2004年6月の映画
Index
- ボーイズ・オン・ザ・サイド
- 続・激突! カージャック
- 十二人の怒れる男
- スミス夫妻
- 大人は判ってくれない
- 麗しのサブリナ
- 墓場なき野郎ども
- ファインディング・ニモ
- ハイ・フィデリティ
- ロッキー・ホラー・ショー
ボーイズ・オン・ザ・サイド
ハーバート・ロス監督/ウーピー・ゴールドバーグ、メアリー=ルイーズ・パーカー、ドリュー・バリモア/1995年/BS録画
人生半ばにして再出発を志すレズビアンの黒人ミュージシャン、ジェーン(ウーピー・ゴールドバーグ)。孤独に打ちひしがれるHIV陽性の金髪美人、ロビン(メアリー=ルイーズ・パーカー)。なりゆきで恋人を殺してしまう尻軽なファニー・フェイス、ホリー(ドリュー・バリモア)。異なった個性を持つ三人の女性の出逢いと別れを、豪華女性アーティストによる古典的ロック・ナンバーのカバーを中心としたBGMに乗せて描く、 『テルマ&ルイーズ』+『フィラデルフィア』 といった趣向の作品。
テーマ曲としてロイ・オービソンの "You Got It" が使われているのは感動的だったけれど、ただ映画自体の出来としてはいまひとつ。アイディアは悪くなかったのに、上手くまとめきれなかったという印象があった。
それにしてもこの映画のタイトルって、いったいどういう意味なのだろう。男は脇に置いておいて、女の子同士で仲良くしましょう、って感じですかね?
(Jun 06, 2004)
続・激突! カージャック
スティーヴン・スピルバーグ監督/ゴールディ・ホーン、ウィリアム・アザートン/1974年/BS録画
前科者夫婦のルー・ジーン(ゴールディ・ホーン)とクロービス(ウィリアム・アザートン)。子供の養育権を奪われたルー・ジーンは子供を取り戻すべく、受刑中の夫を無理やり脱獄させて、子供の養父の住まうシュガーランドへと向かおうとする。ところが脱獄するや否やパトロール・カーに捕まってしまい、なりゆきで警官スライド(マイケル・サックス)を拉致する羽目に……。
実話に基づくという巨匠スティーヴン・スピルバーグの劇場映画初監督作品。今だったらコーエン兄弟が撮りそうなタイプの映画だ。あの人たちほどのアクの強さはないけれど、スピルバーグがこういう映画で劇場デビューを飾っていたというのは興味深い。しかも主演はゴールディー・ホーン。この二人の組み合わせというだけで、今となるとすごく貴重な作品に思えてしまう。
クロービス役のウィリアム・アザートンという人はどこかで見たような顔だと思ったら、のちに 『ゴーストバスターズ』 や 『ダイ・ハード』 で嫌みったらしい脇役を好演していた人だった。この映画では味のあるいい顔をしているのに、のちの役があれらってのもちょっとばかり可哀想な気がする。
それにしてもこの作品、スピルバーグがまだテレビ映画の 『激突!』 以外にはこれといったヒット作もない新人監督の時の作品だから興行上仕方のないことだったのかもしれないけれど、邦題がひどい。いずれDVDのリリース・タイミングを見計らってでも原題通りに 『シュガーランド・エクスプレス』 と改題した方がいいんじゃないだろうか。今のままのタイトルでは観ようって気にならないぞ。
(Jun 06, 2004)
十二人の怒れる男
シドニー・ルメット監督/ヘンリー・フォンダ/1957年/DVD
父親殺しの容疑を受ける十代の不良少年の裁判。有罪の意見が圧倒的なその陪審の席にて、十二人の陪審員のうち、たった一人だけが少年の有罪に疑問を投げかける。うんざりした顔でその一人(ヘンリー・フォンダ)を睨むあとの十一人。ところが彼が理路整然と有罪の根拠となる証言の信憑性のなさを指摘してゆくと、それまで有罪一辺倒だったその他の陪審員たちが一人、また一人と無罪を支持するようになり……。
カラーのジャケットに騙されて、カラー映画だと思っていたものだから、モノクロだとわかった時にはちょっとがっかりしたけれど(やはりフルカラーが好きだ)、そんな色のありなしにかかわらず、これは傑作。証言者の嘘がひとつまたひとつと暴かれてゆく過程や、十一人の陪審員が次第に容疑者の有罪を疑うようになってゆく展開にはこたえられないおもしろさがある。ミステリ・ファンは必見の映画だと思う。
(Jun 06, 2004)
スミス夫妻
アルフレッド・ヒッチコック監督/キャロル・ランバード、ロバート・モンゴメリー/1941年/BS録画
