2010年2月の映画
Index
- チェ・ゲバラ -人々のために-
- ヘルボーイ
- レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード
- ヘルボーイ ゴールデン・アーミー
- チェンジリング
- バニラ・スカイ
- ブッシュ
- NO DISTANCE LEFT TO RUN
- ハスラー
- 恋愛上手になるために
- ミッドナイト・エクスプレス
チェ・ゲバラ -人々のために-
マルセロ・シャプセス監督/1999年/アルゼンチン/BS録画
ソダーバーグの映画ではゲリラ活動を中心とした局所的なとりあげられ方をしていたので、もっと全体像がわかればと思って観てみたチェ・ゲバラのドキュメンタリー映画。
アルゼンチンの映画ということだけれど、画面サイズが4:3なので、これはもしかしたら劇場版ではなく、テレビ・ドキュメンタリーかもしれない。まあ、古い記録映像が主なので、ワイド・スクリーンにする意味がなかったのかもしれないけれど。
いずれにせよ、残念ながらこれも印象的にはソダーバーグの映画と同様、チェ・ゲバラを知っている人向けの補足資料的なドキュメンタリーという感じだった。
ほとんど全編、チェと交流があった人たちのインタビューだけで構成されていて、その合間あいまに貴重な記録映像が挿入されてはいるものの、細かい説明はまるでなし。各人がチェにまつわる思い出話を披露してゆくのが主で──まあ、なかにはおもしろい話もたくさんあったけれど──、キューバ革命に関する解説もなければ、カストロもほとんど出てこない。僕としてはチェの生涯を、キューバの革命史や国際状況など、時代の流れを踏まえて説明してくれるようなやつを期待してたので、やや期待はずれだった。
まあ、チェ・ゲバラという人は、国家の
(Feb 02, 2010)
ヘルボーイ
ギレルモ・デル・トロ監督/ロン・パールマン、ジョン・ハート/2004年/アメリカ/BS録画
このところ、アメコミ・オリジナルの実写映画にもすっかり食傷気味なんだけれど、これは監督が 『パンズ・ラビリンス』 のギレルモ・デル・トロだというので、観てみることにした。
直訳すると「地獄少年」なるこの映画の主人公は、その名のとおり悪魔の子。第二次大戦中にナチの協力を受けたロシアの怪僧ラスプーチン(!)によって魔界から呼び出され、その現場を襲撃したアメリカ軍により保護されて、FBIによって育てられたという、ものすごい設定になっている。
悪魔といえば、赤い体に尾っぽと角があるというのが相場だけれど、ヘルボーイはこのパブリック・イメージをそのまま踏襲しているところがミソ。ただし身体的にはやたらとマッチョで、角は根元から切り落とされている。さらに右手はなぜだか巨大(この辺のわけは、おいおいわかる)。
とにかく、このちょっぴりエキセントリックでマッチョな悪魔が、FBIのエージェントとして魔界からやってきたモンスターを退治するという、これはそういう、いかにもマンガ的な話。仲間は超能力を持った半魚人と、炎をあやつるトラウマ美女(演じているセルマ・ブレアという女優さんは、なんとなく鷲尾いさ子に似ている)。
物語は要するに、適度にギャグや純愛を絡めた、モンスター・バトルものだ。キャラクターデザインこそ、いかにもアメリカ的だけれど、設定やストーリーに関してだけいえば、いままでに観たアメコミ映画のなかでも、とびきり日本のマンガに近い気がした。最近の少年ジャンプで連載していてもおかしくなさそうな話だった。
(Feb 05, 2010)
レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード
ロバート・ロドリゲス監督/アントニオ・バンデラス、ジョニー・デップ/2003年/アメリカ/BS録画
ロバート・ロドリゲスの“エル・マリアッチ”三部作の完結編──というか、正しくは最後の一本。
この三部作は、三部作といいながらも、それぞれ連続しているわけではなく、同じ設定を共有しながら、ゆるくつながっているという感じなので、前の話を意識しすぎると、かえってわけがわからなくなると思う。要するに「元ギター弾きのガンマンが、権力者の愛人と恋に落ちたあげくに、その人を殺されてしまい、復讐に乗りだす」というプロットを、形を変えながら繰り返しているだけだから。それぞれ別の作品として見るべき作品なんだろう。
