2004年10~11月(上)の映画

Index

  1. キル・ビル Vol.2
  2. チャイナタウン
  3. クリムゾン・タイド
  4. 禁断の惑星
  5. ヒート
  6. ミッドナイト・ラン
  7. ポセイドン・アドベンチャー
  8. カリフォルニア・スイート

キル・ビル Vol.2

クウェンティン・タランティーノ監督/ユマ・サーマン、デイヴィッド・キャラダイン/2004年/DVD

キル・ビル Vol.2 [DVD]

 ザ・ブライド(ユマ・サーマン)の復讐のターゲットは残り三人。手始めにビル(デイヴィッド・キャラダイン)の弟バド(マイケル・マドセン)を狙った彼女だったけれど、返り討ちにあって生き埋めの憂き目にあってしまう。棺の中で彼女の脳裏に浮かぶのはカンフーの師パイ・メイ(ゴードン・リュー)との修行の日の思い出。そのときの過酷な修行で身につけた拳法で窮地を出した彼女は再びバドのもとへと向かう……。
 荒唐無稽なスプラッター・チャンバラ劇だった前作に比べると、全編的に落ち着いた雰囲気の漂う続編だった。人間関係をじっくりと描く方が主体で、アクションは比較的おとなしめ。そのアクションもカンフー中心で、チャンバラシーンはもうほとんどなし。前作が日本映画に対するオマージュだったとするなら、今作はジャッキー・チェンなどの香港ムービーを意識した作品ということなのだろう。あと、冒頭のモノクロのドライブ・シーンは50~60年代のヒッチコックあたりの作品を思い出させる。とにかくタランティーノが自分の好きな映画のエッセンスをありったけ注ぎ込んだ作品のようだ。
(Oct 31, 2004)

チャイナタウン

ロマン・ポランスキー監督/ジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイ/1974年/BS録画

チャイナタウン 製作25周年記念版 [DVD]

 私立探偵のジェイク(ジャック・ニコルソン)はダム建設にまつわる裁判の重要参考人の浮気調査を依頼される。ところがその調査結果が新聞にリークされ、男の夫人だと名乗った依頼人が実は偽物だったことが判明。本物の夫人イヴリン(フェイ・ダナウェイ)に対して面目を失った彼は、問題の男性が殺害されたことから、自らのプライドを賭けて真相の追求に乗り出してゆく。
 ロス・マクドナルドの作品を髣髴させるハードボイルド・ムービーの傑作。特別好きなタイプの俳優も出ていないし、作風にもとりたてて惹かれないものの、これだけ完成度が高いと文句のつけようもない。ハードボイルド・ファンは必見だと思う。
 それにしてもジャック・ニコルソンが鼻の穴にナイフを突っ込まれて切られるシーンの痛そうなこと……。なんでもあの切っている人が監督のロマン・ポランスキーその人なのだそうだ。なんてこった。
(Nov 01, 2004)

クリムゾン・タイド

トニー・スコット監督/デンゼル・ワシントン、ジーン・ハックマン/1995年/BS録画

クリムゾン・タイド [Blu-ray]

 舞台は核ミサイルを搭載した米原子力潜水艦のなか。発射命令を受けて緊張の走る艦内に、第二の司令が届く。しかし無線機の故障によりその詳細は不明。最初の命令を遵守しようとするラムゼイ船長(ジーン・ハックマン)と、命令内容が不確かな状況で核を使うわけには行かないと主張する副艦長ハンター(デンゼル・ワシントン)との対立は、やがて艦をあげて見方どうしで銃を向け合うほどの内部抗争に発展する。
 ジーン・ハックマンという人はやたらと悪役が良く似合う。この映画では憎らしいばかりではなく、老練ゆえの懐の深さも感じさせて、ラスト・シーンの余韻を深めている。この映画では一番のはまり役。
(Nov 01, 2004)

禁断の惑星

フレッド・ウィルコックス監督/ウォルター・ピジョン、レスリー・ニールセン/1956年/BS録画

禁断の惑星 [DVD]

 モビアス博士(ウォルター・ピジョン)とその娘アルタ(アン・フランシス)を残し、あとの住民がすべて何者かに惨殺されたという惑星アルテア4。超古代化学文明が眠るその星に調査にやって来たアダムス艦長(レスリー・ニールセン)らを目に見えない怪物が襲う。
 ロボットのロビーで有名なSF映画の古典的傑作。ロビーは頭のガラスの中でアンテナみたいなものがくるくる回っていて可愛い。でも何よりも感銘を受けたのがアルテア4に残された超科学文明の施設内を見て回るシーン。 『スター・ウォーズ』 よ りも20年も昔にこんなシーンを撮影していたという事実には吃驚仰天{びっくりぎょうてん}だ。
 それと観終わったあとで知ったことではあるけれど、「女に手が早い」と評判の艦長役のレスリー・ニールセンという人が、年を取ってから 『裸の銃をもつ男』 になるというのもちょっとおかしかった。
(Nov 01, 2004)

ヒート

マイケル・マン監督/アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ/1995年/BS録画

ヒート プレミアム・エディション [DVD]