デイヴィッド(ロバート・モンゴメリー)とアン(キャロル・ランバード)のスミス夫妻は喧嘩をしたら仲直りするまで何日でも寝室に閉じこもるという熱々夫婦。ところがある日、デイヴィッドのもとへ二人の結婚届けが無効であったことを告げる使者がやってくる。ひさしぶりに味わう独身気分に遊び心をくすぐられるデイヴィッド。一方のアンは再びきちんとプロポーズをしようとしない夫の態度に激怒し、彼を家から追い出してしまう。よりを戻そうと懸命に働きかけるデイヴィッドだったけれど、アンは彼の同僚のジェフとつきあい始め……。結婚三年目の熱愛夫婦を襲った突然の破局の顛末をコミカルに描く、スリラーの巨匠ヒッチコック監督によるコメディ。
唐突に仲直りをしちゃうエンディングはなんだかいまひとつ納得がいかないというか……。まあ、ユーモアと唐突さというのはヒッチコックの持ち味だから、そういう意味ではヒッチコックらしい作品なのかなという気もするけれど。
(Jun 06, 2004)
大人は判ってくれない
フランソワ・トリュフォー監督/ジャン=ピエール・レオ/1959年/BS録画
主人公アントワーヌ(ジャン=ピエール・レオ)は愛情のない家庭に暮らす少年。母親は再婚相手にも飽きて浮気をするような尻軽女で、義父はラリーに夢中のうだつのあがらないサラリーマン。二人とも自分のことばかりで、アントワーヌを構おうとしない。必然アントワーヌは反抗的な少年に育ち、学校でも問題ばかり起こしている。何度か家出を繰り返した挙句、ついに窃盗で警察に捕まって、感化院に入れられてしまう。ひとりの孤独な少年の姿をていねいに描きあげた巨匠フランソワ・トリュフォーの出世作。
パリの街の風景を追った冒頭の映像がとても美しい。これはいい映画なんだろうなと思わせるに十分だ。でも個人的にはあまり好きとはいえない作品だった。殺伐としたアントワーヌの家庭はどうにも救いようがなさ過ぎて心安らがない。どうも僕の場合、憂鬱を味わうのは小説だけで十分だと感じているところがある。
主人公の少年アントワーヌを演じているのは、この前見た 『男性・女性』 の主演男優、ジャン=ピエール・レオだった。浅学にして知らなかったけれど、この人はとても有名な俳優さんらしい。
(Jun 18, 2004)
麗しのサブリナ
ビリー・ワイルダー監督/オードリー・ヘプバーン、ハンフリー・ボガート、ウィリアム・ホールデン/1954年/DVD
大富豪ララビー家のお抱え運転手の娘サブリナ(オードリー・ヘプバーン)は、その家の次男坊デイヴィッド(ウィリアム・ホールデン)に夢中。けれども離婚歴3回のプレイボーイ、デイヴィッドの方では、子供の頃から知っている彼女のことなんてまるで眼中になかった。ところがサブリナが2年間のパリの料理学校への留学を終えて帰ってくると、そんな状況が一転。花の都で、とある老貴族に気に入られたサブリナは、とびっきり洗練されたレディになって戻ってきた。そんな彼女にデイヴィッドは今さらながら一目惚れ。婚約中にもかかわらず、彼女と結婚したいと言い出す入れ込みようとなる。夢がかなって有頂天のサブリナだったけれど、その直後にデイヴィッドが(お尻に)怪我を追い、デートもままならない状態に。デイヴィッドの兄で仕事一筋の男、ライナス(ハンフリー・ボガート)は、弟の結婚が破綻すると事業に大きく差し障るため、二人の関係をどうにかしようと、弟の代役でサブリナのデートの相手をつとめ始めたところ、なんとミイラ取りがミイラに……。
厳選されたとびきりの食材を一流のシェフが料理しました、みたいな作品。ケチのつけようがない、見事なコメディだった。ボガートが柄にもない恋に落ちてしまう独身主義の実業家という、なんとなくそれらしくない役柄を演じているところがいい。
(Jun 20, 2004)
墓場なき野郎ども
ジャン・ダルベー監督/リノ・バンチュラ、ジャン=ポール・ベルモンド/1960年/BS録画
イタリアに潜伏中のギャングのアベル・ダボス(リノ・ベンチュラ)は逃亡生活に疲れ、母国フランスへ帰ることを決めた。ところが深夜にボートでニースの海岸に上陸したところを税関吏に発見されて銃撃戦となり、妻と相棒を失ってしまう。残されたのは二人の幼い息子たち。子連れのギャングは人の目を引き過ぎた。彼は昔の仲間たちに助けを求めるのだけれど、いまやすっかり堅気の仲間たちは、自ら助けに来ようとはせず、金で雇った若いチンピラ、エリック・スターク(ジャン=ポール・ベルモンド)を寄越す始末。エリックの助けを借りて、どうにか無事パリへの帰還を果たしたアデルだったけれど……。