一作目の 『エル・マリアッチ』 は、単なる音楽家が殺し屋と勘違いされたことから巻き起こる騒動を描いたバイオレンス・コメディ。
二作目の 『デスペラード』 は、そこから生まれた「ギターをかかえた殺し屋」というヒーロー像を全面に押し出したバイオレンス・アクション。
そしてこの三作目では二作目のスタイルを踏襲した上で、さらに軍部とギャングとCIA、三つ巴のクーデター劇を描くという、大風呂敷を広げてみせている。
印象的には、『デスペラード』 に 『ワールド・オブ・ライズ』 のようなCIAスパイものを、五分で掛けあわせたような感じ。ややこしいスパイ工作による陰謀劇に、このシリーズの特徴であるデフォルメされた派手な銃撃戦が加わったところに、おかしな味があった。
キャスティングの目玉はクーデターを裏であやつるCIAエージェント役で登場するジョニー・デップ。物語はこの人を中心に展開するので、主役のアントニオ・バンデラスよりも目立っている。そのほか、ミッキー・ローク、エヴァ・メンデス、ウィレム・デフォー、エンリケ・イグレシアスと、脇役も豪華だ。
(Feb 10, 2010)
ヘルボーイ ゴールデン・アーミー
ギレルモ・デル・トロ監督/ロン・パールマン、セルマ・ブレア/2008年/アメリカ/BS録画
FBI捜査官として魔物たちと戦う悪魔の子、ヘルボーイの活躍を描くシリーズ第二弾。
続編が一作目より派手になるというのは世の習いだけれど、これはまさに続編の典型という感じ。特殊効果で登場するモンスターが倍増している。
いや、もとい。倍増どころの話じゃない。そういえば前作では一匹しか出ていなかったのに対して(少なくても僕は一匹しか覚えていない)、こちらは両手で足りないくらいに、さまざまなモンスターが出てくる。サイズも巨大なやつから虫ケラのようなやつままで、バラエティ豊か。ヘルボーイの新しい上司として、得体の知れないガス人間も登場しているし、フリーキーさは格段にパワーアップしている。
作品のカラーもいくぶん変わった。前作はヘルボーイ(ロン・パールマン)が闇の存在として被差別的な扱いを受けていたり、彼のガールフレンド、リズ(セルマ・ブレア)が心を病んでいたりという、暗い側面があったけれど、今回はそういったシリアスさはあまりない。ヘルボーイはあっけらかんと人前に姿をさらしてしまうし、リズも前作のナーバスさが嘘のようにたくましくなっている(彼女の変化を表しているのか、彼女の発する炎の色も変わった。前作ではガスバーナーのように青かったのに、今回は赤くなっている)。
要するに前作で主人公のヘルボーイに関する紹介が終わったので、今回はより派手なモンスター・アクションを見せようとしたんだろう、おそらく。過去の逸話を人形劇仕立てで見せるオープニングなども洒落ているし、物語としてはありきたりだけれど、映像的にはとても見どころの多い作品だった。
(Feb 14, 2010)
チェンジリング
クリント・イーストウッド監督/アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ/2008年/アメリカ/BS録画
ひどい話だなあと思う映画は数あれど、もしもひどい話ランキングというのがあるならば、これは確実にそのトップ10に入れたくなるような作品。それも単にひどいだけではなく、実話に基づいているというんだから恐れ入る。
だいたいにして、自ら親である身としては子供が行方不明になるってだけで十分ひどい話なのに、そのあとで主人公を襲う運命がまた、なんだそりゃってくらいに悲惨なのだからたまらない。
そのあまりの非道さに、正義を求める心がむくむくと湧きあがってきて、目が離せなくなる。これはそういう映画。物語としては、決して「いい話」ではないけれど、映画としてはとても力強い、いい映画だと思う。
惜しむらくは、悪いことをしていたやつらが、それ相応の報いを受けているように見えないこと。不正が暴かれて職を追われる警部とか、まるで反省しているようには見えないし、アンジェリーナ・ジョリーにひどいことした精神科医や心理学者あたりの端役には、なんのおとがめもない。平凡人たる僕としては、あんなやつらは一網打尽にして、こてんぱんにして欲しかった。
