2004年7月の映画
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オースティン・パワーズ
ジェイ・ローチ監督/マイク・マイヤーズ、エリザベス・ハーリー/1997年/BS録画
フラワー・ムーブメント全盛のロンドンで絶大な人気を誇ったスパイ(で写真家?)のオースティン・パワーズ(マイク・マイヤーズ)。世界征服を企む宿敵ドクター・イーヴル(マイヤーズの一人二役)を捕まえるべく冷凍睡眠中だった彼が現代に蘇る。パートナーに任命されたヴァネッサ(エリザベス・ハーリー)はかつてオースティンの相棒の娘。最初はオースティンの時代錯誤なエロ親父ぶりに辟易していた彼女だったけれど、オースティンの陰りを知らないバカっぷりに次第に惹かれてゆく。
『ウェインズ・ワールド』 でマイク・マイヤーズがブレイクした時には、なんてくどいやつと思ってあたまっから敬遠していたのだけれど、この作品は007のパロディという骨格がはっきりしている分、受け入れやすかった。まあ、好きかと問われると微妙だけれど。
(Jul 10, 2004)
エリザ
ジャン・ベッケル監督/ヴァネッサ・パラディ、ジェラール・ドパルデュー/1995年/BS録画
幼少期に母親に無理心中を図られたことをトラウマに持つ少女マリー(ヴァネッサ・パラディ)。母親のエリザは生活苦に耐え切れず、娘を枕で窒息させてから、自らは銃で頭を撃ち抜いた。けれど娘は息を吹き返し、その後、孤児院で成長することになる。祖父母はいたものの、自分たちの意に染まぬ男と駆け落ちをした娘を拒絶し、結局自殺に追い込んでしまった狭量な彼らをマリーは許せなかった。
家族の愛情を知らずに育った彼女は、誰とでも寝てしまう孤児院の親友ソランジュや黒人少年アーメッドと万引を繰り返しつつ生活していた。そんなある日、マリーは実の父親ジャック(ジェラール・ドパルデュー)がまだ生きていることを知る。少ない手がかりを辿ってついにその男の居所を突き止めた彼女は、母親を自殺に追い込んだその男を罰するべく、友に別れを告げ、母の形見であるピストルを手に、父の住む島へと向かうのだった……。
メインはマリーの父親探しの旅とその顛末なのだけれど、そこに到るまでの過程にあまりに細かいエピソードを詰め込みすぎているために、ややまとまりを欠く印象になってしまった感があった。そこがやや残念かなと思う。
それでも主演のヴァネッサ・パラディは、シーンによって実に様々な表情を見せてくれている。魅力的な時もあり、そうでない時もあり。移ろいゆく若さというものがフィルムに焼きついている気がする。
(Jul 10, 2004)
ロミオ&ジュリエット
バズ・ラーマン監督/レオナルド・ディカプリオ、クレア・デインズ/1996年/BS録画
シェークスピアの 『ロミオとジュリエット』 を 『ムーラン・ルージュ』 のバズ・ラーマンが現代に舞台を移して映像化した意欲作。
原題は "William Shakespeare's Romeo + Juliet"。頭にわざわざシェイクスピアの名前をつけてみせたのはだてじゃない。単にストーリーだけを借りてきて現代劇に仕立てただけではなく、原作の台詞を忠実に再現してみせたことで、思いがけない妙な味わいが生まれている。
映像面でも 『ムーラン・ルージュ』 同様、鮮やかな色彩感覚がとても好みだったので、5年以上前に三倍録画した画質の悪いビデオで見たのをかなり後悔した。この作品はぜひもう一度DVDで見直さないといけない。
ジュリエット役のクレア・デインズもいい。最初に受けた印象はとろんとした顔をしたありふれた女の子という、あまりぱっとしないものだったのだけれど、見ているうちにどんどんきれいに思えてきた。彼女の漂わせている少女期のあどけなさが、この悲劇になんともいえない切なさを加えている。彼女の演技には多分この作品以外では二度と見られないんじゃないかと思わせる
それにしてもどうせならば邦題も 『ロミオ+ジュリエット』 と、あいだをつなぐのは「+」にして欲しかった。あれは十字架のモチーフとして、その文字自体に意味があるんだと思うのだけれど。なんで変えちゃうかな。本当に日本の配給会社はセンスがない。