信頼できる仲間や家族を失った悪漢の悲しい末路を描くフランス製のギャング映画。 『勝手にしやがれ』 と同じ年に公開されたこの作品でも、ベルモンドは一番おいしい役をもらっている。
(Jun 20, 2004)
ファインディング・ニモ
アンドリュー・スタントン、リー・アンクリッチ監督/2003年/DVD
ダイバー(シドニーの歯医者)に捕まって水槽に入れられてしまった我が子を助けるため、住み慣れた珊瑚礁を離れて旅に出た臆病なカクレクマノミ、マーリンの冒険を描いたピクサーのCG映画。
グラフィックの美しさは脱帽ものだけれど、シナリオ的にはあまり好みじゃなかった。それでもメインキャラのドリー(ナンヨウハギ)を健忘症にしたキャラクター設定には感心した。この魚のおかげで、思いのほか笑える映画になっていた。
それにしても、この映画に 『ファインディング・ニモ』 なんて邦題つける人たちはなにを考えているんだろうか。子供向けの映画なんだから、おしゃれじゃなかろうがなんだろうが、まずは意味が伝わる方が大切だろう。 『ニモをさがして』 でいいじゃん。
(Jun 20, 2004)
ハイ・フィデリティ
スティーヴン・フリアーズ監督/ジョン・キューザック、イーベン・ヤイレ/2000年/BS録画
同棲中だったローラ(イーベン・ヤイレ)が家を出て行った。傷心のロック・マニア、ロブ・ゴードン(ジョン・キューザック)は、今までに経験した失恋ベスト5を振り返りながら、自分はどうして女の子に振られるのかと自問自答を繰り返す中で、自分にとってのローラの存在の重要性を再確認してゆくことになる。
ニック・ホーンビイのベストセラー小説の映画化作品。オープニングやエンディングのスタイリッシュな演出といい、全編を彩るロック・ナンバーの使い方といい、基本的には僕の趣味にズバッとはまる、とてもいい映画だった。主人公が常にカメラに向かって独白を続けるというメタフィクショナルなスタイルをとることで、ニック・ホーンビイの原作における饒舌さを上手く表現していると思う。
一番の問題はその原作で、やはりこの映画でも小説と同じく主人公ロブの姿勢には──ある部分、同族としての共感を含めた──やりきれなさを覚えて、うんざりしてしまう。おかげで、いい映画だとは思いながらも、どうにも素直に受け入れきれない。ま、見る前からそんなことになるんじゃないかと思っていたので、ある意味予想どおりだった。ニック・ホーンビィには前から近親憎悪的な感覚を抱いてしまっているけれど、 『セイ・エニシング』 といい、もしかしてジョン・キューザックという人とも相性が悪いかもしれない。
そういえばこの映画には、最近 『スクール・オブ・ロック』 のヒットで話題となっている怪優ジャック・ブラックが、ロックおたくなロブの同僚の役どころで出演している。あまりにくどそうで観たいとも思っていなかったあの映画だけれど、ここでの彼の(予想どおりにクドい)演技を見ていたら、ちょっと観てもいいかなという気になってしまった。
(Jun 27, 2004)
ロッキー・ホラー・ショー
ジム・シャーマン監督/ティム・カリー、スーザン・サランドン/1975年/BS録画
恩師のもとへ婚約の報告へ向かう途中で山道に迷ってしまったブラッド(バリー・ボスウィック)とジャネット(スーザン・サランドン)の二人。助けを求めに立ち寄った城では、トランスセクシャル星からやってきたバイセクシャルの宇宙人、フランクン・フルター(ティム・カリー)が人造人間の製造実験を始めようとしているところだった。二人はフルターを初めとする変人たちの繰り広げる狂乱の宴に巻き込まれ……。
グラム・ロック的悪趣味さ全開のセクシャル・ミュージカル・コメディ。ミュージカル・コメディは好きだけれど、グラムのファッションやボンテージは好きじゃないので、そうした悪趣味なセンスで溢れかえったこの映画は、結果プラス・マイナス・ゼロ、いや、とりあえずゼロよりはややプラスかなという感じだった。
それにしても勝手に硬派女優だと思い込んでいたスーザン・サランドンが、若かりし頃にはこういう馬鹿な映画に身体を張って──ヌードにこそならないけれど、ブラジャー姿で胸をもまれたりしている──出演していたというのにはちょっとびっくりだった。なんだかすごく若気の至りって言葉がぴったりな気がした。
(Jun 28, 2004)