2007年3月の映画
Index
- マイ・ハート、マイ・ラブ
- フォレスト・ガンプ
- インソムニア
- ミセス・ダウト
- 潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ
- 華麗なる賭け
- 月の輝く夜に
- アフリカの女王
- グローリー
- 3人の逃亡者
- グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち
マイ・ハート、マイ・ラブ
ウィラード・キャロル監督/アンジェリーナ・ジョリー、ショーン・コネリー/1998年/アメリカ/BS録画
『Xファイル』 のジリアン・アンダーソンがスカリー以外の役を演じていることに興味をおぼえて観てみた作品。
出演者は彼女をはじめ、アンジェリーナ・ジョリー、デニス・クエイド、ジョーン・コネリー&ジーナ・ローランズ ( 『グロリア』 の主演の人だけれど、いまやすっかりお婆さん)、マデリーン・ストウ、エレン・バースティン ( 『エクソシスト』 の母親役の人とのこと) という、とても豪華な顔ぶれ。この俳優陣が、それぞれ別々の六つのドラマを平行して演じている。それぞれの話がどういう関係なのかは、観てのお楽しみ。
おめあてのジリアン・アンダーソンは、恋愛に臆病なバツいちの舞台演出家という役回り。彼女の相手役をつとめるジョン・スチュワートという人は、どこかで見た顔だと思ったら、以前MTVミュージック・アワードで司会をつとめていたコメディアンだった(でもこの映画では笑いをとるシーンは皆無)。
髪を赤く染めたアンジェリーナ・ジョリーは、ディスコ──いまはクラブというべきなんだろうか──で出会った青い髪のライアン・フィリップを相手に、その派手な言動に似合わない純愛を演じてみせる。ショーン・コネリーとジーナ・ローランズは、結婚四十周年を間近にひかえ、過去の旦那の(精神的)浮気が発覚して、仲たがいする老夫婦役。マデリーン・ストウはホテルで密会を続ける人妻役で、出番はホテルの部屋の中ばかり。
残りのふたつ、デニス・クエイドがバーで見知らぬ女性たちを相手に嘘をつきまくる話と、エレン・バースティンがエイズで死にかけている息子と最後のときを病室で過ごすエピソードは、恋愛劇とはいえないけれど、それでもやはり愛がテーマの話と言えなくもない。前者は嘘八百を並べて、ゆきずりの愛を求める男の話(という見せかけで実は……、というところがなかなかだ)、後者は同性愛の悲しい末路と、それを見つめる母性愛を描いている。
ということで六つの愛の形を同時並行で描いて、最後にそれをうまくまとめて見せたこの作品。脚本もよく書けていると思うし、場面の切替や音楽の使い方など、演出面でもスタイリッシュだし、なかなかよかった。
(Mar 03, 2007)
フォレスト・ガンプ/一期一会
ロバート・ゼメキス監督/トム・ハンクス/1994年/アメリカ/BS録画
知能指数は平均以下だけれど、運動能力は超人的という、ひとりの青年の半生を、ベトナム戦争や冷戦下にあった二十世紀後半のアメリカの社会背景をたっぷりと盛りこんで描くコメディ・ドラマ。
この映画を観るのは二度目なのだけれど、不思議なくらいストーリーをおぼえていなかった。トム・ハンクスが実物のJFKやジョン・レノンと共演したりする、なかなかおもしろい映画だったという印象が記憶の片隅にあっただけ。以前、東京ドームシティにある、この映画をモチーフにしたレストラン《ババガンプシュリンプ》で食事をしたときも、いったいこの店が映画とどういう関係があるんだろうと首をひねっていたくらいの忘れようだった。
で、今回も観てからまだ一週間しかたたないというのに、すでにどんな話だったか、忘れかけている。なんだか知らないけれど、この作品は僕の心のなかの記憶装置のスイッチをオフにしてしまうらしい。アカデミー作品賞を含む6部門を獲得したくらいだから、もっと強く心に残るものがあってもよさそうなものなのにと、われながら不思議に思う。
考えてみるに、主人公をとりかこむ重要なサブキャラクターたち──母親(サリー・フィールド)、ジェニー(ロビン・ライト)、ダン中尉( 『アポロ13』 でもトム・ハンクスと共演しているゲイリー・シニーズ)──といった人々の人物造型に、あまり深みが感じられないところがネックになっている気がする。僕の趣味からすると、みんなもうすこし鬱屈していて欲しかった(まあそうじゃないからこそ、コメディになりえているのかもしれないけれど)。
