2007年11月の映画
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マンハッタン殺人ミステリー
ウディ・アレン監督/ウディ・アレン、ダイアン・キートン/1993年/アメリカ/DVD
ヒッチコックやビリー・ワイルダーなどの古典ミステリ映画へのオマージュ的な色彩の強い(と思われる)ウディ・アレンのサスペンス・コメディ。作中でビリー・ワイルダーの 『深夜の告白』 がフィーチャーされていて、その映画を未見の僕は、そちらを先に見ておかなかったことをちょっぴり後悔した。
この映画の主人公はマンハッタンに居を構える中年夫婦のラリーとキャロル。子供が自立して二人きりで暮らすようになって間もない彼らは、趣味の違いもあって、すれ違い気味の日々を送っている。とくに出版社で働く旦那とは違い、奥さんのほうが退屈を持てあまし気味。
そんな折に、知り合ったばかりのとなりの老婦人が急死する。キャロルはその亭主がまるで悲しみの色を見せていないことを怪しみ、これは殺人に違いないといい出して、いやがるラリーをよそに、探偵のまねごとを始めるのだった。
配役は、主演がおなじみのウディ・アレンとダイアン・キートンのカップルで、脇をかためるのが 『アビエイター』 で嫌味な上院議員を演じてアカデミー賞にノミネートされたアラン・アルダと 『アダムス・ファミリー』 のお母さん役のアンジェリカ・ヒューストン(この人はジョン・ヒューストンの娘さんなんですね)。恥ずかしながら助演の二人は、あとで調べるまでそれと気がつかなかった。それと殺人の容疑を受けるジェリー・アドラーは、『ザ・ソプラノズ』 にユダヤ人の役で出ている人。
作品自体については、ウディ・アレンの脚本がとても気に入った。殺人事件の捜査に乗りだして、「こんなスリリングな経験はめったにできないわ」と浮かれ気味の奥さんと、そんな彼女にひっぱりまわされながら、ウィットに富んだぼやきを連発する旦那の対比が最高におかしい。中盤にデヴィッド・リンチかと思うような不条理感あふれる展開を用意しておきながら、最後はまっとうなミステリとして、スタイリッシュにまとめて見せたのも上手い。あいかわらず映像的な面ではそれほど惹かれないのだけれど、ことささいなセリフのおもしろさではこの人はダントツだ。
いつの間にか僕はウディ・アレンがとても好きになっている。
(Nov 17, 2007)
シリアナ
スティーヴン・ギャガン監督/ジョージ・クルーニー、マット・デイモン/2005年/アメリカ/DVD
この映画の監督のスティーヴン・ギャガンはソダーバーグの 『トラフィック』 で脚本を手がけた人だそうで。なるほど、平行したいくつかのプロットを同時進行で描いてゆく手法は、ほぼあの作品と一緒。ただ、あちらはメキシコ絡みの麻薬取引の話だったけれど、こちらは石油の利権をめぐる陰謀劇。ということで、スケールはより大きく、話はよりわかりにくくなっている。
いやほんと、わかりにくいというか、おもしろくないというか……。キャラクターひとりひとりの行動原理がはっきりしないので、物語の展開がよくわからない。ジョージ・クルーニー演じるCIA工作員や、マット・デイモン演じる経済アナリストが、なんのためになにをしてるのか、さっぱりわからなかった。人々の行動の理由付けがわからないので、物語がすんなりと頭のなかに入ってこない。徹頭徹尾「なんでそうなるの?」みたいな展開の連続で、あまりにわからないので、最後の方は不覚にも、うとうとしてしまった。おかげでクライマックスの派手な爆発シーンにびっくり。目が覚めました。
わからないといえば、これでジョージ・クルーニーがアカデミー賞の助演男優賞というのもよくわからない。それほどすごい演技をしていたようには思えないのだけれど……。なんたって出番も少ないし(それゆえ助演かとは思う)。もしかして役作りのために贅肉でぼてぼてになったおなかと、アラビア語をしゃべってみせた努力が買われたということなのかな、などと思ってしまった。
(Nov 30, 2007)
24 -Twenty Four- シーズンV
ジョン・カサー監督ほか/キーファー・サザーランド/2006年/アメリカ/DVD
今回はオープニングの10分でいきなり某重要キャラクターが暗殺され、ジャック・バウアーがその犯人の濡れ衣を着せられるという展開。潜伏中だったジャックは、クロエからの緊急連絡をうけて、そのことを知るや、即座に行動を開始。自らの潔白を証明し、殺された友人の
以降、物語はたいだい1~2時間ごとに事件が発生しては解決するというパターンで、五月雨式に小気味よく展開してゆく。この小規模テロが数珠つなぎになったようなところが今回の特徴。また、政府中枢部にテロへの加担者がいたことから、CTUが別組織への吸収合併騒ぎにまきこまれることになる。
それにしても、一部ではシリーズ最高傑作との呼び声もあるらしいこのシーズン5だけれど、個人的にはいまひとつだった。どうにも部分的なストーリー展開がいい加減で、しらけてしまう場面が多かった。
たとえば冒頭のシーン。某氏が暗殺されたわずか10分後には、ジャックがテレビのニュース番組でそのことを知って、呆然としている。あり得ないでしょう、そこまで迅速なニュース報道。わずか30分足らずで大統領が記者会見を開いたりしているし、リアルタイムのドラマというコンセプトが、今回はすっかり破綻してしまっている。
そのほかにも、拷問を受けて昏睡状態に陥ったはずの人物が、あっけなく意識を取り戻して、○○○を殺して(涙)逃げ出しちゃったりとか、なんだか観ていて、おいおいそれはないんじゃないかというシーンが随所にあって、いまひとつ乗り切れない。前のシーズンで棚ぼた式に大統領になったチャールズ・ローガン(グレゴリー・イッツェン)が、あれから1年半たったいまでもまだ大統領をつとめていて、今回は非常に重要な役割を果たしているのも、すっきりしない気分の原因のような気がする。まあ、この人の場合、あいもかわらぬその小人物ぶりが徹底していて、なかなか味のある貴重な嫌われキャラかもしれないとも思わないでもないけれど……。ちなみに今シーズンの副大統領は、ローラ・パーマーのお父さん(@ツイン・ピークス)だそうです。
まあ、そんなわけで、あいかわらずおもしろいっちゃあ、おもしろいのだけれど、一方でそろそろ食傷気味かなという感じもしてきた 『24』 だった。ということで、シーズン6も観るのはおそらく1年後の予定。
(Nov 30, 2007)