにどんどん変わってゆくのもおもしろい。ファンにとってはそんな彼の七変化も、なにげにこの映画の見どころのひとつかもしれない。
ということで、主役はかわいいし、映像はきれいだし、音楽も楽しいし、出演者も個性的だし、演出にもなにげに気が効いているしで、見どころたくさんの、とてもいい映画でした。
年の離れた主演のふたりのラブ・ロマンスを無理して描かなかった点にも好感が持てるよな……とか思っていたら、なんとマーク・ラファロは僕よりもひとつ年下だった。そうか、俺とキーラ・ナイトレイでは、基本的に世代が違うのか。それはちょいショック。
(Apr 10, 2016)
ゴーン・ガール
デヴィッド・フィンチャー監督/ベン・アフレック、ロザムンド・パイク/2014年/アメリカ/WOWOW録画
なんだか最近、映画や音楽の内容について、間違った思い込みをしていることが多い。
この映画もそうだった。タイトルのイメージで、幼い女の子が誘拐されて、両親が苦悩するというような話だと思い込んでいたら、ぜんぜん違うじゃん……。
まぁ、なんにしろ、ようやく観ました、デヴィッド・フィンチャー話題の最新作。
ある日突然奥さん(ロザムンド・パイク)が失踪して、旦那(いくぶん太めになったベン・アフレック)が警察に通報、捜索が始まるも、しだいにその事件の裏には通常の誘拐とは違う不自然さがあることがわかってきて……という話。
『ゴーン・ガール』というタイトルは、失踪した奥さんが人気児童文学の主人公のモデルだったことによる(僕の予想に反して子供はいない)。つまり、ある種の有名人。そんな彼女が失踪したというので、事件は世間の注目を浴び、隠されていた夫婦関係の裏事情がどんどん暴かれてゆく。そしてどんどん旦那に不利な状況になってゆく。
ただ、はやい時間からあまりにもわかりやすく彼が追い込まれてゆくので、こりゃそのままでは終わらないなというのが観ていてわかる。
するとやはりで、半分くらいで事件の真相はあきらかになるのだけれど、そこからがこの映画の真骨頂。後半は予想外の展開のオンパレードで、物語はなんとも形容しがたい気分をあおる結末へとなだれ込んでゆく。
いやぁ、妙に怖いぞ、この映画の終盤の展開。表面的にはハッピーエンドを装って、感動的な音楽の使い方がされているのがじつに効果的。なんともいえなく不気味だ。
そうだ、デヴィッド・フィンチャーって『セブン』の監督でしたっけねって。ひさびさにそのことを思い出させる、あの映画とはまるで違うのに、どこかで通じるものを感じさせる作品。いやぁ、おもしろかったけど、自分がベン・アフレックの立場だったらと想像するとすげー嫌です。
(Apr 10, 2016)
映画「ビリギャル」
土井裕泰・監督/有村架純、伊藤淳史/2015年/日本/WOWOW録画
最近は観た映画の感想、すべてを書いているわけではなくて、夕食どきに家族そろって食事をしながら観たりした映画については、感想を書かずに済ませた作品がぽつぽつある。『アナと雪の女王』とか、『ベイマックス』とか。おもにアニメ中心で、まぁ、どれもそれなりにおもしろかったけれど、じゅうぶんに集中して観たとはいえないし、これといって書きたいと思うこともないから、なしで済ませてしまった。
これも本来ならそのうちの一本になるはずだった作品。
そりゃ有村架純はかわいいと思うけれど、物語的にはそれほど感銘を受けなかったし(基本涙もろいもんで適度に涙腺を刺激されはしましたが)、映画本編についてはこれといって書くべきことも、書きたいこともないんだけれど、それでも今回はいちおう書いておかねばと思ったのは、ひとえにエンド・クレジットでかかるサンボマスターによる主題歌、『可能性』のせい。
だっておもしろくないですか、あの山口くんの歌にあわせて、有村架純ちゃんたちが口パクで歌うたってるのって?
僕にはそのミスマッチがとてもおもしろかった。そもそも、本編には出てもいないサンボマスターの面々まで、エンド・クレジットには顔を出しているし。これはちょっと記録を残しておかなくてはいけないって気になってしまいました。
ということで以上、中身がなくて失礼。
(Apr 10, 2016)
24 -TWENTY FOUR- リブ・アナザー・デイ
キーファー・サザーランド、メアリー・リン・ライスカブ/2014年/スカパー!録画
全12話と旧来の半分のボリュームで復活した『24』の新シリーズ。
今回のシリーズの舞台はアメリカではなくイギリス。ロンドン訪問中のアメリカ大統領──国防長官時代にジャックのボスだったジェームズ・ヘラー(ウィリアム・ディヴェイン)──を狙った無人戦闘機によるハイジャック・テロを阻止すべくジャックが再登場する。
前のシーズンがどうやって終わったかすでに忘れいるのだけれど、そのとき以来4年間にわたって海外で潜伏生活を送っていたジャックが、国際手配犯としてCIAロンドン支局に追われている、という意外な展開で物語は始まる。
CIAがテロリストを捕まえようとしているのかと思ったら、そのお相手はジャックだったと。このオープニングの意外性はばっちり。
さらにはCIAにはジャックだけではなく、懐かしのクロエ(メアリー・リン・ライスカブ)も拘束中だというのがわかって、新シリーズは一話目からなかなかの盛りあがりだった。その後も期待を裏切らない派手な事件の連続で──なんと終盤にはウェンブリー・アリーナの爆撃シーンがあったりする――、ひさびさの『24』は予想していたよりもおもしろかった。エピソードが全12話ってのもほどよい感じで、このシリーズはこれくらいがちょうどいい気がした。
今回のシリーズでいちばん好印象だったのは、準主役的な役割を果たすCIAの女性捜査官ケイト・モーガン(イヴォンヌ・ストラホフスキー)。事件解決のためならば少々の脱線は厭わない、いわば女性版ジャック・バウアーみたいな人で──とはいえ、さすがにジャックほどには非道ではないので、彼女が活躍するシーンはとても安心して見ていられた。まぁ、そのぶん彼女が拷問を受けるシーンはとても正視にたえなかったけれど。今回のもっとも嫌なシーン・ナンバーワン。
キャスティングでは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』にフィン役を演じていた黒人俳優ジョン・ボイエガが無線機を乗っ取られる軍人役で出演しているのも、なにげに要チェック。
(Apr 24, 2016)