特にヒロインのジェニー。彼女があまり魅力的に描けていないと思う。この作品はアカデミー賞14部門にノミネートされているにもかかわらず、そのなかに主演女優賞も助演女優賞も含まれていないんだから、そう思ったのは僕だけじゃないんだろう。
ロビン・ライトという女優さんを
彼女の演じるジェニーという役は、ある意味では主人公と同じくらい重要な役回りだと思うだけに、できればもっともっと存在感のある女優さんをキャスティングして欲しかった。もしもジェニーを演じるのが、思わず
(Mar 10, 2007)
インソムニア
クリストファー・ノーラン監督/アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンク/2002年/アメリカ/BS録画
白夜のアラスカでおこった殺人事件の応援のため、その土地を訪れた老刑事が、不眠症に悩まされながら、悪夢のような経験をするという話。
クリストファー・ノーランが 『バットマン・ビギンズ』 のひとつ前に撮った作品で、ノルウェー映画のリメイクなのだそうだ。タイトルのインソムニア(insomnia)は不眠症のこと。
いや、それにしてもこの映画はオープニングからムード満点。アラスカの冷たい空気をパッキングして見せたような映像が、これから始まる物語の迫力を予告しているようで、ぐいっと作品の世界に引きずり込まれてしまった。
物語自体は、観ていてとても困った気分にさせられる手のもので、あまり好きだとは言えないのだけれど、映画としては上出来だと思う。クリストファー・ノーラン、すごいかもしれない。これは一日も早く、彼の出世作である 『メメント』 を見ないといけない。
観ているこちらまで不眠症にかかってしまったような気分にさせられるアル・パチーノの演技もいい。これを観ると、二十四時間ずっとあかるいままなんて白夜の土地へは行きたくなくなる。いやまあ、このところ年がら年中、寝ぼけっぱなしな僕の場合、いまさらどこへ行ったって、不眠症になんか、かかりそうもないけれど。
(Mar 10, 2007)
ミセス・ダウト
クリス・コロンバス監督/ロビン・ウィリアムズ、サリー・フィールド・ピアース・ブロスナン/1993年/アメリカ/BS録画
離婚して子供たちから引き離された子煩悩な声優が、家政婦に変装して一家にまい戻るというコメディ。これまでに観たロビン・ウィリアムズの映画のなかでも、この人の芸達者ぶりがもっともよく表れている作品だと思う。
ただ、僕はどうも男性が女性に化けるという話が苦手で、観ているあいだはそれなりに笑っていたにもかかわらず、お気に入り度はいまひとつ。コメディでは映画史上ナンバーワンという噂のある 『お熱いのがお好き』 でさえ、そうだったんだから、これはもう好みの問題。映画のよしあしとはあまり関係がない。
ロビン・ウィリアムズはひとつ前に観た 『インソムニア』 でのシリアスな演技とは一見対照的な役柄ながら、ときどき見せるシャイな雰囲気には、同じように人を惹きつけるものがあると思った。その辺が評価されて、コメディ以外の作品への出演が増えたんだろう。さすがアカデミー賞の常連さん。
そういえば、今週は 『フォレスト・ガンプ』 とこれで、サリー・フィールドも二度見ている。アカデミー賞特集月間にはよく見かける主演の二人だった。
(Mar 10, 2007)
潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ
ランダ・ヘインズ監督/ロバート・デュヴァル、リチャード・ハリス/1993年/アメリカ/BS録画
『ゴッドファーザー』 や 『デイズ・オブ・サンダー』 で有名なロバート・デュヴァルと、イーストウッドの 『許されざる者』 でイングリッシュ・ボブを演じたリチャード・ハリス。この老俳優二人が演じるウォルトとフランクという孤独な老人どうしの友情を描くこの映画は、本当に「老人の友情の話」というひとことで要約できてしまうような作品だった。