(Jul 10, 2004)
アナライズ・ミー
ハロルド・ライミス監督/ロバート・デ・ニーロ、ビリー・クリスタル/1999年/BS録画
悪名高いギャングのボス、ポール・ヴィッティ(ロバート・デ・ニーロ)がストレス症候群に悩まされ始めた。精神分析医のベン・ソベル(ビリー・クリスタル)はヴィッティの部下と接触事故を起こしたのが運のつきで、不本意ながらこのギャングの主治医となる羽目に……。
結婚を間近にひかえたバツいちの精神科医が大物ギャングの身勝手なふるまいに悩まされる姿を描くコメディ。デ・ニーロの泣きの演技がやたらとおかしい。この映画に関してはビリー・クリスタルよりもよほどコメディアンっぽい。
(Jul 10, 2004)
エリン・ブロコビッチ
スティーヴン・ソダーバーグ監督/ジュリア・ロバーツ、アルバート・フィニー/2000年/BS録画
エリン・ブロコビッチ(ジュリア・ロバーツ)は二度の離婚歴をもつ三児の母。職探しの最中に接触事故にあった彼女は、楽勝のはずのその裁判に、経歴と態度の悪さが響いて負けてしまう。仕事はないは、金はないはで、にっちもさっちもいかなくなった彼女は、弁護に失敗した弁護士エド・マスリー(アルバート・フィニー)に責任を転嫁して、彼の事務所の押しかけ職員となる。なにごとにも熱中しやすい気質の彼女は、法律事務所の職員らしからぬ奔放な言動と大胆なファッションで回りの
美貌だけが売り物の無学な女性がアメリカでも有数の巨大企業相手に集団訴訟を起こし、史上最大の和解金を勝ち取るまでを描いたある種のシンデレラ・ストーリー。実話なのだそうだけれど、まったくもったいぶったところがなくて、とてもおもしろい映画に仕上がっている。僕は今までにジュリア・ロバーツという人にはまったく魅力を感じたことがなかったのだけれど、これを見てずいぶんと印象がよくなった。 『ミラーズ・クロッシング』 でギャングのボス役を演じたアルバート・フィニーも出演、ここでは小市民的な気のいい弁護士役を好演している。あまりにあの映画とはイメージが違うので、最初この人だと気がつかなかった。
(Jul 24, 2004)
欲望という名の電車
エリア・カザン監督/ビビアン・リー、マーロン・ブランド/1951年/BS録画
度重なる不幸から身を持ち崩し、ついには生まれ故郷の町を追われて、ニューオーリンズに住む妹夫婦のもとに身を寄せたブランチ(ビビアン・リー)。現実から逃避して虚栄に身を委ね続ける彼女は、直情的な義理の弟スタンリー(マーロン・ブランド)との軋轢から、徐々に正気を失ってゆく。
孤独と虚栄のうちに自らを失ってゆく一人の女性の狂気を描いている点で 『サンセット大通り』 に通じる恐さのある映画だった。先日他界したマーロン・ブランドの出世作として有名なようだけれど、それよりもビビアン・リーの怪演の方が印象的だった。この映画でアカデミー賞主演女優賞を受賞しただけのことはある。
(Jul 24, 2004)
マグノリアの花たち
ハーバート・ロス監督/サリー・フィールド、ジュリア・ロバーツ/1989年/BS録画
糖尿病のために出産を禁じられていた美女シェルビー(ジュリア・ロバーツ)は、母親マリン(サリー・フィールド)の反対を押し切り、子供を産むことに決める。幸せを求めて病魔と戦う親子の姿を、ドリー・パートン、シャーリー・マックレーン、オリンピア・デュカキスらベテラン女優の演じる個性豊かな隣人たちとの交流の中で描いてみせる集団劇。
シェルビーの結婚式を描くのに全体の三分の一を費やし、その間に主要な登場人物を紹介してゆくという演出がおもしろかった。その辺がオリジナルが舞台劇ならでは、なのだろう。あまりにそのシーケンスが長いので、僕は最初のうち、この映画は結婚式の2時間ばかりに起こった出来事だけを描く異色映画かと思った。
シャーリー・マクレーンが憎まれ口専門のお婆さん役を演じている。僕は 『アパートの鍵貸します』 などの若い頃の姿しか知らなかったので、そんな彼女の老後の姿を見るのには、なんとも言えない妙な気分にさせられるものがあった。
(Jul 24, 2004)