まあ、そういうところを単純な勧善懲悪として描かないのが、いま現在のイーストウッドにとってのリアリティなのかもしれない。いや、イーストウッドという人は昔からそういう人で、そういう映画ばかり撮っているような気もしてきた。
いずれにせよ、とてもいい映画だった。もしかしたらこれまでに観たイーストウッド監督の作品でいちばん好きかもしない。
(Feb 14, 2010)
バニラ・スカイ
キャメロン・クロウ監督/トム・クルーズ、ペネロペ・クルス/2001年/アメリカ/BS録画
キャメロン・クロウにしては珍しくスリラーだというし、トム・クルーズもそれほど好きでないので、あまり興味は湧かなかったんだけれど、いまやキャメロン・クロウの作品で観てないのはこれだけだし、ポール・マッカートニーがテーマ曲を提供しているそうだから、やっぱ観ておくべきだよなあと思って観たこの作品だけれど……。
いやぁ、ヒロインのペネロペ・クルスがあまりに可愛いんで、びっくりでした。可愛いというか、きれいというか。この前、『ボブ・ディランの頭のなか』 を観たときにもきれいな子だなあと思ったけれど、ちょい役だったあの映画と違って、こちらはヒロイン。当然、出番は多いし、おまけにあの時より2歳ほど若い。いやー、もう可愛いこと、この上なし。主人公がキャメロン・ディアスを見限って、彼女に走ってしまうのも当然に思えてしまった。
なんでもこの作品、もともとスペイン映画のリメイクだとのことで、そのオリジナル版のヒロインもペネロペ・クルスなのだそうだ。その映画を観たトム・クルーズがぞっこん惚れこみ、自ら製作に乗り出したんだそうだけれど、もしかして彼がほれ込んだのは作品じゃなくて、ペネロペ・クルスだったんじゃないかと勘繰りたくなるくらい、この映画の彼女は可愛かった。いまさらながら、この人も今後は要チェック。
まあ、映画自体もなかなかおもしろい。トム・クルーズ演じる大手出版社の超セレブな青年社長が、どこからが夢でどこからが現実だかわからない、悪夢のような悲運に見舞われるというチャーリー・カウフマンっぽいミステリ・タッチのスリラーで、僕はまあまあ好きだった。キャメロン・クロウらしく、音楽的にもレディオヘッドや R.E.M.、ストーンズなどがガンガン使われていて僕のつぼだし、これで主役がトム・クルーズじゃなかったら、すぐさまDVDを買いに走ってしまいそうな作品。
(Feb 18, 2010)
ブッシュ
オリヴァー・ストーン監督/ジョシュ・ブローリン、ジョージ・クロムウェル/2008年/アメリカ/BS録画
オリヴァー・ストーン監督による第43代アメリカ大統領、ジョージ・W・ブッシュの伝記映画。
この映画でおもしろかったのは、登場人物の多くが、実際の人物に適度に似ている点。ジョシュ・ブローリンの演じる主人公のブッシュをはじめとして、父ブッシュ(ジョージ・クロムウェル)、チェイニー(リチャード・ドレイファス)、ライス、パウエル、ラムズフェルドといった、政治音痴な僕でも名前を知っている人たちがたくさん出てきて、なおかつそのうちの何人かは、名前を聞かずとも見た瞬間にその人だとわかる。あきらかに本物ではないのに、「あ、ライス国務長官だ」と思う程度には似ている。そこがちょっとばったもんっぽくて、基本的に真面目な映画な分だけ、ミスマッチなおかしさがあった。
あと、意外だったのは、オリヴァー・ストーンがそれなりに中立的な立場でブッシュを描いていること。少なくてもマイケル・ムーアが 『華氏911』 でやったみたいに、徹底的にこき下ろしたり、一方的に悪役に仕立て上げたりはしていない。いろいろと問題のある人ではあるけれど、この人はこの人なりにアメリカ大統領となるだけの特別な何かを持った悩み多き人なんだという風に描いている。少なくても僕の目にはそう映った。
おかげでこの映画のブッシュは、決してそれほどの悪役には見えない。それどころか、ある種のアウトロー的なアメリカン・ドリームの体現者として、それなりに魅力的でさえある。なので、反戦主義の立場からブッシュをこき下ろしたいという人には、いまいち釈然としない作品なのではないかという気がした。