ウォルトのお気に入りのウエイトレス役で、 『スピード』 でブレイクする前のサンドラ・ブロックが出演していたり、フランクのアパートメントの大家さんとして、シャーリー・マクレーンが出演していたりするけれど、彼女たちの存在は単なるアクセントといった程度。ベーコン・サンドイッチに例えれば、デュヴァルがパンで、ハリスがベーコン、あとの人たちはバターやマスタードといった感じ。ネームバリューが高いデュヴァルのほうが先に名前があがっているけれど、役柄として、より存在感があるのはハリスのほうだし。とにかく色気もアクションも抜きで、主演の老人二人をたっぷりと観たいという人にお薦めの、純然たる老人映画だった。あまり華はない──というか枯れまくっている──けれど、出来は悪くないと思う。
あ、それとこの映画は、珍しくオリジナルタイトル(Wrestling Ernest Hemingway)よりも邦題のほうがいい。ヘミングウェイは登場しないけれど、ベーコンサンドはたくさん出てくるので、観たあとで 『武器よさらば』 が読みたくなることはなくても、かなりの確率でベーコンサンドが食べたくなること受けあい。それも、きつね色に焦がしたトーストに、ベーコンを三枚はさんだだけのやつを。
(Mar 11, 2007)
華麗なる賭け
ノーマン・ジュイソン監督/スティーヴ・マックウィーン、フェイ・ダナウェイ/1968年/アメリカ/BS録画
スティーヴ・マックウィーン演じる主人公トーマス・クラウンは、大富豪のくせに、スリルをもとめて銀行強盗を計画するような人物。いきなり見ず知らずの実行犯5人を集めて、自らは手を汚すことなく、みごとな完全犯罪をなし遂げてみせる。
その事件を調査することになるのが保険調査員のビッキー(フェイ・ダナウェイ)。彼女は卓越した推理力(というよりは女の直感?)でもって、事件の計画犯は彼だと見破ると、証拠をつかむべく彼への接触をはかる。かくして美男と美女のあいだで、恋愛仕掛けのコンゲームがくりひろげられることになる。
この映画、原題を The Thomas Crown Affair という。おや、ほかにそんな映画があったよなと思って調べてみると、99年公開の 『トーマス・クラウン・アフェアー』 ──ジョン・マクティアナン監督、ピアース・ブロスナン主演──が、これのリメイク版だった。 『ダイ・ハード』 の監督がわざわざリメイクするくらいなんだから、きっとこのオリジナルもおもしろいんだろう。そう思って観てみると、やはりこれがなかなかの作品で、スクリーンを複数に分割する演出や、アカデミー賞・最優秀歌曲賞を受賞したという主題歌を始めとするジャズ系のサントラなど、演出面にこの時代ならではの雰囲気が色濃く出た、独特の味わいのあるクライム・ムービーに仕上がっている。
おそらく 『ルパン三世』 のファースト・シリーズは、この作品にインスパイアされた部分が多いんじゃないかと思う。惹かれあいつつ騙しあうという主人公とヒロインの関係は、ルパンと峰不二子の関係にそのままつながるし、演出や音楽の使い方も同じ手法を踏襲している。もしかしたら、別にこの作品に直接影響されたというのではなく、僕が不勉強でほかの例を知らないだけで、この時期のクライム・ムービーの多くがこういう雰囲気をもっていたのかもしれない。でも単品ではないにしろ、この作品の持つ世界観が、そのままファースト・ルパンへとつながっていったのは、間違いのないところだろう。そういう意味でも、興味深い作品だった。
ちなみに、ひとつ前に観た 『潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ』 で、主人公の老人二人がスティーヴ・マックウィーンの出てくる映画を観ていたのだけれど、驚いたことにそれがこの作品だった。マックウィーンとダナウェイが二人でチェスをやりつつ、無言のままお互いを誘惑しあうという、あのやたらと色っぽいシーン。老人たちは、映画館で肩を並べてあのシーンを観ながら、フェイ・ダナウェイの色っぽさに口をあけ、目を丸くしていた。
もしもこの映画を観るのがもっとあとになっていれば、僕らは老人たちが観ていたその映画が 『華麗なる賭け』 だったことになんて、絶対に気がつかなかっただろう。そもそも老人たちが映画を観るシーンがあったことさえ簡単に忘れてしまったと思う。
ところが、どういう偶然か、僕らはあの作品を見た翌々日に、続けてこれを観ることになった。もちろん、この二本を続けてみることになったのは、NHKがこれらを同時期に放送したからで、もしかしたらNHKの放映担当者は、両者の関係を踏まえて、この二本をセレクションしたのかもしれない。それでも放送スケジュール上、二本のあいだには一週間のインターバルがあった。それを連続して観ることになったのは、はからずも僕の気まぐれな選択のせいだ。
