2004年11月(下)の映画

Index

  1. JFK
  2. 80日間世界一周
  3. ダンス・ウィズ・ウルブズ
  4. リトル・ヴォイス
  5. ブラインド・デート
  6. 13デイズ
  7. マンハッタン
  8. ウォーターワールド
  9. 夜霧の恋人たち
  10. マルコヴィッチの穴

JFK

オリバー・ストーン監督/ケヴィン・コスナー/1991年/BS録画

ディレクターズカット JFK  特別編集版 [DVD]

 アメリカ史上最大の謎のひとつであるジョン・F・ケネディ暗殺事件。オズワルド犯人説に疑問を抱いたニューオリンズの検事ジム・ギャリソン(ケヴィン・コスナー)は、事件から三年後にこの事件を調べ直して、その裏に政府ぐるみの陰謀があった事実に突き当たる。
 3時間を越える大作ゆえにちょっとばかり敬遠していたのだけれど、観てみたらこれが思いのほかおもしろかった。なんたってクライマックスはハリウッドお得意の法廷劇。しかもこの作品のそれは他のものとはちょっとばかりボリュームが違う。延々と続くその部分の説得力が圧倒的だった。
 それにしてもこの映画はどこまでが実話なんだろう。その辺がわかるようならば、ボーナス・ディスクつきのDVDコレクター・エディションがぜひ欲しいところだ。
(Nov 06, 2004)

80日間世界一周

マイケル・アンダーソン監督/デビッド・ニーブン、カンティンフラス/1956年/DVD

80日間世界一周 スペシャル・エディション [DVD]

 なにごとにも厳格で、時間厳守がモットーのイギリス人紳士フォグ(デビッド・ニーブン)は、仲間うちでの何気ない雑談から80日間で世界一周できるかどうか賭けをすることになり、芸達者な召使のパスパトゥ(カンティンフラス)を率いて、自ら旅に出る。欧州では気球や快速艇を買い取り、インドでは生贄に捧げられようとしていた姫君(シャーリー・マクレーン)を助け、アメリカではインディアンに襲われ。波乱万丈の旅の果てに彼らは無事80日でイギリスへ帰りつけるのか……。
 イラストが気に入ってジャケット買いしたDVD。ボーナス・ディスクつきのDVDは安くならないから買ってもいいやと思ったのだけれど、開けてみれば2枚目もボーナス・ディスクではなく、本編が収録されていた。最近になってワーナーは同じように2枚組の 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』 を廉価版で発売しているから、これもいずれは安くなっちゃうんだろう。ちょっと失敗したかと思った。でもまあ、今でも3千円しないんだから、別に後悔するほどのことでもないんだけれど。どうにも貧乏性でいけない。
 映画自体は昔の作品にありがちな、ゆったりとした時間感覚で進んでゆく。なにもパスパトゥの闘牛シーンにそんなに時間を割かなくてもとか思わずにはいられない。もっとメリハリをつけて、スピーディに話を進めて欲しいところだ。そう思ってしまうのは、時間に追われて暮らしている現代人の悲しい{さが}かという気もするのだけれど……。まあ、テンポ的に趣味にあわない部分もあるものの、映画自体としては悪くなかった。
 フォグたちは旅の途中で日本にも立ち寄る。横浜といいながら、鎌倉の大仏が登場しちゃうのはご愛嬌だ。それでも江戸時代の風俗を精一杯忠実に再現しようとしているところに好感が持てた。日本でのエピソードのみが唯一暴力沙汰と無縁だというのも、ちょっとばかり興味深かった。ま、特殊な風俗性のゆえにあまり凝った描写ができなかったという部分もあるのかもしれないけれど。
(Nov 14, 2004)

ダンス・ウィズ・ウルブズ

ケヴィン・コスナー監督/ケヴィン・コスナー、メアリー・マクドネル/1990年/BS録画

ダンス・ウィズ・ウルブズ 通常版 [DVD]

 時は南北戦争のさなか。ジョン・ダンバー中尉(ケヴィン・コスナー)は、図らず立てた功績により勤務地の希望を問われ、未開拓地への赴任を志願する。ところが派遣されていった先の砦はすでに放棄されており無人。彼は大草原のなか、一人きりの毎日を送り始める。顔をあわせるのは前足の白い一匹の狼のみ。
 そんな彼の静かな生活も、原住民スー族との出会いにより終わる。ダンバーが部族の一員である白人女性“拳を上げて立つ女”(メアリー・マクドネル)を救ったことが縁でお近づきとなった両者は、この女性の通訳により言葉の壁を乗り越え、徐々に親睦を深めてゆくのだった。
 今回見たのはオリジナルではなく、4時間にも及ぶ特別版だ。でもそんな長さも気にならない──ま、家庭の事情で前半と後半を分けて観たせいもあるんだろうけれど──なかなかいい映画だった。
 この映画で一番興味深いのは、見ている側のネイティヴ・アメリカンに対する感情の変化だ。序盤、彼らは奇妙な風俗を持った野蛮な人種というイメージを否めない存在だ。けれど物語が進んで主人公が彼らとの交流を深めるに従い、そんな彼らに対する違和感は次第に解消されてゆく。そしてクライマックスではついに白人と原住民の立場は逆転して、野蛮なのは白人の方だという事実があきらかになる。
 この壮大な自然の中で繰り広げられる異文化交流の物語は、同時にアメリカという国を形作る中で白人たちが犯した罪をくっきりと浮かび上がらせている上で、とても意義深い作品だと思う。単なる人気俳優の初監督作品だと{あなど}ってはいけなかった。
(Nov 14, 2004)