なんにせよ、誰もが知っている現代史の裏側を、アメリカの施政者の立場から描いてみせたこの映画には、それだけでも一興と思えるおもしろさがあった。邦題は 『ブッシュ』 だけれど、原題がブッシュのミドルネーム(イニシャル?)の 『W.』 なところも気がきいている。
(Feb 22, 2010)
NO DISTANCE LEFT TO RUN
ディラン・サザーン&ウィル・ラヴレース監督/ブラー/2010年/イギリス/DVD
ブラーの再結成ツアーの模様を追いながら、彼らのキャリアを振り返ってみせるドキュメンタリー・フィルム。
この映画は新旧のライブ映像とインタビューに加え、ツアーで回ったイギリスの各地のスナップショットにより構成されている。
このブラーとはまるで関係のない映像がポイント。ありふれた風景描写やライブ会場のファンの様子などを捉えたそれらの映像がとてもシャープで魅力的。まるでブラーとまわるイングランド・バーチャル・ツアーとでもいった感じで、この映画を単なる人気バンドのドキュメンタリーという以上の、独立した一個の映像作品と呼べるまでに高めていると思う。これならブラーに関心のない人でも、ある種のロードムービーとして楽しめそうな気がする。おみごと。
まあ、基本的にブラーのキャリア総括と再結成までのいきさつを描くのが主眼で、演奏シーンは断片的だから、ライブ映像に期待すると、ややもの足りない気もする。ただ、その分はツアーのとりを飾るハイド・パークでのコンサート映像が別にあって、DVDでは両方がセットになっているので、不満を感じる人はいないだろう (時間がなくて、そちらはまだ未見)。
なんにしろ、ケンカ別れてしていたギタリストのグレアム・コクソンが仲間たちと再会するくだりとか、松本大洋のマンガみたいで、けっこう感動的だし、これはファンにとってはまたとない贈りものなんじゃないかと思う。あまり熱心なリスナーではない僕でも、十分に楽しめた。
ちょっと前に観たゴリラズのライブ(数年前のやつ)もおもしろかったし、このところブラー&デーモン・アルバーンが個人的にリバイバル・ブーム中……と言いたいところだけれど、なかなか聴き直している時間がないのが悩みの種。
(Feb 22, 2010)
ハスラー
ロバート・ロッセン監督/ポール・ニューマン、パイパー・ローリー/1961年/アメリカ/BS録画
若き日のポール・ニューマン主演のビリヤード映画。ビリヤード経験にとぼしい僕としては、あまり惹かれなかったのだけれど、All Movie Guide では五つ星(満点)だし、なによりマーティン・スコセッシが続編を撮っているので、とりあえずそれより前に押さえておかないわけにはいかないだろうという作品だった。
この映画、オープニングがうまい。見知らぬ町のバーを訪れたポール・ニューマンとその連れが、バーの亭主に自分たちは会議のためにやってきた営業マンだと自己紹介する。店主同様なにも知らない僕は、素直にああそうなのかと思う(馬鹿?)。
そのうち、ふたりは暇つぶしをよそおって、その店で賭けビリヤードを始める。ポール・ニューマン演じるエディは、その間ずっとショットでバーボンをあおっている(彼のお気に入りの銘柄はJ.T.S.ブラウンというやつ。今度飲んでみないと)。で、酔っ払って賭けに負けまくる。
ニューマンが悔しがって再勝負を挑むも、相棒はたしなめるばかりで取り合わない(このあたりでようやく僕も、あぁそうかと思う)。やがてふたりの勝負を見ていた野次馬が、代わりにその賭けを買って出る。
かくしてシーンが切り替わり、店の前に止めてあった車に乗り込んだエディが、パンパンにふくらんだ財布を相棒に放り投げてみせる。それだけで、いままでの取りがバーの客から金を巻き上げるためのペテンだったことがわかるという仕組み。タイトルの 『ハスラー』 はビリーヤードをする人という意味ではなく、そんな風にギャンブルで人を騙すペテン師という意味らしい。いやはや、みごとに騙されました。
まあ、評判がいいだけあって、なかなかおもしろい映画だったけれど──特にふとっちょダンディなミネソタ・ファット(ジャッキー・グリーソン)がいい味だしている──、部分的にしっくりこない部分がなきにしもあらず。なにを好き好んで30時間以上もぶっつづけでビリヤードをしなくちゃなんないのかわからないし、ヒロイン・サラの性格付けもいまいち曖昧な気がした。