なおかつ。僕の記憶に間違いがなければ、NHKが 『潮風とベーコンサンド~』 を放送したのは、この2、3年のうちで今回が3度目になる。印象的なタイトルの映画だし、僕はそのたびに観ようかどうしようかと悩みつつも、これまでの放送はなんとなく見逃してきていた。もしも過去の放送時に観ていたならば、僕らが今回 『華麗なる賭け』 を観て、両者の関係に気がつくことはなかっただろう。 『華麗なる賭け』 を観ようと思ったこと自体、かなり唐突な気まぐれという感が強かったし、そういう意味でもこの二本の映画を続けて観たというのは、なんとも不思議な巡りあわせだった。
(Mar 17, 2007)
月の輝く夜に
ノーマン・ジュイソン監督/シェール、ニコラス・ケイジ/1984年/アメリカ/BS録画
偶然というのは続くもので、はからずもこの映画の監督は、ひとつ前に観た 『華麗なる賭け』 と同じくノーマン・ジュイソンだった。
この人は 『夜の大捜査線』 や 『屋根の上のバイオリン弾き』 を監督した人で、いわばアカデミー賞の常連さんだから、その監督作品がこの時期に何本も放送されるのは、よくあることなのだろう。でも、そのなかから僕が適当に選んだ作品が、二本続けて同じ監督の作品になるというのは、やはり不思議な気がする。しかも同じような傾向の作品を好んで観ているのならばともかく、この映画と 『華麗なる賭け』 じゃ、ジャンルも雰囲気もぜんぜん違うし。まあ、そういう意味では 『夜の大捜査線』 もぜんぜん違った雰囲気の作品だし、ジュイソンという人自身が、なんとも捕らえどころのない作風を持った監督のようだけれども。
この映画は、前夫と死に別れて以来7年間、独身をかこっていたシェール演じる主人公のロレッタが、ダニー・アイエロ―― 『ドゥ・ザ・ライト・シング』 の2年前の作品にしては、なんだかちょっぴり若々しい――の演じるジョニーからプロポーズを受けるというシーンから始まる。ロレッタは、まあこの人でいいやという感じで、あっさりこのプロポーズを受け入れ、ジョニーはその夜のうちに、吉報を持って危篤の母親が待つイタリアへとへと向かう(なんだかこの辺の展開は不自然な感じがした)。出発まぎわに彼は、5年前に喧嘩別れした実弟ロニーを結婚式に呼びたいから、ぜひ会って話をしてくれとロレッタに頼みこむ。で、ロレッタは、ニコラス・ケイジ演じるところの片手を失った激情型パン職人ロニーと会いにゆき、あっという間に恋に落ちることになるのだった。
シェールとその母親役のオリンピア・デュカキスが、アカデミー賞の主演女優賞と助演女優賞を同時受賞。最優秀脚本賞も含め、3部門を獲得した秀作コメディ。恋愛の描き方はかなり適当だから、どちらかというとロマンティック・コメディというよりは、イタリア系家族のエキセントリックな絆を描いた人情話という感じの作品だった。
(Mar 18. 2007)
アフリカの女王
ジョン・ヒューストン監督/ハンフリー・ボガート、キャサリン・ヘプバーン/1951年/イギリス/BS録画
舞台となるのは第一次大戦火勃発直後のアフリカ。ドイツ軍に村を焼き払われ、兄とも死に別れて、ひとりぼっちとなった宣教師の妹ローズ(キャサリン・ヘプバーン)が、ちっぽけな蒸気船アフリカの女王号の船長、チャーリー・オルナット(ハンフリー・ボガート)――船長といっても乗組員は彼ひとり――をそそのかして、母国イングランドのため、彼と二人でドイツ軍の戦艦を打ち破るべく、命懸けの河下りに乗りだすという冒険映画。
メインとなるのは、主人公二人による河下りの模様。急流や滝あり、敵の要塞あり、迷路のような葦の茂みありという艱難辛苦の冒険の旅が、あっけらかんとした演出で延々と描かれてゆく。登場するのは泥まみれの名優二人とアフリカの野生動物たちばかりという、なかなか意表をついた作品だった。
酒飲みとしては、キャサリン・ヘプバーンが2ケース分のジンを河に流してしまうシーンがとてもやる瀬なかった。人さまの船に乗せてもらっておいて、あの暴挙はあり得ない。ひどい
(Mar 18. 2007)
グローリー
エドワード・ズウィック監督/マシュー・ブロデリック、モーガン・フリーマン、デンゼル・ワシントン/1989年/アメリカ/BS録画