リトル・ヴォイス

マーク・ハーマン監督/ジェーン・ホロックス、マイケル・ケイン/1998年/BS録画

リトル・ヴォイス [DVD]

 LV(ジェーン・ホロックス)は一歩も家を出ずにオールディーズのレコードばかり聴いている女の子。つぶれたレコード屋の二階でがさつな母親(ブレンダ・ブレッシン)と二人で暮している。ほとんど口をきかず、たまにきいても聞き取れないくらいの声でしか話さないので、母親から Little Voice を略してLVと呼ばれている。ところが彼女は今までに愛聴してきたマリリン・モンローやジュディ・ガーランドの歌を、レコードそのままに歌うことができた。母親が家へ連れ込んだプロモーターのレイ・セイ(マイケル・ケイン)はたまたま聴いたその歌声に衝撃を受け、彼女の売り出しにかかる。けれども過剰にシャイなLVの前にはいくつもの障害が横たわっており……。
 作品のアイディアは好きだし、主演のジェーン・ホロックスには好感を覚えるものの、映画の出来としてはB級の感を否めなかった。LVに好意を寄せる伝書鳩愛好家の好青年をユアン・マクレガーが演じている。この二人の関係ももっと煮詰めて欲しかった。母親役のブレンダ・ブレッシンとマイケル・ケインの胡散臭い演技はとても味があっていい。個々の俳優は悪くないのに……。
(Nov 14, 2004)

ブラインド・デート

ブレイク・エドワーズ監督/ブルース・ウィリス、キム・ベイシンガー/1987年/BS録画

ブラインド・デート [DVD]

 ブルース・ウィリス演じるウォルターは有能なビジネスマン。社用の夕食会にエスコートする相手が見つからず、仕方なしに義姉の従姉妹のナディア(キム・ベイシンガー)を紹介してもらう。ところが意外や意外、この女性がとびきりの美人だった。気をよくしたウォルターは「彼女には酒を飲ませるな」という兄夫婦の忠告を無視して、晩餐前の一杯を彼女に勧めてしまう。酔ったナディアは次々とトラブルを巻き起こし、おまけに彼女の別れた恋人デイヴィッド(ジョン・ラロクエット)にもストーカー{まが}いにつきまとわれ、混乱に継ぐ混乱の中で、ウォルターは職を失い、ついには逮捕される羽目に……。
 ブルース・ウィリスとキム・ベイシンガーの共演によるドタバタ・ラブ・コメディ。今になると豪華な組み合わせに思えるけれど、この当時はまだ 『ダイ・ハード』 以前。ブルース・ウィリスにとっては初主演作らしい。
 ブルース・ウィリスがコメディなんて珍しい気がしたのだけれど、観てみて納得。恋愛感情の機微を描いて笑わせるのではなく、酒乱の彼女とストーカー男に悩まされる男のすったもんだを描いたドタバタ・コメディだった。飛んだり跳ねたり落っこちたり。肉体派俳優ウィリスにはもってこいの役だ。
 とにかく恋愛描写なんて抜きで、終始ばかばかしいギャグのオンパレード。なんだこの映画はと思ったら、監督のブレイク・エドワーズという人は 『ピンク・パンサー』 シリーズで有名な人だった。なるほど。いや、恥ずかしながら僕はこの映画、かなり好きだ。
(Nov 19, 2004)

13デイズ

ロジャー・ドナルドソン監督/ケヴィン・コスナー、ブルース・グリーンウッド、スティーヴン・カンプ/2000年/BS録画

13デイズ [DVD]

 1962年10月、ソ連がキューバに核弾頭ミサイルを配備し始めた。偵察機による航空写真でこのことを知ったケネディ兄弟(ブルース・グリーンウッド、スティーヴン・カンプ)と大統領特別補佐官のケン・オドネル(ケヴィン・コスナー)を中心とするアメリカ政府は、激動の13日間を送ることになる。
 キューバ危機として知られる史実に基づいたポリティカル・サスペンス。史実なんだから戦争にはならないとわかっていながらも、結構ハラハラさせられた。そういう意味ではそれなりによく出来た映画なんじゃないだろうか。
 この手の政治的な映画にしては、空軍機の飛行シーンにとても迫力があるのがとても印象的だった。開戦を望む軍の命令により、戦闘機2機(F8クルセイダーだと思う)が攻撃を受けるのを覚悟してミサイル配備地の低空飛行写真を撮りに行くシーンが秀逸だと思った。
(Nov 20, 2004)