 天才的な強盗プランナー、ニール・マコーレー(ロバート・デ・ニーロ)は、たまたまろくでもない男を仲間に引き入れて債券輸送車を襲ったことから足がつき、市警きっての敏腕刑事ヴィンセント・ハナ(アル・パチーノ)に目をつけられることに。それでもハナの厳重な監視を欺き、銀行強盗の計画を進めるニール。相手の才能に舌を巻いたハナはさらなる熱意を持ってニールの逮捕に乗り出す。
 この映画の主役はどちらもプライベートに問題を抱えている。ハナは仕事に熱中し過ぎて家庭を顧みないために、バツイチの奥さんジャスティン(ダイアン・ベノーラ)との関係が冷えかけている。精神不安定な彼女の連れ子ローレン(ナタリー・ポートマンだっ)も悩みの種。仕事では市警一でも、私生活ではトラブルを抱えまくっている。
 一方のニールも、裏稼業の秘訣はいつでも高飛びできるよう身軽でいることだと師匠に教わり、それを実践している孤独な男。家庭を持たないところか、仮の住まいには家具さえ置かない。主人公二人はともにその才能への代償であるかのように不幸をまとっている。
 そんな二人を尻目に、ニールの仲間たちは犯罪者でありながら妻や子供たちと幸せな家庭を築いているのがおもしろい。彼らは罪を犯して稼いだ金で、幸せな家庭生活を満喫している。そんな仲間たちにあてられたような形で、ニールはモットーを捨て、自らの正体を隠したまま、新しい恋人イーディ(エイミー・ブレネマン)との間に深い絆を求め始めるのだった。
 ニールとハナのライバル関係を中心にしつつ、事件にかかわる男たちが愛に悩む姿を丁寧に描いていて、なかなかいい映画だった。この手の映画で3時間近い長さが気にならないというのは、それだけよくできているということだろう。ただ残念ながら結末はあまり好みじゃない。
(Nov 01, 2004)

ミッドナイト・ラン

マーティン・ブレスト監督/ロバート・デ・ニーロ、チャールズ・グローディン/1988年/BS録画

ミッドナイト・ラン [DVD]

 マフィアの金を横領して逃げた会計士、通称“デューク”ことジョン・マデューカス(チャールズ・グローディン)を捕まえろ。賞金稼ぎのジャック・ウォルシュ(ロバート・デ・ニーロ)は、FBIさえ見つけ出せないでいたこの男をいともたやすく見つけ出し、あとはニューヨークからLAへと連れてゆくだけのはずだった。ところがマフィアやFBI、ジャックの商売敵らに二人の情報は筒抜け。行く先々でトラブルが発生して、旅は思うように進まない。乱暴者の元警察官と生真面目な会計士、凸凹コンビの珍道中の結末は?
 録画に失敗して、エンディングの直前、ジャックがジョンに腕時計を渡したあとの三十秒ばかりを見損なった。その間になにがあったかはある程度見当がつくけれど、それにしてもなあ。結構おもしろかったし、この映画はもう一度いずれ見直そう。
(Nov 02, 2004)

ポセイドン・アドベンチャー

ロナルド・ニーム監督/ジーン・ハックマン/1972年/BS録画

ポセイドン・アドベンチャー [DVD]

 大西洋を行く豪華客船が大晦日の夜に津波に襲われて転覆。牧師のスコット(ジーン・ハックマン)が、彼に従う少数の乗客を率いて脱出を目指す。
 若いジーン・ハックマンが悪役ではない役を演じている。でもこの人、悪役じゃなくてもなんだか妙に情が薄そうで、熱血牧師の役が空回りしている気がした。聖職者であるにもかかわらず多くの人を見殺しにしてしまうことへの苦悩というのがこの役どころのひとつのポイントだと思うのだけれど、それがいまひとつ伝わってこない。
 まあ、それでもパニック映画としてはとてもよくできていると思う。波の揺れをカメラで表現した映像もおもしろい。始めのうちは見ているだけで船酔いしそうな気分になった。
 どうでもいい話だけれど、この映画にも 『禁断の惑星』 に続いて 『裸の銃』 男レスリー・ニールセンが艦長役で登場している(前半早々でお役御免になってしまうけれど)。年をとった分 『裸の銃』 のルックスに近くなっていておかしかった。
 あとシェリー・ウィンタースという太っちょのおばさんが、牧師を助けようと水の中に飛び込むシーンがとてもいい。でもそのあとは悲しい……。
(Nov 06, 2004)

カリフォルニア・スイート

ハーバート・ロス監督/マイケル・ケイン、マギー・スミス/1978年/BS録画

カリフォルニア・スイート

 アカデミー賞のために満室のハリウッドのホテルを舞台に、マイケル・ケイン、マギー・スミス、ジェーン・フォンダ、ビル・コスビー、ウォルター・マッソーら豪華な俳優陣を擁して、四組の夫婦の人間模様を描いたコメディ。
  『名探偵登場』 の脚本家、ニール・サイモンの作品だというので観たのだけれど、半分はコメディ、半分はシリアスな家族劇という内容のせいで、中途半端な印象になってしまっている。残念ながらあまり好みじゃなかった。
 はからずもハーバード・ロス監督の作品を見るのはこれで今年三本目だ。NHKはこの監督が好きなのかもしれない。確かに放送局のカラーにあっている気がする。
(Nov 06, 2004)