南北戦争における北軍初の黒人部隊、第54連隊にフォーカスをあてた歴史大作。デンゼル・ワシントンはこの作品で初のオスカー(助演男優賞)を受賞したのだそうだ。
基本的には戦争映画なのだけれど、時代設定が南北戦争で、非軍人ばかりが集まった黒人部隊の話ということで、普通の戦争映画とはずいぶんと感触の違う映画になっている。主演のマシュー・ブロデリックの軍人らしからぬ少年っぽい雰囲気も、そうした傾向を助長するうえで、一役買っている気がする。
主人公ショー大佐の副官フォーブスを演じるケイリー・エルウィズという人の顔には、なんだかとても見覚えがあって、よくあるパターンで、はてさて、この人は誰だっけと、観ているあいだ、ずっと気になっていたのだけれど。一晩たって、思い出しました。 『Xファイル』 の最終章で、FBI副長官ブラット・ファーマーを演じていた人だった。なるほど、どうりで馴染みの顔のはずだ。ああ、すっきり。
(Mar 18. 2007)
3人の逃亡者
フランシス・ヴェベール監督/ニック・ノルティ、マーティン・ショート/1989年/アメリカ/DVD
銀行強盗歴十数回という服役犯(ニック・ノルティ)が、出所して半日もせずに、どじな素人(マーティン・ショート)がくわだてた銀行強盗に巻き込まれて、警察に追われるはめに陥り、犯人と犯人の娘と三人で逃避行を繰りひろげることになるというコメディ。
この映画はフランス人の監督が、母国で撮ったものを自らアメリカでリメイクした作品なのだそうで、わざわざ撮りなおすほどの内容でもない気もするけれど、でもまあそれなりに楽しく観ることができた。けっこう笑えるし、単にコメディとして楽しむだけならば、まあ悪くないと思う。
ただこの作品には、主人公と幼い女の子(幼稚園児くらい)との心のふれあいを描いて感動を誘うという、もうひとつのラインがあって、残念ながらその部分の出来はあまりよくない。ニック・ノルティと少女の関係の描き方に深みがない。だから描きようによっては非常に感動的になるはずのシーンであまり感動できない。
母親を失って以来、2年間ひとことも口をきいていなかったという少女が、ニック・ノルティに「行っちゃ駄目」とかいうシーンは、本来ならばクライマックスになっていいはずだ。ところがそれまでの展開に説得力がないため、まるで感動を誘わない。なんだ、普通に口がきけるんじゃん、くらいの感じになってしまっている。なまじ子役がとても可愛いだけに、子供を使って受けを狙ったという軽薄な印象を与えてしまって、マイナスになっていると思う。やはり動物と子役を使うときは、両刃の剣だという覚悟が必要だろう。
ちなみに調べてみたところ、子役のサラ・ローランド・ドロフという女の子は、この映画一本のみで姿を消している。その後はテレビ・ドラマの 『ロー&オーダー』 にゲスト出演したことがあるだけ。こんな可愛い子が生き残れないなんて、ハリウッドというところは本当に競争がシビアなんだなあと、あらためて思う。
あ、あとこの映画で黒人警部を演じているジェームズ・アール・ジョーンズという人は、 『スターウォーズ』 でダース・ベイダーの声を担当している人だそうです。なんと。
(Mar 24, 2007)
グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち
ガス・ヴァン・サント監督/マット・デイモン、ロビン・ウィリアムズ/1997年/BS録画
幼児虐待を受けたトラウマゆえ、正常な社会的関係性が築けず、悪友たちとのつきあいのなかで無為の日々を過ごしていた天才青年が、その才能を
主演のマット・デイモンとベン・アフレックが共同で脚本を書き上げたそうだけれど、これが非常によく書けていて、びっくりした。天才青年の天才たる
それにしても 『フォレスト・ガンプ』 にしろ、この映画にしろ、なんで日本の配給会社は、「一期一会」とか「旅立ち」とか、タイトルに余計なひとことをつけ加えないではいられないんだろう。僕個人はそんなものはつけ加えずに、すんなり原題のままのほうがいいじゃないかと思っているので、そうした蛇足的なサブタイトルをつけずにいられない人たちのセンスが不思議でしかたない。そんなものがついている分、すっきりしなくて気持ち悪いと思う僕のほうがマイナーなんだろうか。よくわからない。
ちなみにタイトルになっているウィル・ハンティングが主人公の名前であることに、僕は終わり近くまで気がつきませんでした。おそまつ。
(Mar 25, 2007)