マンハッタン

ウディ・アレン監督/ウディ・アレン、ダイアン・キートン/1979年/BS録画

マンハッタン [DVD]

 アイザック(ウディ・アレン)は十七歳の女の子トレイシー(マリエル・ヘミングウェイ)と交際中の放送作家。親友のエールの愛人メアリー(ダイアン・キートン)に心惹かれるようになり、二人が別れたあと、エールの勧めでつきあうようになる。
 ウディ・アレンがモノクロ映画へのオマージュをこめて作り上げた良質の恋愛映画。音楽にもカメラにも徹底的にモノクロ時代のスタイルを踏襲しつつ、それでいてしっかりとこの人らしい作品に仕上げている。スタイルは古典的でありながら、描かれている恋愛のあり方は極めて70年代的だし。甘いんだか、苦いんだかわからないエンディングも見事。この映画にはとても感心させられた。いままでに観たウディ・アレンの作品では一番好きだ。
(Nov 27, 2004)

ウォーターワールド

ケヴィン・レイノルズ監督/ケヴィン・コスナー、ジーン・トリプルホーン/1995年/BS録画

ウォーターワールド [DVD]

 すべての陸地が海に沈んでしまった近未来の地球。真水と土が貴重品としてもてはやされるこの時代に、伝説の大地“ドライランド”を探す悪党一味(ボスはデニス・ホッパー)に狙われる少女(ティナ・マジョリーノ)と、なりゆきで彼女とともに旅をすることになったミュータント(ケヴィン・コスナー)の友情を描く、海洋SFアドベンチャー・ムービー。
 海洋版マッドマックスといったファッションが印象的なこの映画、あまり評判はよろしくないようだけれど、個人的にはそれなりに楽しめた。少なくても陸地がないという設定はとても切実に感じられたし、そう感じさせるだけでも充分成功していると思うんだけれど……。僕が単純すぎるんだろうか。
 とりあえずヒロインのジーン・トリプルホーンが可愛い。
(Nov 27, 2004)

夜霧の恋人たち

フランソワ・トリュフォー監督/ジャン=ピエール・レオ/1968年/BS録画

アントワーヌとコレット・夜霧の恋人たち〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選2〕 [DVD]

 あまりの役立たずぶりに軍を追い出されたアントワーヌ・ドワネル(ジャン=ピエール・レオ)は探偵社で職を得ることになった。けれど仕事ぶりはやはりいまひとつ。ガールフレンドのクリスティーヌ(クロード・ジャド)との関係もいまひとつ進展がない。そんな最中、依頼人の経営する靴店に店員として潜り込んだ彼は、そこで社長夫人(デルフィーグ・セイリグ)の美しさにのぼせ上がってしまう。
  『大人は判ってくれない』 から始まるアントワーヌを主人公にした連作のうちの一編らしい。傑作の呼び声が高いのだけれど、どこがそこまでいいのかよくわからなかった。決して悪い映画だとは思わないけれど、かといって傑作といわれると首を傾げたくなってしまう。僕にはトリュフォーの映画を鑑賞するために必要な回路が欠けているのかもしれない。
(Nov 27, 2004)

マルコヴィッチの穴

スパイク・ジョーンズ監督/ジョン・キューザック、キャメロン・ディアス/1999年/BS録画

マルコヴィッチの穴 DTSコレクターズエディション [DVD]

 主人公のクレイグ(ジョン・キューザック)は人形遣い。天才的な才能を持つもののの、それだけでは食べてゆけなくて、仕方なく職につくことになった。見つけたのは、とあるビルの7と1/2階にある、天井までの高さが普通の三分の一しかないオフィスの仕事。彼はそこで悪女マキシン(キャサリン・キーナー)と出会い、そしてさらに、十五分間だけジョン・マルコヴィッチの頭の中に入り込める奇妙奇天烈な穴を見つけることになる。この二つが彼と妻のロッテ(キャメロン・ディアス)との生活を破綻させることになるとはいざ知らず……。
 ペーソス溢れる不条理コメディの傑作。ある種のホラーという気もする。とにかく、なんとも不思議で強烈なインパクトを持った映画だった。でもあまり繰り返し見たいとは思わない。ジョン・マルコヴィッチに哀れを感じてしまって、居たたまれない気分になるからだろうか。そんな風に思わせること自体、この映画が優れている証拠かもしれないけれど。
 ちなみに僕は途中までヒロインがキャメロン・ディアスであることにも、主役がジョン・キューザックであることにも気がつきませんでした。おそまつ。
(Nov 27, 2004)