そういえばサラを演じるパイパー・ローリーという女優さん、どこぞで名前を見たおぼえがあると思ったら、 『ツイン・ピークス』 のキャサリン・マーテル役の人でした。おー。
(Feb 22, 2010)
恋愛上手になるために
ジェイク・パルトロウ監督/マーティン・フリーマン、グウィネス・パルトロウ、ペネロペ・クルス/2008年/アメリカ/BS録画
ペネロペ・クルスとグウィネス・パルトロウが競演しているというので、それはぜひ観ておかないとと思った作品だったけれど、これはひさしぶりのハズレ。あまりに見どころに乏しかった。
そもそも、時代を代表するような美女ふたりをキャスティングしておきながら、せっかくのこのダブル・キャストがまるで生きていない。
グウィネス・パルトロウは同棲相手との不仲に悩んでばかりで、笑顔をほとんど見せないし、ペネロペ・クルスも、主人公が夜ごと見る夢に出てくる謎の美女というバーチャルな役どころゆえ、セクシャリティをひけらかすばかりで、きれいっちゃあきれいだけれど、あまり魅力的でない。
これがアカデミー賞を狙うようなシリアスなドラマならいざ知らず、どう見たって立ち位置はコメディなんだから、それだったらば、せっかくの美女たちに輝かんばかりの笑顔を振りまかせないでどうすると思う。宝の持ちぐされもいいところだ。
しかもこれ、コメディといっても、ほとんど笑えない(もしかしたらコメディじゃないのかもしれない)。シリアスなドラマかというと、そうじゃないくせして、笑えるかというと笑えない。その上、たまのギャグは下ネタ頼りだから困りもの。
主役のマーティン・フリーマンという人──『銀河ヒッチハイク・ガイド』 の主役の人だそうだ。僕が観たことのある映画だと 『ラブ・アクチュアリー』 でポルノ男優の役を演じていた人──も、なんでこの人が主役なんだと不思議に思ってしまうくらい冴えない。主演の男女ともにあまり魅力的でない、笑えないコメディって、いったい……。
まあ、エンディング近くに思わぬサプライズがあって、ちょっとだけ盛り返したけれど、それまでのマイナス気分をひっくり返すまでには到らず。邦題もなんだかなあって感じだし、にわかに盛り上がった僕のペネロペ・クルス・フィーバーに水をさすような、残念な一品だった。
ちなみに監督のジェイク・パルトロウは名前で想像がつく通り、グウィネス・パルトロウの弟さんだとのこと。つまりコールドプレイのクリス・マーティンの義理の弟。
そのコネというわけでもないんだろうけれど、この映画には主人公のバンド時代の知り合いという設定で、パルプのジャーヴィス・コッカーが出ている。いや、出ているどころか、この映画は彼へのインタビューから始まるのだった。ロック・ファンとしては、このオープニングのサプライズこそが一番の見どころって気がしなくもない。
(Feb 23, 2010)
ミッドナイト・エクスプレス
アラン・パーカー監督/ブラッド・デイヴィス/1978年/アメリカ/BS録画
トルコからハッシッシを持ちだそうとして捕まり、不当な判決をうけて長期の刑務所暮らしを強いられたというアメリカ人青年の実話にもとづく長編映画。
タイトルの 『ミッドナイト・エクスプレス』(深夜特急)は、主人公が収監される刑務所に伝わる「脱走」を意味する隠語。物語の途中でそういう紹介があったので、『大脱走』 や 『アルカトラズからの脱出』 、『ショーシャンクの空に』 の系列につらなる脱走映画の一本かと思ったら、さにあらず。最終的に主人公は脱走に成功するけれど、そこには先に上げた諸作のような、「そのためにいかに知恵を凝らしたか」というような意外性はない。
この映画が主眼としているのは、脱走に到る過程よりも、自らの愚行により、割にあわない苦行を強いられることになった人々の苦悩する姿。みずから招いたこととはいえ、因果応報というにあまりある、その哀れなる監獄生活を重厚なタッチで描いてゆく。決して好きなタイプの映画ではないけれど、なかなか観ごたえはあった。
監督は 『エンゼル・ハート』 『ミシシッピ・バーニング』 『エビータ』 などのアラン・パーカー。脚本はなんと監督デビュー前のオリヴァー・ストーン。彼はこの映画でアカデミー賞の最優秀脚色賞を受賞しているんだそうだ。『プラトーン』 で監督賞を受賞する8年前の話。人に歴史ありですね。
(Feb 28, 2010)